1)職業歌手は話声(日常会話)には支障がない程度の,喉頭所見に乏しい微細な声帯病変でも歌声の異常を訴えた.
2)主訴は,歌声の高さに関連した歌声の質に関するものが多く,多種多様であった.必ずしも音色(音質)の障害(嗄声)を訴えなかった.
3)治療法の選択は音声障害の程度,声帯の病態に加えて声のemergencyを考慮して決定すべきであった.
4)職業歌手の診療でも音声障害の病態の把握と病態に応じた治療が重要であり,他の音声障害の診療と何ら変わることはなかった.
5)職業歌手の声帯の器質的病変に対する手術は,喉頭微細手術による緻密な手術手技が必要であった.
6)職業歌手の音声障害を診療するためには,歌声を含めた発声の生理・病理・病態生理・声帯の組織解剖の理解と熟練した手術手技が不可欠であった.
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