人間と機械が調和した協働関係を追究し、個人や集団の知的活動の向上を目指すのが、CREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築(以下、「知的情報処理」)」研究領域だ。技術が社会にもたらす影響を考慮しながら、人間と機械の協働による新たな知の創出に挑む。2月号特集は、萩田紀博研究総括のインタビューとともに、 第1期に採択された早稲田大学の渡邊克巳教授と慶應義塾大学の山口高平教授の研究成果、高校生を対象に開催されたシンポジウム「人とAIの未来スクール2019」を紹介する。
環境やその場の雰囲気は、人の心や行動に働きかけ影響を与えている。そういった無意識の影響は無自覚な動作や自律神経系の反応として表出すると考え、これを科学的に解析しようと挑戦を続けているのが早稲田大学理工学術院の渡邊克巳教授だ。人と人との相互作用の効果を計測技術、生理学、認知科学といった異分野の連携により明らかにし、スポーツなどのパフォーマンスの向上や人に近い知的情報処理システムの開発に生かそうとしている。
専門知識がなくても簡単に人工知能(AI)プログラムを作成し、働くロボットを自在に操るツールを開発したのが、慶應義塾大学理工学部の山口高平教授だ。日本語で業務プロセスを記述すると、自動的にプログラムが生成されて、ロボットが動き始める。人間とロボットの調和関係や他の仕事現場への応用可能性を探るため、喫茶店での接客や小学校の授業支援の実証実験を積み重ねてきた。目指すのは、誰もがAIを使いこなせる未来社会だ。
社会を変える可能性を持つAI。だからこそ、次世代を担う若者に最新の成果を伝え、技術の在り方を共に考えたい。そんな研究者の思いから、公開シンポジウム「人とAIの未来スクール2019」が開催された。
テレイグジスタンス(遠隔存在)とは、分身ロボットを遠隔操作して、離れた場所で現実社会との相互作用を可能にする技術。この技術をまずは小売・物流業界に応用し、人手不足の解消に挑むのがTELEXISTENCE(東京都港区)だ。富岡仁最高経営責任者(CEO)は、労働場所の物理的制約を取り払い、ロボットとインターネットを通じて人がどこからでも働ける仕組みを作ろうとしている。
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