日本泌尿器科学会雑誌
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94 巻, 7 号
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  • 石戸谷 滋人, 金藤 博行, 福崎 篤, 竹田 篤史, 尾形 幸彦, 中川 晴夫, 折笠 精一, 荒井 陽一
    2003 年 94 巻 7 号 p. 645-655
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器科における腎機能が内廃絶していく疾患の中で, 尿路の通過障害即ち閉塞性腎症は大きな比重を占めている. 当教室では長年にわたりこの疾患の治療に携わると共に, その病態生理の解明に取り組んできた. 現在までに明らかにされてきた事実と我々が得た最近の知見とを併せて, 閉塞性腎症の進展のメカニズムと新たな治療の可能性について概説した.
    尿管に急性の完全閉塞が生ずると, 形態としてはまず水腎症を呈する. 内部では尿細管内圧, 組織内圧が上昇, これが引き金となって腎組織のレニン-アンジオテンシン系 (RAS) の活性化と虚血が生ずる. 増加したアンジオテンシン II は transforming growth factor-β(TGF-β) の発現を亢進させ, このTGF-βが collagen や fibronectin 等の細胞外基質を蓄積させる. こうして進行した尿細管間質の線維化が虚血性変化と共に腎機能の低下を誘導していく. ヒトにおいては約5ヵ月の閉塞で機能はほぼ完全に喪失する. RASの活性化以降のこの一連のプロセスは糖尿病性腎症や糸球体腎炎等の他の腎疾患においてもほぼ共通であることが判明, Final Common Pathway と称されるようになった. 治療としては機械的な閉塞の解除が第一選択であるが, この Pathway をブロックする薬剤による種々の試みもなされ, 期待されている.
  • 4年経過した一側回腸導管モデル犬において
    種子田 洋史
    2003 年 94 巻 7 号 p. 656-663
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 尿路変向患者では尿路に介在する腸管によって水・溶質バランスに影響を受ける. この影響が経年的に変化するか否か, その軽減のために利尿状態が有効かどうかについて検討した.
    (対象・方法) メス雑種犬8匹の右腎側に20cmの回腸導管を作成. 2ヵ月後ストーマ尿と膀胱尿をそれぞれ3時間分採取し, 水と溶質の分析を行った. また, 術後4年経過したイヌ4匹に再度同様の観察を行った. さらにイヌ6匹に対し, 水・溶質代謝に及ぼす利尿の効果について観察した.
    (結果) 水は浸透圧依存性に回腸導管から再吸収または分泌され, 4年後にも変化は認めなかった. 回腸導管を通過した尿の溶質量と浸透圧は経過期間を通じて対照側より常に低かった. 回腸導管の介在によるクレアチニンクリアランスの低下は術後2ヵ月, 4年でも認めなかった. 回腸導管において乏尿状態になると水の分泌と溶質の再吸収が増加し, クレアチニンの再吸収もみられることが判明した.
    (結論) 一側回腸導管を作成したイヌモデルによる実験的観察で, 術後早期と4年経過後における水・溶質バランスに有意な変化は認められなかった. 腸管利用尿路変向において利尿状態を維持することは, 溶質の再吸収を軽減するため有効と考えられた.
  • 間欠導尿導入時の上部尿路障害と予後について
    小原 健司, 米山 健志, 水澤 隆樹, 筒井 寿基, 若月 秀光, 新井 啓, 小瀬川 悦子, 鈴木 一也, 高橋 公太
    2003 年 94 巻 7 号 p. 664-670
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) CICにより排尿管理を受けている二分脊椎症患者をCIC導入時の上部尿路障害の有無に注目し経過を検討した.
    (対象と方法) 対象は二分脊椎症患者34例 (男性15例, 女性19例) である. CIC導入時に上部尿路の拡張を認めた症例は18例であり, その中で10例 (A群) は初診時にすでに認められ, 8例 (B群) は経過観察中に出現しCIC導入となった. CIC導入時に上部尿路の拡張を認めなかった症例は16例であり, 7例 (C群) は残尿と尿路感染症 (UTI), 9例 (D群) は低コンプライアンス膀胱がCIC導入の理由であった.
    (結果) A群では, 5例に膀胱拡大術が施行され, 拡大術症例以外の5例のうち3例で逆流防止術が施行された. B群では, 3例に膀胱拡大術が施行され, 2例で逆流防止術が施行された. C群は, 全ての症例で上部尿路に異常を認めなかった. D群では, 1例に膀胱拡大術が施行されたが, 他の8例は上部尿路に異常を認めなかった.
    (結論) CIC導入時に上部尿路の拡張を認めたA+B群では, 認めなかったC+D群と比較して後に膀胱拡大術や逆流防止術を受けた頻度が有意差をもって高かった. 残尿とUTIは, CICにより良好にコントロールされた. 尿失禁に対するCICの効果は, 尿道括約筋機能不全を合併する症例が多数を占めるため満足のいくものではなかった.
  • 三木 誠, 塩澤 寛明, 松本 哲夫, 相澤 卓
    2003 年 94 巻 7 号 p. 671-677
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 閉鎖神経反射を起こさない新しいTURシステム (TURis) を開発し, 基礎的検討から臨床へと展開し満足できる結果を得た.
    (対象と方法) TURisは新たに考案した切除鏡と, 高周波発生装置よりなる. 切除鏡のシースに回収電極を置き, 潅流液を導電性の生理食塩水に変えることで, 高周波電流はループとシース間に流れ, 閉鎖神経を刺激することがなくなり, 対極板も不要になる. このシステムで机上実験と豚による動物実験を行い, 切開凝固能, 閉鎖神経刺激の有無, 安全性などを確認後, 膀胱腫瘍25例, 前立腺肥大症30例に対しTURisを実施した.
    (結果) ループは小型のものが良く, 切開凝固能はTURとほぼ同等で, 閉鎖神経反射もなく安全性にも問題なかった. 臨床例では閉鎖神経ブロックを行わず切開開始時出力280W, 凝固出力120Wで実施したが, 膀胱腫瘍の一例で弱い反射を認めた以外閉鎖神経反射はなく安全に実施でき, 特別の技術は必要としなかった. 切除片がTURより小さいが, 肥大症の切除量の最高は89.9gであり問題はなかった. 平均の手術時間と生理食塩水量は, 膀胱腫瘍で32分, 6,083ml, 前立腺肥大症で42分, 16.100mlであった.
    (結論) TURisは生理食塩水下で問題なく実施でき, 閉鎖神経反射も殆ど起こさずブロックは不要である. 対極板も不要で, 生理食塩水は安価かつ安全で経済的にも有利であり, TURを凌駕する可能性が示唆された.
  • 岡根谷 利一, 西澤 秀治, 植木 常雄, 中山 剛, 杵渕 芳明, 村田 靖
    2003 年 94 巻 7 号 p. 678-684
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) マイクロ波組織凝固装置を用いた腎部分切除術の適応と安全性について検討する.
    (対象と方法) マイクロ波組織凝固装置を用いて16症例にのべ17例の無阻血腎部分切除術を施行した. 原疾患は腎腫瘍11例, 腎結石5例であった. 腎腫瘍は長径4cm以下であり, 腎結石は腎杯憩室や2次的な腎皮質萎縮をともなう症例であった. 腰部斜切開をおき経後腹膜アプローチにて施行し, マイクロターゼ®針状電極を腫瘍 (結石) 周囲に10~20回刺入して焼灼後メスあるいは鋏を用いて患部を切除した. 術翌日から歩行を許可した.
    (結果) 1例では止血のため血流遮断を必要とした. 1例は集尿系の修復が困難と思われたため引き続き腎摘除術を行った. 2例では術後尿漏れが続いたが, 14日後, 23日後に自然閉鎖した. 突出型腎腫瘍の7例中1例 (14%) と非突出型腎腫瘍の5例中3例 (60%), および腎結石の2例で合併症がみられた. 輸血は不要であり, 後出血はなかった. 平均35ヵ月間の術後経過観察中に1例で切除箇所周囲の腎萎縮が進行し残腎が無機能になった. 他症例の残腎機能は良好であり局所再発はみられない.
    (結論) マイクロ波組織凝固装置は無阻血で安全に腎部分切除術が施行できるひじょうに有用な手術器具であり, 腎腫瘍のみならず複雑な腎結石症例もその適応になる. しかし単腎の腫瘍症例の場合は突出型のみを適応とした方が良いと思われる. 手術の際は腎実質と腎血管の太い分枝への熱変性および切除後の集尿系の開放による尿瘻に留意すべきである.
  • 松本 充弘, 難波 行臣, 矢澤 浩治, 市丸 直嗣, 宮川 康, 高原 史郎, 奥山 明彦, 金 眞理子, 児島 康行, 小角 幸人, 京 ...
    2003 年 94 巻 7 号 p. 685-688
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性, 血液型はO型Rh (+). 2000年にB型Rh (+) の父親をドナーとしてABO不適合移植術を受けた. 移植後血清クレアチニン (s-Cr) 値は1.1~1.2mg/dlまで改善し第53病日に退院した. しかし, 第460病日頃より徐々に腎機能悪化を認めたため, 第520病日に腎生検術を施行し「間質性腎炎を伴う慢性移植腎症」と診断した. その後, 免疫抑制療法を強化するも腎機能の改善は得られず, 第630病日に再度腎生検を施行した. 光顕所見では, 間質性腎炎と腫大した尿細管上皮細胞を認めたため, BKウイルス腎症を疑った. 抗SV40抗体による免疫染色およびPCR法によるBKウイルス血症を確認し,「BKウイルス腎症」と確定診断した. 腎移植後, 拒絶反応治療に抵抗性を示す症例に対しては, BKウイルス腎症の検索を行う必要がある
  • 佐藤 裕之, 吉岡 邦彦, 中村 聡, 森永 正二郎
    2003 年 94 巻 7 号 p. 689-692
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳, 男性. 右鼡径部及び陰嚢の腫大を一ヵ月前より認め, 当院を受診した. 超音波検査にて右精索に一致した位置に血流に富む径3.6cm大の腫瘍を認め, 精索の軟部組織由来の腫瘍と判断された. 右高位精巣摘除術を施行したところ, 摘出腫瘍は精索中下部に存在する境界明瞭な充実性腫瘍であり, 精巣及び精巣上体には異常を認めなかった. 病理組織学的所見では, 腫瘍は毛細血管に富み, その周囲を短紡錘形細胞が取り囲むように増殖していた. 鍍銀染色で腫瘍細胞を包囲する好銀繊維を認め, 免疫染色では腫瘍細胞はCD34陽性, Factor VIII陰性であり, 血管間質由来の血管周皮細胞と一致した. また mitotic rate が低く, 精索の良性血管外皮腫と診断された. 術後2年6ヵ月経過するが再発は認めていない.
    血管外皮腫は毛細血管の周皮細胞に由来する腫瘍で, 後腹膜, 下肢に発生することが多く, 精索発生は極めて稀である. これまでに精索の悪性血管外皮腫が2例報告されているのみであり, 良性のものは本例が初例である.
  • 金子 卓司, 鈴木 徹, 松下 希, 吉田 郁彦
    2003 年 94 巻 7 号 p. 693-695
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経直腸超音波ガイド下6ヵ所生検による前立腺動脈損傷に対し, 動脈塞栓術が有効であった症例を報告する. 症例は62歳男性, 主訴は下腹部膨満感. PSA4.1ng/mlのため前立腺生検目的に入院, 翌日経直腸系統的6ヵ所生検を施行した. 生検3時間後に少量の下血を認め, 血圧低下と下腹部の膨隆を認めた. 生検3時間30分後のダイナミックCTで骨盤から腹部の後腹膜腔に11.5×10cmの血腫と, 早期動脈相において前立腺右前方の血腫内に造影剤の漏出像を認めた. 生検5時間後のIA-DSAでは右前立腺動脈から造影剤の血管外漏出像を認め, 前立腺生検による右前立腺動脈損傷と診断した. この出血に対し, micro coil 6個を用い, 動脈塞栓術を施行し, 完全に止血しえた. 術後経過は良好で, 動脈塞栓術後19日目に退院した. 前立腺生検は比較的安全な検査とされ, 自験例のように後腹膜腔に多量の出血をきたすことは非常に稀である. 自験例のような動脈性後腹膜出血には, 動脈塞栓術が迅速かつ確実であると考えられる. また, 自験例のような合併症を防止するためには, 神経血管束内や前立腺周囲の細い動脈の拍動を注意深く観察し, これを損傷することのないよう穿刺ラインを決定することが重要であると考えられた.
  • 北 雅史, 佐々木 寛, 奥山 光彦, 佐賀 祐司, 橋本 博, 金子 茂男, 八竹 直, 徳光 正行, 稲田 文衛, 石田 裕則
    2003 年 94 巻 7 号 p. 696-700
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は23歳男性. 近医にて Stage IIBの右精巣腫瘍の診断のもと右高位精巣摘除術, 化学療法, 後腹膜リンパ節郭清を行ったが新たに多発肺転移巣が出現し当院を受診した. 前医での病理学的検討では, 精巣は混合型胚細胞腫瘍 (セミノーマ+卵黄嚢腫瘍+胎児性癌) で, リンパ節は成熟奇形腫であった. VIP療法 (cisplatin, ifosfamide, etoposide) を2コース施行したが, 腫瘍サイズは変わらなかった. 胸腔鏡補助下にCT上明らかな3個の腫瘍を切除した. 病理学的には切除した3個の腫瘍すべて横紋筋肉腫であった. 手術後わずかな残存腫瘍が疑われたため, 3コースのCYVADIC療法 (cyclophosphamide, vincristine, adriamycin, dacarbazin) と cyclophosphamide の内服投与を施行した. 腫瘍切除から1年後の現在明らかな腫瘍は認めていない.
  • 加藤 香廉, 大森 聡, 田中 孝直, 小松 淳, 瀬尾 崇, 杉村 淳, 近田 龍一郎, 山崎 悦子, 藤岡 知昭
    2003 年 94 巻 7 号 p. 701-704
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. 多発性肺転移を伴う両側腎細胞癌 (腎癌) に対し両側腎摘除術施行後, インターフェロンα (以下, IFN-αと略す) 300万単位の週1回投与を開始した. 第45病日目に四肢の脱力, 失見当識のため入院. IFN-αによる中枢および末梢神経障害と診断した. IFN-α中止の上ステロイドパルス療法を開始, 症状の改善を認めた.
    我々の知る限りでは, 腎癌に対するIFN-α治療中に中枢神経症状と末梢神経症状が併発した例は文献上報告がなく稀な症例と考えられた.
  • 鴨田 慎二, 原林 透, 鈴木 信, 竹山 吉博, 三井 貴彦, 毛利 学, 橋本 晃佳, 中村 美智子, 篠原 信雄, 野々村 克也, 小 ...
    2003 年 94 巻 7 号 p. 705-708
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    73歳男性. 肉眼的血尿の精査で膀胱腫瘍と腎盂内へ突出する左腎腫瘍を認め, 経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) と尿管鏡下腫瘍生検を施行した. 病理学的には膀胱腫瘍は移行上皮癌であり, 腎腫瘍は腎細胞癌であったため, その後根治的左腎摘出術を行った. 術後4ヵ月の定期膀胱鏡検査で隆起性病変を認め, TUR-Btを施行したところ病理組織学的に腎細胞癌の膀胱転移であった. CTで遺残尿管と肺に多発転移を認めたが, 全身状態が不良なため積極的治療を行わず経過観察とした. 腎摘出後26ヵ月で悪液質のため癌死した. 本症例の如く腎盂浸潤を有する腎細胞癌に尿管鏡検査を行った際は, 尿管の処理にも十分注意を払う必要があると考えられる.
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