日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 12 号
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  • 正常随意排尿と不随意括約筋弛緩の検討
    海法 康裕, 浪間 孝重, 内 啓一郎, 中川 晴夫, 相沢 正孝, 折笠 精一
    1999 年 90 巻 12 号 p. 893-900
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 球海綿体反射の誘発電位反応 (BCR-EP: evoked potential of bulbocavernosus renex) を用いて, 尿排出時 (横絞筋性尿道括約筋の弛緩時) の仙髄反射活性の検討を試みた.
    (対象と方法) 正常男性17例を対象にして, 膀胱空虚時と随意排尿時のそれぞれに, 陰茎背神経を電気刺激し, 尿道周囲横絞筋から導出したBCR-EPを測定した. つぎに, 不随意の括約筋弛緩 (IVSR: involuntary sphincter relaxation) を伴う神経因性膀胱男性3例について, IVSRによる尿失禁時と排尿意図下の尿排出時にBCR-EPを測定し, 随意と不随意の括約筋弛緩時の仙髄反射活性の違いについて検討した.
    (結果) 正常例では膀胱空虚時に安定したBCR-EPを認め, 随意排尿時に消失した. しかし, 随意排尿時でも刺激を増大するとBCR-EPが出現した. 神経因性膀胱例では, IVSR時に明瞭なBCR-EPが認められたが, 膀胱空虚時に比して振幅が若干減少していた. 排尿意図下では, 振幅が更に減少していた.
    (結語) 正常症例では排尿時にBCR-EPは相対的に抑制された状態にある. IVSR例ではIVSR時のBCR-EPの抑制は不完全で, 排尿意図下にはIVRS時に比し明らかに抑制された. 以上より, 排尿時のBCR-EPにより正常随意排尿が確認でき, 病的括約筋弛緩との客観的鑑別の可能性が示唆された.
  • 佐藤 英一, 新井 浩樹, 後藤 隆康, 三浦 秀信, 本多 正人, 藤岡 秀樹, 浦岡 孝子, 辻本 正彦
    1999 年 90 巻 12 号 p. 901-905
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱上皮内癌に対するBCG膀胱内注入療法の有効性について検討した. また同療法における有効性の予測について, 施行前の自然尿細胞所見により分析を試みた.
    (対象と方法) 1991年から1997年までに経験したBCG膀胱内注入療法のみを行った33例について分析した. BCGは週1回毎, 6から12回膀胱内に注入した. 上皮内癌の分類は原発性, 続発性, 随伴性とした. また有効性の予測については, 施行前の自然尿細胞所見を点数化し検討した. 男性27例, 女性6例, 年齢は46~91歳 (中央値71歳), 原発性9例, 続発性15例, 随伴性9例, 観察期間は9~90ヵ月 (中央値30ヵ月) であった.
    (結果) 有効例は22例 (67%) であり, 有効例は全例で経過観察中は再発を認めなかった. また細胞の出現様式と大型核細胞の出現を点数化した両者の和と治療効果との間に有意差がみられた.
    (考察) 膀胱上皮内癌に対するBCG膀胱内注入療法の有効性は確認された. 治療効果は, 施行前自然尿細胞所見, 特に細胞の出現様式と大型核細胞の有無により, 予測し得る可能性のあることが示唆された.
  • 経腹腔的前方到達法
    溝口 裕昭, 大野 仁, 江本 昭雄, 今川 全晴
    1999 年 90 巻 12 号 p. 906-910
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌患者に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術における経腹腔的前方到達法の有用性を評価する.
    (対象) 1997年6月から1999年5月までに当科にて腹腔鏡下根治的腎摘除術が施行された腫瘍径7cm以下の腎細胞癌患者10例 (男8, 女2) を対象とした. 臨床病期はT1aN0M0 6例, T1bN0M0 4例.
    (方法) 初期の4例には術前腎動脈塞栓術を行った. 全身麻酔下に経腹腔的前方到達法による腹腔鏡下根治的腎摘除術を行った. この手術手技は開放手術による根治的腎摘除術と同様, 早期に腎血管に到達できる方法である. 腎は副腎を含め Gerota 氏筋膜外で剥離し, 内視鏡下に袋に回収, 皮膚切開を延長して細切せず一塊として摘出した.
    (結果) 2例は開放手術に変更された. 腹腔鏡下に手術できた8例の平均手術時間は247分, 平均出血量は258ml. 腹腔鏡下手術に関連した合併症は特に認められなかった.
    (考察) 腹腔鏡下 (経腹腔的) 前方到達法は関放手術と同様, ほとんど腎に触れることなく早期に腎動静脈に到達できる. 腎動静脈を処理した後, 尿管を処理, 腎下極を持ち上げて腎全周の剥離を進めるので manipulation による腫瘍の播種の危険性は非常に低い.
    (結論) 経腹腔的前方到達法による腹腔鏡下根治的腎摘除術は開放手術と同様腎茎部処理を先行させうることからT1以下の腎癌に対する第一選択肢になりうる正当かつ有用な術式と思われる.
  • 国際勃起機能スコア (IIEF) を用いた検討
    丸茂 健, 長妻 克己, 村井 勝
    1999 年 90 巻 12 号 p. 911-919
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 性機能に影響を与える危険因子についての検討が, これまで様々な方法でなされている. 著者らは質問紙法を用いて, 加齢と疾病が男性性機能に与える影響を検討した.
    (方法) 通常の日常生活を送る男性1,020例を対象として, 国際勃起機能スコア (International Index of Erectile Function, 以下IIEF) 質問紙を用いて男性性機能を評価し, 各疾病の有無と加齢が勃起機能, 極致感, 性欲, 性交の満足度, 性生活全般の満足度の尺度となるスコアに与える影響を検討した.
    (結果) 有効回答は967例 (94.8%) であった. 回答をもとに分散分析法を用いて解析を行ったところ, 高血圧症, 心臓病などの循環器系疾患, 糖尿病, 高脂血症が50歳代の男性において勃起機能に有意な影響を与えることが示された (p<0.05). これらの危険因子を有する対象を除外し, 健常と考えられた男性において, 加齢が勃起機能, 極致感, 性欲, 性交の満足度に有意に影響することが示されたが (p<0.001), 性生活全般の満足度に影響するものではなかった (p=0.146).
    (結論) 従来より勃起障害の危険因子考えられていた疾病と加齢が男性性機能に影響を与えることを質問紙法の結果から示した. IIEFは勃起障害を治療する際の治療効果の評価のみならず, 各種疾病または生活習慣などが勃起機能に与える影響を検討するための, 疫学的検討にも有用であると考えられた.
  • 辻本 裕一, 岡 聖次, 野口 智永, 藤井 孝祐, 宮川 康, 高野 右嗣, 安永 豊, 高羽 津, 菅野 展史
    1999 年 90 巻 12 号 p. 920-923
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は32歳, 男性. 1997年6月頃から排尿困難を自覚し, 肉眼的血尿もときに認めた. DIP, CTにて, 右腎が左腎の下極へ変位し, 融合していた. 右尿管は脊椎と交叉していた. 左尿管下端には結石を含む cobra head 像を認めた. 外表奇形は認めなかった. 左尿管瘤及び瘤内結石を合併した交叉性融合腎 (逆L型) の診断のもと, 経尿道的尿管瘤切開術を施行した. 尿管瘤は正中を超えていて, 瘤左側に憩室を認めた. 約2cmの横切開を加え, 7mmの結石 (シュウ酸カルシウム96%, リン酸カルシウム4%) を摘出した. 術後3ヵ月目のIVP, 排尿時膀胱尿道造影 (VCG) では尿管瘤は縮小し, VURも認めなかった. 交叉性腎変位には約5割の頻度で奇形が合併し, 中でも尿路奇形が約3割と高頻度であった. しかし交叉性腎変位本邦報告215例中, 尿管瘤合併例は自験例以外認めず, 本例は第1例目と思われた.
  • 川端 岳, 原口 貴裕, 岡本 恭行, 水野 禄仁, 前田 浩志
    1999 年 90 巻 12 号 p. 924-927
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性. 1995年10月, S状結腸憩室炎の穿孔による汎発性腹膜炎に対し開腹手術を受けた. 術後約1ヵ月目に尿瘻, 糞瘻および左水腎症が出現し, 左経皮的腎瘻造設術および人工肛門造設術が行われた. 画像診断にて左下部尿管に約1cmの断裂部が認められたため, 1996年7月18日, 内視鏡的再開通術を試みた. 順行性に挿入した尿管鏡の光を目標に, 逆行性に尿管鏡用生検鉗子で閉塞部組織を切除して行き, ガイドワイヤーを通過せしめた. 経尿道的再開通部切開術が不充分であったため, 9月26日, KTP第レーザーを用い充分な長さの尿管全層を切開することが出来た. 術後2年経過した現在, ステントフリーで再狭窄は見られず順調に経過している. 完全尿管閉塞に対する“cut-to-the-light-technique”および再開通部のKTPレーザーによる切開術は, 侵襲が少なく有用な術式であると考えられた.
  • 柏井 浩希, 河田 陽一, 平山 暁秀, 平田 直也, 百瀬 均, 塚田 周平, 林 邦雄, 山田 薫
    1999 年 90 巻 12 号 p. 928-931
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 男性. 無症候性肉眼的血尿で近医より紹介された. 膀胱鏡にて右尿管口からの出血を認めるも, 各種画像診断・尿管鏡で異常を認めなかった. その後も血尿は持続, やがて歯肉出血が出現した. 血液学的精査にて第VIII因子活性の低下及び第VIII因子インヒビターの出現を認めたため, 後天性血友病Aと診断, プレドニゾロン30mg/dayの投与を開始した. 治療開始とともに腎出血・歯肉出血は速やかに消失, 第VIII因子インヒビターの消失とともに第VIII因子凝固活性は正常化した. 以後, 外来にてプレドニゾロン漸減維持療法を行っているが経過良好である.
    血尿を来す疾患の鑑別診断に際し, 止血機能検査の重要性を再認識した.
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