日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 6 号
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  • 触知不能前立腺癌の発見
    山崎 春城, 吉越 富久夫, 小針 俊彦, 武内 宏之, 加藤 伸樹, 大石 幸彦
    1999 年 90 巻 6 号 p. 595-601
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 泌尿器科診療での前立腺癌発見における複数検査法について臨床的検討を行った.
    (対象と方法) 直腸診 (DRE), 経直腸的超音波検査 (TRUS) および前立腺特異抗原測定 (PSA) が同時に施行された有症状男性患者1,344例を対象とした. 検査陽性の場合は前立腺生検を行った.
    (結果) 3者併用検査で436例 (32.4%) が検査陽性で, 生検403例中121例 (30.0%) に前立腺癌が発見された. 癌発見率は全体で9.0%であった. 単独ないし2者併用検査を施行したならば癌121例中DRE単独では22例 (18.2%), TRUS単独では27例 (22.3%), PSA単独では18例 (14.9%), DRE・TRUS併用では12例 (9.9%), DRE・PSA 併用では6例 (5の%) の癌が見逃された(p<0.013). また22例(18.2%) は触知不能癌であった. 触知不能癌が局所癌 (病期B以下) である割合 (77.3%) は触知癌(28.3%) と比べて有意に高率で (p<0.001), また高中分化型腺癌である割合 (72.7%) も触知癌 (41.4%) と比べて有意に高率であった (p=0.008).
    (結論) 癌の見逃しをより最小限にするためには3者併用して相補的に検査する必要性が確認された. とくにDREでは診断されない触知不能癌が多く発見され, これは早期・治癒可能癌である傾向を示した. 泌尿器科診療における前立腺癌の早期診断に際して複数検査法の重要性が強調された.
  • 特に性別および偶発癌と有症状癌の比較を中心に
    野本 剛史, 中川 修一, 杉本 浩造, 三神 一哉, 浦野 俊一, 中村 晃和, 中西 弘之, 渡辺 泱, 前川 幹雄, 中尾 昌宏, 豊 ...
    1999 年 90 巻 6 号 p. 602-607
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌の予後因子を検討するため単変量解析を行った. また, 性別, ならびに偶発癌か有症状癌に関して, 背景因子をそろえて検討した.
    (対象と方法) 1976年1月から1992年12月までの17年間に初回治療した腎細胞癌182例を対象として, 各因子別に Kaplan-Meier 法による累積生存率を算出し, 一般化 Wilcoxon 検定で有意差の検討を行った.
    (結果) 単変量解析の結果, 予後因子として有意差を認めたものは性別・症状の有無・腫瘍径・T-Stage・静脈浸潤・異型度であった. 背景因子を比較した結果, 性別に関して, 平均年齢で男子の方が高いが, 他の項目に関しては違いは認められなかった. 有症状癌は偶発癌に比べて, 腫瘍径で有意に大きく, high stage, Grade 2のものが多かった.
    (結論) 60歳以上で, 女子は男子に比べて予後は有意に良好であった. また背景因子をそろえても, 偶発癌は有症状癌に比べて予後は良い傾向にあった.
  • 血清抗クラミジア抗体検査の有用性
    徳田 倫章, 熊澤 淨一, 内藤 誠二, 松本 哲朗, 小松 潔
    1999 年 90 巻 6 号 p. 608-613
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 男性不妊症患者における血清抗クラミジア抗体検査の有用性について検討した.
    (対象と方法) 男性不妊外来に受診した83例に対して, 一般精液検査と血清抗クラミジア抗体検査を行い検討した.
    (結果) 血清中の抗クラミジア抗体は, IgA抗体に関しては全症例83例中16例に陽性 (19.3%), IgG抗体は83例中10例に陽性 (12.0%) を認めた. IgAまたはIgG抗体の少なくともどちらか一方が陽性であったのは83例中20例 (24.1%) と, 高率に認めた. IgA抗体陽性群はIgA抗体陰性群に比し, IgG抗体陽性群はIgG抗体陰性群に比し, また少なくともどちらか一方が陽性であった群は両方とも陰性群に比し, 年齢, 精子奇形率に差はないものの, 精液白血球数と尿沈渣白血球数の増加ならびに精液量と精子数の低下傾向を認めた. スピアマンンの順位相関係数を求めると, 血清IgA抗体価ならびにIgG抗体価は, 精液中や尿中の白血球数と有意な正の相関を示した. また, IgA抗体価と精液量は有意な負の相関を示した. 調べ得た血液IgA抗体陽性症例8例中1例においては, 初尿PCR法によりクラミジア抗原が検出された. 配偶者は8例中2例が血清IgA抗体が陽性で, 子宮頸管PCR法陽性の症例を8例中1例に認めた.
    (結論) 血清中に抗クラミジア抗体が高率に存在し, 精液所見に影響をあたえている可能性があり, 不妊外来におけるクラミジア感染に対する診断ならびに治療の重要性を示唆するものと思われた.
  • 川口 俊明, 橋本 安弘, 小林 大樹, 工藤 誠治, 高橋 伸也, 柳沢 健, 三国 恒靖, 城戸 啓司, 工藤 達也
    1999 年 90 巻 6 号 p. 614-618
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 若年発症の膀胱癌症例の臨床的検討を行なった.
    (対象と方法) 1978年から1997年までの20年間に経験した30歳未満の膀胱癌8例 (男性7例, 女性1例) を対象とした. 10歳代が2例, 20歳代は6例であった. それらの患者の主訴, 診断法, 膀胱鏡所見, 治療法, 病理学的事項および予後について検討した.
    (結果) 最多の主訴は無症候性血尿で, 膀胱鏡所見は, 1例を除き乳頭状, 単発であった. 全例が表在性の移行上皮癌であり, 治療は経尿道的切除術 (TUR) が施行された. 20歳未満の患者の腫瘍は病理学的に grade 1または2であったが, 20歳以上の患者の2例に grade 3が認められた. これらの患者の死亡例はなく, その予後は良好であり, 再発率は12.5% (1/8) であった.
    (結論) 若年発症の膀胱癌の特徴として, 低深達度, 低異型度および予後が良好であることが挙げられた. しかし, 20歳以上の患者では, 病理学的に高異型度の腫瘍が含まれた.
  • 島袋 浩勝, 嘉川 春生, 米納 浩幸, 向山 秀樹, 与那覇 博隆, 外間 実裕, 宮里 朝矩, 菅谷 公男, 小山 雄三, 秦野 直, ...
    1999 年 90 巻 6 号 p. 619-623
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱瘤は膀胱頸部の過可動性が原因となり, 中高年の女性に発生する疾患である. 我々は膀胱瘤に対する手術法として, 手技が簡単で, 有用な手術方法 (膣円蓋前腹壁固定術) を考案し, 検討した.
    (方法) grade 2~4の膀胱瘤症例13例に対して, 膣円蓋前腹壁固定術を施行した. 全身麻酔あるいは腰椎麻酔下に砕石位にて行った. 下腹部正中切開あるいは横切開にて腹腔内に入り, 膀胱子宮窩を展開した. 膣円蓋部を露出させ, 同部の両側に数本のナイロン糸をかけ, 腹直筋前鞘に固定した. これにより, 膣円蓋部は腹直筋に固定され膀胱壁の下垂が防止された.
    (結果) 手術時間は15~110分 (平均73分) であった. 手術後2~43ヵ月を経過して, 13例中10例に再発は見られていない. 3例は再発し, そのうち2例は同方法で再手術したが, 1例は再々発した. 再発した3例のうち2例は grade 4の症例であった.
    (結論) 膀胱瘤に対する膣円蓋前腹壁固定術は, 特に高齢でハイリスクの症例に対して, 重大な合併症を来さずに行える有用な手術方法である.
  • 津島 知靖, 公文 裕巳, 大森 弘之, 古川 洋二, 田中 啓幹, 中原 満, 碓井 亞, 山本 光孝, 内藤 克輔, 平川 真治, 宮川 ...
    1999 年 90 巻 6 号 p. 624-632
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 中国・四国地区における stage I精巣腫瘍症例を集計し, 臨床統計学的に検討する.
    (対象と方法) 1984年1月より1992年12月までの9年間に中国・四国地区の46施設で治療された精巣腫瘍症例の内, stage I症例を集計した. 期間内に治療された精巣腫瘍は584例であり,病期分類はI:357例 (61.1%), II:114例 (19.5%), III:113例 (19.3%) であった. Stage Iの357例の内, 背景因子および予後の明らかな348例を検討の対象とした.
    (結果) 組織型はセミノーマが249例 (71.6%) であり, 非セミノーマが99例 (28.4%) であった. セミノーマ249例の術後補助療法としては予防照射138例 (再発4例, 癌死3例), 化学療法57例 (再発なし, 対側精巣腫瘍発生2例) が主なもので, 術後経過観察された症例は48例 (再発なし) であった. 非セミノーマ99例の術後補助療法としては, 化学療法が47例 (再発1例) に施行されており, 後腹膜リンパ節郭清術は6例に施行されたのみであった. 術後経過観察された症例は40例 (再発1例) であった. 全体として再発は8例 (2.3%) に認められ, セミノーマが4例 (セミノーマ症例の1.1%), 非セミノーマが4例 (非セミノーマ症例の4.0%) であった. 癌死例は3例 (0.9%) で, 3例とも術後予防照射が施行されたセミノーマ症例であった.
    (結語) Stage I精巣腫瘍症例の予後は良好であり, セミノーマと非セミノーマの比較では, 再発率は非セミノーマが高かったが, 癌死はセミノーマにのみ認められた.
  • 石井 龍, 竹内 文夫, 平塚 義治, 有吉 朝美
    1999 年 90 巻 6 号 p. 633-638
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 表在性膀胱癌に伴う dysplasia の臨床的意義について検討した.
    (患者と方法) TUR-Bt時に膀胱ランダム生検を行った表在性膀胱癌 (pTa, pT1) 62症例を対象とした. 生検の結果から, dysplasia (-), dysplasia (+), CIS (+) の3群に分類し, 再発率, 進展率および再発のタイプ (同所再発/異所再発) について比較した.
    (結果) ランダム生検の結果は, dysplasia (-) 群が42例 (68%), dysplasia (+) 群が17例 (27%), CIS (+) 群が3例 (5%) であった. 3群間の患者の背景因子には有意差はなかった. TUR-Bt後の1年, 2年, 5年の累積再発率は, dysplasia (-) 群でそれぞれ3%, 12%, 21%であるのに対し, dysplasia (+) 群ではそれぞれ37%, 51%, 67%であった (p<0.01). CIS (+) 群は, 3例中2例 (67%) がTUR-Bt後1年以内に再発し, dysplasia (+) 群よりも早期に再発していた. また dysplasia (-) 群は筋層浸潤に進展したものが1例もなかったのに対し, dysplasia (+) 群ではTUR-Bt後6年で57%が浸潤癌に進展した (p<0.001). 同所再発の発生率は dysplasia の有無と関連はなかったが, 異所再発の発生率は dysplasia (+) 群が47.1%, dysplasia (-) 群が2.4%と dysplasia (+) 群で有意に高率であった (p=0.0001).
    (結論) 表在性膀胱癌に伴う dysplasia は, TUR-Bt後の異所再発および浸潤癌への進展の重要な予知因子であると思われた.
  • 宮崎 淳, 簑和田 滋, 永島 泰準, 榎本 裕, 薬丸 一洋
    1999 年 90 巻 6 号 p. 639-642
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    未分化神経外胚葉性腫瘍 (primitive neuroectodermal tumor, PNET) は神経冠発生の充実性腫瘍であり, 発生部位として, 中枢神経系, 軟部組織等が知られているが, 近年になり腎にも発生することが報告されている. 腎原発のPNETはきわめて稀で, 今回我々は, 多発肺転移を伴うPNETの1例を経験したので報告する. 症例は35歳, 男性. 主訴は肉眼的血尿. 1996年1月肉眼的血尿が出現. CTで右腎に最大径8cmの low density な充実性腫瘍, MRIでT1強調で低信号, T2強調で高信号な腫瘍を認めた. 右腎腫瘍の診断で同年2月5日, 右根治的腎摘出術を施行した. 病理組織学的には腫瘍細胞は充実性に増殖した小型の細胞で, 免疫組織化学的染色でCD 99に陽性であった. 以上から右腎原発のPNETと診断した. 術前から径約1cmの肺転移が右下肺野に2ヵ所確認されていたが, 術後3ヵ月で肺転移数が著明に増加した. cyclophosphamide, doxorubicin, cisplatin による化学療法CAP療法を開始し, 3クール後には肺転移は消失, 完全寛解を得た. 寛解後7ヵ月で, 後腹膜腔に最大径約10cmの腫瘍が再発した. 後腹膜腫瘍摘出後, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, cisplatin, VP-16によるCAV/PE療法を2クール行うも効果なく, 術後24ヵ月目に癌死した.
  • 吉田 哲也, 米瀬 淳二, 吉川 慎一, 金 泰正, 塚本 哲郎, 福井 巌, 石川 雄一, 岩井 武尚
    1999 年 90 巻 6 号 p. 643-646
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    31歳男性. 右腰部痛を主訴に腹部CTにて下大静脈を包み込む13cm大の後腹膜腫瘍を指摘され, 当科を紹介された. 左鎖骨上に拇指頭大の腫瘍, 右精巣上部に小指頭大の硬結を触れると共に, LDH, AFP, hCG-βの高値を認めたため, 右精巣腫瘍の診断のもと高位精巣摘除術を施行した. 肺, 肝, 骨には転移を認めなかった. 以上より右精巣腫瘍 (複合組織型) N3M1 (LYM) の診断で, まずイホマイド, エトポシド, シスプラチンの3剤併用化学療法 (VIP) を施行した. 鎖骨上リンパ節転移は消失し, 腫瘍マーカーの正常化を認めたが, 4コース後にも後腹膜リンパ節の残存 (10cm大) を認めたため後腹膜リンパ節郭清術を行った. 術前の予想通り腫瘍と下大静脈は強固に癒着していたため, 治癒切除を目的として下大静脈合併切除を施行した. また, 術前の下大静脈造影にて側副血行路の形成を認めなかったため人工血管置換術を行った. 病理学的に腫瘍はほとんど壊死を呈し, ごく一部に奇形種の残存を認めた. 術後, 重篤な合併症を認めず, 18ヵ月経過した現在腫瘍の再発なく下大静脈の疎通性も良好である.
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