日本泌尿器科学会雑誌
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91 巻, 5 号
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  • エストロゲン貼付剤単剤での検討
    松本 成史, 杉山 高秀, 花井 禎, 大西 規夫, 朴 英哲, 栗田 孝
    2000 年 91 巻 5 号 p. 501-505
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 更年期障害はその病因の一つとしてエストロゲンの欠乏が重要視されており, 多くの不定愁訴はエストロゲンを補充することにより改善する. 頻尿, 尿失禁の下部尿路症状を主訴とする閉経後女性にエストラジオール貼付療法の効果について検討した.
    (対象と方法) 頻尿, 尿失禁を訴え, 明らかな泌尿器科的・神経学的異常を認めない閉経後女性10名 (54~83歳) を対象とした. 今回は, エストラジオール (エストラダーム TTS®2mg, 隔日投与) 貼付療法単独で検討を行い, 効果判定は投与前と8週間にわたる投薬終了時における自覚症状の変化を中心に行った. 本研究はコントロールをおかず, 非盲検法にて検討した.
    (結果) 尿失禁症例は7例で, その結果は尿失禁重症度分類では, 全例 grade down を示し, 尿失禁治療効果判定では“著効”3例,“改善”2例,“やや改善”1例,“不変”1例であった. 頻尿症例は3例で, 全例不変であった.
    (結論) 今回の研究は, 症例数も10例と少なく, また短期投与の結果だけで, 明確な有効性を示すことは困難だが, 閉経後女性の尿失禁に対して十分有効と思われた. 特に今回用いたエストラダーム貼布剤によるエストロゲン補充療法は, 副作用も少なく, かつ簡便であった. 今後本邦でも欧米並にエストロゲン補充療法が広く用いられることを期待したい.
  • 小森 和彦, 池上 雅久, 岩崎 明, 梶川 次郎, 岸本 知己
    2000 年 91 巻 5 号 p. 506-513
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 急性陰嚢症に対して超音波カラードプラ法を施行し, その有用性について検討した.
    (対象と方法) 市立堺病院泌尿器科を受診した急性陰嚢症10例 (精索捻転症5例, 急性精巣上体炎5例) に対して超音波カラードプラ法を施行し, 健側精巣と比較した患側精巣の血流の状態を評価し, それらの症例の鑑別診断および手術適応について検討した.
    (結果) 精索捻転症の5例のうち, 患側精巣の血流が認められなかったものは3例, 血流が低下していたものは2例であった. 精巣上体炎の5例のうち, 患側精巣の血流が健側と同程度であったものは2例, 健側に比べて増加していたものは3例であった.
    (結論) 精索捻転症では患側精巣の血流は消失または低下し, 精巣上体炎においては血流は健側と同程度かむしろ増加しており, 非侵襲的で簡便である超音波カラードプラ法は急性陰嚢症の診断において有用な検査であると考えられた.
  • 伊勢田 徳宏, 横山 雅好, 金山 博臣, 大本 安一, 香川 征
    2000 年 91 巻 5 号 p. 514-519
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌における interferon receptor の発現の有無, 発現量, 発現部位ならびにその意義は検討されておらず, 同様に細胞核内からの伝達により産生されている酵素や蛋白等なども検討されていない. 今回, 抗体を用いたELISA法による細胞膜外部分の可溶性 interferor-α/βreceptor (s-IFN-receptor) の測定系が確立されたので腎細胞癌患者血清を用い臨床的意義を検討した.
    (対象・方法) 1990年から1995年までに愛媛大学医学部泌尿器科を受診した腎細胞癌患者27例の血清中s-IFN-receptor 値の測定を行った. 採血は治療前空腹時とし, 血清分離した後測定するまで-80度で凍結保存した. また徳島大学医学部で測定した健常者22例の血清中s-IFN-receptor 値と比較した.
    (結果) 腎細胞癌患者では健常者に比し, 血清s-IFN-receptor 値は有意に高値であった (p<0.003). High risk 群のs-IFN-receptor 値は高かった. 生存率について, 今回の腎細胞癌患者のs-IFN-receptor 平均値の2.7±1.7ng/ml以上と未満で検討したところ, 高値群では4年の累積生存率は53.3%, 低値群では78.7%であった (Logrank 検定, p=0.4289). High risk 群と low risk 群の4年生存率では有意差はあったが (Logrank 検定, p=0.0342), high risk 群および low risk 群においてs-IFN-receptor 値と生存率に相関がなかった. s-IFN-receptor 値は, 一般的に腎細胞癌の予後因子と言われているCRP, 赤沈とは相関していなかった (Spearman Rho 値, 0.33, 0.31).
    (結論) 今回, s-IFN-receptor 値と予後との関連を明らかにすることはできなかったが, 腎細胞癌治療前において, 一般的に予後因子とされるCRP, 赤沈とは相関しておらず, 今後, これらとは独立した因子である可能性を含め, さらに症例数を増やして検討する必要があると考えられる.
  • 杉多 良文, 谷風 三郎, 朴 寿展, 兼松 明弘, 上岡 克彦
    2000 年 91 巻 5 号 p. 520-525
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 異所性尿管瘤の治療法の選択に関しては, 様々な論議がある. われわれの経験した異所性尿管瘤症例を臨床的に検討し, 異所性尿管瘤の治療法につき検討を加えた.
    (対象と方法) 1978年から1998年に兵庫県立こども病院で治療した異所性尿管瘤39症例につき検討した. 年齢・患側・主訴・治療法とその経過を調べた.
    (結果) 患児の年齢は0ヵ月から13歳で平均6歳であった. 左側が15例, 右側が17例, 両側が7例に見られた. 重複腎盂尿管に伴う異所性尿管瘤が35例 (42腎), 単一腎盂尿管に伴う異所性尿管瘤が4例 (4腎) であった. 主訴は尿路感染症が最も多く24例で, 腹部腫瘤が6例, 胎児期超音波検査で発見されたものが6例であった. 1例は尿失禁で, 2例は他疾患の精査の際発見された. 35例 (42腎) の術後観察期問は6ヵ月以上で, 治療は腎瘻・尿管皮膚瘻を含む尿路変向術を5腎に, 半腎切除術 (瘤切除および尿管膀胱吻合術を加えたものも含む) を8腎に, 腎摘除術を3腎に, 腎盂尿管吻合術を2腎に, 瘤切除術および尿管膀胱吻合術を10腎に, 経尿道的瘤切開術を14腎に行った. これらの手術後, 再手術を行ったのは15腎 (36%) で, うち7腎は経尿道的瘤切開術後の症例であった. 更に2腎では3回目の手術を要した.
    (結論) 約1/3の異所性尿管瘤症例は再手術を要した. 特に経尿道的瘤切開術は簡便であるが, 再手術になる症例が多かった.
  • 笠井 利則, 守山 和道, 辻 雅士, 上間 健造, 桜井 紀嗣, 赤澤 誠二
    2000 年 91 巻 5 号 p. 526-529
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 1997年5月27日, 左陰嚢内に無痛性腫脹を認め当科に紹介された. 左精巣腫瘍と診断し6月3日, 左高位精巣摘出術を施行した. 病理診断は Non-Hodgkin's lymphoma (NHL), diffuse, mixed type, B cell であった. 胸腹部CT, Gaシンチでは他部位に病変を認めなかった. 約3年1ヵ月前に右精巣原発NHL (pT3N0M0, stageIEA) と診断され, 化学療法 (CHOP療法5コース) と放射線療法 (inverted Y irradiation) が施行されていた. 臨床経過から対側に発症した異時性両側精巣原発悪性リンパ腫と診断した. 1年以上経過して発症する異時性両側精巣原発悪性リンパ腫は非常に稀であるため,それぞれの腫瘍のIgH遺伝子 (IgJHDNA) 再構成を調べそれらの帰属につき検討した.
  • 金綱 友木子
    2000 年 91 巻 5 号 p. 530-533
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性. 1997年3月頃より頭痛, 左肩痛あり. 1997年11月, 作業不能, 動作緩慢, 傾眠傾向出現する. 当院内科受診し多発性脳転移, 腹壁転移が認められ, 腹壁腫瘤の生検にて小細胞癌, 神経内分泌癌の診断がなされた. 脳, 腹壁への放射線照射施行され, 照射局所の腫瘍の縮小を見る. しかし腫瘍の再発, 転移, 全身状態悪化あり1998年3月に死亡した. 剖検にて本腫瘍は前立腺原発であることが認められた. 前立腺腫瘍の大半は神経内分泌癌の像を示したが, 一部に腺癌を合併していた. 転移病巣もその殆どは神経内分泌癌の転移であった. しかし, 第7胸椎転移のみは腺癌による骨硬化型転移の像を示していた.
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