(背景と目的) 単純性腎嚢胞に対する治療として, 種々の経皮的硬化剤注入療法が試みられ, その有効性はほぼ確立している. 今回, 硬化剤としてエタノールと塩酸ミノサイクリンを使用し, その有用性について両者を比較検討した.
(対象と方法) 対象は, 1985年1月から1995年8月までの間に, 岡山大学泌尿器科にて単純性腎嚢胞と診断された症例のうち, 治療が行われた30例33嚢胞である. 超音波ガイド下に経皮的穿刺吸引後, エタノールあるいは塩酸ミノサイクリン注入療法を施行した.
(結果) 有効率はエタノール群, 塩酸ミノサイクリン群でそれぞれ100%, 90.9%であった. 嚢胞の推定容量から算出した縮小率は, それぞれ91.2±13.1%, 83.2±28.5% (mean±SD) であった. 副作用は, エタノール注入群のみで認められ, その内訳は, 注入時疼痛2件, 術後疼痛8件, 酩酊感3件であった.
(結論) エタノール注入療法は, 有効性において優れているものの, 副作用が多く, また, 注入後に回収を要するなど手技がやや煩雑である. 一方, 塩酸ミノサイクリン注入療法は, エタノール注入療法に比し, 有効性でやや劣るものの, 安全性, 簡便性において優れており, 本疾患に対する第一選択の治療に成り得ると考えられた.
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