日本泌尿器科学会雑誌
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82 巻, 3 号
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  • 丸茂 健
    1991 年 82 巻 3 号 p. 361-371
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    免疫療法がヒトの癌の治療に応用され始めてから四半世紀が過ぎた. 泌尿器科領域の腫瘍に対しても, 腫瘍ワクチン, 種々の免疫賦活剤, インターフェロン, サイトカインなどによる多くの試みがなされ, 表在性膀胱癌, 腎細胞癌など一部の腫瘍においては免疫療法が中心的な役割を果たすまでになった. しかし, 最近のバイオテクノロジーの発達によって量産が可能となったインターフェロン, インターロイキン2なども当初の期待とは異なり, 単独では十分な効果を発揮しないこともわかってきた. これまでに得られた貴重な研究成果をもとに, 免疫機構の解析にそって, これらを組み合わせていくことが治療成績を向上させるために必要である.
  • 村上 房夫
    1991 年 82 巻 3 号 p. 372-377
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂内圧上昇時における腎盂尿逆流動態の特性を検討するため, 以下の実験を施行した. 体重3kg前後の日本白色家兎40羽を用い, 腎盂内に double lumen と single lumen のカテーテルを挿入固定し, PSP溶液で腎盂内を潅流しながら, 潅流時における腎盂内圧を記録し同時に, PSPの血中濃度と対側腎尿中のPSP濃度を経時的に測定した.
    血中PSP濃度は, 潅流開始後1ないし2分以内に最大となり, 以後徐々に減少しある一定のレベルにとどまった. 一方, 尿中PSP濃度も血中濃度より1ないし2分の位相差はあるものの同様の変化を示した. PSP濃度の血中, 尿中の経時的変化 (逆流曲線) は, 早期成分と後期成分から成り立っていると考えられた. 早期成分は, PSP東濃度が急速に最大に達し, 指数関数的に減少する相であり, 後期成分は, 低値で持続する平衡状態の成分であった.
    早期成分のPSP最大濃度は腎盂内圧上昇速度に依存していた. すなわち, 尿中PSP最大濃度は腎盂内圧上昇速度 (dp/dt) と非常に良い相関があった. 後期成分のPSP濃度は腎盂内圧の絶対値にも上昇速度にも依存しなかった.
    早期成分は, 腎盂内圧に依存することから受動輸送と考えられた. 又, 後期成分は1種の能動輸送と考えられるが今後の検討を要すると思われた.
  • 外来通院下で実施できる検査食
    井口 正典, 梅川 徹, 際本 宏, 片山 孔一, 石川 泰章, 児玉 光正, 高村 知諭, 高田 昌彦, 加藤 良成, 片岡 喜代徳, 郡 ...
    1991 年 82 巻 3 号 p. 378-387
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ESWLの出現により尿路結石症に対する治療法は大きく変化し, 入院期間は著明に短縮された. そのため結石の発生原因に関する精査を完全に実施することは難しく, 過カルシウム (Ca) 尿症の原因すらも十分に検討されていないのが実状である.
    そこで外来通院下で実施可能な検査法 (検査食) を考案し, 結石発生原因のスクリーニング法として利用できるか否かについて検討した. 対象は男子上部尿路結石症患者24名で, 17名の男子健康成人を対照とした. 結石患者の自由食下と検査食下の尿中結石関連物質排泄量を比較すると, 検査食摂取により尿中尿素窒素, 尿酸, ナトリウム, リン排泄量は著明に減少し, 対照群と差を認めなくなった. 自由食下に過Ca尿症 (300mg/day以上) を呈した9症例中6症例は検査食摂取によって正Ca尿症となり, これらの過Ca尿症は食事性過Ca尿症と考えられた. 1例は検査食を摂取してもCa排泄量はまったく変化せず, 腎漏出性過Ca尿症と考えられた. 残る2例は検査食摂取によってCa排泄量は減少したものの依然として過Ca尿症が持続し, 腸管からの過吸収による過Ca尿症または腎漏出性過Ca尿症に, 食事性過Ca尿症が加味されたものと考えられた.
    以上の結果から, 本法は外来通院下に簡便に過Ca尿症のスクリーニングを行えるばかりか, 栄養学的にバランスのとれた検査食を体験させるこてで食事指導にも応用できる有用な方法であると思われた.
  • 吉原 秀高, 安本 亮二, 岸本 武利, 仲谷 達也, 前川 たかし, 宮尾 洋志, 竹垣 嘉訓, 前川 正信
    1991 年 82 巻 3 号 p. 388-394
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1989年12月から1990年3月の間, 前立腺肥大症8例に尿道ステント (PROSTAKATH®) を留置した. 8例中6例は慢性尿閉のため数ヵ月以上カテーテルを留置されていた症例であり, 2例は残尿の多い症例であった. 尿道ステントはスチール製で金メッキが施され外径21Frである. 外来で尿道粘膜麻酔下に6~7Fr尿管カテーテルをガイドワイヤーにして経腹的超音波下に約10~15分で留置可能である. 結果は留置成功7例, 留置不成功1例, 2ヵ月後に膀胱内移動した症例が1例であった. 膀胱内移動したステントは内視鏡的に除去し, 再留置した. 留置に成功した7症例はすべて留置直後より自排尿があり, 残尿は殆ど認めなかった. 副作用は尿道不快感1例, 切迫性尿失禁1例であったが経過観察中に軽快した. 尿道内ステント留置術は外来で容易に施行できる前立腺肥大症に対する侵襲の殆ど無い優れた治療法であると考える.
  • 中野 悦次, 岩崎 明, 瀬口 利信, 菅尾 英木, 多田 安温, 松田 稔, 園田 孝夫
    1991 年 82 巻 3 号 p. 395-404
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行腎癌例14例に対して lymphokine-activated killer (LAK) 細胞と interleukin-2 (IL-2) 併用による免疫療法を施行した. 2単位/mlのIL-2で3~4日間培養されたLAK細胞を週に1~2回静脈内に投与した. あわせてLAK細胞投与開始日から1,000単位のIL-2を1日に1~2回経静脈的に投与をおこなった. LAK細胞ならびにIL-2総投与量はそれぞれ0.8×1010から6.9×1010コならびに3.3×104から21.4×104単位であった. LAK細胞投与による副作用として, 頭痛, 悪寒戦標, 発熱および白血球増多が全例にみられた. またIL-2によるものとしては軽度の発熱, 軽度体液貯留, 好酸球増多がみられた. 縦隔リンパ節ならびに骨転移巣は本療法に対して反応はみられなかったが, 肺転移巣のみ有していた9例のうち3例にPRが認められた. PRがみられた3例のうち1例は残存した肺病巣を外科的に摘除することにより, tumor free にすることができたが, 肺転移巣摘除後10ヵ月目に脳転移があらたにみられた. 残り11例のうち3例に本療法施行中あるいは後に脳転移がみられた. さらに, 本療法に有効な症例を in vitro の自己腫瘍細胞を標的にしたLAK活性の程度から予知しうるか否かについても6例において検討を加えた. しかしながら, in vitro のLAK活性と臨床効果との間には一定の相関は得られなかった.
    本免疫療法はCRが得られなかったものの, 14例中3例にPRが認められたことから, 腎癌特に肺転移巣に対しては有効であると言えよう. しかし, 本免疫療法は脳転移を惹起する可能性のあることも念頭に入れておかなければならないものと考えられる.
  • 岩田 英信, 寺戸 隆, 金 昌弘, 西尾 俊治, 竹内 正文, 松本 充司
    1991 年 82 巻 3 号 p. 405-411
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中ヘパラン硫酸 (U-HS) と尿中コンドロイチン硫酸 (U-ChS) を2段階の陰イオン交換クロマトグラフィー (DE52とDowex 1×2) で分離・部分精製した. これらの尿中酸性ムコ多糖類 (GAG) と市販のヘパラン硫酸 (C-HS) およびコンドロイチン6硫酸 (C-C6S) のウロン酸含量はU-HS: 22.4%, U-ChS: 32.0%, C-HS: 41.6%, C-C6S: 36.0%であった.
    これらのGAGの蓚酸カルシウム結晶成長抑制活性を小出らの crystal-seed 法で測定し, さらに尿酸がGAGの結晶成長抑制活性に及ぼす影響についても検討した. U-HSもU-ChSもそれぞれの市販のものと同程度の抑制活性を有し, U-HSにより強い活性が認められた. 尿酸は両者の抑制活性を低下させ, 低下の度合いはU-ChSにおいてより高度であった.
    尿中GAGの分子量を Sephacryl S-300HR によるゲル濾過で市販のコンドロイチン6硫酸 (C6S; 分子量4万~8万) と比較した. C6Sは void volume より少し遅れて溶出した. U-ChSはC6Sよりかなり遅れて溶出したことから, その分子量はC6Sに比べてかなり小さいと考えられた. U-HSは2つのピークに分かれて溶出し, 最初のピークは void volume に一致して, あとのピークはC6SとU-ChSのピーク間に溶出した. この結果からU-HSの一部はプロテオグリカンの形で存在している可能性が示唆された.
  • とくに腫瘍核出術の適応と限界について
    畠 亮, 馬場 志郎, 橘 政昭, 出口 修宏, 実川 正道, 田崎 寛
    1991 年 82 巻 3 号 p. 412-419
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは単腎あるいは両側性に発生した腎腺癌10症例に対して腎保存手術を施行した. 症例の内訳は, 良性疾患による片側腎摘除術後の単腎に発生した腎腺癌2例と両側性発生の8例である. 後者のうち3例は非同時性, 5例は同時性発生であった.
    腎保存手術法のうち, 腎部分切除術施行例が3例, 腫瘍核出術が7例であった. 腎保存手術を in situ で行ったのは4例, 他の6例は ex vivo 手術後に自家腎移植をした.
    10例中現在生存中は4例で, 最短2年11月から最長5年6月になる. 死亡例は6例であるが, 切除不能だった1例と非癌死例の2例を除く3例の生存期間は最短3年, 最長8年8月であった. 切除不能だった1例を除く9例の実測生存率は, 1年89%, 3年89%, 5年63.6%であり, 非癌死例を除くと, それぞれ100%, 100%, 85.7%となった.
    手術後の局所再発が確認できたのは, 部分切除術3例中1例, 核出術7例中2例であった. 核出術後に局所再発を確認した2例は, いずれも同時性両側性発生例であり, 1側腎は全摘, 対側腎から多数の腫瘍結節を核出したあと, 自家腎移植をしたものである. 術後比較的早期から移植腎に再発を認めており, 再発というよりは, 残存腫瘍の再増殖であると考えられる. 多発性腫瘍における核出術の根治性に関する限界を示す反面, 質の高いQOLをもった生存期間を提供しうる点で優れた手術法であることが証明された.
  • 北海道における検討
    塚本 泰司, 熊本 悦明, 梅原 次男, 高木 良雄
    1991 年 82 巻 3 号 p. 420-426
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    北海道の三地区において前立腺集団検診を実施し延べ1,764人 (50歳以上) の受診者を得た. これらの受診者における前立腺癌, 前立腺肥大症の実態を調査した.
    1) 50歳以上の受診者1,764人中1.25% (22例) に前立腺癌が認められた. 発見された癌の68%は stage Bの早期癌であり, この頻度は通常医療施設を受診する前立腺癌のそれより著明に高かった. これらの結果は, 50歳以上を対象とした検診が, 他の集団検診 (胃癌, 子宮癌など) と比較しても効率良くかつ早期癌を発見していることを示していた.
    2) 中等度肥大以上の前立腺肥大症は受診者の10.0%に認められた. 排尿障害に関する自覚症状のアンケート調査から, 主に前立腺肥大症による自覚症状の出現は50歳頃より明らかになり加齢と伴に症状出現の頻度が上昇することが確認された.
    3) 直腸診および前立腺関連マーカー (PSA, γ-Sm, PAP) の測定を行った13例の前立腺癌のうち, 直腸診上前立腺に硬結を触れず, 前立腺関連マーカーの測定値の異常から前立腺癌が発見された症例が3例に認められた. この結果は前立腺癌の発見のためには前立腺関連マーカーの検索も有用であることを示唆するが, 検索するマーカーの種類, その測定費用などの問題があると考えられた.
  • 小川 秋實, 岡根谷 利一, 平林 直樹, 酒井 善之, 山口 建二, 石塚 修, 村石 修
    1991 年 82 巻 3 号 p. 427-432
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    外陰部・厳径部・仙骨部の悪性腫瘍 (Paget 病を含む) の根治的切除に伴う広範な皮膚欠損の9例, 外陰部放射線性潰瘍の1例, 陰嚢または鼡径部の癌性潰瘍の2例の計12例に対して薄筋筋皮弁 (10例) または大腿筋膜張筋筋皮弁 (2例) を用いて形成を行った. 癌性潰瘍の2例では,根治的切除不能であったため, 潰瘍面の被覆を意図して筋皮弁形成を行った. 術後, 筋皮弁皮膚の部分または全体の壊死が8例に生じ, そのうち4例は創感染を合併した. これらにはデブリードマン, 再縫合, または中間層植皮を要した. 根治的切除後の皮膚欠損 (9例) と放射線潰瘍 (1例) では, 最終的には皮膚欠損の補填ができた. 根治不能な癌性潰瘍の被覆を試みた2例では, 創感染を生じて創は治癒しなかった.
    創治癒後の合併症として, 運動障害を残す症例はなかったが, 1例で筋皮弁部に開口した外尿道口, 膣口に狭窄を生じ, 他の1例で肛門周囲を形成した筋皮弁が膨隆したままで排便困難と歩行困難を訴えた. 両者とも切開または切除により愁訴は消失した. これらの結果から, 筋皮弁形成は外陰部とその附近の広範な皮膚欠損の補填法として十分に有効な手技といえるが, 創治癒までに術後合併症が少なくないので, それへの対応が必要である.
  • 治療成績及び適応の検討
    小野 佳成, 佐橋 正文, 渡辺 丈治, 山田 伸, 上平 修, 平林 聡, 中野 洋二郎, 三宅 弘治, 大島 伸一
    1991 年 82 巻 3 号 p. 433-438
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1987年10月から1989年9月までに小牧市民病院泌尿器科にて Dornier 社製HM3型体外衝撃波破砕機を用い, 珊瑚状結石51例53腎に対し, 体外衝撃波破砕術 (ESWL) 単独療法を施行した. 結石の破砕に要した平均衝撃波数は6,092, 平均治療回数は2.1回であった. 破砕はシスチン結石の1例を除き全例で可能であり, 破砕率は98%, 最終治療終了3ヵ月後の完全除去率は55%, 6ヵ月後は60%, 9ヵ月後は64%であった. 合併症としては38℃以上の発熱が26例38回, イレウス, 腎被膜下血腫が2例2回, 消化管出血が1例1回みられた. 経皮的腎瘻造設を行った1例を除き, 全て保存的治療にて治癒した. Stein Straße に対する補助療法として16腎23回にESWL, 7腎7回に経尿道的尿管結石除去術を施行した. 結石成分からは尿酸, リン酸カルシウムを多く含む結石の完全除去率が高く, 腎盂腎杯の形態からは腎杯頚部の狭い拡張した腎杯を有する腎で残石が高く, 腎盂腎杯容量, 結石体積からはそれぞれ大きいものが残石率が高くなる傾向がみられた.
    完全珊瑚状結石に対する本術式による治療は open surgery や経皮的腎結石除去率とESWLとの combined therapy に比較して成績, 特に結石除去率で点で劣り, 現時点では本術式の適応に一定の制限を設ける必要が示唆された.
  • 岡田 康弘, 福崎 篤, 折笠 精一
    1991 年 82 巻 3 号 p. 439-446
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腸管を尿路として利用する際に, しばしば問題となる代謝障害の発症要因を明らかにするために, 犬回腸における尿成分の吸収動態を検討した.
    遠位の遊離回腸 (30cm) を膀胱に吻合した犬は腎機能が正常にもかかわらず1ヵ月後には軽度,6ヵ月後に著明なアシドーシスを呈した. 遊離回腸に停滞させた人工尿は60分間に注入量の平均66%, ナトリウム63%, カリウム80%, クローナル83%, リン68%, マグネシウム34%, 尿素窒素93%, クレアチニン56%, アンモニア97%が吸収された. カルシウムは注入量より回収量が21%増加した. 遊離回腸の絨毛の萎縮や平坦化などの組織学的変化にもかかわらずこの性質は6ヵ月間ほぼ不変であった. フロセミド投与により水や尿成分の吸収が抑制されたが, 尿素窒素とアンモニアの吸収はほとんど抑制されなかった. また遊離回腸内に人工尿を0.5ml/minで60分間流した結果, 注入量の59%, 各成分の50~86%が吸収され, 流量を増加させると人工尿成分の吸収率は減少した. 以上より回腸からの尿成分の吸収は高率かつ速やかで, 組織学的変化にもかかわらずその性質は長期間継続した. アシドーシスの防止には, 排尿回数あるいは尿量を増加させ, 回腸内の尿停先滞時間を短くすることが有用と考えられた.
  • 丸岡 正幸, 宮内 武彦, 長山 忠雄, 桑原 竹一郎
    1991 年 82 巻 3 号 p. 447-454
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    千葉県がんセンターで治療された睾丸原発腫瘍77例中, 25例に対し cis diamine dichloroplatinum (CDDP) を主体とした化学療法を施行した. このうち長期生存を得た3症例の反対側睾丸に組織型を異にする異時発生の睾丸腫瘍を経験したので, それらを報告すると同時にその発生の原因について考察した.
    症例1: 28歳. 初発は左 stage IIIOの yolk sac tumor. 放射線治療5年後に鎖骨上リンパ節転移出現し, 化学療法 (VP-16837mg, CDDP 1,050mg vincristine 32mg, bleomycin 480mg, actinomycin-D 16mg) 施行後CRを維持したが, 4年11ヵ月後反対側に seminoma, stage I出現し, 11年4ヵ月後に癌死した.
    症例2: 30歳. 初発は右 stage IIIAの teratoma. CDDP投与でCRを得たが投与開始から1年4ヵ月1,300mg投与の時点で反対側に seminoma, stage I出現し, 化学療法と放射線療法にも拘らず初発から8年2ヵ月で癌死した.
    症例3: 37歳. 初発は右 stage IIIOの seminoma と yolk sac tumor の混合腫瘍. CDDP投与でNEDを維持したが, 投与開始から6年5ヵ月後, 反対側に seminoma, stage I発生, 放射線療法を追加し初発から9年11ヵ月後の現在NED生存中.
    3症例の発生原因を考察し, その発生頻度, 転移の可能性, 上皮内癌の存在, 抗癌剤の影響を調べた. その結果共通の化学療法剤はCDDPであり, しかも大量の抗癌剤長期投与例では, 反対側睾丸に発癌の可能性があり, 少なくとも, 注意深い観察が必要であると考えた.
  • 岡田 清己, 吉田 利夫, 遠藤 真琴, 青木 豊, 池谷 知格, 吉川 哲夫, 平方 仁, 大井 知教, 小林 正喜, 清滝 修二, 佐藤 ...
    1991 年 82 巻 3 号 p. 455-461
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症に対する局所温熱療法は非観血療法の一つとして注目されているが, いまだその効果に関しては定まった評価はなされていない. このことより, われわれは前立腺温熱治療器“プリモス”を用いて33例の前立腺肥大症症例に温熱療法を試み, 自覚的症状, 他覚的所見の変化を客観的に分析し, その効果を判定した.
    治療方法は経直腸式に前立腺を1時間加温し, 週2回, 計10回施行した. 自覚的改善度判定のために各症状に点数を付け, その症状が施行前後でどのように変化するかを記載した. さらに, 他覚的には残尿測定, 尿流量測定により尿流の変化を, 前立腺触診, エコーにて前立腺の大きさの変化を測定した.
    その結果, 施行前後において著明な尿流の変化がみられたが, 前立腺の大きさには変化がみられなかった. 副作用を含めた総合評価では有用37%, やや有用33%で, 70%の有用率が得られた. 主な副作用としては肛門部の落痛であった. 以上より, 前立腺局所温熱療法は前立腺肥大症の非観血的療法とし有意義な治療法であるとの結論を得た.
  • 杉山 寿一, 伊藤 正也, 加藤 範夫, 佐橋 正文, 渡辺 丈治, 山田 伸, 上平 修, 水谷 一夫, 小野 佳成
    1991 年 82 巻 3 号 p. 462-466
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Dornier 社製HM3型 (以下従来型) と Dornier 社製HM3改良型 (以下改良型) での体外衝撃波尿路結石破砕術 (ESWL) による, 長径20mm以下の腎結石を対象とした治療成績を比較して報告した. 症例数は従来型98例, 改良型94例である. 改良型は従来型に比し, 衝撃波発射装置に改良を加え, 同一電圧でのピーク圧の30%の減弱, 回転楕円体の口径の拡大により第二焦点の縮小, 単位皮膚表面での圧力が減弱した. 従来型群では全例硬膜外麻酔が必要であったが, 改良型群では全例鎮痛剤の静脈注射のみで施行可能であった. 施行衝撃波数は改良型は900~6,000発, 2,863±1,234 (平均±S. D.) であり, これは従来型の1.55倍を要した. 結石は両機種とも全例で破砕可能であった. ESWL施行後3ヵ月での完全排石率は従来型群70.4%, 改良型群72.6%であった. 重篤な合併症は両機種とも認められなかった. さらにESWLによる腎障害の程度を検討するために, 両機種での術前後の尿タンパク量,β2MG, NAGの変化の差異も検討した. 改良型は従来型に比較し, 皮下出血は少なく, 尿タンパク量は少なく, これらの結果から, (1) 腎結石に対し, 改良型は十分な破砕力を有し, (2) 腎障害は従来型に比し改良型は軽度である可能性がある.
  • PAP・γ-Sm・PSAとの比較検討
    後藤 章暢, 水野 禄仁, 武中 篤, 川井田 徳之, 郷司 和男, 小川 隆義, 荒川 創一, 守殿 貞夫, 原田 健次, 広岡 九兵衛, ...
    1991 年 82 巻 3 号 p. 467-472
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌に対する血清 Basic fetoprotein (BFP) の臨床的意義を検討するとともに, 血清 Prostatic acid phosphatase (PAP),γ-Seminoprotein (γ-Sm) および Prostate specific antigen (PSA) との比較検討を行なった. 対象は前立腺癌40例で年齢は50歳から85歳, 平均69.5である. Clinical stage 分類に従えば, Stage Aが3例 (7.5%), Stage Bが10例 (25.0%), Stage Cが7例 (17.5%), および Stage Dが20例 (50.0%) であった. 血清BFP, PAP,γ-Sm, およびPSAの陽性率は各々60.0, 45.0, 63.6, 68.4%であった. 血清BFPの陽性率は stage が進行するとともに高率になった. 血清BFPは他の腫瘍マーカーと比べても有用なマーカーと思われた. 4種類のマーカーで combination assay をおこなったが, 一つ以上陽性であったものは87.9%あり, それぞれの single assay に比べて陽性率の向上が認められた. 前立腺癌の診断と monitoring における combination assay の有用性が示唆された.
  • 大西 規夫, 内田 亮彦, 際本 宏, 江左 篤宜, 杉山 高秀, 朴 英哲, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1991 年 82 巻 3 号 p. 473-480
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当教室で経験した神経因性膀胱に伴う二次性膀胱尿管逆流症 (secondary VUR) 患者20名に対し, 腎機能障害と尿路管理法について検討を行なった. 現在の尿路管理法としては7名は自排尿, 12名は清潔間欠的導尿法 (clean intermittent catheterization, CIC) で行なわれている. うち, 3名は一時的に尿路変更術が施行され, 成長を待って尿路変更復元手術が行なわれた. 残り1名は尿路感染をコントロールできず, 永久的尿路変更術を余儀なくされた. しかし清潔間欠的導尿法の導入, 普及により, それ以降尿路変更術は行なっていない.
    逆流防止術は22尿管に施行し, 19尿管で逆流は消失した. 逆流防止術未施行の12尿管中5尿管は逆流防止術を行なわずに逆流は消失し, うち2尿管は清潔間欠的導尿法のみで逆流が消失した. 残り2尿管は逆流が軽減し, 5尿管は逆流は存続しているが, 尿路感染や腎機能の悪化なく, 経過している.
    腎瘢痕や萎縮といった荒廃的, 器質的変化は多くの症例に認めたが, 蛋白尿や高血圧, 腎機能低下を示す症例は少数であった.
    膀胱機能と逆流, 腎機能障害については高度の低コンプライアンス膀胱症例に高度の逆流やレノグラム上, 機能低下型を示す傾向がみられ, 低コンプライアンス膀胱の逆流発生や腎機能障害への影響が示唆された.
    以上より, 神経因性膀胱に伴う二次性膀胱尿管逆流症では低コンプラアンス膀胱が逆流発生や進展, 腎機能障害の重要な因子であり, 逆流防止術を行なうより低コンプライアンス膀胱の解決が先決と考えられる.
  • 森 義則, 田口 恵造, 細川 尚三, 井原 英有, 島 博基, 島田 憲次, 有馬 正明, 生駒 文彦
    1991 年 82 巻 3 号 p. 481-487
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1974年から1989年までの16年間に兵庫医大泌尿器科で経験した先天性下部尿路通過障害の小児症例における遺尿症について検討した. 先天性下部尿路通過障害612例のうち139例 (22.7%) に遺尿症をみとめ, 疾患別では後部尿道弁の24.7%, 前部尿道弁の50.0%, 男児の先天性尿道リング狭窄の23.8%, 女児の先天性尿道リング狭窄の19.9%に遺尿症がみとめられた. 先天性下部尿路通過障害における遺尿症は夜間遺尿のみでなく昼間遺尿をともなうものが多く, 膀胱機能検査では半数以上に膀胱利尿筋の過活動性がみとめられた. 手術により下部尿路通過障害を治療することにより, 約80%の症例において遺尿症の消失あるいは改善がみとめられた. 遺尿症は先天性下部尿路通過障害の重要な症状であり, 遺尿症を訴えて受診する小児患者のなかから先天性下部尿路通過障害をもつものをみつけ, これを適切に治療することは大切である. とくに, 昼間の尿もれや頻尿をともなうもの, 尿路感染の既往のあるもの, あるいは検尿で異常のある遺尿症例では精査が必要である.
  • 日比 初紀, 伊藤 浩一, 小野 謙三, 山田 芳彰, 下地 敏雄
    1991 年 82 巻 3 号 p. 488-491
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    62歳男性, 胸部X-Pの左肺異常影を指摘され, 種々検索にて左腎細胞癌の肺転移と診断された. 患者の強い手術拒否のためインターフェロン筋注等で外来にて経過観察中のところ約5ヵ月後, 呼吸困難・微熱を主訴として入院, 第10病日突然大量喀血にて死亡した. この喀血は, 腫瘍が大血管を取りまいており, 気管へ肺動脈が破綻したことによると思われた. 病理学的検索にて腎細胞癌 (Common type, clear cell subtype) に肺癌 (Oat cell carcinoma) の転移認めた非常に稀な重複癌であった.
  • 梅川 徹, 際本 宏, 井口 正典, 筒井 建紀, 長松 正章, 井手 辰夫, 石川 泰章, 片山 孔一, 高村 知諭, 栗田 孝
    1991 年 82 巻 3 号 p. 492-495
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍 (非セミノーマ, stage IIB) にて6年前に原発巣摘除ならびに後腹膜リンパ節郭清術を受け, さらに化学療法と放射線療法を受けた乏精子症患者に対して, 漢方薬を中心とした内服治療ならびに注射によるホルモン療法を行うとともに, 配偶者間人工受精を4年間にわたり計24回行い妊娠出産に成功し, 健康女児を得ることができた. 今後これら医原性の逆行性射精患者に対しての配偶者間人工受精は, その quality of life 特に妊孕能力の保持に有効であり, 今後益々その活躍の場が多くなるものと考えられる.
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