日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
17 巻 , 2 号
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論文
  • 倉橋 奨, 入倉 孝次郎
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_1-2_22
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究は, 海溝型巨大地震を対象とした, 超高層ビルなどの長周期構造物の被害に影響する長周期地震動(2-10秒)のための震源モデルおよび評価手法の構築を目的としている.2011年東北地方太平洋沖地震(以下2011年東北地震と呼ぶ)の短周期地震動を生成したSMGA(強震動生成域)からの波群の地震動の解析により, それらの震源スペクトルは, 2-10秒の長周期帯域を含んでω-2則に従う特性を持っていることがわかった.すなわち, SMGAからの地震動は, SMGAの直径に対応するコーナー周波数をもち, それよりも高周波数でほぼω-2で減衰する.理論的グリーン関数を用いて, SMGAからの地震動を計算するには, SMGAを分割する小断層サイズおよびすべり速度関数の適切な選択が必要とされる.ここでは, すべり速度関数としてsmoothed ramp関数と中村・宮武(2000)の関数を用いて比較検討を行った.小断層サイズを小さくすると, 指向性効果などの破壊伝播の再現がより有効になるという利点があるが, 小さくしすぎると, どちらの関数を用いても高周波数域で, 観測で見られるω-2よりも大きく減衰し, 対象とする2-10秒の地震動が再現できない.同じ小断層サイズの時, ライズタイムの逆数の周波数よりも高周波数域では, 中村・宮武(2000)の関数に比べてsmoothed ramp関数はより大きく減衰する.中村・宮武(2000)の関数を用いて, 小断層を1×1 km2とし, 破壊伝播速度に10%の揺らぎを与えることにより, 強震動生成域からの地震動は周期1秒までほぼω-2の特性をもつことを確認した.上記のすべり時間関数, 小断層サイズ, および破壊伝播速度の揺らぎの組み合わせで2011年東北地震の時観測された2-10秒の長周期地震動が, 5つの強震動生成域からの足し合わせでほぼ再現できることがわかった.

  • —なぜ多くの犠牲者を生み出したのか?—
    中井 春香, 武村 雅之
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_23-2_37
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    1945年1月13日午前3時38分に発生した三河地震(M=6.8)の特徴としては, 全潰家屋数に対して死者数が多い地震であることがあげられる.その要因を明らかにするために, 戦時中であったこと, 地表地震断層が現れたこと, 1944年東南海地震(M=7.9)の約1か月後に発生したこと等に着目した.本稿では, それらの要因を定量化するため全潰家屋数を死者数で割ったNk値を用いて検討した.三河地震のように震動を主な被害要因とする地震では, 通常Nk値は10程度となるが三河地震はNk=3.1である.戦争の影響についてデータを元に検討した結果, その影響は少なくとも0.4程度Nk値を引き上げることが分かった.次に被害町村を死者数が多い順とNk値が低い順にそれぞれ並べた表を作成した.死者数では震度7となる岡崎平野に位置する町村が上位に並び, 地表地震断層が通った地域が必ずしも上位に並ぶわけではない.一方, Nk値が低い順に並べた場合は地表地震断層が明瞭に現れた町村が上位に多いことが分かった.そこで地表地震断層近傍の町村を一旦除き, 三河地震のNk値を算出すると, Nk値は3.9となり0.8程度Nk値を引き上げることが分かった.さらに上位に並んだ断層近傍地域を細かく見ていくと断層の上盤側の断層から約1kmの範囲で, 縦ずれの断層変位がより多い地域において被害が集中的に発生していた.特に縦ずれの断層変位が多い地域でNk値が1.1から1.2と低いことが判った.このことは, Nk値を小さくする原因として地表地震断層近傍で現れる断層変位や, 震源近傍の特有なパルス的地震動(キラーパルス)などが建物を一瞬にして全潰させて一挙に多くの死者を出したことを示唆するものである.また, 東南海地震が1か月前に発生していたことや発生時刻が真冬の夜中であり迅速な避難をより困難にしたこともその傾向を助長した可能性がある.

  • 小林 源裕, 儘田 豊
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_38-2_61
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    地震動の空間変動の要因解明に資するため, ほぼ水平な地質構造を持ち地質・地盤情報が十分豊富な茨城県つくば市の第四紀地盤テストフィールドにおいて, 地表10点の高密度水平アレー観測, 及び原位置地盤データから推定した二次元不均質地盤モデルに基づくモンテカルロシミュレーションを実施し, 地震動の空間変動の評価に関する確認試験を行った.それらの結果, 地震時に生じる数m~200m程度の局所地盤における地震動の空間変動特性(空間相関係数, ばらつき)について, 原位置調査により得られる地盤不均質性から推定できることを示した.

  • 市村 直登, 丸山 喜久
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_62-2_73
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究は, 東京湾北部地震における東京23区の木造建物の解体棟数を予測することを目的としている.まず, 神戸市企画調整局から提供された兵庫県南部地震後にまとめられた震災復興データアーカイブ内の建物データを用いて, 木造建物の地震時の解体損傷度を推定した.推定された兵庫県南部地震の際の解体損傷度と, 川口ら(2013)による新潟県中越地震時の解体損傷度を比較し, 解体損傷度の地震間の整合性に関して検討した.さらに, 東京湾北部地震を対象として, 東京23区の木造建物の解体棟数を予測した.

  • 阿部 雄太, 山本 治貴, 中村 雅紀, 秋山 伸一, 井上 哲也
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_74-2_87
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    地震動強さの距離減衰式にみられる地震内のバラツキについて, 地点間の空間相関を考慮することによる巨大地震の被害予測への影響を定量的に検討した.バラツキの空間相関を考慮する方法として相関行列を疎行列化してコレスキー分解する方法を構築することで, 大正型関東地震や南海トラフ最大クラス地震など巨大地震を対象に多数の地点で地震動を評価する場合でも, これを考慮できるようにした.これらの地震について, 本手法を用いた場合と地震内のバラツキの無相関または完全相関を仮定した場合を比較すると, 被害棟数の度数分布が異なること, 被害予測において本手法を用いることで, 地震の多様性や不確実性を簡便に考慮できる可能性があることが分かった.

  • 羽田 浩二, 堀家 正則
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_88-2_107
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究では, 地表面におけるロッキング2成分とトーション1成分の回転3成分ベクトルの2つの推定法を開発する.1つ目は, n次弾性体法と呼び, 地表面が弾性体であると仮定し, 回転ベクトルは地表面震動の空間に関する1次導関数から構成される.1次導関数は, 複数観測点の差動をn次のテーラー展開することにより得られる連立方程式から求める.2つ目は剛体法と呼び, 地表面を剛体と仮定して観測差動から最小二乗法により求める.剛体法は更に複数観測点の差動記録を用いる多点剛体法, 基準点を含む2点の観測点の差動記録のみを用いる単点剛体法に細分される.また, 1次弾性体法と多点剛体法が同じであることも示した.n次弾性体法を小規模高密度微動アレイ記録に適用した結果, 3成分の角加速度が推定でき, トーション成分に対しては剛体として振舞う範囲が基準点を中心とした半径5m程度内である可能性を示せた.さらに, 観測の最も簡単な単点剛体法による自乗平均平方根は, 基準点近傍では1次弾性体法(あるいは, 多点剛体法)によるそれとほぼ同じであることもわかった.

  • 杉野 英治, 岩渕 洋子, 阿部 雄太
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_108-2_127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    確率論的津波ハザード評価手法では, 津波の予測に係る多様な不確実さ要因を取り扱う必要がある.津波波源における破壊伝播特性もその一つである.津波水位評価における破壊伝播特性に係る不確実さの影響を把握するため, 同心円状の破壊伝播様式を仮定し, 破壊開始点及び破壊伝播速度を変化させた多数の津波波源モデルを用いて津波水位を算出し, その影響を定量的に分析した.また, その分析結果に基づいて, 破壊伝播特性の不確実さの影響を確率論的津波ハザード評価手法に取入れるための簡易的な手法を構築した.

  • 能島 暢呂, 久世 益充, 高島 拓也
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_128-2_141
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    地震動の経時特性を表す特徴量として, 正規化加速度累積パワー曲線 (Husid plot) に基づく98次元の特徴ベクトルを提案した.また特徴ベクトル間のユークリッド距離によって波形間の非類似度を定義し, 階層的クラスター分析によって経時特性を分類する手法を提案した.2011年東北地方太平洋沖地震の観測記録に適用してクラスター分類結果をマップ化し, 多重震源過程や震源域からの距離の影響を受けた経時特性を的確に分類可能であることを明らかにした.また計量的多次元尺度法によって波形を二次元布置し, 経時特性の分類の意味を明らかにした.さらにSR継続時間の分布を示し, クラスター分類結果はSR継続時間のみでは表せない経時特性を反映していることを指摘した.

  • 若松 加寿江, 先名 重樹, 小澤 京子
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_142-2_157
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究では, 厚生労働省が2013年にとりまとめた東日本大震災水道施設被害状況調査最終報告書で用いられた導水管, 送水管, 配水管の被害データと筆者らによる液状化発生データを用いて, 管路被害における液状化発生の影響を分析した.分析の結果, 上記の管路被害のうち口径50mmを越える被害の約25%, 口径50mmの管路被害の約15%は液状化が確認された250mメッシュの中にあった.関東地方と東北地方を比べると, 関東地方の方が液状化メッシュ内での管路被害の割合が多かった.管路への液状化の影響は震度5強以上, PGA≥150cm/s2, PGV≥20cm/sで起きており, 震度とPGAに関しては, 地震動指標値が低くなるほど, 液状化発生メッシュ内での被害地点の占める割合が多くなる傾向が認められた.液状化メッシュ内とそれ以外の被害地点の微地形区分を比べると, 両者には明瞭な差異があり, 前者はいわゆる液状化が起きやすい微地形区分, 後者は丘陵や台地など比較的硬い地盤で構成される微地形区分が多かった.液状化発生メッシュ内での管路被害地点は, 宅地になる以前の旧地形の影響を強く受けている地域が目立った.液状化発生メッシュ内での管路の被害割合が多かった事業体における液状化発生地点を対象として, 「宅地の液状化可能性判定に係る技術指針」に示された二次判定手法により液状化被害の可能性の判定を行ったところ, 解析を行った6地点全てで「顕著な被害の可能性が高い」と判定された.

  • 後藤 洋三, 中須 正
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_158-2_173
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の津波による人的被害の発生率を地域単位で比較した場合, その大小には地域固有の自然特性と社会特性が関係しているはずであり, その関係を数値モデル化できれば, 人的被害の要因について理解が進み, 対策の効果を定量的に評価できる.そこで著者等は, 津波による人的被害の発生率を建物被害の発生率で割ることによりその地域の津波からの避難の脆弱性を表す指数, HVI(Human Vulnerability Index)を導入し, 既往の調査データを使って岩手県・宮城県・福島県沿岸の主要自治体のHVIを求めた.そして, 各自治体の避難にかかわる自然特性と社会特性を, 津波到達時間と避難距離, 避難道路の整備状況, 住民の日頃の備え, 住民への危機情報の伝達, の4項目で数値化し, HVIとの関係を重回帰分析した.その結果, 有意な回帰式が得られ, 津波からの避難に及ぼす各項目の影響を定量的に評価できた.今後は, 回帰式を他の津波災害事例にも適用して汎用化すると共に, 自然特性と社会特性の数値モデルの一般化を図ることによって, 被災の可能性がある自治体の津波避難の脆弱性と対策を事前評価できるようにすることが課題である.

報告
  • 脇中 康太, 安田 進, 石川 敬祐, 北村 友依
    2017 年 17 巻 2 号 p. 2_174-2_190
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    江合川水系の河川堤防は1962年宮城県北部地震, 1978年宮城県沖地震, 2011年東北地方太平洋沖地震によって, 度重ねて甚大な被害を受けてきている.本研究では, これまでの江合川水系河川堤防の被害事例を収集整理し比較することにより, 被害を受けやすい箇所の特徴や, 止水や洗掘対策として施された対策工が地震被害に及ぼす影響の評価を行った.分析結果から河川改修工事完了から年月経過の浅い地震においては, 年代効果による強度発現が期待できず被害が卓越する傾向にあることがわかった.また, 止水や洗掘対策として施された止水矢板やコンクリート護岸工が, 地震被害を抑制することもあることが分かった.河川堤防は長大な線状構造物であるため, 地震対策を施すことはなかなか難しく, このような工法でもある程度の地震被害抑制効果があることは, 効率的に河川整備事業を進める上で重要な知見であると言える.

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