音声言語医学
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51 巻, 3 号
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原著
  • —定型発達児, 発達性dyslexia児における検討—
    土方 彩, 宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人, 粟屋 徳子, 狐塚 順子, 後藤 多可志
    2010 年 51 巻 3 号 p. 221-229
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    小学5, 6年生の定型発達児28名と発達性dyslexia児8名を対象に, 漢字単語の読解力に対する音読力と聴覚的理解力の貢献度を検討した. その結果, 定型発達児群における漢字単語の読解力に対して聴覚的理解力が有意に, そして音読力は有意傾向の影響力を示した. また, 読解力も音読力と聴覚的理解力の双方に対し有意に影響していた. 一方, 発達性dyslexia児群における漢字単語の読解力には音読力のみが有意に影響しており, 読解力も音読力に対して有意な影響力を示した. これらの結果から定型発達児の漢字単語の読解力には音読力と聴覚的理解力の双方が重要であり, 読解力もまた音読力と聴覚的理解力に対して影響力をもっていること, 発達性dyslexia児は音読力が低いため, たとえ聴覚的理解力が高かったとしても, その能力を読解力に対して十分に活用できていないことなどが推測された. また定型発達児群における読解力と音読力, 聴覚的理解力に関して, 一貫して心像性が有意な説明変数として抽出され, 3つの能力に対し意味の思い浮かべやすさが影響していると思われた.
  • 伊藤 傑, 渡邉 昭仁, 松本 潤子, 常磐井 美幸
    2010 年 51 巻 3 号 p. 230-234
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    【目的】一定の文章をより自然な発声法を促した状態で音読した経過時間 (以下“音読経過時間”とする) が, 音声評価の一つになるのではないかと考え臨床的に検討した. 【方法】1. 他覚的・自覚的に音声の異常を認めない正常群192例を短期間隔および, 長期間隔での比較し再現性の有無を検討した. 2. 音声障害例として, 反回神経麻痺67例を対象とし音読経過時間さらに従来からの音声機能検査を施行し比較検討した. 【結果】1. 正常群において繰り返し検査を行った短期での比較, 長期での比較両比較とも音読経過時間に再現性が認められた. 2. 反回神経麻痺例における音読経過時間は臨床所見と従来からの音声機能検査の一つであるMPTと同様の傾向を認めた. 【結論】音読経過時間は, MPTと同様の傾向を示したことより, 反回神経麻痺症例の音声を評価する一つの指標になりうるのではないかと考えた.
  • —定型発達児と読み成績下位児を対象として—
    朴 賢〓, 宇野 彰
    2010 年 51 巻 3 号 p. 235-243
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, 全般的な知能が正常である韓国語話者小学校3年生103名を対象とした. 標準化された読み検査での平均得点の-1.5SDを基準にし, 読み成績下位群と上位群に分けハングル音読にかかわる認知機能の検討を目的とした. 児童全例を対象とした分析の結果, ハングル音読力を予測する因子として語彙力と命名速度, そして音素認識が抽出された語彙力が音読力を予測する第1因子であることは, 日本語の漢字に関する報告と共通であり, 音素認識が音読力の有意な予測因子であったという結果は日本語の仮名文字に関する報告とは異なり, 音節認識力ではなく音素認識力が重要であると考えられた. 読み成績下位群では上位群に比べて音韻情報処理課題と自動化課題で有意な得点の低下を認めたことから, ハングルの音読力低下に影響を及ぼす要素的認知機能としての音韻処理能力と自動化能力の関与が示唆された.
特集<小児の高次脳機能障害と発達支援:ことばに関する障害を中心に>
  • 広瀬 宏之
    2010 年 51 巻 3 号 p. 244
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
  • —特に漢字書字障害について—
    宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人, 粟屋 徳子, 片野 晶子, 狐塚 順子, 後藤 多可志, 蔦森 英史, 三盃 亜美
    2010 年 51 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 発達性ディスレクシア (DD) と後天性の大脳損傷によって生じる失読失書例との共通点と相違点について要素的認知機能の発達や局在化に関して検討することである. DD群は10名の右手利き例である. 失読失書例は右利きの男児2名である. 失読失書症例KYは8歳にてモヤモヤ病術後, 脳梗塞にて軽度失語症を発症し, その後軽微な失語症とともに失読, 失書症状が認められた発症半年後から追跡している症例である. 症例MSは, 8歳時の脳梗塞により健忘失語が観察された10年以上追跡してきている現在21歳の症例である. いずれも, 失語症状は軽微で失読失書症状が中心となる症状であった. SLTAではDD群, 失読失書例ともに読み書きに関連する項目以外は定型発達児群と差がなく音声言語にかかわる項目は正常域であった. DD群における局所血流低下部位は左下頭頂小葉を含む, 側頭頭頂葉結合領域であった. また, 機能的MRIを用いた実験により, 左下頭頂小葉にある縁上回の賦活量に関して典型発達群と比較して異なる部位であった. 一方, 失読失書2例における共通の大脳の損傷部位は左下頭頂小葉であった. DD群ではROCFT (Rey-Osterrieth Complex Figure Test) において遅延再生得点が平均の-1SDよりも得点が少なかったが, 失読失書2例においてはともに得点低下はなかった. 一方, 発達性ディスレクシアと後天性失読の大脳機能低下部位は類似していたが, 非言語的図形の処理能力は, 発達性ディスレクシア群で低く, 後天性失読例では保たれていた. 後天性言語的図形である文字と非言語的図形の処理は, 少なくとも8歳までの発達途上で機能が分離されてきているように思われた.
  • 藤原 加奈江
    2010 年 51 巻 3 号 p. 252-256
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    自閉症スペクトラムのコミュニケーション障害は語彙, つづり, 音韻などは良好な一方で複雑な文の理解や暗喩や皮肉の理解が困難であるなど偏りが見られる. さらに独り言は言うのに会話しない, あるいは会話のルールがわからないなどさまざまなレベルでの言語使用の障害がその特徴となっている. その背景には中枢性統合理論と親和性の高い低連結性理論や社会脳の障害など脳の情報処理の違いが論じられている. さまざまな高次脳機能障害を併せもつ自閉症スペクトラムの言語訓練は神経心理学的検査などの包括的な評価を基に, その障害特徴を考慮し効果的に行えるよう工夫が必要になる.
  • 佐場野 優一
    2010 年 51 巻 3 号 p. 257
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
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