高密度核物質中における核子の1粒子エネルギースペクトルを, 核子-中間子の相対論的多体問題に基づいて論ずる.1/N展開の方法を用いて, 平均場近似を超える多体相関の効果を計算する点がこの仕事の特色である.核子の1粒子運動は, 低エネルギーの粒子-空孔励起と強く結合する事が明らかとなり, この結果として, 核子の1粒子エネルギースペクトルをフェルミ面近傍で平らにする効果が現われる.この効果は, 密度とともに対数的に増大する事が示される.このため, 超高密度核物質では, 正常フェルミ液体状態が不安定となり, 新しいエキゾチックな状態が実現する事が予言される.これは, 高密度極限で平均場近似が正しい記述を与えるとする, 一般に信じられている描像が正しくない事を意味する.
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