(目的) SV40を用いてラット前立腺背側葉初代培養上皮細胞を形質転換し, 安定な上皮細胞株 (PESVH) を樹立した. 前立腺疾患の基礎的検討における本細胞株の特性をみるため, 成長因子およびその受容体について検討した.
(方法) [
3H]-チミジン取り込み法によるDNA合成活性を指標としてEGF, aFGF, bFGF, KGF, TGF-α, TGF-β1およびアンドロゲン添加の影響を検討した. また, PESVH細胞から poly (A) RNAを抽出, 精製し, EGF, bFGF, KGF, TGF-α, TGF-β1, EGFR, FGFR1およびTGF-βR (Type II) mRNA発現の有無, アンドロゲン添加の影響についてノーザンブロット法を用いて検討した
(結果) 各種濃度のaFGF, bFGF, KGF, TGF3α, TGFβ1による細胞増殖に対する効果は有意ではなかったが, 100ng/ml EGFの添加によって有意な増殖促進効果が認められた. TおよびDHTの添加はこの細胞の増殖に影響しなかった. また, TGF-α, TGF-β1, EGFRおよびTGF-βR (type II) のmRNAがそれぞれ発現しており, これらの発現はアンドロゲン添加の影響を受けなかった.
(結論) PESVH細胞は, アンドロゲン非依存性前立腺細胞のひとつのモデルとなりうると考えられた.
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