順天堂医学
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39 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 心筋梗塞―虚血性心疾患―
  • 河合 祥雄
    1994 年 39 巻 4 号 p. 427-442
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    かつて (急性・慢性) 心筋炎と誤って認識されしいた心筋梗塞は, 近年急増している. 心筋梗塞の病理に関する最も今日的な問題は, 梗塞を発症させる冠状動脈病変のダイナミックな把握にある. 通常の冠危険因子とは別の, 梗塞発症の危険因子の解明が急務である. 粥腫硬化巣の軟化 (Atheromalacia) は粥腫破綻・血栓形成に関連するが, 晴天の霹靂型の梗塞に対応する急性冠状動脈閉塞の機序の理解は不十分である. 第2には急死の対策に直接関連する超急性期の梗塞の取扱いがある. 発症数時間以上経過しなければ, 病理組織学的には凝固壊死が見られないという空白の時間が, 臨床例における形態学的裏付けの欠如という曖昧さを産み残し, それが, 梗塞の発生原因について様々な憶測を生んだ遠因と考えられる. 〈壊死〉を有さない急性心筋梗塞を認めるか, 付帯条件を付けた急性冠不全という概念を復活させ, 急性期の梗塞をまとめなおすことが必要であろう.
  • -最近のトピックス-
    加納 達二
    1994 年 39 巻 4 号 p. 443-452
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の診断と治療は近年目覚ましい進歩をとげている. 急性心筋梗塞での血栓溶解療法の現況と問題点を挙げ, direct PTCAが血栓溶解療法に勝る治療法となり得るかを探った. また冠硬化症治療でのPTCAの功罪と, アテラクトミー・レーザ・ステントなどの経カテーテル治療の新しい器材を紹介した. PTCA・new devices・CABGのなかで, 最も有効な血行再建術についてrandomized studyの成績を中心に記述した. 治療の選択は症例別・病変別などによって異なるが, いかなる治療を選択しても内科治療の継続が不可欠であることを強調した.
  • -内胸動脈バイパス術の成績について-
    忽滑谷 道夫
    1994 年 39 巻 4 号 p. 453-460
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    ACバイパス術における最近のトピックスとして内胸動脈を用いたACバイパス術をとりあげ, 静脈のみを用いたバイパス症例との成績を比較した. 内胸動脈によるバイパス手術は従来の静脈を用いた手術と変わらぬ成績で手術が行われ, またグラフトの開存率も良く, 遠隔期成績も優れており, 最も重要な冠状動脈と考えられる前下行枝に対しては最適のグラフトと考えられた. しかしながら時には内胸動脈が適さないと考えられる症例もあり, 内胸動脈を万能とすることには注意が必要と思われる.
  • 高野 照夫
    1994 年 39 巻 4 号 p. 461-468
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    東京都では急性心筋梗塞が疑われる患者を必ずCCUに収容し, より多く救命できるように, 都内21病院のCCU施設と東京消防庁救急隊・都医師会・都衛生局の4者が協力して, 心臓循環器救急医療体制 (CCUネットワーク) を1987年に整備確立し運営している1) . この東京都CCUネットワークが作られた理由は, 急性心筋梗塞発症直後の数時間以内に多い死亡率を, いかに低下せしめるかであった. また急性心筋梗塞における根本的治療である血栓溶解療法が普及する時宜でもあった. 本稿では, 過去10年間におるCCUネットワークの成績をもとに, 救急医療の進歩と心疾患について述べる.
原著
  • 森近 浩, 平 秀樹, 稲見 邦晃, 冠木 敬一郎, 倉本 孝雄, 中山 秀明, 島崎 浩人, 石 和久, 川畑 貞美
    1994 年 39 巻 4 号 p. 469-473
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    わが国では社会の高齢化と食生活の欧米化により大腸癌が増加している. これにともない, 職域健診や地域健診の大腸癌のスクーニングにおいて, 化学的便潜血検査にかわって免疫学的便潜血検査が行われ成果をあげている. しかし, 一般診療では診断技術の進歩もあって, 最近では消化管疾患における便潜血検査は軽視される傾向にあり, また社会保険の適用もおくれ検査頻度は少ない. われわれは, 免疫学的便潜血検査陽性を呈した検診群と診療群, また便潜血検査を行わなかった無検査群と大腸X線検査を対比し, 免疫学的便潜血検査の有効性を検討した. 有所見率は検査群64.3%・無検査群47.7%であり, 検査群のうち検診群68.9%・診療群75.0%であった. また大腸癌発見率は, 検査群3.5%・無検査群0.9%で診療群6.1%であった. 免疫学的便潜血検査による下部消化管補助診断は, 職域検診や地域検診におけるスクーニングばかりでなく, 一般診療においても有用である.
  • CD5B細胞の前癌状態及び腫瘍細胞におけるbcl-2の発現増加
    岡本 完, 篠崎 文子, 西村 裕之, 鶴井 博理, 広瀬 幸子, 白井 俊一
    1994 年 39 巻 4 号 p. 474-483
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    New Zealandマウスに好発するB細胞性慢性リンパ性白血病 (B-CLL) の発生が主要組織適合遺伝子複合体 (MHC, マウスではH-2) の特定のハプロタイプによって統御されていることを明らかにした. B-CLL好発系は, H-2z/H-2zホモ接合体New Zealandマウスであり, 加齢に伴い末梢血にCD5陽性B細胞の増殖が認められた. これらのB細胞は徐々にoligoclonalからmonoclonalへと変化し, 結果的に可移植性のCD5+B-CLLが発生した. proto-oncogene bcl-2の発現について調べたところ, B-CLL細胞はもとより, oligoclonaiな前癌状態の細胞においても発現増強が認められた. このことから, アポトーシスを免れた長期生存可能なCD5陽性B細胞が自己増殖する過程において, 形質転換するものと考えられた. 以上の結果から, このモデルマウス系はB-CLL発生に関与する遺伝的素因や, その発生過程における多段階の発癌関連遺伝子の変化を解析するために有力な手掛かりを与えてくれるものと考えられた.
  • 張 丹青, 大室 博之, 広瀬 幸子
    1994 年 39 巻 4 号 p. 484-493
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    NZB×NZW (NZB/W) F1マウスにはヒトの全身性エリテマトーデス (SLE) に酷似した病態が自然発症する. 発症には両親系由来の複数の遺伝子が関与している. この点に関してわれわれは, 主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) とT細胞抗原受容体 (TcR) 遺伝子複合体とがSLEの発症に重要な遺伝的要因であることを明らかにし, B細胞上のある特定のMHCクラスII分子とT細胞上の特定のTcRレパートリーとの相互作用の重要性を提唱してきた. この考えをもとに, われわれはマウスのH-2クラスll分子である1-A分子と1-E分子のうち, 1-E分子に対するモノクローナル抗体をSLE発症前の2カ月間 (3-5カ月齢) NZB/W F1マウスに週1回の割合で投与して, その後の病態発症に及ぼす影響を検討した. その結果, 抗1-E抗体投与はSLEの発症を遅延されるばかりでなく, これを強く抑制し, いちじるしい延命効果をもたらした. 免疫細胞系の変化を調べた結果, 抗1-E抗体の投与は早期には自己抗体産生細胞系であるB1細胞にいちじるしい選択的減少をもたらすことにより, SLE発症に遅延効果を示すと考えられた. このB1細胞の減少はその後, 加齢とともに回復したが, 抗DNA抗体産生は十分回復しなかった. これは, 抗1-E抗体投与が自己反応性T細胞に寛容状態を誘発することによりB1細胞の抗DNA抗体, 特にIgG抗体産生細胞への分化を抑制しているためと考えられた. 以上の結果から, 抗MHCクラスII抗体投与は将来ヒトSLEの治療にも応用可能な方法と考えられた.
  • 斎藤 潔
    1994 年 39 巻 4 号 p. 494-503
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    血液学的悪性疾患20例 (MDS11例・AML3例・CML4例・T-LGLL1例・CLL1例) におけるDAFおよびCD59の発現をFACStarを用い解析した. MDSにおけるDAFの発現は増減さまざまであったが, CD59の発現は検索し得た9例が増加していた. MDSの1例で, 末梢血と骨髄におけるCD59の発現を検討した結果, 骨髄細胞では多様性を示したが, 末梢血では発現の多い細胞のみを認め, CD59発現の少ない骨髄細胞は無効造血を来たすことが示唆された. CMLでは, 白血球数が著増している1例でDAFとCD59の発現が増加していたが, 白血球数がinterferonでコントロールされている2例と, 無治療で安定している1例では, DAFとCD59が低下傾向を示した. T-LGLLの細胞は, 正常T細胞よりDAFとCD59の発現が低下し, 特にDAFの発現低下が著明で, その発現パターンはNK細胞に類似していた. CLLの細胞は, 正常B細胞よりDAFの発現が低下していたが, CD59の発現は同程度であった.
抄録
てがみ
編集後記
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