初期の時間,位置や場所を表示する語の獲得は動作語の獲得との関連が指摘されてきた.そこには,子どもの日常生活における認知や遊びの発達との関連性が考えられるが,その点についての資料は少ない.本研究では,定型発達の子どもの初期の時間,位置や場所を示す語の獲得が進む2〜3歳の時期に注目し,家庭における認知・遊びの発達との関連性を検討した.研究協力者は,保育所に在園する子どもとその保護者で,保護者にマッカーサー乳幼児言語発達質問紙(CDI)と家庭での認知・遊びの発達に関する調査に縦断的に回答してもらった.生後23ヵ月時から36ヵ月時のCDI「語と文法」における動作語,時間,位置や場所を表示する表出語彙得点と家庭での認知・遊びの諸変数との相関分析の結果,時間,位置や場所を表す語の獲得は動作語の獲得や家庭での認知・遊びの発達における「人の行為の表象化」「物での構成遊び」や「空間理解」との関連が示唆された.
慢性咳嗽に対する治療として,咳嗽症状の改善を目的とした行動療法であるspeech and language therapy(SLT)が推奨されているが,これまで本邦におけるSLTの実践報告はない.本研究では慢性咳嗽患者に対してSLTを施行し,その効果を多角的に検討した.2019年1月から2020年7月の間に,呼吸器内科医と耳鼻咽喉科医によって咳嗽の原因となりうる疾患に対して適切な治療を施行しても,咳嗽が出現してから8週以上症状が持続する慢性咳嗽患者9例を対象とした.咳嗽に関する教育,咳嗽のコントロール,喉頭の衛生,心理教育カウンセリングで構成されるSLTを,8週で4回の通院をベースとして施行し,治療前後でLeicester Cough Questionnaire(LCQ),Japanese version of Newcastle Laryngeal Hypersensitivity Questionnaire(J-NLHQ),Gスコア,MPT,VHIは有意に改善した.LCQの改善率は約77.8%であり,J-NLHQの改善率は約66.7%であった.GERD-Qは有意な改善が認められなかったが,効果量は大を示した.SLTによる多角的な喉頭機能の改善は,咳嗽治療の奏功に寄与している可能性がある.
二重声とは,聴覚的に異なるピッチが同時に聴覚される音声とされる.聴覚印象,もしくは喉頭ストロボスコピー検査やハイスピードカメラにより左右声帯振動の非対称性が観察される.
今回出生後から嗄声を認め,聴覚的に二重声を認める児を経験した.喉頭内視鏡検査で啼泣時に披裂部が前傾して声門部分を覆うような所見を認め,声門部分と声門上の2ヵ所が音源になっていることで二重声をきたしていると考えた.二重声の評価として,音響分析器を用いて啼泣時の音声を解析,周波数ヒストグラムで2峰性の基本周波数を確認した.成長とともに二重声は消失し周波数ヒストグラムも二峰性から一峰性となった.新生児の嗄声の評価として聴覚印象とともに音響分析が有用であった.