戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり推進するプロジェクトだ。2014年に始まった第1期では、重要な社会問題の解決や、経済・産業競争力の強化につながる11の課題が選ばれ、JSTはこのうち5つを運営する管理法人の役割を担っている。11月号特集では最終年度を迎える第1期の課題から、「革新的燃焼技術」「レジリエントな防災・減災機能の強化」を紹介する。日本が直面する問題に、既存の枠を超えた研究チームが挑む。
日本の自動車技術の分野では、意外なことに大規模な産学連携の事例がほとんどない。複数の企業や大学がコンソーシアムで活動する欧州との大きな差だ。こうした現状に対する産学共通の危機感を背景に、SIP「革新的燃焼技術」では持続的な産学連携体制の構築を目指して取り組んでいる。「産産」「学学」を含む新たな産学連携体制でガソリンエンジンの最大熱効率50パーセントに挑むのが、研究責任者としてガソリン燃焼チームを率いる慶應義塾大学の飯田訓正特任教授と産業界の立場からプロジェクトに関わるトヨタ自動車の中田浩一部長だ。
予報が難しい「ゲリラ豪雨」や竜巻などは、時として甚大な被害をもたらす。防災・減災のためには、こうした急激な気象変化の兆候を早期に捉え、事前の避難など適切な対応を取る必要がある。名古屋大学の高橋暢宏教授と東芝インフラシステムズの水谷文彦技術主査は、短時間で詳細な観測が可能な新しい気象レーダーを開発し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの実用化を目指している。
モノのインターネット(IoT)社会の到来に向けて注目を集めているのが、センサー類に搭載する自立電源として、熱を直接電気に変換できる「熱電変換素子」だ。早稲田大学の渡邉孝信教授はシリコン半導体技術を武器に、たった5度の温度差で電気を生み出すことに成功した。身の回りの温度差を利用した環境発電の実現に向け、期待がかかる。
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