音声言語医学
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57 巻 , 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
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総説
  • 平野 滋, 岸本 曜
    57 巻 (2016) 3 号 p. 255-260
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    再生医療は20世紀後半のブレークスルーであり,治療困難な難治性疾患に福音をもたらす可能性を秘めている.喉頭領域でも再生医療の研究は声帯,筋肉,軟骨,反回神経をターゲットとして進められており,本稿では声帯再生において臨床応用されている再生医療について紹介する.声帯再生のターゲットとなる疾患は声帯の不可逆的硬化性病変で,声帯萎縮,瘢痕,溝症が含まれる.これらの疾患に共通する病態は,本来振動部分である粘膜固有層浅層の萎縮・線維化であり,この組織変化を是正しない限り音声の改善は望めない.変性した組織を再生土台で置換し,その部位に新しい健常な組織が再生することを期待するのが“scaffolding”と呼ばれる方法である.アテロコラーゲンやジェラチンスポンジが適した材料として挙げられ,ヒト声帯瘢痕に対するアテロコラーゲンの土台移植はある程度の成果を挙げたが,再生誘導に乏しいのが欠点で,安定した結果を得るのは難しかった.増殖因子は細胞の増殖のみならず機能修正を促し,組織再生へ誘導する強力な因子である.多くの増殖因子が研究されているが,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)はすでに市販製剤があり,臨床使用が可能である.声帯萎縮や瘢痕に対するbFGFの声帯内注射は,声帯の質量や粘弾性の回復に優れた効果が報告され,今後さらなる発展が期待されている.

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原著
  • 小坂 美鶴
    57 巻 (2016) 3 号 p. 261-271
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    ナラティブは言語,認知,社会性の能力を含んでいる.本研究では異なる材料と課題を用いて典型発達児のストーリーの構造と内容の発達に関して横断的な検討を行った.4:01~6:11の典型発達児118名を対象として“Frog, Where Are You?”と“ぞうさん故郷に帰る”のストーリーを用いて,自発話課題と再生課題を行った.分析は材料および課題による差異を比較した.
     その結果,ナラティブはすべての年齢で課題や材料によらず,ストーリーの長さや語彙数,統語において同一個人内での高い相関があった.また,両材料,両課題ともに年齢の増加とともに自立語数が有意に増加し,さらに内容も豊かになった.年齢群ごとの比較では4歳と5歳以上で有意な差異があり,4歳児においては十分なストーリーの内容を再生し,物語ることは難しいことが示された.しかし,5歳以上では徐々に材料による差異が明確になり,6歳では有意に材料間の差異があった.
     言語の形式と内容は一体となり発達し,5歳以降でのナラティブの発達が認められた.課題や材料によらず,個々の産出能力は一貫していた.典型発達児のナラティブの発達の標準的な結果を示し,評価ツールとして有用であることを示すことができた.

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  • 阿栄娜 , 森 浩一, 酒井 奈緒美
    57 巻 (2016) 3 号 p. 272-279
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,成人吃音者21名と非吃音者15名を対象に,ワーキングメモリ(WM)の容量を測定する課題とシャドーイングによる発話実験を行った.読みにかかわるWM容量をリーディングスパンテスト(RST)で測定した結果,吃音者群の平均得点が非吃音者群より有意に低かった.シャドーイング課題では,追唱潜時(モデル音声の文節開始から被験者が同じ文節を発話開始するまでの時間)を測定したところ,吃音者群のほうが非吃音者群より有意に短かった.RSTの得点と追唱潜時の関係については,吃音者群で有意な正の相関が見られたが,非吃音者群では有意な負の相関が認められた.RSTで測定したWM容量と追唱潜時の関係から,吃音者と非吃音者では,音読時のWMの割当て方やシャドーイング課題の処理方略が異なることが示唆された.

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  • 後藤 多可志, 宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人, 粟屋 徳子, 狐塚 順子, 村井 敏宏, 山下 光
    57 巻 (2016) 3 号 p. 280-286
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    先行研究では,発達性読み書き障害児/者の語音想起力を語流暢性課題にて検討した報告が散見されるが,現在も一定の見解にはいたっていない.本研究では,日本語話者で言語発達障害のない発達性読み書き障害典型群と特異的言語障害の併存が認められる発達性読み書き障害群に対して語流暢性課題を実施し,発達性読み書き障害児の語音想起力について検討した.対象児は小学校1,3,5年生の発達性読み書き障害児63名(典型例50名,特異的言語障害併存例13名)と通常学級在籍児151名である.語頭音を「あ」と「か」に指定した語流暢性課題を実施した.通常学級在籍児群と比較して全学年で語頭音指定語流暢性課題の成績が低かったのは,発達性読み書き障害/特異的言語障害併存群のみであった.語流暢性課題の成績には音声言語の発達が関与しており,言語発達障害のない典型的な発達性読み書き障害児は,語流暢性課題では問題を示さないと考えられた.

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  • 三盃 亜美, 宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人
    57 巻 (2016) 3 号 p. 287-293
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    小学校6年生典型発達児245名を対象に,漢字単語音読の正確性について,配当学年,一貫性,親密度と心像性の効果を検討した.誤読率に関して上記の効果を検討するために,「改訂版 標準 読み書きスクリーニング検査(STRAW-R)―正確性と流暢性の評価」における漢字単語126語の音読課題を実施し,単語属性が統制された単語を抽出して解析した.配当学年×一貫性,配当学年×親密度,配当学年×心像性の交互作用がそれぞれ有意だったことから,1)一貫性効果と親密度効果は配当学年の低い単語に比べ高い単語に対してより大きい,2)心像性効果は配当学年の高い単語に対してのみ有意である,3)配当学年の効果は高心像語に対して認められないという3点が示された.配当学年が低い単語と高い単語それぞれの一貫性効果,親密度効果,心像性効果を検討することで,非語彙処理や語彙処理の発達を把握することが可能ではないかと思われた.

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  • 前田 秀彦, 西澤 典子, 武市 紀人, 本間 明宏, 前田 昌紀, 玉重 詠子, 米本 清
    57 巻 (2016) 3 号 p. 294-304
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    bone anchored hearing aid(Baha®:骨固定型補聴器)のチタニウムインプラントと圧電式加速度ピックアップ(骨固定型ピックアップ)を利用した頭蓋振動検出システムを構築し,発話者音声を皮膚経由しない直接骨導音として検出を試み,以下のことを明らかにした.1)頭蓋骨の振動実験において,直接骨導音導出系では,20 dBHL以上の入力があると入力の増加に伴い出力はほぼ線形的に増加し,1000-4000 Hzの高周波数帯域においても経皮骨導音導出系で見られた大きな出力の減衰は見られなかった.2)文章朗読時の直接骨導音のlong time averaged spectrum(LTAS:長時間平均スペクトラム)は,経皮骨導音と比較して1000 Hz以上の高周波数帯域の信号成分の減衰が少なく,気導コンデンサマイクロホンと比較して約0-10 dB程度の差であった.3)単音節を用いた受聴明瞭度試験により,経皮骨導音と直接骨導音の間に母音部分の正答率に有意差が認められ(p<.01),直接骨導音では,経皮骨導音で見られた異聴傾向が認められなかった.

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症例
  • 三盃 亜美, 宇野 彰, 後藤 多可志, 井上 恭子, 松本 裕子
    57 巻 (2016) 3 号 p. 305-311
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    漢字書字が困難だという訴えがある高度難聴児1名に良好な音声単語の長期記憶力を活用した漢字書字練習法を適用したので報告する.先行研究の発達性書字障害のある健聴例同様に,音韻能力と視覚性の記憶力の双方が低かった一方,音声単語の長期記憶力は良好だった.通常の書いて覚える方法(視覚法)と,漢字の構成要素を音声言語化して覚えるという音声言語の長期記憶力を活用した方法(聴覚法)で漢字書字練習を行い,その練習効果を比較した.練習期間直後と2週間後で,両方法による成績が練習開始前よりも有意に高かった.しかし,4ヵ月後では,視覚法の成績は練習開始前と有意差は認められなくなった一方,聴覚法の成績は,2週間後と同様に,練習開始前よりも有意に高かったことから,聴覚法の練習効果の有意な持続性が認められた.漢字書字が苦手な難聴児においても音声単語の長期記憶力が良好な場合には聴覚法による漢字書字練習が有効ではないかと思われた.

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  • 三盃 亜美, 宇野 彰
    57 巻 (2016) 3 号 p. 312-320
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    学校関係者に難聴を疑われたことのある発達性読み書き障害児を経験したので報告する.読み書きおよび神経心理学的検査結果と読み書き指導を通し,本児の発達性読み書き障害の背景要因となったと思われる認知障害構造を考察するとともに,難聴を疑われることになったと思われる認知的要因を考察した.本児は,全般的知的機能と言語発達に遅れはないが,発達性読み書き障害が認められた.視覚認知障害と重度の音韻障害の双方によって発達性読み書き障害が生じていたのではないかと思われた.また音韻表象の脆弱さによる音韻障害が原因となって難聴を疑われ耳鼻咽喉科を受診するにいたったのではないかと思われた.学校関係者などに難聴を疑われ,聴覚障害の有無を確認しに耳鼻咽喉科を受診する可能性のあることに留意して,発達性読み書き障害の専門家と耳鼻咽喉科が連携を取り,発達性読み書き障害発見につなげていく必要があるのではないかと思われた.

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