日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
89 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • adhesin と biofilm について
    後藤 俊弘, 大井 好忠
    1998 年 89 巻 3 号 p. 389-398
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 上皮細胞株の成長因子と成長因子受容体に関する検討
    田丁 貴俊
    1998 年 89 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) SV40を用いてラット前立腺背側葉初代培養上皮細胞を形質転換し, 安定な上皮細胞株 (PESVH) を樹立した. 前立腺疾患の基礎的検討における本細胞株の特性をみるため, 成長因子およびその受容体について検討した.
    (方法) [3H]-チミジン取り込み法によるDNA合成活性を指標としてEGF, aFGF, bFGF, KGF, TGF-α, TGF-β1およびアンドロゲン添加の影響を検討した. また, PESVH細胞から poly (A) RNAを抽出, 精製し, EGF, bFGF, KGF, TGF-α, TGF-β1, EGFR, FGFR1およびTGF-βR (Type II) mRNA発現の有無, アンドロゲン添加の影響についてノーザンブロット法を用いて検討した
    (結果) 各種濃度のaFGF, bFGF, KGF, TGF3α, TGFβ1による細胞増殖に対する効果は有意ではなかったが, 100ng/ml EGFの添加によって有意な増殖促進効果が認められた. TおよびDHTの添加はこの細胞の増殖に影響しなかった. また, TGF-α, TGF-β1, EGFRおよびTGF-βR (type II) のmRNAがそれぞれ発現しており, これらの発現はアンドロゲン添加の影響を受けなかった.
    (結論) PESVH細胞は, アンドロゲン非依存性前立腺細胞のひとつのモデルとなりうると考えられた.
  • 山手 貴詔, 杉山 高秀, 花井 禎, 朴 英哲, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1998 年 89 巻 3 号 p. 406-412
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱尿管逆流症 (以下VURとする) に対する内視鏡手術の短期成功率は約7割と満足のいける結果である. しかし, 長期経過の報告は無く, 今回5年以上経過した症例の成績につき, 注入物質の状態や不成功の原因を中心に検討した.
    (対象と方法) 対象は1988年以後, TUIを施行した259尿管中術後5年以上経過した29症例41尿管とした. 注入物質は全例テフロンペーストで, 症例は男性6例女性23例, 検討期間は術後5~10年 (平均5.1年) であった. 検討方法は, 最終観察時, 逆流の有無を排尿時膀胱造影で, RIにより腎機能を評価, 注入物質の状態は経腹的膀胱超音波にて確認した.
    (結果) 一回の治療では逆流が消失したのは41尿管中30尿管, 73%であった. 再発したのは11尿管で, 再発までの期間は1~18ヵ月で平均6.5ヵ月. 10尿管は1年以内の再発であった. 最終観察時逆流の有無は, 39尿管中34尿管は術後平均5.9年経過しても再発はなかった. テフロンペースト注入後の残存は観血手術移行症例を除き39尿管中, 34尿管は充分に確認しえたが, 経過観察中の5尿管は確認できなかった. 腎機能は全例悪化症例はなかった.
    (結論) 不成功例は全例ペーストが確認されなかった事により本法の成功の是非はペーストの定着性である事がわかった. また再発の危険性を危惧する期間は術後1~1.5年の間が重要と考えられた.
  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 後藤 博一, 浅野 晃司, 牧野 秀樹, 波多野 孝史, 冨田 雅之, 阿部 和弘, 今川 健一, 木下 盛敏, ...
    1998 年 89 巻 3 号 p. 413-420
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 第6染色体短腕上に code されているTNF gene は多型 (polymorphism) である. 腎細胞癌患者のこれら遺伝子を解析し, その polymorphism と予後を中心とした臨床像との関連に関して検討した.
    (対象と方法) 73例の凍結末梢血白血球より genomic DNA を抽出し, PCR-RFLP を用いたTNF-α(NcoIにて消化+allele 1;α1/1, 消化-allele 2;α2/2, 消化+/-allele 3;α1/2) およびTNF-β(Ncolにて消化+allele 1;β1/1, 消化-allel 2;β2/2, 消化+/-allele 3;β1/2) polymorphism と各患者の予後を中心とした臨床像を検討した.
    (結果) 1) TNF-α,βpolymorphism の頻度: TNFE-α1/1 homozygote が71例 (97.3%) を占めた. 一方, TNF-βに関しては, TNF-β2/2が33例 (45.2%), TNF-β1/2が31例 (42.5%), TNF-β1/1が9例 (12.3%) であった. この比率は健常日本人のそれと差がなかった. 2) 予後との関連; 17年生存率を各TNF-βpolymorphism ごとに比較した結果, TNF-β1/1症例は全例生存しており, 他の zygote であった症例に比較して有意に生存率良好の結果であった.
    (結論) 腎細胞癌患者の第3染色体短腕に code されているTNF-βgene polymorphism と予後との関連において, TNF-β1/1を発現している症例は生存率が極めて良好であり, 腫瘍―宿主間の細胞性免疫能を考える上で重要な予後決定因子になると考えられた.
  • 兼松 明弘, 井上 貴博, 中野 匡, 清川 岳彦, 覧 善行, 日裏 勝, 橋村 孝幸
    1998 年 89 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌にたいするインターフェロンαの至適使用を目指し, 連日筋注とフルオロウラシル剤内服の併用療法を行いその効果を検討した.
    (方法) 7例の転移をともなう腎細胞癌患者にインターフェロンα300万単位連日筋注とフルオロウラシル剤内服併用療法を施行した. フルオロウラシル剤は5-FU200mgまたはUTF300-400mgを使用した.
    (結果) CR2例, PR3例NC1例PD1例であった. 効果の認められた症例は肺転移4例胸膜転移2例であった. 奏功するまでに要した期間は3~9ヵ月 (平均5.4ヵ月) であった. 2例で当初の転移病変に奏功し続けているにもかかわらず, 肺以外の臓器に新病変の出現を認めた. 全体として, 癌死2例, 他因死1例, 癌なし生存1例, 癌あり生存3例であった. 以上の7例では有意な副作用は認めなかった.
    (結論) 本療法は外来で施行可能であり, 肺, 胸膜病変にはかなりの効果が期待できる. PSが良く, 肺, 胸膜に転移が限局している場合にはまず外来レベルで試みられる方法と思われた. ただし奏功例でも, 他臓器病変の出現には注意を要する.
  • 遊離型と結合型PSAに対する免疫学的認識と標準物質の違いを中心として
    梅田 宏, 寿美 周平, 本田 幹彦, 細谷 吉克, 新井 京子, 矢野 雅隆, 古賀 文隆, 仲島 宏輔, 中西 公司, 前田 節夫, 北 ...
    1998 年 89 巻 3 号 p. 426-433
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) PSA測定キット間での抗体の免疫学的認識の違い, calibrator の組成と濃度の違いについて検討した.
    (方法) 血清検体を Sephacryl S-200にてゲル濾過法で分画し, Tandem-R, Delfia-PSA, Abbead PSA, ACS-PSA, Markit-M とγ-Sm測定キットで測定した. また同じく分画化した calibrator を Tandem-R にて測定した. 各PSAキットの calibrator およびACS-PSAの control serum を Tandem-R で測定し, 検量線を比較した.
    (結果) ゲル濾過にて血清は2つのPSAピークを示した. 分子量の大きさから97kDa付近で溶出されるピークがACT-PSA, 30kDa付近で溶出されるピークが free PSA と考えられた. Tandem-R, Delfia-PSA, Ab bead PSA はACT-PSAと free PSA に対し, 類似した免疫学的認識性を示したが, ACS-PSAはACT-PSAに比べて free PSA を強く認識しているとの結果が得られた. 一方 Markit-M は free PSA の認識が著しく弱く,γ-Sm測定法は主として free PSA を認識していた. Tandem-R, Delfia-PSA, Ab bead PSA, Markit-M の calibrator はいずれも free PSA のみで構成されていた. Tandem-R で測定した Delifia-PSA, Ab bead PSA, Markit-M の検量線はいずれも直線性を示し, それぞれの傾きは0.66, 0.93, 2.2を示した. Tandem-R で測定したACS-PSAの control serum は濃度により異なり0.22倍と0.25倍の2つを示した.
    (結論) PSA測定キット間で測定値が異なる原因は(1) ACT-PSAと free PSA に対する免疫学的認識の違い (2) calibrator の組成 (3) calibrator の濃度の違いによることが示された.
  • 谷口 光宏, 蓑島 謙一, 竹内 敏視, 酒井 俊助, 出口 隆, 河田 幸道, 佐藤 久美子, 原 明
    1998 年 89 巻 3 号 p. 434-440
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) ポリアミンは細胞増殖因子と考えられている. 血中ポリアミン値が膀胱腫瘍化学療法の有用な生化学的マーカとなるか否かを検討した.
    (方法) 浸潤性膀胱癌患者31例に, cisplatin, methotrexate および pirarubicin による化学療法後, 血中のジアミン, スペルミジン, スペルミンの3つのポリアミン濃度を測定した. 臨床効果はCTで化学療法3週後に判定し, また手術が施行された26例には組織学的治療効果判定を行った.
    (結果) 平均腫瘍縮小率は, 40.8%であった. 臨床効果ではPR以上の13例を有効とし, 組織学的治療効果判定では, Grade 2以上の9例を有効とした. 化療1週間後のスペルミン濃度および総ポリアミン量が, 有効群では無効群に比べ有意に低値を示した. 化療前の総ポリアミン量が42.3nmol/mlより低値であった症例に有意に有効症例が多くみられ, また化療1週間後の総ポリアミン量が16.5nmol/mlより低値となった症例に有意に有効例が多くみられた.
    (結論) 血中ポリアミン値は膀胱癌の化学療法の効果のモリタリングの有用な生化学的なマーカーであると示唆された.
  • 梅田 弘幸, 嘉村 康邦, 石橋 哲, 山口 脩
    1998 年 89 巻 3 号 p. 441-444
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    多精巣症は極めて稀な奇形で現在まで約70例が報告されているのみである. 我々は4個の精巣を持つ多精巣症に合併した胎児性癌を経験したので報告する. 多精巣症に合併した悪性腫瘍は5例, また4個の精巣を持つ多精巣症は3例報告されているのみである. 停留精巣や精巣念転などの手術時や他疾患にて泌尿器科受診時に偶然発見されることが多いことを考えると, 泌尿器科受診の機会がなく, 生涯診断されない多精巣症が少なからず存在することが予想される. 多精巣症が高い悪性素因を有するかどうかは明かとなっていないが, 多精巣症は停留精巣を伴うことが多く, また, 停留精巣は精巣腫瘍の発症率が高いことを考えると, 多精巣症は余剰精巣の摘出または生検により, 厳重な経過観察が必要と思われる.
  • 小林 一樹, 石塚 榮一, 岩崎 晧, 斉藤 竜一
    1998 年 89 巻 3 号 p. 445-448
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    現在ESWLは上部尿路結石治療の第一選択になっている. 治療症例数の増加に伴い, いろいろな副作用が報告されている. 今回我々は右腎結石のESWL後に肝被膜下血腫を経験した. これは, 我々の知りうる限りでは本邦2例目であり文献的考察を加え報告する.
    症例は63歳女性,右腎結石に対しソノレス3,000で14KV2,800発のESWLを施行した. ESWL前の血液検査では血小板の軽度低下と肝機能異常を認めたが, 凝固異常は認めなかった. ESWL後, 自覚症状はなかったが, 術後通常の検査として行っているエコーで, 肝被膜下血腫が発見された. その後血腫の増大を認めなかったため, 保存的に経過観察し, ESWL後11日目で退院となった. 肝被膜下血腫は約5ヵ月で消失した.
    尿路結石ESWL後の肝被膜下血腫は非常に稀であり文献的考察を加え報告する.
feedback
Top