人工臓器
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27 巻, 2 号
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  • 西田 博
    1998 年 27 巻 2 号 p. 297-298
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 富岡 淳, 森 夫敏, 山崎 健二, 小柳 仁
    1998 年 27 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    軸流ポンプ型人工心臓を開発する上で最も大きな問題は, 血液の軸シール問題である. 本研究では, 軸流ポンプ型人工心臓用に開発されたメカニカルシールの血液密封特性を明らかにする事を目的とする. 実験では, in vitroでメカニカルシールの軸シール特性のみを評価するために設計された実験装置を用いて, 軸回転数と摺動面接触力を変化させ, 血液漏れ量, 溶血量および摩擦損失トルクを測定した. 血液漏れ量は冷却液中に漏れ出た血液のNa+濃度をICP発光分析法で測定した. 溶血量はシアンメトヘモグロビン法を用いた. 摩擦損失トルクはトルクメータで計測した. その結果, 血液の冷却液側への漏れ量は0.02[ml/6h]以下, 溶血量は40[mg/dl/6h]以下, 摩擦損失トルクも3[mNm]以下と十分に小さな値であった. トルク測定の結果から得られたストライベック曲線より, メカニカルシールは流体潤滑域と混合潤滑域にまたがって運転されている事がわかった.
  • 八田 光弘, 斎藤 聡, 木原 信一郎, 北村 昌也, 野々山 真樹, 小柳 仁
    1998 年 27 巻 2 号 p. 304-307
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    末期心不全を呈した拡張型心筋症患者(29歳、男性)に対し、Novacor型補助人工心臓植え込み術を施行、7ヶ月後米国にて心臓移植を受けた症例を経験した。Novacor駆動期間中の管理方針及び摘出後のポンプ所見、心筋組織所見について考察を加えたので報告する。術後リハビリテーションは、心エコー、運動負荷試験を行い、計画的に実施し、術後5ヶ月で、退院自宅での生活が可能であった。左室の容積の変化は術後著明な縮小を認め、運動負荷時も変化しなかった。移植時摘出されたポンプには、血栓などの所見は認められず、心筋の組織学的所見では循環補助前後で著明な改善は認められなかった。Novacor型補助人工心臓は心臓移植へのブリッジとして有用であった。
  • (入口弁の装着方向の影響)
    阿久津 敏乃介, 熊木 弘幸, 加瀬 幸広
    1998 年 27 巻 2 号 p. 308-312
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Spiml Vortex型人工心臓は、円錐形の心室形状と心室円周方向に設置された入口部の方向により心室内に形成される連続的に維持された旋回流のために、良好な流れ場の形成、特にダイアフラムとハウジングとの結合部分(H-D jmction)での洗い流しが積極的に行われることが報告されている。一方、入口に用いられる弁が(St. Vincent's Mono Flap Valve)傾斜円盤弁の一種であるため、弁の装着方向によって入口部からの流れが偏流され、これに伴い心室内の流れが大きく影響されることが考えられる。そこで本研究では、第1段階として弁装着方向が心室内流れに与える影響をレーザー流速計による流速及び乱流速度の測定と、蛍光ビーズを用いた流れの可視化を用い、定性的及び定量的に検討しようとするものである。
    Spiral Vortex型人工心臓は遠心ポンプと回流回路によって形成された定常流装置に装着され、実験は定常流の下で行った。弁の主弁口が心室中心に対して下向き、上向き、外向き、内向きの4方向に装着した場合に関し、心室内の流れ場の相違を比較検討し、流れ場の解析をした。定量的な流れ場の測定は、日本科学工業社製の1次元レーザー流速計(FLV: Fiberoptic Laser Velocimeter, Model 8801 and Mode 18015 Frequency Tracker)を用いて行い、入口部下流の3点(入口下流、45° 下流、及び90°下流)における直径方向及び高さ方向3個所の速度分布及び乱流速度分布の相違について分析した。定性的な流れ場の測定は、蛍光ビーズ(スチレンビーズ)とスリット光を用いて流れの可視化を用い、35mmカメラ及びHi8タイプの8mmビデオカメラを用いて記録し、検討した。
    実験結果により、以下の結論を得ることが出来た。
    (i) Spiral Vortex Pump内の流れは、旋回流が形成されることが確認出来た。
    (ii)入口部の角度と弁の開放角により影響された入口部下流の流れは、弁の装着方向により大きく影響されることが分かった。
    (iii)主弁口が上側に装着した場合、入口部の角度を相殺する方向で流れが形成され、その結果、速度分布が比較的時間的に安定した流れが形成された。
    (iv)主弁口が下側に装着した場合、入口部の角度と弁による偏流が加えられ、ダイアフラムに強い角度をもって流れ、その結果時間的に不安定な流れが形成された。
  • ―体外設置型から埋込み型へ―
    西村 和修, 河野 智, 仁科 健, 松田 捷彦, 築谷 朋典, 赤松 映明, 野尻 知里, 木島 利彦
    1998 年 27 巻 2 号 p. 313-318
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は長期使用を目的とした磁気浮上型遠心ポンプ(MSCP)を開発し, ポンプ性能の改良と共に小型化を図った. 埋め込み型MSCPのサイズは径82mm, 厚さ51mmで重量は4209と従来型(86×80mm, 700g)に比べかなり小型化され, 消費電力も15W程度へと半減した. これまでに京都大学医学部で羊(体重54-70kg)を用いた動物実験を3頭に実施した. 脱血は左室心尖, 送血部位は下行大動脈とした. 2例ではポンプを体外設置とし, 最近の1例に筋膜下胸壁外に植え込んだ. ポンプ流量は3.5-6.51/min, 遊離ヘモグロビンは全例で25mg/dl以下であった. ポンプ持続日数は60, 140, 80日以上(運転中)であった. 運転中止理由は1例目が感染および管路血栓, 2例目は突然の浮上停止であった. ポンプ内の血栓は認めなかった. 埋込み中のポンプ表面温度は42度前後で5mm離れた筋肉組織で2, 3度低い値であった. 以上より本ポンプは埋め込みに適した補助心臓として期待できる.
  • 巽 英介, 増澤 徹, 妙中 義之, 中村 真人, 遠藤 誠子, 西村 隆, 孫 領相, 大野 孝, 瀧浦 晃基, 武輪 能明, 中谷 武嗣 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 319-324
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    エレクトロハイドローリック方式全人工心臓を体重62kgの仔牛に埋込み、生体内での基本性能を10日間にわたって評価した。全身麻酔体外循環下に血液ポンプおよびアクチュエータを埋込み、85bpmの固定拍動数で駆動した。左右拍出量バランスをとるために心房中隔に径4.5mmのシャント孔を設けた。埋込み手技に困難はなかった。実験期間中血行動態は良好に維持され、心房間シャントにより安定した左右拍出バランスが得られた。全身酸素代謝も良好に維持され、主要臓器機能にも異常を認めなかった。装置からの熱発生も十分許容できる範囲にあった。術後9日目から駆動オイルの漏出を認め、術後10日目にベアリング破損を伴うアクチュエータ停止により実験を終了した。剖検所見では装置周辺組織の圧迫は軽微で、解剖学的適合性は良好であった。本検討により、システムの満足できる生体内での基本性能が確認され、また耐久性に関連する問題点が明らかとなった。
  • 山家 智之, 本郷 忠敬, 小林 信一, 大和田 直樹, 南 家 俊介, 永沼 滋, 柿沼 義人, 松木 英敏, 仁田 新一, 福寿 岳雄, ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 325-329
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    不可逆的な循環不全に対する治療手段として、患者のQuality of lifeも考慮に入れた完全埋め込み型の人工心臓システムの完成が望まれており、欧米を中心に世界各地で開発が進められている。本邦でも何種類かの完全埋込型人工心臓の開発が進められているが、残念ながら原理的には欧米に特許が存在するものが多く、今後の開発や商品化の問題を考えるに当たって知的所有権の問題がある可能性がある。本研究では日本発の特許を持つオリジナルのアイデアによる完全埋込型の人工心臓、振動流型人工心臓(VFP)を開発し、慢性動物実験の段階にある。このシステムではアモルファスファイバーを用いた経皮伝送システムによる電力輸送によって、完全埋込型のシステムを具現化している。本研究では現在の開発の現況を報告し、臨床への可能性について考察を加える。
  • 中田 雅子, 増澤 徹, 巽 英介, 瀧浦 晃基, 妙中 義之, 高野 久輝, 大場 謙吉, 土本 勝也, 塚原 金二, 大海 武晴
    1998 年 27 巻 2 号 p. 330-335
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋め込み型全人工心臓用血液ポンプの抗血栓性を流体力学的側面から向上させるために、その血液室内流れについて検討を行った。血液ポンプにおける流入出ポートの人工弁の主開口方向を変えて血液室内流れパターンを変化させ、可視化手法を用いて流体力学的特性の解析を行った。主流速度ベクトルについてはトレーサー法を用いて解析し、血栓形成と関係の深い壁面近傍流速度分布については、内壁に塗布した塗料の侵食を用いて評価する新しい手法、塗料剥離法を開発し、それを用いて解析した。その結果、1)血液室内部にはどのモデルにおいても旋回流が存在していた。2)洗い流し効果は旋回流の旋回方向に大きく依存しており、洗い流し効果の高い旋回流は、ダイアフラムーハウジングジャンクションに平行な旋回方向をもつ流れであった。3)旋回流の中心位置がポンプ中央部に位置するときに、洗い流し効果のむらが最小となることが明らかとなった。
  • 黒田 秀雄, G ROSENBERG, Aj SNYDER, Wj WEISS, M RAWHOUSER, Ga PROPHET, 草川 均 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 336-340
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    ペンシルバニア州立大学で完全植え込み型電気駆動全人工心臓(ETAH)の開発が進められてきた。1993年9月から1997年4月までの間に, このETAHシステムが30頭の子牛に植えられた。16頭が術後2週未満に死亡し(短期生存群), 14頭が2週以上生存した(長期生存群)。短期生存群の死亡原因は, 手術関連合併症5頭, 肺合併症9頭, メカニカルトラブル2頭であった。長期生存群の死亡原因は, メカニカルトラブル8頭, 感染3頭, 過成長2頭, 予定死1頭であった。6頭が90日以上生存し, 最長生存は160日であった。これらの死亡原因は, メカニカルトラブル2頭, 感染2頭, 過成長2頭であった。心拍出量は, 毎分140回前後の拍動でほぼ8L/分であった。CVPは, 徐々に上昇し利尿剤を必要としたものの, 術後12週までは15mmHg以下であった。この慢性動物実験により, Penn StateETAHの高い能力が示された。
  • ―電気工学的観点からのin vitroおよびin vivo評価―
    柴 建次, 周 英明, 越地 耕二, 塚原 金二, 土本 勝也, 大海 武晴, 中村 知道, 遠藤 誠子, 増澤 徹, 巽 英介, 妙中 義 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 341-346
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    DC-DCエネルギー伝送効率が86%以上の完全埋込型人工心臓駆動用体外結合形経皮エネルギー伝送システム(ECTETS)のin vitro及びin vivo実験を行った。体内コイル、体内整流回路をヤギ皮下に埋込み、体外に設置された(1)電子負荷装置または(2)電気油圧駆動方式完全埋込型人工心臓をECTETSにより動作させた。その結果、(1)において、DC-DCエネルギー伝送効率は、81.4%(出力電力19.2W)であった。In vitroと比べ効率が低下したのは、体外コイル滅菌のための消毒液の付着により分布静電容量が増加したことが原因であることがわかった。また、(2)人工心臓の駆動(70bpm)においては、駆動電力、拍出流量、DC-DCエネルギー伝送効率、埋込部最高温度はそれぞれ20.7W、6.2L/min、82.1%、40.4℃となり生体に影響がない程度であることが確認された。
  • ―体内埋込時の温度特性とエネルギー伝送効率の検討―
    中村 知道, 増澤 徹, 遠藤 誠子, 角田 幸秀, 巽 英介, 妙中 義之, 高野 久輝, 柴 建次, 越地 耕二
    1998 年 27 巻 2 号 p. 347-351
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体内完全埋込型全人工心臓用体外結合型経皮エネルギー伝送システム(TETS)の生体適合性を実用化の面からin vitro, in vivo実験にて評価した. in vitro実験では模擬負荷を用いて約24Wの電気エネルギーを伝送し, シリコン封入前後の整流回路の発熱分布特性をそれぞれ空気中で評価した. in vivo実験:では体重44kgの成山羊に体内(2次)コイルと整流回路を埋め込み, 模擬負荷を用い約24Wの電気エネルギーを伝送し, 整流回路の内部及び表面, 体外コイル表面の発熱, エネルギー伝送効率を評価した. また, エネルギー伝送中に時速2km/hのトレッドミル試験を行い, 体動によるエネルギー伝送効率への影響を検討した. その結果, 体内埋込型整流回路に異常な高温部は認められず, 生体組織に対して充分許容範囲内の発熱特性を示した. また, 伝送効率は実験条件によらず80~85%を維持した. 以上の点から, 開発中のTETSは充分な生体適合性および実用性を有することが確認された.
  • ―空芯型コイルを用いた場合―
    田代 良一, 壁井 信之, 土屋 喜一
    1998 年 27 巻 2 号 p. 352-356
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋込型人工心臓を駆動するための電気的エネルギーを体外から供給する際、経皮的エネルギー伝送(TET)システムが有利である。空芯型コイルを用いた場合、通常、一次側、二次側とも同じ共振周波数となるようにコイルやコンデンサーを選ぶことで電気エネルギーを効率よく負荷に伝送できるとされているが、一次側に駆動電圧が印加された状態で2つのコイルの結合が外れたり二次側が無負荷状態になったりすると、LCR回路のインピーダンスがコイルのほぼ純抵抗成分となって、一種の短絡現象を起こし危険である。そこで、伝送効率の観点からは多少不利ではあるが、二次側共振周波数を一次側より高くし、スイッチング周波数を二次側共振周波数よりも高めにとることによって短絡現象を抑えつつ、装着ずれに対してもエネルギー伝送およびその効率を安定させることができた。また、二次側で20Ωの純抵抗負荷にて十分高い効率で最大40W程度の供給ができた。
  • 本田 博幸, 柴 建次, 周 英明, 越地 耕二, 村井 剛次, 八名 純三, 増澤 徹, 巽 英介, 妙中 義之, 高野 久輝
    1998 年 27 巻 2 号 p. 357-362
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋込型人工心臓用体内バックアップ二次電池としてリチウムイオン二次電池を用いる場合を考え、正極剤および電解液を変化させた4種類のリチウムイオン二次電池の充放電特性を測定し、比較検討を行った。その結果、正極剤:LiNi0.8Co0.2O2、電解液Bのリチウムイオン二次電池(Ni-B)の充電時間が75.8分と最も短く、放電時の電池表面温度も43.1[℃]と最も小さいことが確認された。また、体内バックアップ二次電池として最も適していると考えられるNi-Bを用いて体内埋込用電池ケースを試作し、体内温度相当の39[℃]一定の恒温水槽内にて電気油圧駆動方式完全埋込型人工心臓を駆動したところ、拍出流量5.8~6.4[:L/min]で60分間駆動することが可能であり、放電終了時のケース表面温度は40.4[℃]であった。このことより、Ni-Bのリチウムイオン二次電池は、体内バックアップ二次電池として十分な性能を有していることが確認された。
  • 井上 雄茂, 柴 建次, 周 英明, 越地 耕二, 塚原 金二, 大海 武晴, 増澤 徹, 巽 英介, 妙中 義之, 高野 久輝
    1998 年 27 巻 2 号 p. 363-367
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体内と体外との通信の手段として、経皮光テレメトリシステム(Transcutaneous Optical Telemetry system、TOTS)が提案されている。しかしながら、本方法では送信側と受信側の間に皮膚が存在するために光の減衰が起こり伝送特性の劣化を招く。そこで、経皮光カプラの種類、光の波長、指向角の検討が重要になる。本研究では、発光素子として:Light Emitting Diode(LED)とLaser Diode(LD)を用い、受光素子としてはPINPDを用いた。これらの光素子の経皮的伝送特性について比較・検討を行った。その結果、LDは発光効率や体動などによる偏心許容量においても優れた伝送特性を有することが確認された。また、偏心許容量が最大となる発光素子と受光素子の最適間隔が存在することもわかった
  • 後藤 哲哉, 四津 良平, 三丸 敦洋, 伊藤 努, 筒井 宣政, 神田 克己, 川田 志明
    1998 年 27 巻 2 号 p. 368-372
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的または、小切開・小開胸により挿入可能な心嚢内バルーンの作製を行い、実験的にその有効性を検討した。このバルーンは血液に接触しない補助循環装置として、心嚢内に挿入し、心拍動の収縮期に同期して心室を圧迫することにより循環補助効果を得る循環補助装置である。実験方法は、雑種成犬を全身麻酔下小切開下に第6肋骨床開胸より心嚢内にバルーンを挿入し、胸骨正中切開を施行。心電図モニター、右大腿動脈から下行大動脈に圧トランスジューサーカテーテルを、右大腿静脈からスワンガンツカテーテルを挿入し、上行大動脈に電磁流量計を装着した。急性心不全モデルは左心室駆動はβプロッカーによって、右心室駆動は肺動脈狭窄にて作製した。バルーンの駆動は心電図同期とし、バルーンのoff-on testにより、大動脈流量が左心室駆動で7.7%増加、右心室駆動で6.8%増加した。左右共に流量補助効果が認められた。
  • 磯田 晋, 矢野 善己, 神 康之, 柳 浩正, 近藤 治郎, 井元 清隆, 戸部 道雄, 孟 真, 岩井 芳弘, 鈴木 伸一, 中島 英洋 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 373-378
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋ポンプは最長27ヶ月以上有効駆動した補助循環装置だが、ポンプ破裂と血栓形成が臨床応用を妨げている。我々は従来のポンプ容量(2.5-3.5ml/kgBW)の小型化(1ml/kgBW)と胸腔内留置で、ポンプ内血液のwash out改善や壁ストレス低下による破裂防止を目指し、耐疲労性骨格筋を用い作成した小型胸腔内留置骨格筋ポンプを模擬循環回路を用いて性能評価した。骨格筋ポンプは後負荷30mmHgで42.3±10.7mJ(右室の2.4倍)、後負荷80mmHgで46.0±13.5mJ(左室の約半分)の仕事量を発生し、従来型と大きな違いはなかった。駆出率は低圧系で43.6±4.3%、高圧系で31.5±3.9%を発生し、従来型(低圧系12-36%、高圧系7-14.5%)を上回った。小型胸腔内留置骨格筋ポンプは出力面では従来型と同等だが、高駆出率は血液のwash outに有利と考えられた。抗血栓性の向上、小型化による壁張力低下、筋変性低下、耐破裂性向上が予想されるが、今後の確認が必要である。
  • 武輪 能明, 巽 英介, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 増澤 徹, 西村 隆, 中村 真人, 遠藤 誠子, 高野 久輝, 田中 操一
    1998 年 27 巻 2 号 p. 379-383
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンコーティング人工肺の長期性能を慢性動物実験にて評価した. 成山羊6頭(体重50.0±1.1kg)を用い, 拍動型補助心臓を用いたV-Aバイパスに人工肺を組み込んだ. 抗凝血療法はヘパリンを2-3IU/kg/hr使用した. 評価期間は2-36日(17±14日)で, 血栓症を生じた1例を除いて人工肺に起因する中止原因はなかった. 期間中, 血流量3.7±0.6L/min, 酸素血流量比2.7±0.5の条件でガス交換能は, 酸素添加量173±39ml/min, 二酸化炭素除去量165±44ml/minと安定して推移した. 実験後の人工肺を観察したところ, 17日以上灌流した3例では入口側の血液室辺縁に血栓塊を認めたが, その他は微小な血栓を認めるのみであった. 凝固線溶系に大きな変動は見られず, 血小板数の減少も許容範囲内であった. 以上より開発したヘパリン化処理人工肺は, 抗凝血療法非施行下で, 安定したガス交換能および血液適合性を示しつつ最長36日の連続使用が可能であり, 長期間における有用性が示唆された.
  • 中村 真之, 酒井 清孝, 田原 耕一郎, 桑名 克之
    1998 年 27 巻 2 号 p. 384-389
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    外部灌流膜型人工肺の設計は、実験的な試行錯誤の結果に基づき、コストと時間を要する。そこで本研究では、外部灌流膜型人工肺内の血液流動状態やガス交換能の解析法として、コンピュータによるシミュレーション解析法を検討した。血液流れのモデル化には、多孔質媒体中の低レイノルズ数流れにおけるDarcyの法則を応用した。酸素移動のモデル化には、血中酸素分圧による物質移動係数の変化を考慮するために反応係数を用いた。得られた支配方程式の数値解を有限要素法により得た。血液流れをシミュレーション解析した結果、異なる膜充填法の場合に生じる偏流について知見が得られ、これらはX線CTによる流れの可視化実験の結果と一致した。また、円管外流れにおける物質移動の無次元相関式より血液側境膜物質移動係数を推算して、酸素移動をシミュレーション解析した。その結果より、外部灌流膜型人工肺における酸素移動速度が計算された。
  • 森下 篤, 北村 昌也, 渋谷 益宏, 栗原 寿夫, 佐々木 英樹, 小寺 孝治郎, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1998 年 27 巻 2 号 p. 390-393
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    VAB(PCPS)中の経大動脈左室ベント(TACV)による左室負荷軽減の効果を評価した。コントロール群(C群)は雑種犬7頭を、冠動脈多点結紮法による心不全モデル群(HF群)は雑種犬4頭を用いた。VABは上行大動脈送血、右房脱血により体外循環を確立し、大腿動脈より8F pigtail catheterを経大動脈経由で左室に挿入した。HF群においてEmaxはTACV併用とBaselineの間で有意差を認め、EaはBaselineと比較してTACV併用により増加傾向を認めた。心ポンプ機能の指標で拡張期末容積を考慮にいれたPRSWはVAB単独と比較してTACVにより減少傾向を認めた。心筋酸素消費量の指標であるPVAは、Baseline及びVAB単独と比較してTACV併用により有意な減少を認めた。また左室エネルギー充電の指標であるPE/PVAは、Baselineと比較してTACV併用で有意な増加を認めた。TACVにより左室仕事量(SW, PRSW)、心筋酸素消費量(PVA)は減少し、左室エネルギー充電の増加(PE/PVA)が認められたことにより、TACVは左心不全に対するPCPSの補助手段として有用である事が示唆された。
  • ―heparinとの比較―
    岡田 良晴, 川田 忠典, 遠藤 慎一, 保尊 正幸, 宮本 成基, 阿部 裕之, 武井 裕, 岡田 忠彦, 池下 正敏, 山手 昇
    1998 年 27 巻 2 号 p. 394-397
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PCPSは強力な循環補助効果を有しているが、抗凝固剤の使用、灌流中の凝固因子及び血小板消費の亢進に伴う出血傾向が問題となる。今回我々は出血傾向が特に問題となる心臓血管手術周術期におけるPCPSに対し、選択的抗thrombin剤であるargatrobanを使用し、heparinと比較検討した。Argatroban使用のA群(4例)、heparin使用のH群(3例)について運転開始時及び運転開始後1、2、3日目での血小板数とfibrinogen量、ドレーン出血量を検討した。血小板数の減少はA群が緩徐であった。fibrinogen量は1日目までは急速に減少したが、2日目より増加し、その増加度はA群が著しかった。ドレーン出血量はH群では次第に増加したのに対し、A群では明らかな減少傾向を示した。Argatrobanは血小板凝集能の抑制効果とfibrinogen温存効果を有し、出血が問題となる心臓血管手術周術期のPCPSにおける抗凝固剤としての有用性が示唆された。
  • ―術後呼吸機能温存効果に関する臨床的検討―
    堀 辰之, 篠原 宣幸, 松若 良介, 榊原 哲夫, 光野 正孝, 矢倉 明彦, 松江 一, 米田 雅博, 佐々木 繁太, 小野 まゆ, 橋 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 398-401
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    自己濃厚血小板血漿(Platelet concentrate; Pcon)作成時には血小板のみならず白血球も一部採取される。このことが体外循環により惹起される炎症反応を軽減し、術後呼吸機能を温存し得るか否かを開心術症例において検討した。冠動脈バイパス施行50例を対象としPcon採取25例(P群)、非採取25例(C群)を比較した。Pconは体外循環前に採取しプロタミン投与後に返血した。PMN elastaseは体外循環後2HrでP群が有意(P<0.05)に低値を示した。IL-6, IL-8は有意な差は認めなかったもののP群が体外循環後は低値の傾向を示した。白血球数は術後24Hr, 48HrでP群が有意(P<0.05)に低値を示した。oxygenation indexはICU帰室時、抜管時でP群が有意(P<0.05)に高値を示し、Aa-DO2、Respiratory IndexはP群が有意(P<0.05)に低値を示した。術後の血小板数、血小板凝集能はP群が有意(P<0.05)に高値を示し、この有意差は術後24Hr, 48Hrにも認められた。出血量、他家血輸血量においてもP群が有意(P<0.05)に低値を示した。以上より、Pconは自己血小板温存効果のみならず、炎症反応を軽減し術後呼吸機能の温存にも有用であることが示唆された。
  • 椎谷 紀彦, 国原 孝, 須藤 幸雄, 窪田 武浩, 吉本 公洋, 村下 十志文, 佐々木 重幸, 松居 喜郎, 佐久間 まこと, 安田 慶 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 402-404
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環中の血小板機能変化と体外循環前自己血小板採取・体外循環後再輸注の効果を, hemo STATUSを用いて血小板活性化因子150nMによるACT短縮率(CR150)により検討した. 体外循環中の血小板機能変化は, 軽度低体温下の成人心臓手術例9例, 年齢61±11歳, 体外循環時間145±22分を対象とし検討した. CR150は体外循環開始5分後に81±12%に低下し, 30分後以降回復した(p<.05). 自己血小板採取・再輸注の効果は, 超低体温下の大動脈手術2例を含む成人例10例, 年齢62±14歳, 体外循環時間190±90分を対象とし検討した. 8.2±3.0単位の血小板採取により, 血小板数は18.5±3.3万から12.3±3.9万に減少(p<.01)したが, CR150は変化しなかった. 自己血小板再輸注によりCR150は90±23%から110±20%に回復(p<.01)した. hemoSTATUSによる評価により自己血小板再輸注の有用性が示された.
  • ―至適ヘパリン・プロタミンの決定―
    上屋敷 繁樹, 染谷 忠男, 橋本 和弘
    1998 年 27 巻 2 号 p. 405-408
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来より開心術の抗凝固薬としてヘパリンが使われその指標にActivated Clotting Time(以下ACT)が用いられている。しかし、未だに確実な凝固管理ではないという報告も多い。Medtronic社製Hepcon HMSはACTと血中ヘパリン濃度の測定が可能であり、症例ごとのヘパリン感受性に応じて体外循環時の必要なヘパリン量や的確なプロタミン量を決定できる。そしてその使用により開心術後の輸血の軽減、出血の減少が期待できる。そこで、今回我々は従来から行われている方法と比較検討した。従来法にくらべヘパリン総投与量は多かったが、プロタミン総投与量は、有意な軽減が可能であり、同時にACTの正常化と血中ヘパリンの消失が得られた。従来の体外循環で困難であったreal timeのヘパリン濃度測定とプロタミン過剰投与による副作用の軽減のためにも、Hepcon HMSを用いた体外循環は従来法に比べ確実な血液凝固管理が可能と思われた。
  • 百瀬 直樹, 柳沢 充延, 金沢 宏治, 前田 孝雄, 安藤 勝信, 又吉 盛博, 北村 麻未
    1998 年 27 巻 2 号 p. 409-412
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ローラーポンプは回路の狭窄や閉塞などにより、回路内圧の異常な上昇や過度の陰圧が発生する問題点がある。今回我々は、回路内圧によりローラーポンプの回転数を制御する装置を開発した。本装置の特徴は、ローラーポンプ本体には何ら改造を加えないこと、制御を開始する回路内圧の点(以下S)と制御を行う圧力の幅(以下W)を設定できること、このWの幅の中で圧力に比例したポンプの回転制御を行うこと、陰圧に対しても使用できることである。本装置はStockert社CAPSTMRoller Pumpに接続して使用する。模擬的な人工心肺回路を作成し、本装置のポンプ特性を測定した。この結果、回路内圧がSを越えるまではローラポンプと同様な特性を示し、回路内圧がSを越えると圧力の上昇に伴い流量が低下し、設定したWの範囲で遠心ポンプと同様な特性を示した。本装置により危険な回路内圧が発生しない体外循環が実現できると考える。
  • 竹田 文洋, 乾 清重, 渡辺 隆夫, 倉岡 節夫, 飯島 善之, 箕輪 隆, 三浦 正道, 内野 秀明, 島崎 靖久
    1998 年 27 巻 2 号 p. 413-417
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンコーティング人工心肺回路の生体適合性、臨床的有用性評価を、アプロチニン、ステロイド投与症例において検討した。活性化血液凝固第12因子(XIIa)、凝固・線溶系のマーカー、サイトカインの血中濃度、thrombomodulinを測定し、ヘパリンコーティング群において体外循環中の血中XIIa因子、TAT、IL-6、IL-8値の上昇抑制を認めた。またヘパリンコーティング人工心肺回路において回路表面への血液成分付着抑制がみられた。以上から、ヘパリンコーティング人工心肺回路とアプロチニン、ステロイド投与の併用は更なる生体適合性向上効果を有しており、生体侵襲軽減に有効な手段と考えられた。
  • 椎谷 紀彦, 池田 久實, 松崎 賢司, 渡辺 環, 松居 喜郎, 関口 定美, 安田 慶秀
    1998 年 27 巻 2 号 p. 418-422
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリン結合回路が凝固線溶系と血小板, 特に膜糖蛋白に及ぼす影響を, 成人18例を非結合(N)群8例, Duraflol【(D)群10例に分け検討した. 2群間の年齢, 性, 術式, 大動脈遮断時間, 体外循環時間に有意差はなく, 体外循環はヘパリン3mg/kgにて吸引回路を使用した. 各パラメーターの測定は, ヘパリン前, ヘパリン3分後, 体外循環開始5分後, 30分後, 体外循環終了直前, プロタミン投与後とした. 体外循環中の血小板数, フィブリノゲンはN群では経時的に減少を示したが, D群では維持され, 体外循環終了直前には有意差を認めた. 膜糖蛋白IIbIIIaは体外循環開始後増加, TAT, PIC, D-dimerは経時的に増加し, 群間差はなかった. ヘパリン結合回路により体外循環中のフィブリノゲン, 血小板数が保持され, 機序として活性化血小板と回路表面の低shear環境での相互作用の抑制が考えられた.
  • ―ヘパリンコーティング膜型人工肺との比較―
    庄村 遊, 下野 高嗣, 谷 一浩, 島本 亮, 日置 巖雄, 徳井 俊也, 小野 田幸治, 高尾 仁二, 新保 秀人, 矢田 公
    1998 年 27 巻 2 号 p. 423-426
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    目的:シリコンコーティング膜型人工肺(S肺)は実験的研究において、優れた耐久性とガス交換能を有することはすでに報告した。今回臨床的研究からS肺の安全性および生体適合性を検討した。対象と方法:S肺を開心術時の体外循環に使用した22例を対象とし、ガス交換能、使用上の問題点について検討した。さらにS肺のHPO-25H・C型肺(膜面積1. 8m2)使用のACバイパス症例10例(S群)と生体適合性に優れるといわれるヘパリンコーティング(Durafloll処理)膜型人工肺(膜面積1.6m2)(H肺)使用のACバイパス症例10例(H群)を比較し、生体適合性について検討した。結果:臨床使用ではS肺のガス交換能は終了時まで良好でAir抜きも容易に施行できた。生体適合性の検討では、血小板数、TAT、PIC、Plasma free Hb、穎粒球elastaseとも両群間に有意な差は認められなかった。結語:シリコンコーティング膜型人工肺は臨床にお:いて安定したガス交換能を有し生体適合性に優れていることが示唆された。
  • 石橋 和幸, 金 一, 似鳥 徹, 久保田 好光, 川副 浩平
    1998 年 27 巻 2 号 p. 427-430
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、成犬を用いて低侵襲でかつ無輸血体外循環が可能な超低体温完全全脳虚血モデルを作成し、その装置の特性について検討し、超低体温時における虚血性神経細胞死について組織学的検討を行った。成犬7頭を用い、大腿動脈に送血管を挿入し、右外頚静脈、右大腿静脈に脱血管を挿入し体外循環を確立した。体温が15℃になった時点で、循環停止せずに超低体温循環を90分行った群をC群、循環停止を90分行った群をT群とした。全例体外循環より離脱し、術後72時間後の組織学的検討では海馬CAl領域にC群では異常所見は認められなかったが、T群では錐体細胞の著明な萎縮が多数認められた。本モデルのように装置の改良、工夫により動物実験における超低体温下体外循環および循環停止実験がより容易に可能となった。超低体温循環停止下においても、循環停止時間が90分では中枢神経に器質的障害が認められることが明らかとなった。
  • 土井 潔, 佐藤 伸一, 神田 圭一, 圓本 剛司, 夜久 均, 戸田 省吾, 北浦 一弘, 和田 行雄, 岡隆 宏
    1998 年 27 巻 2 号 p. 431-434
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来の上大静脈から行う逆行性脳潅流法の問題点である1)完全型の内頚静脈弁が存在する場合の脳への潅流不全、2)奇静脈等を介する潅流血の下半身への流出および3)左開胸アブローチ時の送血の困難さを解決することを目的として、逆行性脳潅流用の新型カテーテルを開発し、その臨床応用を行った。新型カテーテルは、内頚静脈に直接穿刺して挿入留置でき、逆行性脳潅流の際にカテーテル先端に組み込まれたバルーンを拡張させることにより上大静脈を閉塞し、バルーン近位側で内頚静脈弁より頭側に開いている側孔から送血できる構造になっている. 胸部大動脈再建術7例において、新型カテーテルを用いて逆行性脳潅流を行った。静脈造影では、造影剤が内頚静脈を頭側へ向かって流れ、バルーンによって造影剤の下半身への流出が防がれていることを確認できた. 平均潅流量327mL/minで、内頚静脈圧20mmHg前後を維持できた。新型カテーテルの送血操作は全て術野の外から行うことができるため、左開胸アプローチを要する症例でも容易に逆行性脳潅流を施行することができた。
  • ―常温(36℃)、微温(33℃)および軽度(30℃)低体温体外循環での比較―
    山口 博一郎, 山内 秀人, 迫 史朗, 西 活央
    1998 年 27 巻 2 号 p. 435-440
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    常温(W群36℃)、微温(T群33℃)、軽度低体温(C群30℃)の灌流温別に体外循環中の脳酸素代謝を評価した。各群7例、合計21例の体外循環下手術を対象とした。脳酸素モニターは近赤外分光法と内頚静脈酸素飽和度(SjO2)を用いて、脳組織酸化Hb(Oxy-Hb)、チトクロムオキシダーゼ(Cyt.aa3)の酸化還元レベル、Sjo2、脳循環指数、乳酸摂取率、乳酸ピルピン酸比を測定した。全例で術後の脳合併症はなかった。体外循環中のOxy-Hb、Cyt. aa3の酸化還元レベルは全群で低下した一方、Sjo2、脳循環指数はT群、C群で増加した。C群では復温時の脱酸素化を全指標で認めた。乳酸代謝上は嫌気性代謝は経時的に進み、各群間での差は認めなかった。低温体外循環は脳酸素代謝上、有利に働くと考えられたが、復温時の酸素需給バランスの破綻の有無に留意しながら、注意深い体外循環管理が肝要である。
  • ―直腸温35℃と32℃の比較検討―
    山崎 一也, 神 康之, 市川 由紀夫, 梶原 博一, 浜田 俊之, 佐藤 順
    1998 年 27 巻 2 号 p. 441-444
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環中の温度管理について直腸温35℃と32℃の2群で比較検討した。対象は成人CABG連続44症例で、直腸温35℃の群を35℃群(n=22)、直腸温32℃の群を32℃群(n=22)とした。患者背景に差はなかった。院内死亡、術後脳合併症はなかった。体外循環時開、大動脈遮断時間、大動脈遮断解除から体外循環離脱までの時間は両群で差はなかった。術後6時間の出血量は両群で差がなかった。dopamine使用量はICU入室時に35℃群の方が32℃群より少量であったが、心係数、平均動脈圧、全身血管抵抗は両群問で差がなかった。術後挿管日数は差がなかったが、ICU入室時動脈血酸素分圧は35℃群の方が高い傾向にあった。血液生化学的検査ではICU入室時のCK, GPT、1POD, 2PODのWBCは35℃群の方が有意に低値であった。これらの結果より体外循環中温度35℃の維持は32℃程度の体外循環中温度管理と比較して遜色が無く安全かつ有川な方法であると思われた。
  • 宇藤 純一, 森山 周二, 國友 隆二, 芦村 浩一, 北村 信夫
    1998 年 27 巻 2 号 p. 445-447
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環術後の生体内呼吸や酸塩基平衡の回復過程を低体温法と常温法に分け比較検討した。低体温群(n=13)では最低直腸温29.2±1.4℃、ポンプ流量2.4±0.1L/min/m2で維持した。常温群(n=13)では積極的深部冷却は行わず体温は自然落下とし最低直腸温33.5±0.6℃、ポンプ流量3.0±0.2L/min/m2で維持した。ICU入室時および術翌日に酸素摂取率、二酸化炭素分圧動静脈較差(PvaCO∂、動静脈pH較差を測定した。手術時間や体外循環時間は低体温群に比し常温群で有意に短かく、術後の酸素摂取率、PvaCO2、動静脈pH較差はいずれも常温群では生理的範囲に保持されていた。低体温群では術直後に体温の再降下と体血管抵抗の上昇がみられ心機能の回復が遅延した。常温法は低体温法に比し、体外循環時間が短縮され、術後の内呼吸や心機能の回復も良好であり、その臨床的有用性が示された。
  • 佐々木 英樹, 北村 昌也, 青見 茂之, 中野 秀昭, 八巻 文貴, 上部 一彦, 川合 明彦, 八田 光弘, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1998 年 27 巻 2 号 p. 448-450
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    狭小大動脈弁轍対するAVR後の弁機能および弁輪合併症を, 実効弁口面積が同じである19mmSJM-HP弁(19HP)と21mm SJMStandard弁(21S)で比較検討した. 過去3年間に当科で行ったAVRのうち, 19HPによる16例と21Sによる30例の計46例を対象とした. 術後弁機能はドップラー断層心エコーにより人工弁圧較差, 二弁葉の'動き, 人工弁逆流などで評価した潜在的溶血の指標としてLDH値(術後最高値, 退院前)を調べた. 人工弁圧較差は19HPで34±20mmHg, 21Sで28±14mmHgと差はなかった. 血栓弁, 人工弁感染, 弁輪周囲リーク, 溶血, パンヌス形成は認められなかった. LDH値(rU乃)を19HP/21Sで示すと, 術後最高値:1081±543/1014±536, 退院前:420±209/433±141であり有意差は認められなかった. 19HPと21SによるAVR後の弁輪合併症は少なく, 弁機能も良好でありほぼ同等であった. しかし, 術後に残存する人工弁圧較差から考えると, 特に19HPの選択に関しては慎重でなければならない.
  • 宮武 司, 椎谷 紀彦, 村下 十志文, 佐々木 重幸, 松居 喜郎, 佐久間 まこと, 安田 慶秀
    1998 年 27 巻 2 号 p. 451-453
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Arsオープンピボット弁はhinge部の陥凶を無くし, 血栓形成を防ぐように設計され, また弁開放に伴うエネルギーロスが小さいとされている. ATS弁の中でも小口径の弁でより大きい弁口面積を合わせ持っように設計されたAPシリーズを8例の大動脈弁置換術に使用した. 対象は大動脈弁狭窄症4例, 大動脈弁閉鎖不全症1例, 大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全3例の8例で, 年齢は53±8(43-64)歳, 男性1名, 女性7名であった. AP径18mmを5例に, 径20mmを3例に使用した. 在院死亡なし. 冠攣縮性狭心症の既往を有する1例に術直後PCPSおよびIABPを要した. 両弁置換の1例で術翌日に心房細動を契機として左脳梗塞を合併した. 他に重篤な合併症はなかった. 術後3-4週の左室大動脈圧較差およびLDH値は, 外径が一サイズ上のスタンダードSJM弁, ATS弁と同程度であった.
  • 下山 嘉章, 田口 真一
    1998 年 27 巻 2 号 p. 454-459
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1994年12月より1997年3月までに房室ブロック(AVB)を呈し、Medtronic社製モデル5032リードを使用し、1997年7月31日現在、当科にて経過観察中の21例を対象とした。双極の心房電極が11cmと12cmの位置に付いているもの(11.5cm)を使用した症例をS群(15例,74.9±5.9歳)、13cmと14cmの位置に付いているもの(13.5cm)を使用した症例をL群(6例79.8±125歳)に分類し、P波の振幅を検討した。リードは術前の仰臥位正面吸気時の胸部単純レントゲン写真上、心臓の大きさが16cmを超えるもの、心臓の大きさが15cm以上で身長145cm以上の症例では13.5cmのリードを使用し、それ以外の症例では11.5cmのリードを使用した。植え込み時のP波の振幅は、S群3.23±1.92mV、L群2.68±0.85mVであった。遠隔期(術後約3ケ月)ではS群1.93±1.42mV、L群1り61±1.07mVと良好な結果を得た。当施設のリード選択基準はおおむね妥当なものと判断された。
  • 白川 勝啓, 菅原 吉久, 田中 哲夫, 片山 國正, 水谷 登
    1998 年 27 巻 2 号 p. 460-465
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現行のSingle Pass VDD Leadを模擬した系において、多様な条件下で心房波センシングおよび心房ペーシング特牲データを取得し、Single Lead DDDの実用化に向けた基礎検討を行った。心房波の選択的検出には、心房電極の電極間距離を短く、電極表面積を小さくし、高位右房に電極対が位置するように留置することが最も望ましかった。一方、心房ペーシングにおいては、フローティング刺激時は、電極表面積が小さいほど刺激閾値は低く、かつ心房壁と電極との位置関係に至適電極間距離が依存することが判明したが、非フローティング状態と比較すると、何れの条件でも明らかに刺激閾値は高かった。
    また、右房ペーシングにおける明らかなペーシング至適部位の存在は認めなかった。
    今回の実験結果からは、フローティング電極を用いて確実な低出力心房刺激を達成する条件は見出せず、Single Lead DDDペーシングの実用化には、刺激極性を含めた更なる検討が必要と考えられた。
  • 川村 明夫, 石崎 彰, 高橋 禎人, 玉置 透, 高橋 昌宏, 目黒 順一, 久木 田和丘, 米川 元樹, 竹中 良則
    1998 年 27 巻 2 号 p. 466-468
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    リンパ球除去による体外免疫調節はステロイド抵抗性や難治性の免疫関連疾患に有効である。しかし、操作が簡単ではなく、一般的に適用されにくい。そこで、我々は不織ポリエステルを吸着材料にした輸血用凝集塊除去フィルター(ファインセル)を利用してリンパ球除去をこころみた。被験者は成人健康男子6人である。3人には動脈。静脈(AV式)、ポンプ無し体外循環を、他の3人には静脈。静脈(VV式)、バッグ貯留式吸着を行った。リンパ球はAV式では30から50%、VV式では30から70%除去された。T-cell、B-cellも30から70%除去された。活性化T-cellも40から60%除去された。赤血球の減少は認めず、両者ともに安全性に問題はなかった。しかし、効率、安定性にVV式は優れ、吸着操作を行うアフェレシスではこの方法が今後検討されるべきである。ファインセルを用いたバッグ貯留式リンパ球除去は免疫関連疾患の治療に非常に有用である。
  • 高島 征助
    1998 年 27 巻 2 号 p. 469-474
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在、臨床で使用されている素材の異なる血液透析用の中空糸膜における高反応性物質(活性種)の消去活性について検討した。すなわち、セルロース、セルローストリアセテート、ビタミンE改質セルロース、ポリスルホン、エチレン/ビニルアルコール系共重合体(エバール)の5種類の中空糸膜をそれぞ禅独に蒸留水中に浸漬し、レドックス系触媒(過硫酸カリウム/酸性亜硫酸ナトリウム)を添加した。所定時間毎に試料溶液を採取し、既知濃度のアスコルビン酸(A. A)水溶液に添加して、A. Aの紫外部吸収スペクトルの極大吸収波長位置(250nm)の吸光度を測定した. それによると膜素材によってレドックス触媒系から生成した活性種の消去能に差のあることが認められた。通常、水溶液中の活性種は極低濃度であり、その消去能の測定には特殊な装置が必要であるが、本研究で容易に測定可能の方法を確立した。
  • 角田 奈々絵, 小外保 謙一, 酒井 清孝, 福田 誠, 宮崎 誠, 日吉 辰夫
    1998 年 27 巻 2 号 p. 475-479
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析膜の血液適合性については、これまでに膜材質の違いに着目した多くの研究がある。しかし、血液適合性は、これら膜材質の違いだけではなく、膜表面での流動状態の影響も受けると考えられる。そこで、膜表面粗さの異なる5種類の膜を用い、ウシ血液を用いて血小板粘着量を測定することにより、膜表面粗さと抗血栓性を評価した。まな、ビンガム流体であるPMMAのglycerolサスペンションを用い、その流動特性である降伏値を測定した。膜表面の粗い膜では血小板粘着量が多く抗血栓性が劣り、膜表面が滑らかな膜ほど血小板粘着量が少なく抗血栓性に優れた。これらの膜について、それぞれ降伏値を測定したところ、膜表面構造の粗い膜では降伏値が大きくなり、PEGでグラフトされた麺の滑らかな膜では降伏値が小さくなった。このことから膜表面の粗さは抗血栓性に影響を与えることが示唆された。
  • 福田 康彦, 大段 秀樹, 大城 良雄, 田中 一誠
    1998 年 27 巻 2 号 p. 480-483
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ビタミンE固着型ダイアライザーは抗酸化作用から動脈硬化抑制作用が期待されるが、その臨床効果は不明である。血液透析患者64名の酸化LDLをOx-LDL(ELISA)で測定した。Ox-LDLは透析により著明に上昇し、動脈硬化性疾患の合併率がその上昇率と相関がみられた。
    そこで上昇率140%以上の13例を選んでビタミンE固着型ダイアライザー(CL-EE)を3ヶ月間使用した。その結果Ox-LDLの透析中の上昇率および透析後値の有意の下降がみられた。
    以上の結果から本ダイアライザー適応の指標の一つとして透析中のOx-LDL上昇率が考えられ、動脈硬化の抑制が期待される。
  • 米川 元樹, 川村 明夫, 久木田 和丘, 玉置 透, 山岡 一平, 網屋 毅之
    1998 年 27 巻 2 号 p. 484-489
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腎不全患者では、経口摂取した水分のうち、代謝に関与する必要最小限の水分以外は余分である。そこで血液に吸収される前に消化管に高吸収性ポリマーを投与して水分を吸収し、循環系へ入る量を減らす方法を考案した。ラットに高吸水性ポリマーを消化管内投与すると、ポリマーは水分を消化管で吸収し、大腸で水分を吸収されることなく、軟便として排泄された。5種類のポリマーを作成し腎全摘ラットに投与すると、ポリマー投与群では、生存時間が延長し、特にKO-Li, KO-02, KO-03群で平均17時間、23時間、26時間延長した。ポリマー(KO-Li, KO-02, KO-03)投与群ではcontrol群に比べ、血清K、Ca、Mgの低下、Pの上昇がみられ、さらに腎全摘後の体重増加を抑制する効果を認めた。高吸水性ポリマーの消化管内投与は、体重増加を抑制でき、さらに便秘に対する効果も期待でき、透析患者のQOLの向上や延命に寄与できるものと考えられた。
  • 鈴木 京子, 清谷 哲也, 北原 貴代志アメリコ, 鈴木 義久, 西村 善彦, 山本 恭通, 滝本 行延, 中村 達雄, 清水 慶彦, 遠藤 ...
    1998 年 27 巻 2 号 p. 490-494
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは自己神経移植にかわるものとしてポリグリコール酸(PGA)-コラーゲン複合チューブを作成しその有用性を検討してきた。今回、このチューブを用いて14匹のネコの坐骨神経を25mm再生させ、電気生理学的分析と歩行運動機能の評価を行った。5匹にはチューブ内に神経栄養因子を充填し(Factor(+))、その他には何も加えなかった(Factor(-))。全例で形態学的に再生神経が確認され、電気生理学的にも知覚神経、運動神経の機能回復が認められた。腓骨神経、脛骨神経の両方から逆方向性電位が記録される運動神経細胞が存在した。これは再生軸索が分岐している可能性を示す。運動神経細胞の軸索の再生率、分岐した形での再生率ともFactor(+)の方が高かった。歩行運動機能は足関節を屈曲させて歩行できるまで回復した。以上よりPGA-コラーゲン複合チューブは神経の再生を促し、NGF、bFGF、ラミニンなどの神経栄養因子は運動神経軸索の再生を促進している可能性が示唆された。
  • 阿部 一彦, 菊池 明彦, 伊藤 悦子, 岡野 光夫, 桜井 靖久, 堀江 俊伸
    1998 年 27 巻 2 号 p. 495-502
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ラメラ幅16nmのミクロドメイン構造を有するPHEMA-PSt-PHEMA ABA型ブロック共重合体(HSB)表面におけるリンパ球の細胞死阻止能を評価するために、HSB表面に室温にて3時間粘着したリンパ球の超微形態変化を走査型(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて解析した。さらに、HSB表面のリンパ球と正常リンパ球のTEM像を画像解析し定量的に評価した。対照群として、PSt、PHEMA-PStランダム共重合体(HSR)、Biomer表面を用いた。対照群のポリマー表面に粘着したリンパ球は形態変化が著しく、形質膜、核膜は融解されており細胞死状態であった。一方、HSB表面に粘着したリンパ球は正常リンパ球と同様に形質膜、ミトコンドリア、核膜は良好に保持されていた。また、画像解析の結果から、HSB表面のリンパ球と正常リンパ球の超微形態に有意差は認められなかった。以上のことから、HSBのミクロドメイン構造表面は対照群のポリマー表面に比べて著しいリンパ球の細胞死阻止能を有することが明らかになった。この結果から、HSBの親水/疎水型ミクロドメイン構造表面はリンパ球形質膜タンパク質の分布を規制することによってリンパ球の形態変化を抑制することが示唆された。[略語:PHEMA、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);PSt、ポリスチレン]
  • 吉岡 浩, 森 有一, 窪田 倭
    1998 年 27 巻 2 号 p. 503-506
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    室温以下で水溶液、体温でハイドロゲルとなる高分子材料(TGP)を合成し、創傷被覆材としての使用について検討した。濃度10wt%のTGP生理食塩水溶液(ゾルーゲル転移温度約18℃)を、氷冷下ゾル状態でラットの全層皮膚欠損創(4x4cm2)に注入、体温でゲル化させた。TGPハイドロゲル被覆群では滲出液が全く漏出しなかったが、市販のハイドロコロイド創傷被覆材(コムフィール®)被覆群には大量の滲出液貯留を認めた。1週間後の組織所見より、TGP群では肉芽が繊維芽細胞で占められ、新生毛細血管再生が認められるのに対し、コムフィール®群では繊維芽細胞が乏しく、遊走細胞の浸潤が認められた。創が線状創となるまでに要する期間は、TGP群の4週間に対し、コムフィール®群では6週間であった。以上より、TGPハイドロゲルは複雑形状の創面に完全密着して創を湿潤に保ち、滲出液流失を防止、良好な治癒環境を形成して創傷の治癒を促進することが示唆された。
  • 古川 克子, 牛田 多加志, 菅野 寛人, 大島 宣雄, 立石 哲也
    1998 年 27 巻 2 号 p. 507-513
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    剪断応力の存在下で, 不透明さらに様々な形状(板, 膜, フィルター状など)の材料に粘着した血小板をリアルタイムで観察するために正立型落射蛍光顕微鏡と円錐-平板型剪断応力負荷装置からなる装置を開発した. 対物レンズをコーンの上部に配置し, モーターの回転をギアを介してコーンに伝えることによって, 不透明な材料に粘着した血小板のリアルタイム観察がはじめて可能となった. 本装置を用いて, 準静的な剪断応力のレベルである0.1dyn/cm2, 静脈レベルの5.0dyn/cm2, 動脈レベルの15dyn/cm2の3種類の異なる剪断応力下で, 不透明な材料であるePTFEへの蛍光標識血小板の粘着の挙動がリアルタイムで明瞭に可視化された. 20'の角度のコーンを作製することができたため, 直径が54mmの材料に対し500μlという少量の血小板懸濁液で, 血小板と材料との相互作用を解析することができた. 以上の結果から, 本法は, in vitroにおける抗血栓性材料のスクリーニング法として有用な手段になると考えられた.
  • 菅原 理裕, 大川 敬子, 大島 宣雄
    1998 年 27 巻 2 号 p. 514-518
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経血管治療用カテーテルを用いた循環器疾患の治療においては、再狭窄などの二次的な血管傷害が引き起こされる場合がある。本研究では、血管傷害とその修復過程の加vfεro評価方法の開発を目的とした。血管内皮細胞をガラス円管内で培養する灌流培養システムを作製し、PTCA用バルーンカテーテルを用いて円管内の血管内皮細胞に圧迫刺激を加え、PTCAバルーン操作が内皮細胞の生存率に及ぼす影響を計測した。次に、バルーンカテーテルの操作条件について、拡張・与圧・減圧時間が細胞傷害に及ぼす影響を検討した。その結果、圧迫刺激後には圧迫部位のおよそ90%の培養内皮細胞が剥離することが観察された。またこの細胞剥離は、バルーンの減圧時間をコントロールすることによって減少できる可能性があることが確かめられた。以上の結果から、PTCA用バルーンカテーテルの操作条件を改善することが、治療後の再狭窄を予防する一手段になりうると考えられる。
  • 城戸 隆行, 横山 研司, 野尻 知里, 奥村 厚生, 萩原 和彦, 野川 淳彦, 木島 利彦, 堀内 邦雄, 前川 純, 杉山 知子
    1998 年 27 巻 2 号 p. 519-523
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工肺表面にヘパリンを固定化し、ヒト血液を用いてin vitro循環実験後、吸着蛋白質の解析を行った。循環中の血小板数、白血球数、PMNエラスターゼ、C3aの濃度から、ヘパリン化表面は、血小板、白血球、補体の活性化を抑制することが明らかとなった。4時間の循環後、生理食塩水で人工肺を洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む抽出液で抽出を行った。抽出液のSDS-PAGEによる蛋白質の分析から、ヘパリン化、未処理表面両方の吸着蛋白質は、血漿の蛋白組成と異なっており、表面の化学的性質が、蛋白質吸着に影響を与えていることが示された。Immunoblotにより蛋白質の同定を行ない、ヘパリン化表面には、アンチトロンビンIII(AT III)、apo E、Clq、factor H、Clエステラーゼインヒビター(CIINH)、C3aが特異的に吸着していることが明らかとなった。吸着量は、Clqが最も多く、全体の約50%を占めた。ヘパリン化表面の凝固系の抑制には、AT III、補体系の抑制には、factor H、CIINHの吸着が関与している可能性が示唆された。
  • 飯島 かおり, 宮坂 武寛, 吉見 靖男, 酒邦 清孝, 明田 川純, 田村 弘志, 田中 重則
    1998 年 27 巻 2 号 p. 524-527
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    エンドトキシン(Et)濃度の測定に用いられるリムルステストは、Et混入による測定誤差が生じやすく、煩雑な操作が必要である。そこで我々は、リムルス試薬を用いた簡便かつ連続的なモニタリング装置の開発を進めている。以前報告した測定装置では、反応時間45分で検出下限50EU/lのEtモニタリングを実現している1)。しかし、透析現場ではさらに低濃度域のEtのリアルタイムなモニタリングが望まれる。そこで、従来の装置の反応回路長を95%減少させ、反応時に流動を停止させることで、試薬の分散を抑制し、感度上昇を試みた。これまでの基礎検討から、至適反応時間を30分に設定して検量線を作成した。これより、Et濃度40-200 EU/lの範囲で良好な直線関係が得られた。同様に反応時間20分、10分でも検量線を作成したところ、反応時間20分では40-200EU/lの範囲を、反応時間10分では80-200EU/の範囲をモニタリングできるようになった。
  • 上田 寛樹, 勝矢 聡子, 山本 恭通, 松本 和也, 関根 隆, 劉 愉, 清谷 哲也, 中村 達雄, 升田 利史郎, 清水 慶彦
    1998 年 27 巻 2 号 p. 528-533
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体血管壁構成成分をもちいた人工血管や血管再建材料の基礎研究として、蟻酸あるいはトリプシン(それぞれコラーゲン線維、エラスチン線維を消化)処理が血管の組織構成要素に及ぼす効果について、病理組織的および走査電顕による検討を行った。
    結果としては(1)蟻酸処理により血管外膜と中膜の膠原線維の欠如、弾性線維束のほぐれが見られた。血管壁は短時間処理では肥厚し、長時間処理すると菲薄化した。(2)トリプシン処理により、血管外膜には変化が少なく中膜と内膜では弾性線維の伸展、菲薄化と線維束の散らばりが見られた。(3)蟻酸がコラーゲンのみを、トリプシンがエラスチンのみを選択的に分解しているわけではなく、どちらの処理においても弾性線維の間隙のコラーゲンや蛋白質の広範囲にわたる分解と内皮細胞や平滑筋細胞の脱落、結合組織の除去が見られた。
  • 櫻田 卓, 菊池 洋一, 光島 隆二, 草島 勝之
    1998 年 27 巻 2 号 p. 534-536
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1993年4月から1997年8月までに当施設で施行した大動脈ゆうちHemashield 13例(H群)と, Gelseal 17例(G群)を比較検討したH群の内訳は解離性6例(Bentall術同時施行3例), 真性瘤7例(CABG同時施行1例)であったG群の内訳は解離性10例(Bentall術同時施行3例), 真性瘤7例(CABG1例AVR1例Bentall術1例同時施行)であった. 早期死亡はH群4例(30.8%), G群で1例(5.9%)であったがいずれも人工血管との関連はなかった. 術後のCRPおよび白血球数の変動はG群で術後2週目に再燃する傾向が認められその前後ではH群が高値であったGelseal 4分枝付き人工血管は特に緊急手術や人員不足の際にグラフト作成の煩わしさがなく, 非常に有用であると考えられるが術後約1カ月後の造影CTで約25%のグラフト径の拡大を認め, を要すると思われた.
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