日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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21 巻, 3 号
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  • 井上 義博, 岩井 正勝, 藤野 靖久, 入野田 崇, 遠野 千尋, 大森 浩明, 斉藤 和好
    2001 年 21 巻 3 号 p. 507-513
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2011/10/28
    ジャーナル フリー
    1988年から1999年までに経験した上部消化管出血は1,271例で, このうち重篤な基礎疾患を有する症例に合併したものは237例, 18.6%であった。検討の対象とした基礎疾患は臓器不全, 多発外傷, 頭部疾患, 主要臓器の術後, 悪性腫瘍, 敗血症, DIC, 重症中毒などであった。237例の内訳は胃潰瘍79例, 十二指腸潰瘍52例, 食道出血42例, AGML39例, 吻合部出血16例などで, 同時期の全症例数に対する割合では, 吻合部出血44.4%, AGML36.4%, 食道出血35.6%が高かった。また基礎疾患をみると悪性腫瘍が57例で, うち29例が肝胆膵系を占め, 単臓器不全が50例で, うち腎不全が27例を占め, 頭部疾患が45例で, うち脳血管障害が34例を占め, 術後が24例で, うち腹部が14例を占めていた。食道出血を検討すると42例の内炎症および潰瘍が36例, 胸部大動脈瘤の食道穿破が3例, 食道癌の大動脈穿破が2例認められた。この37例中25例には胃管が挿入されており, 8例は制酸剤無投与であった。胃管やEDチューブによると考えられた胃潰瘍も8例, 10.1%に認められ, このうち4例が制酸剤無投与であった。吻合部出血を検討すると11例が悪性潰瘍の術後で, うち8例が肝胆膵系であった。心疾患および脳梗塞の症例では抗凝固剤を使用する症例が多く, 本検討でも26例中18例に認められた。消化管出血の内視鏡治療はヒータープローブを用いたが, 致死的な出血を除き止血可能であった。内視鏡治療1月以内の死亡は43例, 18.1%で, 十二指腸潰瘍15例, 28.8%, 胃潰瘍10例, 12.7%, 食道出血10例, 23.8%, 吻合部出血4例, 25%などであった。このうち出血死は12例で, 5例が大動脈出血, 静脈瘤と気管支出血が各1例であり, 止血不能で手術した後死亡した3例を含み, 潰瘍出血が直接死因となったのは5例であった。
  • 遠野 千尋, 大森 浩明, 入野田 崇, 井上 義博, 旭 博史, 斉藤 和好
    2001 年 21 巻 3 号 p. 529-534
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2011/10/28
    ジャーナル フリー
    65歳以上の腹部緊急手術症例49例を心疾患合併14例と非合併35例にわけ, 背景や周術期管理, 退院時の状態を比較した。合併群では男性の比率が高い傾向にあった。両群間で術前のAPACHE II scoreに差はなかったが (13.3vs11.8), 呼吸補助時間 (17.2日vs9.1日) や循環管理時間 (14.9日vs9.4日) が合併群で遷延する傾向を認めた。また, 死亡率は合併群で高い傾向にあったが有意差はなかった (35.7%vs20.0%)。合併群は平均在院日数が長く (26.1日vs20.8日), ADLの指標であるBarthel index (43.5vs50.3) やPS (3vs2) の改善が弱い傾向にあり, 自宅退院できず転院を余儀なくされた症例が多かった (44%vs25%)。今後心疾患合併例に対しては, 術後は慎重な管理で心疾患の悪化また付随する呼吸器疾患, 感染症を防ぎ, 早期離床を目指すべきと思われた。
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