日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
96 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小澤 秀夫, 上松 克利, 大森 弘之, 近藤 厚生, 岩坪 暎二, 高坂 哲
    2005 年 96 巻 5 号 p. 541-547
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 間欠式バルンカテーテル™ (以下間欠バルン) を, 一日のある程度長時間 (多くは夜間) 留置し, 間歇導尿と併用する排尿管理が行われるようになってきた. 今回, 間欠バルン夜間留置の長期安全性を検討するため, 排尿管理法別に長期にわたる安全性と合併症の頻度を検討した.
    (対象と方法) 平成11年4月から平成16年3月までの期間, 岡山労災病院泌尿器科で何らかのカテーテルを用いた排尿管理を継続している114名 (男性91名, 女性23名) である. 間歇自己導尿 (CIC-dry: 33名), 間歇自己導尿+尿失禁を含む自排尿 (CIC-wet: 16名), 間歇自己導尿+夜間のみ間欠式バルーンカテーテル™留置 (CIC+夜バルン: 20名), 膀胱瘻 (22名), 尿道カテーテル留置 (尿道カテ: 24名) に分けて, 有熱性尿路感染症, 膀胱結石などの合併症を経過観察期間 (平均41ヵ月) における頻度で, 検尿沈渣における膿尿の回数を検尿回数で除して膿尿出現頻度を求めそれぞれ比較した.
    (結果) 有熱性尿路感染症の頻度は, CIC-wet (3.36回/100ヵ月), 尿道カテ (2.96回), 膀胱瘻 (1.26回), CIC+夜バルン (0.57回), CIC-dry (0.42回) の順であり, CIC-dry に比較してCIC-wet と尿道カテが有意に発熱の頻度が高かった. 膀胱結石の頻度は, 尿道カテ (1.11回/100ヵ月), 膀胱瘻 (1.05回), CIC+夜バルン (0.96回), CIC-wet (0.61回), CIC-dry (0.21回) の順で, CIC-dry に比して尿道カテは有意に膀胱結石が発症する傾向を認めた. 膿尿の頻度では, 尿道カテ (86.7%), 膀胱瘻(74.2%), CIC-wet (65.6%), CIC+夜バルン (53.0%), CIC-dry (35.0%) の順であり, CIC-dry はいずれの群に対しても有意に膿尿の出現頻度が低かった. CIC-wet とCIC+夜バルンの直接比較では, いずれの合併症でも有意差は得られなかったものの, 有熱性尿路感染症でCIC-wet がCIC-dry よりも有意に発熱頻度が高くCIC+夜バルンはCIC-dryと有意差が得られなかったことから, 夜間に導尿できず, 尿失禁を生じると合併症の危険性が上昇する可能性が示唆された.
    (結論) CIC施行症例は尿失禁および自排尿を避けるように排尿管理をすることが有熱性尿路感染症の予防につながる. 昼間CICを施行し夜間のみに間欠バルンを留置する方法は合併症の頻度を増加させず, 長期の経過観察でも安全な排尿管理法であると思われた.
  • 野口 純男, 高瀬 和紀, 吉田 実, 湯村 寧, 山下 雄三, 大古 美治, 三好 康秀, 中井川 昇, 窪田 吉信
    2005 年 96 巻 5 号 p. 548-553
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 浸潤性膀胱癌に対する neoadjuvant 療法の有用性を知る目的で膀胱全摘除術後の生存率と予後因子について比較的多数例において retrospective に検討した.
    (対象および方法) 1977年から2001年の期間で横浜市立大学および横須賀共済病院において局所浸潤膀胱癌 (臨床病期T2~T4NxM0) と診断された症例のうち, 根治的膀胱全摘除術が施行された201例を対象とした. これらの症例の生存率と予後を規定する9因子 (年齢, 腫瘍径, 腫瘍数, 腫瘍形態, Grade, 進達度, リンパ節転移あ有無, neoadjuvant 療法の有無および adjuvant 療法の有無) について Kaplan-Meier 法および cox の比例ハザードモデルにより単変量および多変量解析を行った.
    (結果) これらの因子のうち独立した予後規定因子は腫瘍径, 腫瘍数, 腫瘍形態, Grade, 進達度, リンパ節転移の有無, neoadjuvant 療法の有無の7因子であった. これらの因子のうちリンパ節転移の有無, neoadjuvant 療法の有無, 進達度, 腫瘍径が多変量解析では有意であった. Kaplan-Meier 法では cisplatin を主体とした術前の化学療法を施行した群が施行しない群と比較して有意に予後良好であった.
    (結論) 以上の結果より cisplatin を主体とした術前の化学療法は浸潤性膀胱癌の予後を改善する可能性が示唆された.
  • 山田 哲夫, 船橋 亮, 村山 鐵郎
    2005 年 96 巻 5 号 p. 554-559
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 線維筋痛症 (FM) は米国において間質性膀胱炎 (IC) の約10%に合併するとされているが本邦ではほとんど知られていない. 我々も米国とほぼ同様な割合で合併例を経験した. 合併例の実情と意義について報告する.
    (患者と方法) 患者はICに関する1987年 National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases (NIDDK) とFMに関する American College of Rheumatology (ACR) の診断基準を満たした過去4年間における30例で, これらの臨床所見の検討を行った.
    (結果) ICの symptom index と problem index の平均は各々14.9と14.6で, ACRの診断基準における圧痛点の平均は16ヵ所であった. 患者全体で9ヵ所の診療科を受診し, 患者の38%が精神病でないにも関わらず精神科受診を余儀無くされていた. 両疾患は疹痛閾値の低下やび漫性の痛み, 症状の増悪因子, 治療法などに類似点が認められた.
    (結論) ICの約11%がFMを合併し, 合併例は病状を理解されず全身の激しい痛みに耐えていた. ICとFM患者の臨床所見において共通点が多く認められた.
  • シードの取り扱いについて
    木村 将貴, 佐藤 威文, 藤田 哲夫, 大草 洋, 松本 和将, 岩村 正嗣, 北野 雅史, 石山 博條, 早川 和重, 岡安 勲, 馬場 ...
    2005 年 96 巻 5 号 p. 560-563
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌放射線治療における125I密封小線源の取り扱いは, 医政指発第0715002号, 医薬安第0313001号, および「シード線源による前立腺永久挿入密封小線源治療の安全管理に関するガイドライン」によって規定されている. この規定において, 治療後1年以内に患者が死亡した場合には,「剖検の手配等を行うとともに, 早急に当該線源を回収すること」と記されている.
    今回我々は125Iシード線源による前立腺永久挿入密封小線源治療を施行し, 治療1ヵ月後に脳出血を原因とした死亡症例を経験した. 本症例の一連の対応を通して, 遺体の搬送や剖検場所の確保, その事務手続き, ならびに線源回収手技や遠方症例の対応等, 検討を有する事項が確認された. 今後, 当該治療の施行増加に伴い同様の問題が出現してくるものと考えられ, 他施設との連携を含めた事前準備が急務と考えられた.
  • 室崎 伸和, 妹尾 博行, 武本 征人
    2005 年 96 巻 5 号 p. 564-567
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿管壁内血腫は極めて稀な疾患であり, これまでに数例が報告されているのみである. 我々は抗凝固剤の副作用によると思われる尿管壁内血腫の1例を経験したので報告する. 症例は65歳男性, 心房細動による2次的血栓塞栓症予防の抗凝固療法中, 肉眼的血尿を生じ当科受診. 超音波検査で右腎盂の軽度拡張を認め, CTで右尿管壁内血腫を認めた. 血尿を生じる18日前に抗凝固療法は, ワーファリン単独投与から, ワーファリン・ブコローム併用投与に変更され, これに伴いプロトロンビン時間 (PT) が大幅に延長し治療設定域を越えていた. ワーファリンとブコロームの内服を中止し, ビタミンK2投与にてPTは正常化した. 推定出血量は1,200mlに達したが, 無輸血にて保存的に対処しえた. 血腫は4ヵ月後には完全に吸収され, 現在, 再発を認めない. ブコロームはワーファリンの作用を増強する特に強い相互作用を持つため, 併用開始時にはPT-INRを頻回に測定し投与量を調節する必要がある.
  • 加藤 久美子, 平田 朝彦, 鈴木 弘一, 吉田 和彦, 鈴木 省治, 村瀬 達良
    2005 年 96 巻 5 号 p. 568-571
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    TVT (tension-free vaginal tape) 手術は低侵襲の尿道スリング手術として女性腹圧性尿失禁の治療に新時代を画したが, 頻度は少ないものの合併症への注意は必要である. 術後の膀胱結石の2例を報告する. (症例1) 76歳女性. 56歳時に子宮頸癌で子宮全摘. 75歳から膣断端脱著明となり, リングペッサリー挿入後に腹圧性尿失禁が発症した. ADL低下を伴う性生活のない高齢者であったので, TVT手術と中央膣閉鎖術 (Le Fort) を施行し, 尿失禁は自他覚的に消失した. 術後6ヵ月から排尿後痛が出現し, 術後8ヵ月の膀胱鏡で小結石を認め除去した. (症例2) 49歳女性. 39歳時に子宮筋腫で子宮全摘を受け, 42歳から腹圧性尿失禁が始まった. TVT手術の施行で尿失禁は自他覚的に消失した. 術後2ヵ月から排尿痛があり, 術後3ヵ月で膀胱鏡を行い小結石を除去した. 両者とも術後1ヵ月の鎖使用膀胱尿道造影 (chain CUG) で潤滑剤にオリーブ油を使用しており, 結石成分は脂肪酸カルシウムであった. (考察) TVT手術後の膀胱結石 (脂肪酸カルシウム結石) を2例経験したが, 膀胱びらんを伴わず chain CUG時のオリーブ油使用に起因すると考えられた. 尿失禁手術後に膀胱炎症状が継続する際は膀胱びらん, 膀胱結石の確認を要する.
  • 服部 裕介, 原 芳紀, 松浦 謙一, 長谷川 章雄
    2005 年 96 巻 5 号 p. 572-575
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    67歳男性. 右腰背部痛, 肉眼的血尿を主訴に近医受診し, CTで右腎腫瘤を指摘され当院紹介となる. 腎全体を占拠する腫瘤と下大静脈背面のリンパ節腫大と脾臓の腫瘤を認め, 腎腫瘍の脾臓転移と診断した. 画像上,骨・肺など他臓器に転移無く, 右腎癌のリンパ節転移・脾臓転移と診断して, 右腎摘出術, リンパ節郭清, 脾臓摘出術を行った. 摘出標本では腫瘍は腎門部を中心に発育して腎盂を圧排しており, 腎盂粘膜は肉眼的には正常粘膜であった. 腎腫瘍は small cell anaplastic carcinoma の診断であった. また, 腎盂粘膜に移行上皮癌Grade2の合併を認めた. 脾臓は small cell and giant cell anaplastic carcinoma の診断であった. 免疫組織染色ではNSE, cytokeratin が陽性であった. 以上の結果から腎に発生した小細胞癌, 脾臓・リンパ節転移と診断して, 術後シスプラチンとエトポシドによる化学療法を2コース行い, 術後10ヵ月の現在再発なく経過している. 腎小細胞癌は文献上, 平均年齢は55歳であり, 診断時に52%が転移を認めている. 平均生存期間は15ヵ月と進行が早い疾患と考えられた.
  • 第10, 11, 12肋骨の骨膜下切除による創縁を可動化する方法
    佐藤 勇司, 狩野 武洋, 高木 紀人, 徳田 雄治, 魚住 二郎, 真崎 善二郎
    2005 年 96 巻 5 号 p. 576-580
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    亀背を伴う高度胸郭変形高位腎症例において, 胸腔を開けずに腎へ到達するのはかなり困難である. 今回この困難を克服する工夫を行い, 良好な結果を得たので報告する.
    第11肋骨表面を通る腰部斜切開を置き, 第11肋骨を骨膜下に摘除し, さらに第12および10肋骨も骨膜下に摘除した. 第10, 11肋骨切除は骨膜下に切除するのみで, この部の深部骨膜には切開を加えなかった. 第12肋骨の深部骨膜は尾側のみ切開し横隔膜の露出を助けた. 第12肋骨先端部で後腹膜腔にはいり, 胸膜折り返しの尾側において横隔膜を十分背側まで切開し, 横隔膜を胸膜とともに頭側に変位させた.
    胸郭変形が強く肋骨弓と腸骨との間にほとんどスペースのない腎結核の2症例と高度の胸椎側弯を伴う珊瑚状結石の1症例を対象とした.
    第10, 11, 12肋骨切除は肋膜の損傷なく施行でき, 十分な手術視野を確保可能で, 比較的容易に腎摘を施行できた.
    今回述べた方法は, 創縁の可動性を確保するために第10, 11, 12肋骨を切除し, その切除部を通して後腹膜に達する従来の到達法より広い術野が得られ, 強い亀背を伴う同様症例に対し用いてよいと思われる.
feedback
Top