目的:著者らは,光重合型コンポジットレジンにおいて,初めは弱く次に強く光照射を行うSlow-start curing法により重合すると,窩底部レジンの重合促進効果が認められ,辺縁封鎖性ならびに適合性の向上に有効であることを報告している.本研究では,Slow-start curing法が自動的に行えるランプ電圧自動可変型光照射器(ジーシー)を用いて,各種のSlow-start curing法による窩底部レジンの重合促進効果について検討した.材料と方法:深さ2mmのモールドに,Clearfil Photo Bright(クラレノリタケデンタル)とPalfique Estelite(トクヤマデンタル)のVitaシェードのA3とB4に対応するおのおの2種類のシェードのレジンを填塞し,通常の照射法と2種のSlow-start curing法により重合硬化させた.すなわち,通常照射法として,1) 600mW/cm
2 60秒,Slow-start curing法として2) 270mW/cm
2から600mW/cm
2にインターバルをおかずに出力を増す照射法,3) 270mW/cm
2 10秒照射,インターバル5秒,600mW/cm
2 50秒の照射法を用いた.硬化物をモールドから取り出し,その表面と底面のヌープ硬さを光照射開始直後の条件で測定を行い,底面の硬さを表面の硬さで割ったHardness ratioを求めた.成績:通常の光照射法である出力600mW/cm
2にて60秒で光照射を行い光重合型コンポジットレジンを硬化すると,レジン材料,シェードにかかわらず,すべての群で重合直後のレジン試片の表面が底面に比べ有意にヌープ硬さが高くなった.Slow-start curing法の270mW/cm
2 10秒照射,インターバル5秒,600mW/cm
2 50秒照射で光照射を行い,光重合型コンポジットレジンを硬化すると,VitaシェードA3に対応するClearfil Photo Brightの重合直後のレジン底面が表面に比べ有意にヌープ硬さが高くなった.しかしながら,VitaシェードB4に対応するClearfil Photo Brightでは,270mW/cm
2 10秒照射から600mW/cm
2 50秒照射にインターバルをおかずに出力を増すSlow-start curing法のほうが,窩底部レジンの重合促進効果を示したが,Palfique Esteliteではその効果は少なかった.結論:低出力と通常出力の間にインターバルをおくSlow-start curing法のほうが,インターバルをおかないSlow-start curing法よりも,窩底部レジンの重合促進効果が高いことが明らかとなった.レジンの重合に伴いコントラスト比が増加する光重合型コンポジットレジンのほうが,コントラスト比が減少するレジンよりも窩底部レジンの重合促進効果が高く,重合収縮応力を緩和する可能性が示された.しかしながら,レジンの組成とシェードにより至適な照射法があり,シェードの濃いコンポジットレジンではSlow-start curing法において初めの低出力と通常出力の間にインターバルをおかないほうがよいことが示唆された.
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