日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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84 巻, 9 号
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  • 本間 之夫
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1551-1572
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症に対して, 最近新しい治療法が次々と導入されてきている. 例えばレーザー切除術,α-blocker, 抗 androgen 剤, 温熱療法, 尿道ステント, バルーン拡張術などである. これらについて当科の治療経験の結果を基本として, その概要・有効性・問題点について述べた. またこれら新治療の有効性の判定において, 今まで十分注意が払われていなかったが, 実は重要であった種々の問題点が浮き彫りにされてきている. 例えば前立腺肥大症の重症度や治療の有効性の判定基準, 適切な治療法の選択方法などである. これらの問題点に対する解決の方向性についてもふれた.
  • 江左 篤宣, 大西 規夫, 際本 宏, 杉山 高秀, 朴 英哲, 栗田 孝
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1573-1579
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    健常者 (volunteer) 6例を対象に, 膀胱内圧測定を用いた膀胱の充満における外尿道括約筋筋電図の変化を Automatic decomposition electromyography (ADEMG) を用いて定量解析した. 膀胱内圧測定は媒体として炭酸ガス (100ml/min) を使用し, 筋電図針は同芯針電極 (0.07mm2) を使用した. 放電する運動単位活動電位 (MUP) は膀胱空虚時から出現し, 膀胱の充満に伴ってその数と個々のMUPの発射頻度は有意に増加した. MUPの振幅, 持続時間, 発射頻度の平均値は膀胱空虚時, 初発尿意時, 最大尿意時でそれぞれ206μV, 8.3msec, 5.4Hz, 246μV, 9.7msec, 7.3Hz, 277μV, 9.7msec, 7.2Hzであった. 外尿道括約筋による尿の禁制は神経筋単位の興奮により保持され, 参加するMUPの増加と個々のMUPの発射頻度の増加に基いていた. またADEMGは迅速な筋電図定量解析が可能であり, 今後外尿道括約筋筋電図法の一手段になると考えられた.
  • α1-刺激薬・遮断薬の影響
    江左 篤宣
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1580-1589
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿障害を有さない対照群7例, 下部尿路通過障害群7例, 括約筋協調不全群9例, 骨盤神経障害群7例を対象に膀胱内圧測定による膀胱の充満における外尿道括約筋筋電図の変化を Automatic decomposition electromyography を用いて定量的に解析した. 下部尿路通過障害群, 括約筋協調不全群は対照群と同様に膀胱空虚時に比べて最大尿意時, 最大膀胱容量時には参加する運動単位活動電位 (MUP) の数と個々のMUPの発射頻度は有意に増加した. MUPの振幅は各群において有意な差は認められなかったが, 持続時間は骨盤神経障害群が他の群に比較して延長する傾向にあった.
    膀胱充満時の外尿道括約筋筋電図に対するα1-刺激薬・遮断薬の影響を検討した. 前立腺肥大症群3例, 括約筋協調不全群4例に対して phentolamine (5mg静注), 骨盤神経障害群5例に対して norepinephrine (5μg/min持続静注) を投与した. phentolamine によって放電するMUPの若干の消失が認められたが, 無抑制収縮を有したパラプレジア患者のMUPは消失しなかった. norepinephrine を投与してもMUPの増加は得られなかった. また前立腺肥大症1例, 前立腺肥大症によるTUR-P後2例, パーキンソン症候群1例に対して陰茎背神経電気刺激によって誘発される外尿道括約筋筋電図に対する phentolamine の効果を検討した. 膜様部の圧は低下したが, 電気刺激によって誘発される収縮波と筋電図に有意な変化は認めなかった. 外尿道括約筋活動に対するα1-blockerの効果は尿道周囲部分への間接的なものが優位と考えられた.
  • 加藤 範夫, 杉山 寿一, 伊藤 正也, 小野 佳成, 山田 伸, 上平 修, 大島 伸一
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1590-1594
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    硬性尿管鏡挿入前にバルンダイレイターを使用し, 尿管口および壁内尿管を拡張後経尿道的尿管結石摘除術 (TUL) を施行した62尿管と, 拡張せずTULを施行した309尿管において, 結石除去率, 晩期合併症である尿管遠位端狭窄, 膀胱尿管逆流 (VUR) の頻度について検討した. 結石完全除去は拡張群で72.6%, 非拡張群で84.8%であった. 6ヵ月以上観察症例でTULに起因すると思われる尿管遠位端狭窄を, 拡張群では認めなかったが非拡張群では2.1%に認めた. 排尿時膀胱造影を拡張群33尿管, 非拡張群184尿管に施行し, 拡張群ではVURを認めなかったが非拡張群では17尿管 (9.2%) に認めた. この結果より, 硬性尿管鏡挿入前の尿管口および壁内尿管のバルン拡張はTULの晩期合併症の予防に有用であると思われた.
  • 前立腺肥大症患者との比較
    武田 正之, 高橋 等, 筒井 寿基, 郷 秀人, 波田野 彰彦, 米山 健志, 玉木 信, 斉藤 和英, 佐藤 昭太郎, 笹川 亨, 坂田 ...
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1595-1601
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    6名の悪性腫瘍による尿道狭窄の患者 (MA群, 平均年齢82.7歳, 前立腺癌5例, 直腸癌尿道浸潤1例) と27名の前立腺肥大症患者 (BPH群, 平均年齢80.1歳) において, Polyurethane 製 Intraurethral catheter (IUC, 16Fr) を留置し, その効果を比較した. 全例尿閉であり, 尿道バルーンカテーテルを留置されていた. 経過観察期間はMA群で2~9 (平均6.5) ヵ月, BPH群で6~23 (平均8.5) ヵ月であり, 年齢, 観察期間には有意差はなかった. MA群は全例が根治手術の適応外であり, 手術以外の原疾患に対する治療も併用した. BPH群は, 全例が種々の合併症のために外科的治療が困難であり, かつ内科的治療によっても自排尿が不可能であった. MA群では全例で観察期間中継続的にIUCが機能し, BPH群では27例中16例 (59.3%) が継続的に機能したが, 成功率では両者間に有意差はなかった. MA群のうち2例では原疾患の増悪のために亡くなるまでIUCは継続的に機能した (7ヵ月, 9ヵ月). IUCが機能していたにも関わらず8ヵ月目に抜去せざるを得なかった1例では, IUCへの結石付着等は見られなかった.
    以上より, 長期予後の期待できない悪性腫瘍による男子尿道狭窄に対して, IUCはBPHに対すると同様に有効な排尿コントロール手段であることが分かった. ただし, 何らかの手段により, 腫瘍の増殖をある程度抑制することが不可能な症例に対する適用は難しいかも知れない.
  • Staphylococcus epidermidis によるマウス腎・膀胱内定着について
    牧角 和彦
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1602-1610
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    臨床分離株の Staphylococcus epidermidis 8株を用いて, 莢膜保有の有無, slime 産生能, マウス致死性, 莢膜血清型別, プラスチック固相への付着および腎細胞, 膀胱上皮細胞への付着について検討した.
    これらの菌株のマウス腹腔内攻撃では, 莢膜保有3株はマウス致死性を示したが, slime 産生2株および莢膜非保有3株は, マウス非致死性であった. マウス致死性株を電顕的に観察したところ, 明らかな莢膜の存在が見られたが, マウス非致死性株では莢膜は見られなかった. 一方, プラスチック固相への付着は slime 産生株が莢膜保有株よりも高い値を示した. また, 膀胱上皮細胞への直接の付着率は莢膜保有株が slime 産生株よりも高い値を示したが, 腎細胞への付着では菌株間に差はみられなかった. また, マウス静脈内および膀胱内へ107 colony forming units の生菌を接種し各臓器への定着性についても検討した. マウス膀胱内直接接種による生菌数の消長では, 莢膜保有株は腎では28日後, 膀胱では21日後まで生菌が検出されたが, slime 産生株及び莢膜非保有株では腎で7日後, 膀胱では3日後まで残存したにすぎなかった. 一方, 静脈内接種では, 各菌株間に顕著な差は認められなかった.
    以上の結果から, 莢膜保有株は slime 産生株および莢膜非保有株に比べ, 膀胱への定着性が高いことが示唆された.
  • 井坂 茂夫, 島崎 淳, 赤座 英之, 宇佐美 道之, 古武 敏彦, 金武 洋, 内藤 誠二, 平尾 佳彦, 本間 之夫, 大橋 靖雄
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1611-1617
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌の臨床治験において, QOLを評価することが重要であると認識されるようになってきた. しかし日本においては前立腺癌患者のQOLを評価するための適当な方法が確立されていない. 我々はEORTCの質問票の日本語訳を用いて前立腺癌患者のQOLを評価することを試み, 合わせてその信頼性と妥当性を評価した. 36例について自己記入により調査した. この方式の信頼性はテスト-リテスト再現性の検討結果から裏付けられた. 調査結果は患者のPSや臨床病期と良く相関したので, 妥当性も良好であると判断された. QOLの調査結果から, この患者群では性生活面での障害が著明であることが判明した. 身体的機能, 疾患に関連した症状, 疲労や倦怠感などの要素は疾患の活動性や臨床病期と密接に関連した. この質問票を用いて前立腺癌患者のQOLを測定することの有用性が確認されたので, 今後は治療によるQOLの変動を観察していく必要がある.
  • 小野 佳成, 加藤 範夫, 絹川 常郎, 佐橋 正文, 松浦 治, 平林 聡, 山田 伸, 大島 伸一
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1618-1623
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1991年7月より私共が経験した laparoscopic nephrectomy を施行した14例14腎の手術成績及び14例目の腎腫瘍例に施行した新しい手術方法について報告した. はじめの13腎13例は萎縮腎あるいは水腎症であり, その原因疾患は尿路結石, 膀胱尿管逆流症, 腎動脈狭窄症, 腎盂尿管移行部狭窄症, 尿管異所開口で, 腎の大きさは平均9×5×4cmであった.
    既に報告した方法で手術を行ったが, 膿腎症であった1例1腎では周囲との強度の癒着のため腎の摘出に失敗した. 3例3腎に出血, 結石の脱出がみられ, ともに開腹手術にて脾摘, 被膜への小動脈結紮, 結石の摘出を行った. なお, 脾摘例は膿腎症であった. 腎腫瘍例を除く平均手術時間は5時間2分, 平均出血量は650mlであり, 手術から退院までの期間は平均11日であった. 腎腫瘍例に対しては, 側腹部に作製した5つの操作孔より, 腎, 副腎, 腎周囲脂肪織ともに Gerota 筋膜に被われたまま en bloc にて摘出した. 合併症はなく, 手術時間は6時間19分, 出血量は450ml, 退院までの期間は7日であった. 腫瘍は2.5×2×2cm, 腎細胞癌G2, PT1で摘出腎重量は310gであった. 本手術は minimally invasive surgery になりうると考えられた. 現時点で, 膿腎症は本手術の適応外とした方がよいこと, また, リンパ節転移を伴わない小さな腎腫瘍は本手術のよい適応となることが示唆された.
  • 蓮井 良浩, 西 昇平, 北田 真一郎, 長田 幸夫
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1624-1628
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌患者55例の癌組織中 urokinase-type plasminogen activator (u-PA) 量と予後との検討を行った. u-PA抗原量で8ng/mg of protein 以上と未満の high u-PA群と low u-PA群の2群に分けて検討した. high u-PA群27例の生存率は1年88.9%, 3年42.6%で, low u-PA群28例の1年100%, 3年87.3%と比べ有意に低値を示した (p<0.005). high u-PA群の頻度は grade の上昇やpTの進行ととも増加していた. grade 2および3の症例で, high u-PA群の生存率は low u-PA群に比べ有意に低かった (p<0.025). pTaおよびpT1症例の high u-PA群の生存率も low u-PA群よりも有意に低く (p<0.005), pT2よりpT4の症例においても high u-PA群の生存率は低値であった. u-PA量, grade, pTの予後に及ぼす影響を多変量解析すると, 3者とも同程度の影響を及ぼしていた. また high u-PA群は脈管侵襲陽性を伴う頻度が37%で, low u-PA群の7.1%に比べ有意に高かった (p<0.05). 以上の結果より, 膀胱癌の予後は脈管侵襲など他の予後規制因子とu-PA量が深く関わりながら決定されていると思われ, また grade やpTだけでなく, 膀胱癌のu-PA量を測定することも予後を知る上で重要と考えられた.
  • 森田 隆, 安藤 正夫, 木原 和徳, 松村 剛, 釜井 隆男, 大島 博幸
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1629-1634
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    α1受容体は, 競合阻害薬やアルキル化剤の chloroethyclonidine (CEC) を用いて2つのサブタイプ (α1Aとα1B) が区別されている. CECに影響されないサブタイプ (α1A) は選択的に平滑筋の細胞膜のCaチャンネルを通過するCa2+の流入を高めることが知られている. そこで, 私達は phenylephrine により惹起されたヒト前立腺腫, ウサギ大動脈, 膀胱, 尿道平滑筋の収縮に対するWB4101, CEC, verapamil の効果を調べ, それらの組織のα1受容体のサブタイプを検討した. WB4101の前処置により, ヒト前立腺腫, ウサギ大動脈, 膀胱, 尿道平滑筋の phenylephrine による dose response curve (DRC) は著明に右方へ変位し, verapamil 投与により最大収縮は著明に抑制された. CECはヒト前立腺腫の phenylephrine によるDRCだけを右方へ変位し, 他のDRCには有意に影響しなかった. WB4101に対するpA2はヒト前立腺腫において他の組織よりも有意に小さかった. これらの事実から, α1受容体を介する収縮機能にはヒト前立腺腫ではα1A1Bの両方のサブタイプが, ウサギ大動脈, 膀胱, 尿道ではα1Aのみが関与していることが推察された.
  • 林 祐太郎, 津ヶ谷 正行, 平尾 憲昭, 増井 靖彦, 大田黒 和生
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1635-1642
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍が疑われた12例13精巣にMRIを術前に施行し, 手術所見および組織所見と比較して以下の結論を得た.
    1. 正常精巣は陰茎海綿体と同レベルの信号強度であり, T1強調画像では中程度の信号強度, T2強調画像では高信号強度に描出され, 均一な内部像を呈した.
    2. 精巣腫瘍は10例で, T1強調画像で10例中8例が正常精巣と同様, 中程度の信号強度で均一な内部像を呈した. T2強調画像では正常精巣とは異なり, 4例は低信号強度で均一な内部像を呈し, 6例はさまざまな信号強度から成る不均一な内部像を呈した.
    3. 精巣腫瘍の局所浸潤 (T分類) に関するMRI診断と病理診断の一致率は70% (7例/10例) であった.
    4. 理学的所見や検査データから精巣の良性疾患と悪性腫瘍の鑑別が困難な3例にMRIを施行した. 2例は悪性腫瘍が否定できず外科的治療を行ったが, 組織学的に悪性像は認められなかった. 陰嚢内疾患の手術適応の決定において, MRIはいまだ中心的役割を有するとはいえないが, 臨床経過, 理学的所見, 超音波検査などの補助診断として有用であると思われた.
  • 住吉 義光, 井上 善雄, 秋山 昌範
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1643-1648
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ホルマリン固定・パラフィン包埋膀胱癌標本を用い, proliferating cell nuclear antigen (PCNA) を免疫組織学的に検出することにより細胞増殖能を測定し, その結果を病理組織学的所見および臨床経過と対比, 検討した. PCNAと grade の関係において, G1例では (-) が半数であったのに反し, G3例は14例中10例が (+++) であった. Grade が高くなるに従いPCNA検出率も増加した (p<0.05). PCNAと stage では, 表在性膀胱癌14例中6例が (-) であったが, 浸潤性膀胱癌28例全例 (+) 以上であり, stage が進行するほどPCNAは増加し, 統計学的にも有意であった (p<0.05). 表在性膀胱癌の再発とPCNAの検討では, 一定の関連性は認められなかった. 浸潤性膀胱癌に対する neoadjuvant chemoradiotherapy 前後のPCNAの変化と予後との関係では, 治療後検出率の低下群の5年生存率が86%であったのに対し, 変化しなかった群と増加群では30%であった (p<0.01). これらの結果より, PCNAは治療効果判定の指標として有用であることが示唆された.
  • 森田 隆, 安藤 正夫, 木原 和徳, 松村 剛, 釜井 隆男, 大島 博幸, 土谷 順彦, 近藤 俊
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1649-1654
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト膀胱体部平滑筋, 精管および前立腺腫の収縮張力に対する endothelin-1 (ET-1) の作用を調べた. ET-1はヒト膀胱平滑筋, 精管および前立腺腫の切片を濃度依存性に収縮させた. ET-1, 10-6Mの引き起こす収縮は, 膀胱では carbachol, 3×10-5Mの引き起こす収縮の30%, 精管では norepinephrine, 10-4Mの引き起こす収縮の40%であったが, 前立腺腫では phenylephrine, 10-5Mの引き起こす収縮にほぼ匹敵するものであった. ET-1の引き起こす収縮は tetrodotoxine, atropine, phentolamine, propranolol および indomethacine のいずれによっても抑制されなかった. これらの事実はET-1が下部尿路性器の平滑筋に対し収縮作用を有し, 特に前立腺に対してはα受容体刺激剤にも匹敵する強い収縮作用を有することを示唆している. 又これらの収縮作用は自律神経受容体や prostaglandine を介さない直接作用であると考えられた.
  • 成人精巣腫瘍との相違について
    柏木 明, 永森 聡, 豊田 健一, 前野 七門, 小柳 知彦
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1655-1659
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1973年から1992年迄に治療を行った小児精巣腫瘍 (ヨークサック腫瘍9例, 奇形腫8例) についてホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて now cytometry による核DNA ploidy 解析を行い, これまでに報告してきた成人型精巣腫瘍との相違を比較検討した. 成人型では96%の症例がDNA aneuploid を示したのに対し小児型ではヨークサック腫瘍9例中6例及び奇形腫8例全例がDNA diploid, 他のヨークサック腫瘍3例はDNA tetraploid, すなわち全例がDNA euploid を示し, 成人型に多く見られた triploid 周辺のDNA aneuploid は検出されなかった. 胚細胞性腫瘍のなかで小児精巣腫瘍は臨床的には low stage 例が多く予後良好なこと, 組織学的にはヨークサック腫瘍と奇形腫のみでセミノーマや複合組織型は見られないことなど成人精巣腫瘍とは様々に異なる性格をもつことが知られているが, 今回の分析からはその核DNA ploidy パターンについても成人型と小児型は大きく異なることが明らかになった. このことは成人の精巣胚細胞性腫瘍が減数分裂を行っている造精過程の胚細胞より発生するのに対し, 小児精巣腫瘍は胚細胞の分化が開始される以前の原始生殖細胞より腫瘍化したものであるという, その発生起源の相違に由来しているものと考えられた.
  • 木村 和哲, 高橋 正幸, 奈路田 拓史, 入口 弘英, 宮本 忠幸, 川西 泰夫, 沼田 明, 湯浅 誠, 田村 雅人, 香川 征
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1660-1664
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Nitric oxide (NO) は, 広汎な情報を伝達するメッセンジャーとして注目されている. NOは内皮依存性弛緩因子としてグアニル酸シクラーゼを活性化させ, 細胞内c-GMP濃度を上昇させることにより血管平滑筋の弛緩をもたらすなど, 数多くの生体反応に関与している. そこで, 今回は陰茎勃起に伴う陰茎海綿体平滑筋の弛緩が, このNOによるものであるかどうかを, 薬理学的に検討した. ノルアドレナリンで前収縮させた陰茎海綿体を electrical field stimulation (EFS) すると, 非アドレナリン―非コリン性 (non-adrenergic non-cholinergic: NANC) の弛緩反応が生じ, その反応は frequency-dependent なものであった. NOの合成酵素の阻害剤であるNG-ニトロ-L-アルギニンの前処理によって, この弛緩反応は有意に阻害され, 逆に, L-アルギニンの添加によりその弛緩反応は回復した. また, ヘモグロビンの添加によってこの弛緩反応は阻害され, グアニル酸シクラーゼの阻害薬であるメチレンブルーによっても減弱した. これらの結果より, 陰茎海綿体の弛緩は, NANC神経刺激によって遊離されたNOがグアニル酸シクラーゼを介し, c-GMPを増加させ, 生じていると考えられた. すなわち, ヒト陰茎海綿体においても, NOがNANC神経の神経伝達物質の一つであり, 勃起の発現にNOが重要な役割を果たしていると考えられた.
  • 閉塞原因と手術成績の検討
    松田 公志, 六車 光英, 小松 洋輔, 堀井 泰樹, 野々村 光生, 小倉 啓司, 吉田 修
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1665-1674
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    不妊症を主訴とする精路閉塞症患者46例に顕微鏡下精管精管吻合術または精巣上体精管吻合術を施行したのでその治療成績を検討した. 3ヵ月以上経過を観察できた42例の閉塞原因は, 精管切断術7例, 鼠径ヘルニア手術15例, 精巣上体炎5例, Young 症候群3例, その他12例で, 両側閉塞28例, 片側閉塞14例であった. 再手術を9例に要したが, 最終的に吻合開通率, 精液所見正常化率, 妊娠成立率はそれぞれ83.3%, 21.4%, 31.0%であった. 精管精管吻合術および精巣上体精管吻合術の吻合成功率は, それぞれ57.7%, 78.3%であった. 術後成績に影響する因子について検討したが, Young 症候群, 閉塞期間10年以上, 術中精子が確認できない症例, 血清FSH高値, 精路奇形の合併例などで手術成績不良であったが, 血清抗精子抗体は関与しなかった. 精管あるいは精巣上体での精路閉塞症例では顕微鏡下再吻合術により高い確率で妊孕性を回復することができた.
  • 郷 秀人
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1675-1680
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1992年1月から11月にかけ, 副腎腫瘍患者8例に対し, 腹腔鏡下に副腎摘除術を施行した. 右側2例, 左側6例で, 内分泌非活性腫瘍の1例を除き残り7例はいずれも原発性アルドステロン症であった. 術前画像診断による腫瘍の大きさは, 10~20mmと比較的小さいものばかりであった. 手術は, 5ないし6本のトロッカーを刺入し行った. 全例患側副腎を摘除することができた. 手術時間は2時間45分から9時間32分 (平均4時間53分) であった. 術中重篤な合併症はなく, 出血も平均207mlと少なく, 輸血を必要とした症例はなかった. 術後の回復は開放性手術に比べ, かなり早く, 順調であれば, 第1病日に経口摂取し, 遅くとも第3病日までには歩行を開始した. ある程度腹腔鏡操作に慣れていれば, 本術式は安全に行える手技であり, 患者への侵襲も少なく, 非常に有効な方法と思われた.
  • 川上 理, 河合 恒雄, 米瀬 淳二, 山内 民男, 石橋 啓一郎, 上田 朋宏
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1681-1684
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌研附属病院にて1970年から1992年までにホルモン不応性あるいは抵抗性となった前立腺癌で尿路閉塞症状あるいは血尿を呈した10例に, 前立腺原発巣に対する対症的放射線治療を施行した. 1例で38Gy, 7例で30~27Gyの予定線量を原発巣に外照射した. これら8例のうちカテーテル留置状態であった5例ともにカテーテル抜去が可能となった. 高度の血尿で膀胱タンポナーデを起こした4例で治療後血尿が消失した. 照射の効果は死亡直前まで, あるいは照射開始後11ヵ月経過した最終観察時点まで持続した. 他の2例は全身状態の悪化のため20Gy以下で照射中止となり, 明らかな効果を認めなかった. 照射の副作用は軽微であった.
    これらの結果は, 対症的照射としての至適線量が30Gy前後にあることを示唆する. 効果の確実性, 永続性, 侵襲度, 副作用を勘案すると, 前立腺癌ホルモン治療後の局所再燃に対する対症療法として, 本法は適した治療法である. 患者の quality of life を維持するためには対症的放射線治療を開始する時期の決定が重要であり, われわれの経験からはホルモン抵抗性が確認され, 原発巣再燃による症状が増悪したら速やかに開始するのがよいと思われる.
  • 前澤 浩明, 小松 秀樹, 古屋 徹, 多胡 紀一郎, 上野 精
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1685-1689
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1983年10月から1990年9月までの7年間に山梨医科大学附属病院泌尿器科で治療した新鮮前立腺癌のうち, 臨床病期A1とD2症例並びに他臓器との重複癌症例を除いた50例で, 前立腺癌の再燃について検討した. 初期治療として, 臨床病期A2からB2までに対しては原則として根治的前立腺全摘除術と骨盤内リンパ節郭清術, 両側除睾術を施行し, 臨床病期Cに対しては両側除睾術と staging lymphadenectomy を施行してリンパ節転移が無ければ前立腺局所への外照射を, あれば一部の症例に化学療法を加えた. 全身状態不良の場合や患者の同意が得られない場合, 及び臨床病期D1に対しては両側除睾術を施行した. 平均観察期間41ヵ月で50例中11例が再燃した. 11例中10例は再燃と診断された時点で局所再燃を有しており, いずれも初期局所治療を施行されていなかった. 10例中2例は遠隔転移も同時に発見されたが, 6例は期間をおいて遠隔転移が出現し, 2例は観察期間内に遠隔転移の出現を見なかった. 残りの1例は前立腺全摘除術を施行されており, 再燃は遠隔転移の出現のみで局所再燃を認めなかった. 臨床病期D2を除く前立腺癌の再燃は, 局所から始まり易い傾向があり, 初期治療に前立腺局所に対する直接的治療を加えることによってその予後が改善される可能性があると考えられた.
  • 川西 泰夫, 高橋 正幸, 奈路田 拓史, 宮本 忠幸, 沼田 明, 湯浅 誠, 香川 征
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1690-1693
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    性交経験のない35歳の動脈性インポテンスの症例に陰茎の血行再建術を施行した. 本症例は高血圧, 動脈硬化症, 糖尿病など血行障害をきたす既往症を持たないが, プロスタグランディンE1の海綿体内投与による勃起反応は不良で, カラードップラー検査にて動脈血流の指標である peak systolic velocity の低下 (18cm/sec) を認めた. また, 血管造影検査では digital subtraction angiography (DSA) にても左の陰茎背動脈以外の血管の描出を認めなかった. これらの検査結果より動脈性インポテンスと診断し, 血行再建術を行った. 手術は Hauri の方法にしたがって拡大鏡下に陰茎背動脈と深陰茎背静脈を側々吻合し, ここに下腹壁動脈を端側吻合した. さらに深陰茎背静脈は中枢側で結紮, また亀頭の hyperemia を防ぐために深陰茎背静脈の亀頭への枝を3本結紮した.
    術後のカラードップラー検査では peak systolic velocity が53cm/secと正常化し, プロスタグランディンE1海綿体内投与による勃起反応は正常となった. 術後15日目に性交が可能となり, 術後4月目の現在も性交可能な状態が継続できている.
    本邦における Hauri 法による陰茎血行再建術の第1例目と思われる.
  • 梶川 恒雄, 石倉 功一, 萬谷 嘉明, 藤岡 知昭, 久保 隆
    1993 年 84 巻 9 号 p. 1694-1697
    発行日: 1993/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨肉腫の腎転移が臨床的に問題となることは, 極めて稀である. 今回, 私どもは右大腿骨の骨肉腫で右下肢切断術後3年で左腎転移が出現し, 腎摘出術を施行した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    患者は, 1989年16歳で右下肢切断術を, 1991年, 右肺転移に対し右肺上葉切除術を施行された. 1992年, 左腎転移, 左肺転移が出現し, 左腎摘出術, 左肺上葉切除術を施行された. 予後の改善により今後, 骨肉腫の肺, 骨以外の転移が増加することが予想され, 骨シンチ等を用いた転移巣の検索の必要性が示唆された. また, 転移巣の積極的摘出は患者の Quality of life の改善につながると考えられる.
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