次世代蓄電池プロジェクト「ALCA-SPRING」は、リチウムイオン電池(LIB)に続く次世代蓄電池の実現を目的として2013年に発足した。運営総括を務める物質・材料研究機構の魚崎浩平フェローの強力なリーダーシップの下、革新電池を実現するために、材料からデバイス、評価解析までを一気通貫のチーム研究として行うことで、世界の追随を許さないハイレベルな技術開発を成し遂げてきた。また、これまでの10年間で50機関、約120人が代表研究者としてプロジェクトに参画し、電池分野の裾野を広げるとともに、多様な人材の育成・輩出に貢献した。
蓄電池の需要拡大が期待されている中、より安全性の高い次世代電池の開発が求められている。大阪公立大学の辰巳砂昌弘学長率いる硫化物型全固体電池サブチームと物質・材料研究機構の高田和典研究拠点長率いる酸化物型全固体電池サブチームでは、電解質を固体にすることで大容量、高出力かつ安全な全固体電池の開発を進めている。
硫黄は無機酸化物系材料に代わる蓄電池の正極活物質として注目されているが、充放電の過程で反応中間体が電解液に溶出しやすく、クーロン効率の向上は長年の課題だった。これに対し、横浜国立大学先端科学高等研究院の渡邉正義特任教授率いる正極不溶型リチウム-硫黄電池チームは、融点が低くイオンのみからなる「イオン液体」から出発した新概念の電解質を開発して中間体の溶出を抑えることに成功し、高い重量エネルギー密度を有するリチウム硫黄(Li-S)電池を実現した。
従来の蓄電池を凌駕する、より安価で高性能、さらに幅広い用途にも対応し得る次々世代電池の開発が進んでいる。東京都立大学大学院都市環境科学研究科の金村聖志教授率いるサブチームはマグネシウム(Mg)、大阪大学大学院基礎工学研究科の中西周次教授率いるサブチームは空気中の酸素(O2)をそれぞれ電極活物質に採用し、高容量で高いサイクル特性を持つ電池の開発を目指す。
若手商社員・皆川豊を主人公としたストーリー仕立てで、低炭素社会戦略センター(LCS)が発行する提案書を読み解く連載の第8回。前回はエネルギー消費に目を向け、進展著しい情報化社会を支える技術開発について学んだ皆川。今回は2050年の脱炭素社会実現に不可欠とされる大気中から二酸化炭素(CO2)直接回収する技術について、越光男特任研究員と岩崎博特任研究員にお話を伺った。
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