人工臓器
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19 巻, 1 号
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  • 北村 惣一郎
    1990 年 19 巻 1 号 p. 1
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 井街 宏, 満渕 邦彦, 藤正 巌, 渥美 和彦
    1990 年 19 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    サック型やダイヤフラム型の血液ポンプを駆動できる新しい原理の人工心臓駆動装置を考案した。本装置の作動原理は下記のごとくである。1) 駆動源には液化ガスを使う。2) ガスは液体の状態で回路中に蓄えられ、この液化ガスが気化するときの圧を用いてサックやダイヤフラムを押し、血液を駆出する。3) 気化したガスは小型のコンプレッサーにより吸引圧縮され、熱交換部において冷却液化される。この際、陰圧がポンプにかかり血液を吸引する。この閉鎖サイクルの繰り返しにより血液ポンプが駆動される。今回、液化ガスにフロン114を用いたプロトタイプシステムを開発し、本駆動装置における作動原理の妥当性を確認できた。本装置の利点は、1) 陽陰圧のチャンバーを必要としないため、駆動装置の小型化が可能である、2) 一個のコンプレッサーで左右両心の回路が作れる、3) 閉鎖回路であり、かつ駆動装置内の容積が変化しないため、装置全体が体内に埋め込める大きさに小型化できた場合、体内埋め込みに際してコンプライアンスチャンバーを必要としないなどである。
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 阿部 俊文, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 星野 俊一, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    セグメント化ポリウレタン製の補助循環装置, トーマス型30ccモデル(TB-30)を胸腔内植込み用とし, 模擬回路にて試験した。空気駆動圧装置はアブコ社製PBPモデル20を用いた。機能試験では, 駆動圧200mmHg, 駆動回数100bpmで拍出量は2.8l/分台で, 200mmHg以上としても拍出量は増加しなかった。駆動回数50~125bpm間では直線的な拍出量の増加を示した。耐久性試験は4週間, 模擬回路で行なった。急性実験は雑種成犬10頭にて行なった。左房一上行大動脈間で左心補助を行い, 当然のことながら, 良好な補助効果が得られた。既報の如く, 右側胸腔第6肋間位に補助装置を位置せしめることを, 屍体を用いたfit trialから考えているが, 装置よりも, 送・脱血のカニューレのデザインに改良点がある。また, 胸腔内に置いた場合, 駆動膜を直視出来ないので, それに代る駆動の指標が確立されなければならないと考えている。
  • 薦田 烈, 高谷 節雄, 高野 久輝, 前田 肇, 阿久津 哲造
    1990 年 19 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    試作開発中のモーター駆動完全埋込み式全置換型人工心臓(TAH)は, 高さ84mm, 直径90mmのほぼ円柱状をしており, この大きさのTAHを流入路を短く, 胸壁の変形をきたさぬよう体内に埋込むための方法として, TAHが残余心臓の左下方に位置するよう, 腹腔内にTAHを置く方法が考えられる. その接続方法について, 解剖実習遺体51体(44歳~95歳)を用いて解剖学的適合性を検討した結果, 男性17/27(63.0%), 女性2/24(8.3%)が埋込み可能であった。この大きさのTAHを埋込むためには, 特に女性において, 胸郭にある程度の大きさが必要である. さらに, 腹腔にかわって胸腔内に埋込むためには, モーターやactuatorを小型化し, それに適した形状にする必要があり, 現在, 大きさと形状が適合するよう改良中である.
  • 奥村 晴彦, 長谷川 隆光, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 畑 博明, 八木 進也, 鈴木 修, 塚本 三重生, 古賀 守, 瀬在 幸安, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    ブタに両心不全を作成し, BVADを駆動させ, 左右のポンプ流量の比から1群(R:L=1:≤0.5), II群(R:L=1:0.5<≤1), III群(R:L=1:1<)に分け, 駆動後3時間まで血行動態的パラメーターを測定し, ポンプ流量比から見たBVADの至適駆動方法について検討した。
    I群では, 左室前負荷過剰となり左心不全を増強し, BVAD駆動後も全身循環の維持は困難であった。一方, III群では左室前負荷は軽減し, 左室の収縮性は上昇し, 心不全からの離脱も可能であり, BVAD駆動中, 全身循環は維持され優れた補助効果を示した。
    また, ポンプ駆動後3時間のPCWPとCVPの比(PCWP/CVP)は, I, II群に比しIII群で有意に低値を示した。このことよりBVADの左右のポンプ流量を制御する指標として, PCWPとCVPの比は有用であると思われた。
  • 林 博行, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 田中 元直, 本郷 忠敬, 佐藤 尚, 三浦 誠 ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓の自動制御用生体情報入力として、カニューラに内蔵した圧マイクロセンサの開発と評価を行なった。圧センサはピエゾ抵抗効果を応用した絶対圧型を使用し、圧力センサに測定圧以外の力が加わらないようにステンレスパイプで保持した。それを補助人工心臓の流入及び流出カニューラの先端近傍に装着し、その表面に抗血栓材料をコーティングした。圧力センサの温度特性を測定した結果、零点出力と圧力感度の温度依存性はともに小さく問題とならなかった。また市販のカテーテル先端型圧力トランスデューサとの圧波形の比較を行なった結果、良好な圧力感度と応答速度が認められた。模擬循環回路中での20日間にわたる使用後も圧力センサは良好な圧力感度と応答速度を維持し、その耐久性が確認できた。補助人工心臓を適用する際カニューラ内に圧力センサを装着することにより容易に圧力を測定することが予測でき補助人工心臓の自動制御システムへの応用の可能性を示すものと思われた。
  • 関井 浩義, 高野 久輝, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 木下 正之, 巽 英介, 赤城 治彦, 矢倉 明彦, 佐々木 栄作, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)駆動中、動脈系特性値及び自然心臓拍出量を非侵襲的連続的に監視法する方法を考案し、模擬循環回路における実験結果を昨年報告したが、今回これらの方法を動物実験において検討した。これらの方法はLVAD拍出時のLVAD拍出量と動脈圧の関係から動脈系特性値を末梢血管抵抗(SVR)、動脈伝達関数(TF)として測定する2つの方法である。実験の結果、いずれの方法も、対照値との間に良好な相関性を認め、自己心拍出時の動脈圧波形を解析すると、自然心拍出量を算出することができる。このことを模擬循環回路において検討し、LVAD駆動中は動脈系特性値と自然心拍出量の連続的監視が可能であること、流量一圧関係として、末梢血管抵抗値と動脈伝達関数を用いた2つの方法で良好な成績が得られたことを昨年の本学会において、報告した。その後、実験を行い、生体における両方法の信頼性を検討したので報告する。
  • 岡田 昌義
    1990 年 19 巻 1 号 p. 28
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 岡田 行功, 那須 通寛, 西内 素, 庄村 東洋
    1990 年 19 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後の重篤な低心拍出量症候群を来した4例に対して左心補助人工心臓(LVAD)を適応し1例の長期生存が得られた。年齢は74~82才の男性2例, 女性2例で, 疾患は1例がNYHAIV度のMR+TR, 3例は急性心筋梗塞に合併した心室中隔破裂(VSR)であった。LVADは東大式血液ポンプ(日本ゼオンsac型40ml)を補助人工心臓用駆動装置C型(アイシン精機)で駆動した。駆動期間は6~13日間, 第2~第3病日よりON-OFF testを行い, その結果4例共に離脱できた。最初の2例は離脱手術後に多臓器不全を来して死亡した。第3, 4例では離脱手術における手術侵襲を軽減する目的で右側左房に20mm Gore-texを儲して脱血カニューレを挿入固定した。この方法は強力な陰圧をかけても空気を吸い込むことはなく, 離脱手術操作も容易であった。3例目はIABP BaloonからのガスもれによるGas Emboliにより死亡したが, 4例目は順調に経過して退院した。
  • 二宮 淳一, 田中 茂夫, 浅野 哲雄, 佐々木 建志, 加治 正弘, 山内 紫, 武井 裕, 日置 正文, 庄司 佑
    1990 年 19 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児開心術後に何らかの機械的心補助を行った11症例につき臨床的に検討した。対象は年齢が2ヶ月~9歳で基礎疾患は複雑心奇形等の術後体外循環離脱困難例であった。補助循環の方法はIABP:3例, EABP:5例, V-A bypass:4例, LVAD:1例であった。補助手段からの離脱は73%(8/11)に成功したが, 病院死亡率は45%(5/11)であった。遠隔死亡は0%であり, かつ生存例のNYHA機能分類では全例I度又はII度とほぼ満足すべき成績であった。補助手段別では, 拍動流体外循環後にEABPを施行した5例中4例の生存を得た。しかし長時間の補助循環を施行せざるを得なかった群では, V-A bypassとIABPを行った2例を救命したのみであった。
    以上より小児開心術後の補助循環として, EABPは有用な方法と考えられたが, 最重症例の救命率向上のためには, 有効な幼小児用装置の開発等の今後の検討が必要である。
  • ―ドップラ断層法による評価―
    腰塚 誠二, 許 俊鋭, 半田 宣弘, 松村 誠, 安達 秀雄, 木村 壮介, 横手 祐二, 尾本 良三
    1990 年 19 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性僧帽弁逆流に対する各種補助循環の効果を, ドップラ断層法により評価・検討した。雑種成犬を用い人工心肺循環下に僧帽弁前尖の腱索を1本切断しMRを作成し, 補助循環を加えないコントロール群(I群)・VAB補助を加えた群(II群), LVAD補助を加えた群(III群), VAB+LVAD補助を加えた群(IV群)とし, ドップラ断層法と血行動態とから比較した。
    ドップラ断層法によりMRのJet面積・LAの面積を各群について比較してみると, I群に比しIII群・IV群では著しく縮少し, 有意差を認めたが, II群では, I群に比し差は認められなかった。左房圧は, I群に比し, 各群ともに, 有意に低下した。以上より, 30%の補助流量では, VABはMRを減少させ得なかったが, LVAD補助ではMRを減少させ左房負荷を軽減することが可能であった。
  • 丹治 雅博, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 萩原 賢一, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 星野 俊一
    1990 年 19 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)を臨床応用した10例のうち、離脱に成功した6例について至適離脱条件の検討を行った。対象症例は心室中隔穿孔4例、左心室瘤2例で、LVAD駆動時間は45~329時間、平均111.7時間であった。LVAD離脱試験はon-off法で行い、LVAD off 5分後(IABPのみ駆動)に血行動態の測定を行った。この試験によりLVADからの離脱が可能と判断したものをA群、不可能と判断したものをB群とした。離脱試験は6例に対し計23回施行した。A群は12回で、1例を除き:LVAD off時の血行動態はPWP≤18mmHg、CI≥2.8l/min/m2、LVSWI≧27g・m/m2であった。B群は11回で、すべてCI≥2.8l/min/m2かっLVSWI<27g・m/m2であった。LVADの至適離脱条件はon-off法による離脱試験において、LVAD off時PWP≤18mmHg、CI≤2.8l/min/m2、LVSWI≥27g・m/m2と考えられた。
  • 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 満渕 邦彦, 今西 薫, 米沢 卓実, 井街 宏, 藤正 巌, 渥美 和彦
    1990 年 19 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓動物における循環モデルおよび、収縮期比率を規定する要因を検討するため、人工心臓ヤギで、定心拍出量の条件下で実効収縮期比率を変化させる制御系を作成した。この系を用いて実効収縮期比率を変化させて、大動脈圧、左房圧、肺動脈圧、右房圧の値を測定し、体循環抵抗、肺循環抵抗を計算した。
    大動脈圧、肺動脈圧、体循環抵抗は、実効収縮期比率の変動に対し著明な変化は示さなかつた。これは、定値制御される心拍出量を変化させても同様であった。
    この結果は、測定されたパラメータからは、生体側から人工心臓の収縮期比率を積極的に規定する因子は求められないことを示し、また、末梢循環系の新たなモデルの必要性を示唆した。
  • ―特に腎機能障害について―
    石野 幸三, 村上 泰治, 入江 博之, 泉本 浩史, 山田 真人, 寺岡 広道, 菅原 英次, 高田 耕二, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1990 年 19 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心室細動下に24時間の両心バイパスを行い、24時間生存したものをI群(13例)、24時間以内に死亡したものをII群(10例)とし循環動態、特に脳・腎血流量及び腎内循環と呼吸、凝固機能について両群を比較検討した。総流量は両群とも術前とほぼ同等の流量を維持したが、総流量に対する頚動脈、腎動脈血流量比はI群では一定に保たれたが、II群では経時的に腎動脈血流量比が低下した。腎皮質、髄質の組織血流量はI群では変化なかったが、II群では皮質、髄質血流量とも減少し、しかも皮質血流量の比率が低下し、腎内血流の再分布がみられた。呼吸機能はI群は正常に保たれたが、II群ではSaO2が低下、A-V DO2が上昇し呼吸障害を認めた。DICの指標となるAT-IIIは両群とも低下した。多臓器不全の一環をなす腎不全の発生を防止するためには血圧を維持するとともに呼吸器、中枢神経の障害を防止する必要があると思われた.
  • 北村 惣一郎
    1990 年 19 巻 1 号 p. 53
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 水口 一三, 北村 惣一郎, 河内 寛治, 森田 隆一, 西井 勤, 谷口 繁樹, 福富 正明, 浜田 良宏, 湯浅 貞夫
    1990 年 19 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心原性ショックを伴う梗塞後心室中隔穿孔(VSP)にはIABPも無効であることが多く, より強力にかつIABPのごとく簡便に使用できる補助循環システムが必要である。そこで今回, 著者らは経皮的に使用可能と思われる心室補助心臓(VAD), 遠心ポンプ(CP)を用いてVSPショックモデルに対する補助効果を比較検討した。VSPショックモデルに対して, IABPとCPの併用, CP単独及びVAD単独のいずれの方法(各々50%の流量補助)でも, 動脈圧, 心拍出量の有意な(p<0.01)増加改善と, 肺動脈圧, 左心房圧, 肺対体血流量比の有意な(p<0.05, 0.01と0.01)低下改善が認められ, 血行動態は改善した。しかし, シャント流量(SF)は減少しなかった。また各々の指標の改善の程度を比較すると, IABPとCP併用が血圧上昇という点で最も優れており, さらにCP単独よりもIABPとCP併用, 及びVAD単独の方が有意に(p<0.02と0.01)心拍出量が増加していた。これらのことから, これら三方法はVSPショックモデルの血行動態を改善させ得るが, SFが減少しないことより血行動態の改善後も, 時期を逸しない外科治療が必要と考えられた。
  • 岸崎 邦昭, 麻生 俊英, 深町 清孝, 栗栖 和宏, 小江 雅弘, 福村 文雄, 三谷 淳夫, 坂本 真人, 鶴原 由一, 真弓 久則, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABP補助による不全心の回復過程がIABP導入直後に予測可能か否かを、新しい指標である心仕事量・圧容積面積比(SW/PVA)を用いて検討した。雑種成犬16頭を用い、常温大動脈遮断にて虚血不全心を作成した。45-60分の完全体外循環を行った後、IABPバルーンを挿入し、体外循環より離脱させた。その直後IABP on-off両状態においてSW/PVAを計算し、その変化量(SW/PVA(D))を求めた。以後、IABP補助下に体外循環離脱後120分まで30分おきにSW/PVAの値を計算し、その回復率(SW/PVA(R))を求めた。SW/PVA(D)とSW/PVA(R)とは有意な正の相関関係(SW/PVA(R)=1.10×SW/PVA(D)-0.91, P<0.05)が認められた。したがって、SW/PVAは、IABP開始後早期に予後の予測を可能とし、より強力な補助手段への遅滞ない移行を達成するうえで有力な指標となりうると思われた。さらにSW/PVAは心エコー等によって得られる心駆出率によっても近似可能であり、臨床応用も充分に可能な指標であると考えられた。
  • 朝田 政克, 中村 孝夫, 林紘 三郎, 酒井 圭輔, 田辺 達三, 増田 春彦
    1990 年 19 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大動脈内バルーンパンピングの駆動条件のうちバルーン拡張期駆動圧、容量、拡張時間について、模擬循環回路と、7頭の犬を用いて検討を行ない以下の結果を得た。 (1) バルーン拡張期駆動圧を平均大動脈圧+40mmHgから+120mHgまで上げても平均大動脈圧、大動脈流量、冠動脈流量に大きな変化はなく、in vivoでEndocardial Viability Ratio (EVR) が約10%増加したのみであった。 (2) In vitroでは左室1回拍出量に対するバルーン容量が大きくなるほど補助効果は増加した。In vivoではEVRはわずかに増加するのみであったが、これはバルーン容量が小さい為であると思われる。 (3) バルーンの拡張時間を心周期の30%から50%まで増加させたところ補助効果は、わずかに増加した。この場合、拡張時間が最大の時の収縮開始時期は次のR波の直前であった。
  • ―10年間78例の経験―
    五十嵐 寛, 川内 基裕, 松永 仁, 幕内 晴朗, 進藤 剛毅, 古瀬 彰
    1990 年 19 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1979年から1988年迄の10年間に、開心術を施行し、IABPを使用した78例の遠隔成績を求め、検討を加えた。78例中、早期死47例(60%)、退院後の遠隔期死5例(6%)、生存26例(34%)で、累積生存率は30.8%(平均追跡期間16.3ヶ月)であった。早期死因はLOS、MOFであり、遠隔期死因も心原性が多かった。性別、疾患別、術前NYHA、IABP開始時期で生存率を比較すると、虚血性心疾患の生存率は、弁膜疾患及び先天性心疾患に比して有意に高かったが、他は有意差を認めなかった。生存例の心機能は、術前及び術後遠隔期では、有意差は認めず、全例NYHA I度乃至II度と良好であった。又、遠隔期の下肢合併症も殆んど認めず、生活質的改善が認められた。
  • ―major complicationの成因および治療について―
    小山 邦広, 大滝 正己, 三木 太一, 山口 明満, 田村 栄稔, 北村 信夫
    1990 年 19 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1989年5月までに当科で施行した経皮的IABP症例中重篤な合併症を併発した4例について成因および治療を検討し問題点を考察した。
    症例は1) 急性大動脈解離(De Bakey IIIb)を併発し, 解離腔内でのIABP作動であった例1例。2) IABP抜去部に生じた仮性動脈瘤1例。3) IABP抜去後に生じた急性左総腸骨動脈完全閉塞1例。4) IABPによる下肢動脈血栓除去術施行後のmyonephropathic metabolic syndrome (MNMS) 1例の計4例である。
    経皮的IABPは簡便であるが, 本症例のような重篤な合併症を併発する可能性があり, それを常に念頭におき, 合併症発症後は迅速で適切な処置が必要である。
  • 正井 崇史, 榊原 哲夫, 渡辺 真一郎, 児玉 和久
    1990 年 19 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPのバルーン穿孔部より流入した血液がhard clotを形成し、バルーンカテーテルが抜去不能となるintraaortic balloon entrapment (IBE) の2例を経験した。症例1は左冠動脈前下行枝のPTCA後再狭窄による切迫梗塞例で、IABP挿入5日目にIBEを発症した。直ちに対側大腿動脈よりIABPを挿入し、大腿動脈切開にてバルーンを摘出した。症例2は下壁心筋梗塞後心室中隔穿孔にてIABP挿入5日目にIBEを発症し、バルーン抜去中に、血圧低下から冠動脈スパズムを併発し死亡した。本症は極めて稀であるが、IABP依存症例では致死的ともなりかねない重篤な合併症である。本症の成因は極めて小さなバルーン穿孔部より生ずる少量のhelium leakageを駆動装置が感知できないことにあると考えられた。また、特にIABP依存症例では、IBEを疑えば速やかに対側大腿動脈ないし他の経路からのバルーン挿入を試みるか、別の補助手段を考慮し、その後動脈切開にてバルーン抜去を行う必要があると考えられた。
  • 高野 久輝
    1990 年 19 巻 1 号 p. 78
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―バイパス経路から見た心機能の評価―
    小野口 勝久, 四津 良平, 田口 真一, 申範 圭, 志水 秀行, 川田 光三, 井上 正
    1990 年 19 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈遮断時の補助手段として, 遠心ポンプを用いた左心バイパス法(LHB群)または, 一時的シャント法に遠心ポンプを組み合わせた大動脈バイパス法(AOB群)施行時の心機能に及ぼす影響を成犬を用いて検討した。遮断中バイパス施行時のバイパス流量は, L且B群:50.5±59ml/Kg/min, AOB群:55.8±2.7ml/Kg/minであった。LHB群は遮断中, 左室拡張末期圧が低下し左室E maxが上昇したが遮断解除後は元のレベルに戻った。大動脈圧, 心拍出係数は有意には変動せず, また, 収縮係数, 左室コンプライアンスは遮断前, 遮断解除後5分, 60分では有意の変化はなかった。AOB群は収縮期大動脈圧, 左室拡張末期圧, 心拍出係数, 左室E maxいずれも有意の変化はなかったが(心拍出係数の遮断解除後5分は除く)遮断中拡張期大動脈が低下し, 左室コンプライアンスは低下する傾向を見せた。
  • 大島 永久, 山田 崇之, 田辺 貞雄, 横山 基幹, 中原 秀樹, 入江 嘉仁, 向山 美果也
    1990 年 19 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術6例に遠心ポンプ(Bio-Pump)による補助循環を行なった。初期の3例は離脱不可能であったが、最近の3例では2例で離脱し、1例は脳死のため補助を断念した。早期の補助循環適応決定、脱血cannula(32FポリスタンL型)の変更による補助流量の増加(2.9~3.4L/min)などが離脱の要因と考えられた。離脱不可能例の乳酸値は高値で推移し、離脱不成功時には乳酸摂取率は急激に負に傾き補助流量の適否や離脱時の判断に乳酸値、乳酸摂取率は有用であった。右室梗塞合併例、術中広範梗塞合併例では、左心補助のみでは循環維持が困難で積極的な両心補助を行う必要がある。全例にアンスロン®チューブを用いたが、heparin非投与の2例にポンプヘッド内の血栓形成をみたことから、ACT160~200秒に維持するようにheparinを投与すべきである。上行大動脈送血法で脳死1例を含め2例の意識障害が発生した。原因は不明であるが微小塞栓防止のためには大腿動脈送血法が好ましいと考えられる。
  • 乾 清重, 島貫 隆夫, 折田 博之, 深沢 学, 廣岡 茂樹, 鷲尾 正彦
    1990 年 19 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Bio-pumpは遠心力を応用したポンプであり、血球成分や凝固系の破壊変性が少ない利点を有している。我々は体外循環時間が比較的長くなる症例に本ポンプを用いその有用性にっいて検討を行った。1987年10月より当科にて施行した開心術26例を対象に、体外循環中の遊離ヘモグロビンと血小板数を経時的に測定した。Bio-pump使用症例では遊離ヘモグロビン増加率が体表面積と有意な正相関を示し、ポンプ流量の増加に伴った溶血増加が認められたが、ローラーポンプでは一定の傾向を示さなかった。体表面積1.6m2以下の症例での単位時間当たり遊離ヘモグロビン増加量はBio-pump使用症例で0.17±0.15であったのに対しローラーポンプ使用症例では0.39±0.10mg/dl/minとBio-pump使用症例で有意に少なかった。血小板については両群間で差は見られずBio-pumpの有用性は確認できなかった。しかし赤血球破壊減少の面では効果があり、特に体表面積1.6m2以下の症例で有用であった。
  • 許 俊鋭, 松村 誠, 高本 真一, 禰屋 和夫, 安達 秀雄, 朝野 晴彦, 半田 宣弘, 木村 壮介, 横手 祐二, 尾本 良三
    1990 年 19 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPや補助人工心臓による補助循環施行症例の術中・術後の心機能評価はこれまで血行動態以外に効果的なものはなく, 経食道ドプラ断層(TEE)を含めた超音波診断法がICUで行える非侵襲的診断法として重要性が増してきている。過去4年間の補助循環施行症例44例とIABP挿入不能3例を対象として補助循環時の心機能評価におけるTEEの臨床的意義に関して検討した。IABP挿入不能例3例の原因は下行大勤脈瘤や動脈解離によると診断され, 直ちに挿入操作を中止した。LVAD施行2例, RVAD施行1例, およびIABP施行34例ではTEEによる経時的心機能評価により, 十分な心機能回復を確認し補助循環よりの安全な離脱に成功した。経食道ドプラ断層は高度心不全を伴う補助循環症例の総合的心機能評価及び術後管理に集中治療室で簡便に行える唯一の実際的な診断手段であると結論した。
  • 折目 由紀彦, 長谷川 隆光, 北村 信三, 大平 政人, 陸川 秀智, 進藤 正二, 塩野 元美, 原田 泰, 畑 博明, 八木 進也, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当施設の補助人工心臓(VAD)症例15例の術後の炎症反応, 細菌検査結果, 手術回数などを分析し, 当施設の感染防止対策の効果と問題点について検討した。
    縦隔炎など重篤な感染症やVAD駆動中の細菌検出症例は皆無であり, 当施設で行なっているVAD駆動中の感染防止対策は有効であった。しかし, 炎症反応はVAD離脱後再上昇し, 細菌検査も離脱後に陽性となり, VAD駆動中のみならず, 離脱後も感染防止対策を徹底すべきであると思われた。
    検出された細菌は, 弱毒菌, 真菌で, これは抗生剤の大量, 長期間投与による日和見感染のためと考えられ, 抗生剤の種類, 量, 期間の適正な使用が必要である。
    また, 手術回数が多いほど感染機会が増え, 炎症反応の亢進, 細菌陽性率の上昇につながっており, VADの装, 脱着以外の止血を目的とした再開胸などを極力少なくすることが大切である。
  • 井街 宏
    1990 年 19 巻 1 号 p. 99-100
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 妙中 義之, 高野 久輝, 野田 裕幸, 木下 正之, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 佐々木 栄作, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    解剖学的fittingの良い高性能の全人工心臓(TAH)を開発し、慢性動物実験により評価した。左右の心室の基本形状の異なる、右のポンプが左より扁平で長い長球形のTAHを制作し、さらに、血栓好発部位である人工弁把持部と、コネクタとTAHとの結合部を一つに統合し、かつ、結合部の密着度を高め、デザインの面から抗血栓性も向上させた。同時に、術中と術直後は臨床患者の管理の際の一般的なパラメータである中心静脈圧、左房圧、動脈圧を観血的にモニタするが、それ以後は、駆動圧ラインに組込んだ空気流量計と圧トランスデューサにより非侵襲連続的にTAHの機能を監視する方法を採用した。体重53kgの子牛に植込んだところ、術後急性期、慢性期とも管理が容易で血行動態は良好に維持され、111日間に渡り生存させることができた。解剖学的適合性、抗血栓性、術後管理を改善させたTAHは動物実験による評価で良好な結果を得、臨床患者での使用に向けて大きく前進したと考える。
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 金広 啓一, 林 載鳳, 石原 浩, 松浦 雄一郎
    1990 年 19 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    振子式駆動装置と両凸レンズ形の血液ポンプを組み合わせた人工心臓を試作し、体外模擬循環装置による駆動テストを行なつた。モータの高速回転をギヤにより減速すると同時に回転軸の方向を変え、リンク機構を利用して左右二個のプッシヤを振子のように揺動して二つの血液ポンプを交互に収縮する。これにより人工心臓内部の容積の変動はなく、コンプライアンスチヤンパーが不要である。本駆動装置では左右の血圧の位相が逆になるので、%systoleは左右とも50%に設計した。ポリウレタン製の血液ポンブは二つの球面により構成される両凸レンズ形で、これを同じ半径の球面のプツシヤで収縮する。血液流入流出口にはBjörk:-Shiley人工弁を取りつけた。駆動装置本体はアルミ合金と炭素鋼を用いて製作した。モツクテストの結果、人工心臓は毎分40回から112回の範囲で毎分1。5Lから3.4Lの流量が測定された。このとき人工心臓の効率は4。5ないし6.7%であつた。
  • 壁井 信之, 駒坂 昇一, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1990 年 19 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は、高い拍動数まで追従できる、新しい形式の補助人工心臓用の血液ポンプを開発することを目的とした。このポンプは、i) 流出側にのみ人工弁を有し、側面形状が半円形の血液ポンプハウジング、ii) 流入用人工弁を組み込んだ可動式房室隔壁、iii) 房室隔壁の一端に接続された駆動軸、iv) この軸に直結された低速度DCモータ、のみで成り立ち、房室隔壁をスイング動作をさせることで、機能を発現する。モータを直結して駆動するダイレクト・ドライブ方式で、機構が非常に単純になることから、高い耐久性と小型軽量化の可能性を十分に秘めているものと期待できる。さらに、急速に心室を充満できることから、高い心拍数にも十分追従できるようになっている。この性能を、循環系のモック回路にポンプを取り付けて評価した。その結果、ポンプの最大一回拍出量は約70mlであるが、分時拍出量は拍動数の増加に線形比例して増加し、150bpmで10e/minの値が得られることが分かった。
  • ―特性試験・溶血試験による検討―
    薗部 太郎, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 永沼 茂, 秋保 洋, 林 博行, 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, 檜山 浩国, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓の小型軽量化を目的として、新たに独創的な構造と流動機構を持つ人工心臓用電磁駆動振動ポンプ(Vibrating Electro-Magnetic Pump: HEMP)を開発した。臨床応用の可能性を検討するために、モック循環および左心バイパス下の成山羊に試作ポンプを使用して流体力学的特性を解析し、さらに臨床使用上最も問題となる溶血に関して実験を行った。その結果、モック循環下で加振振動数5~20Hz、加振電圧1~20Vと駆動条件を調節した場合、最高約101/minの拍出量を得た。基本加振振動数を固定し振幅を一定の周期で変調させると、複合圧、流量波形を自在に得ることが可能であった。動物実験でも加振振動数と加振電圧の調節によって人工心臓用ポンプとして十分な流量と揚程を保てることが確認された。ポンプ駆動5時間後の△FreeHb量はin vitroで約80mg/dl、in vivoで約65mg/dlと従来のポンプよりやや多い値を示したが、予測量よりはるかに少なく臨床用人工心臓として利用可能であると判断された。
  • 越地 耕二, 増田 幸一郎, 周 英明, 宇都宮 敏男, 妙中 義之, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1990 年 19 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本報告では、体内バッテリを有するTETシステムの以下に示す問題について検討を行っている。(1)体内バッテリ充電電圧は人工心臓駆動電圧よりも高めの電圧が必要であるが、どのようにしてこれを得るか、(2)ポンプの収縮・弛緩に応じて駆動電流が変化するが、そのような状況において安定にバッテリを充電できるか、あるいは逆に、バッテリ充電時に人工心臓を十分に駆動できるか、(3)バッテリのエネルギー残量はTETシステムの停止時間に依存するが、どのような残量からでも、過充電することなくバッテリの充電が可能か。(1)、(2)に関しては、2つのコイルの方式を提案し、解析・実験・考察を行った。(3)に関しては、段別充電方式で十分に対処できるかどうか実験によって検討を行った。
  • 岡本 英治, 三田村 好矩, 三上 智久
    1990 年 19 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓用経皮的エネルギー伝送システムの高性能化を行った。1)経皮トランス励磁周波数の共振周波数自動同調機構の開発、2)光通信系の多重化とポンプストローク信号の送信、3)システムの小型化、以上3点の改良を行った。経皮トランス間の距離を変えエネルギー伝送実験を行った結果、共振周波数の変化に対し、共振周披数自動同調機構により経皮トランス励磁周波数は常に42kHzから54k地共振周波数を維持し、最適な周波数でエネルギー伝送を行うことができ、最高伝送効率75%を得た。光情報通信系の多重化は、搬送波を1.25kHz±25OHzと10kHz±3kHzに周波数分割し、それぞれの帯域内でパルス周波数変調方式により実現した。出力電圧信号とポンプストローク信号を伝送した結果、両信号が互いに干渉することなく通信することができ、良好な結果を得た。開発したシステムは、一次側エネルギー送信回路で330ml, 二次側エネルギー受信回路で47mlと小型にすることができた。
  • ―特に単独左心補助による完全両心不全時の循環維持について―
    北村 昌也, 田鎖 治, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 仁田 新一, 福留 明, 小柳 仁
    1990 年 19 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    一般的な空気駆動型の補助人工心臓を腹壁内に植え込むことが可能と考え、その臨床応用への前段階として、実験的に種々の装着法、駆動条件及び補助効果などを検討し、特に単独左心補助による完全両心不全時の循環維持の可能性について調べた。さらに補助人工心臓1心拍の脈圧低下の原因として、送血側吻合口における圧差を検討した。補助人工心臓は、東北大型(TH-7-B)血液ポンプ及び日本ゼオン社製(M-100)駆動装置を用いた。結果として、空気駆動型補助人工心臓の腹壁内植え込みは充分可能であり、適応する症例と時期の的確な選択により長期の循環維持が可能と思われた。肺血管抵抗が高くない例では、補助人工心臓を用いた単独左心補助による完全両心不全(心室細動)下の循環維持が可能であった。補助人工心臓の送血側吻合口の径が上行大動脈径の2分の1以下の場合は、同吻合部で30~50mmHg以上の圧差を生じており、血圧及び脈圧低下の一因と考えられた。
  • 井街 宏, 満渕 邦彦, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 今西 薫, 前田 潔, 米沢 卓実, 浅野 雅宏, 渥美 和彦, 藤正 巌
    1990 年 19 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは1971年以来ヤギを用い、体外にポンプを置く完全人工心臓の実験では344日間を最長に多くの長期生存を得ており、ヤギへのポンプの埋め込みは容易と考えていた。しかし、実際にポンプを開発して行なつてみると、1)フィッティングは良いにもかかわらず人工心臓に切り換えた途端拍出量が保てなくなる、2)術後も拍出量を維持するためには大量の輸液とマンニトールなど高浸透圧の輸液が必要、などこれまで行なつてきたポンプを体外に置く完全人工心臓の実験では見られなかつた生理学的異常を認め、容易に長期生存は得られなかった。従来の方法との比較から、ヤギでは上行大動脈に重要な神経叢があり、人工心臓装着のためにこれを切断するためにヤギがある種のショック状態に陥るという仮設を立て大動脈カニューレを下行大動脈に接続したところ、正常な循環動態が得られるようになった。このことは、人工心臓の手術に際して神経系が重要に関与する可能性を示唆するものである。
  • 左心補助人工心臓駆動目標値設定に関する実験的研究
    山家 智之, 仁田 新一, 片平 美明, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 林 博行, 田中 元直, 三浦 誠, 内田 直樹, 佐藤 尚 ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の時系列変動に対して時間遅れを伴わずに追従する新しい補助人工心臓自動制御システムを開発するために、交感神経情報と血行動態から将来の心拍出量を予測して左心補助人工心臓(LVAD)の予測制御を行なうシステムについて検討した。左心循環系の前負荷として平均左房圧を、後負荷として平均大動脈圧を計測し、交感神経活動の代表として腎交感神経を選択した。これらの移動平均を説明変数とし、将来の心拍出量を目標変数とする重回帰分析を施行し、心拍出量予測関数を求めた。雑種成犬を用いた動物実験における経時的な変動の観察から計算した将来の心拍出量予測関数は、実測した心拍出量と有意な相関を示した。従って血行動態と交感神経活動をモニターすることにより将来の心拍出量を予測し、これを目標値として用い、自然心臓と合わせた合計流量が目標値と一致するようにLVADを制御することにより、LVADをより生理的に、実時間的に駆動できる可能性があるものと考えられた。
  • ―エンコーダを用いた駆動制御法の実験的検討―
    山根 英之, 中村 孝夫, 林 紘三郎
    1990 年 19 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    電気モータとボールねじを用いた生体内埋め込み式補助人工心臓用のアクチュェータを高効率に駆動するために、光学式回転エンコーダの出力を用いてマイクロプロセサによりモータの駆動を制御する方式を考案し、そのためのハードウェア及びソフトウェアを試作した。このアクチュエータに容積70mlのプッシャープレート型血液ポンプを取り付け、模擬循環回路を用いて性能評価実験を行なった。その結果、モータの入力電圧を後負荷の変動に応じて速やかに変化させることが出来た。この方式によるシステム全体の最大効率は約11%となり、オープンループで駆動した時の最大効率約6%よりも大幅に改善できた。ポンプの1回拍出量は50~60ml、最大流出量は6.4l/minであり、後負荷150 mmHgに対して拍動数120 bpmまで駆動可能であった。このことから本システムが、ほぼ設計通りの基本性能を有していることが確認された。
  • 吉澤 誠, 竹田 宏, 馮 金山, 三浦 誠, 山家 智之, 片平 美明, 仁田 新一
    1990 年 19 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    空気圧駆動方式の補助人工心臓(VAD)において, VADの流入・流出カニューラにおける流速パターンを分析した. その結果, 非完全充満・非完全排出の条件下で, 血栓・溶血を防止するための駆動条件と, 駆動エネルギーを最小とするための駆動条件が一致することを示すとともに, この駆動条件が, 収縮時間対一回拍出量曲線において最適動作点として与えられることを示した. 最適動作点とは, 収縮時間対一回拍出量曲線が作る三角形の頂点, すなわち一回拍出量が最大となる点である. また, 拍出流速が零となる時刻に関する情報だけを利用して最適動作点を自動的に維持するためのアルゴリズムを提案し, これが正しく動作することを成山羊動物実験により確認した.
  • 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, 薗部 太郎, 山家 智之, 片平 美明, 仁田 新一, 吉沢 誠
    1990 年 19 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)の自動制御の制御目標とするため, 補助下の左室機能(Emax)を, 血液ポンプの駆動状況の解析から推定することを試みた。方法は, 制御対象としての左室を可変弾性モデルとした場合, その逆数はキャパシタンスに相当することから, LVADをcopulsation駆動して大動脈弁が開放されている時間区間内に駆動空気圧-拍出流量を入出力とする伝達関数を求め, 心血管系を2次系にモデル化した場合のキャパシタンスを推定するものである。急性動物実験の結果, 推定するキャパシタンスには動脈やカニューレの成分も含まれているため, Emaxの絶対値そのものを求めるのは困難であったものの, 心拍数の変動が少なく, 頻脈でない場合の推定値は左室圧容積関係から得たEmaxと相関がみられ, 心機能の経過観察には有用であり, 自動制御への利用の可能性が示唆された。
  • 川島 康生
    1990 年 19 巻 1 号 p. 151
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 八木 進也, 長谷川 隆光, 北村 信三, 大平 政人, 進藤 正二, 陸川 秀智, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 原田 泰, 畑 博明, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当施設でこれまでに経験した左心補助人工心臓(LVAD)12例の臨床例から, 人工心肺離脱後, LVAD適応までに, IABPを用いた後にLVADを駆動したものと,IABPを用いずにLVADを駆動したものとで, 術後の血行動態, 肝・腎機能の推移について比較, 検討した。その結果, 長期生存例はいずれも人工心肺離脱後, 1ABPを用いずにLVADを駆動した例であった。また, これらの例では, 中心静脈圧は低く保たれる傾向を示した。肝・腎機能では,IABPを用いた後にLVADを駆動した例のほうがより低下傾向を示し, 経時的に悪化していく傾向がみられた。
    高度の動脈硬化, 大動脈瘤等でIABPの適応外の症例はもとより, 高度PMIが疑われる症例, 長時間の体外循環症例, 臨床的に心予備能力の低下が著しいと考えられる症例には, より確実な循環補助を行う必要があり, 可及的にMOFを回避するため, LVADの適応決定には, より速やかに行うべきであると考えられた。
    当教室における, 時期を失せぬLVADの早期適用方法は有用であったと思われた。
  • 筒井 達夫, 村井 正, 井島 宏, 三井 利夫, 堀 原一
    1990 年 19 巻 1 号 p. 156-159
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体に対し人工心臓などの人工循環を施行する場合, 操作する体血流量(CO)と計測される体血管系指標との関係を検討するために, 体血管系指標として, 体血管特性インピーダンス(ZO)に着目し, 自律神経系の関与, および嫌気性代謝の指標である乳酸閾値との関連性の検討をふくめてモデル実験を行った。至適体血流量であるコントロール値は, CO-ZO関係の変曲点によって示される。交感神経阻害剤投与によって, 関係曲線の形状は変化した。また, 至適体血流量とCO-ZO関係の変曲点との間に認められた上記の関係は失われた。したがって, 体血流量操作にともなう体血管系指標変化には, 自律神経系の作用が関与しているといえる。また, 乳酸閾値は, CO-ZO関係の変曲点で示される至適体血流量値よりも低心拍出量領域にあることが判明した。以上より, CO-ZO関係の変曲点として至適体血流量を求める手法は, 人工心臓などを用いた人工的な循環制御に際し, 有用であると考えられる。
  • 斎藤 憲, 江口 昭治, 山本 和男, 諸 久永, 大関 一, 林 純一, 川並 修, 二見 靖彦, 野口 法康
    1990 年 19 巻 1 号 p. 160-163
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後の重症心不全11例に対し我々が開発した補助循環用ヘパリンコーティングチューブ(アンスロン®)とローラポンプによる流量補助を行なった。年齢は9~79才で先天性心疾患1例、弁膜症5例、虚血性心疾患4例、ARVD1例であった。補助方式は左心バイパスが5例、V-Aバイパスが3例、右心バイパスが1例、両心バイパスが2例に施行された。補助流量は0.8~3.2L/min(平均1.9L/min)、補助期間は5時間~21日間(平均93.7時間)であった。また使用後のチューブ内表面の観察を走査電顕により行ない、さらにX線マイクロアナライザー分析によりチューブ内の残存ヘパリン量の評価を行なった。
    結果は11例中6例が離脱に成功し、うち5例が退院し長期生存を得た。脳、腎、肺など諸臓器の血栓塞栓症は認められなかった。チューブ内表面の観察及び残存ヘパリン量の結果から1L/min以上の流量では少なくとも3日間は抗凝固療法が不要であると考えられた。
  • 高木 啓之, 岡本 晃〓, 高松 幹夫, 高木 登志子
    1990 年 19 巻 1 号 p. 164-167
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新生児用補助心臓は、チャンバー容積3-5me, ボール弁の弁口径4mmのものでは、犬での動物実験結果から総括的にみて希望があるが、成人用補助心臓の場合には潜在していても問題にならずに過ぎて来た問題が一斉に顕在化してくる感があり、その一つとして流入導管左房内開口部の血栓形成の問題があって、犬では慢性実験が成立しない。そこで、流入導管左房内開口部に次のような種類の工作を施してテストした。(1)単純シリコンゴム, (2)ゼラチンcoating gultaraldehyde処理, (3)cardiothenecoating, (4)gore-texgraft, (5)glutaraldehyde処理犬大動脈接続 等であった。結果は、gultaraldehyde処理犬大動脈接続導管のみ血栓形成がなかった。従って、犬で新生児用補助心臓の慢性実験をするには、(5)の流入導管を作製して行なうことが必要である。
  • 古謝 景春, 国吉 幸男, 伊波 潔, 赤崎 満, 久貝 忠男, 島袋 正勝, 山内 米邦, 喜名 盛夫, 草場 昭, 神里 隆
    1990 年 19 巻 1 号 p. 168-171
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弓部大動脈瘤手術における脳分離体外循環法の灌流条件に関する実験的研究を行ない、その臨床応用例6例に検討を加えた。
    実験方法は雑種成犬5頭を用い、右房脱血、大腿動脈送血とする人工肺を含む完全体外循環回路を作成した。常温体外循環(流量100me/kg/分)からCore coolingにて直腸温20℃(流量50me/kg/分)まで冷却し、その際の各体温における総頚動脈の血流量を測定した。その結果総頚動脈の血流量は、20℃までの低体温体外循環では、体血流量に応じて、直線的に低下することを確認した。
    脳分離体外循環を行なった臨床例は6例で、全例両側浅側頭動脈圧モニター下に、右腋窩動脈、左総頚動脈送血とし、その灌流量は体血圧と同等の圧を維持することを指標とした。6例に脳合併症はなく、1例を腎不全にて失なったが、他の5例は軽快退院した。
  • 榊原 欣作
    1990 年 19 巻 1 号 p. 172-173
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 栄作, 高野 久輝, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 木下 正之, 巽 英介, 関井 浩義, 矢倉 明彦, 赤城 治彦, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経静脈経心房中隔的左房脱血することによるLVASの簡便な装着システムを開発した. 脱血カニューレは内径8mm, 長さ610mmとし, ポンプサイズは40mlとした. スタイレットを2重構造とした結果, 山羊を用いた本装着法の検討において, X線透視下で脱血カニューレの挿入は容易で, 14日間駆動の後, 合併症なく脱着しえた. 臨床用サイズのシステムを開胸下に装着した心不全山羊の検討では, 3.0±0.4L/minのバイパス流量が得られ, 動脈圧は55.8±15.4mmHgから91.7±15.9mmHgに, 左房圧は19.3±4.0mmHgから11.6±2.2mmHgへと著明な改善を示した. 40日間駆動の検討では, ポンプ流量は常時2.7~3.3L/minで維持でき, 駆動期間中, 血漿遊離ヘモグロビンは許容値以下であった. 本システムは3.0L/min以上の流量が得られ, 緊急時等に開胸術の必要がなく, またカテ操作に精通した内科医による装着も可能と思われ, 通常の開胸術を必要とするLVADとIABPの中間的存在として, 極めて有用な補助循環手段と考える.
  • 福村 文雄, 麻生 俊英, 深町 清孝, 小江 雅弘, 三谷 淳夫, 坂本 真人, 岸崎 邦昭, 栗栖 和宏, 鶴原 由一, 松崎 浩史, ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 178-181
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)駆動時の至適心室ペーシング部位について右室収縮末期圧―容積関係を指標に実験的に検討した. 雑種成犬14頭に空気圧駆動型LVADを用いて左室心尖脱血, 上行大動脈送血の左心補助を心電図同期駆動で行い, 洞結節破壊後, 心房ペーシング(A群), 右室ペーシング(R群): および左室ペーシング(L群)を行い, 3群間で右室収縮性 (RV Emax)及び心拍出量(CO)を比較検討した. 1)RV EmaxはA群1.93±0.56mmHg/ml, R群 1.54±0.54mmHg/ml, L群: 1.93±0.45mmHg/mlでA群, L群で有意に高値を示した(p<0.01). 2)COはA群1.82±0.58L/min, R群 1.30±0.27L/min, L群 1.47±0.28L/minでA群, L群, R群の順で有意に高値を示した(p<0.01). LVAD駆動時の右心機能保持のためには, 心房ペーシングが最も良く, また心室ペーシングを要する場合は左室が有利であると考えられた.
  • 正井 崇史, 松田 暉, 中埜 粛, 酒井 敬, 榊原 哲夫, 金香 充範, 宮本 裕治, 渡辺 真一郎, 松若 良介, 新谷 英夫, 川島 ...
    1990 年 19 巻 1 号 p. 182-185
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプと外部潅流型膜型肺を組み合わせ、閉鎖回路としたportable cardiopulmonaryby passsystem (PCPB)を作製し、重症冠動脈疾患症例のsupported PTCA、重症ショック症例の心肺蘇生に応用した。アプローチは大腿動静脈より行い、重症ショック例では、引き続き胸骨縦切開からの人工心肺へ移行した。supported PTCAは3例(68~77歳)で、全例PCPBの流量補助下にてLMTのPTCAを安全に施行でき、狭窄部の改善が得られた。ショック例は、急性肺動脈塞栓(腫瘍塞栓)と急性心筋梗塞後の左室破裂(blow-out type)で、肺塞栓例では、PCPBにより蘇生と循環補助を行い、引き続き通常の体外循環下での手術に移行し救命できた。心破裂例ではPCPBによる流量補助下での破裂部閉鎖術を施行したが、救命には至らなかつた。本システムは重症冠動脈疾患のsupported PTCA、及び重症ショック症例の心肺蘇生に有用な補助手段と考えられる。
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