近年、テクノロジーの発達により快適な生活が実現する一方、環境負荷が増大し持続可能な社会への転換を迫られている。東京大学大学院工学系研究科の川原圭博教授が率いる「ERATO川原万有情報網プロジェクト」は、次世代の「道具」に求められる基盤技術の構築とアイデアの具現化を目指し、使う人にとって「ちょうど良い」デザインや性能を持つ、環境に調和した道具から新たな共生への可能性を生み出そうとしている。
長年「夢の反応」とされてきたメタンからメタノールの合成に成功したことをきっかけに、大阪大学大学院薬学研究科の井上豪教授らはコンソーシアムを立ち上げ、この酸化反応の活用を進めてきた。さまざまな分野の企業が参画し、応用先は広がりを見せている。タンパク質の立体構造解析に使われる「クライオ電子顕微鏡」の試料調製への応用では世界の注目を集める。「夢の反応」があらゆる産業へ技術革新をもたらそうとしている。
日本人の2人に1人は生涯で1回以上、がんに罹患するといわれている。放射線治療は手術や化学療法と並ぶ治療法だが、大きながんでは効果が低いとされてきた。高知大学の小川恭弘名誉教授は2006年、過酸化水素とヒアルロン酸を混合した増感剤「KORTUC」を開発し、臨床研究でその高い効果を実証してきた。より多くの患者を救うためにKORTUC(東京都港区)を設立し、現在、英国で局所進行性乳がんを対象とする臨床試験を進めている。日本発の放射線増感剤が、放射線治療のみならず、世界のがん治療に大きな変革をもたらそうとしている。
【研究成果】世界最高強度の高分子ゲルを開発 人工靭帯・関節などへの応用に期待
【研究成果】高精度のAI自動車教習システム 指導員の高齢化や採用難を補う
【開催予告】全国の大学などの技術シーズ400件を紹介 研究者による講演やマッチング機能も充実