日本調理科学会誌
Online ISSN : 2186-5787
Print ISSN : 1341-1535
ISSN-L : 1341-1535
47 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
総説
報文
  • 江口 智美, 池浦 友美, 土居 昌裕, 深江 亮平, 吉村 美紀
    2014 年 47 巻 6 号 p. 287-295
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    平均分子量および分子量分布が異なる3種の豚皮由来コラーゲンペプチド(CP1000,CP5000,CP10000,重量平均分子量Mw=1.1×103,5.4×103,1.0×104で,いずれのCPも多分散性の分子量分布)を,0%(w/w),2%(w/w),5%(w/w)の濃度で,米粉ケーキに添加した。CPの平均分子量および分子量分布と濃度が,米粉ケーキの食味と物性に及ぼす影響について,バッターの密度,ケーキの見かけの比容積,外観,重量変化,テクスチャー特性および官能評価より検討した。
    CP1000は,低分子量側の分子画分が最も多く,CP10000は,高分子量側の分子画分が最も多く存在した。CP1000とCP10000の中間であるCP5000を2%(w/w)濃度で添加すると,バッターの気泡が保護されて,ケーキの膨化が維持された。また,好ましい焦げ色や甘味が付与され,やわらかくしっとりして,飲み込みやすく,嗜好性の高いケーキが得られた。以上より,CPの平均分子量および分子量分布と濃度は,米粉ケーキの食味と物性に影響することが示唆された。
  • 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    2014 年 47 巻 6 号 p. 296-304
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,ゲルの特性が異なるゾル-ゲル混合系試料を調製し,ゲルの力学的特性の相違が,混合系試料の力学的特性及び官能評価特性に与える影響を検討した。
    ゾル-ゲル混合系試料の調製は,ゲル部分に,分子量の異なる4種の寒天(ウルトラ,大和,UP,ゼラチン寒天)を用い,微細ゲルに成型した。ゾル試料は,トロミ調整食品を緑茶飲料に添加し,粘度を3段階の程度(薄い,中間,濃いとろみ)としたものとし,重量比1対1で混合した。
    混合系試料のテクスチャー特性の結果,硬さ,付着性,凝集性いずれも,混合したゲルの特性の影響を顕著に受けた。付着性および凝集性については,ゾルの粘度が高くなる程高値を示し,ゾル粘度の影響もみられた。官能評価の結果,混合系試料の特性は,ゲルの官能評価特性とは異なったことから,試料を口に入れ飲み込むまでの咀嚼過程におけるゾルとゲルおよび唾液と混合した際の特性により評価されることが示唆された。
  • 杉浦 文香, 伊藤 聖子, 新井 映子
    2014 年 47 巻 6 号 p. 305-311
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    小麦粉のグルテン形成に関わるタンパク質組成は,製パン性や焼成後のパンの食感に大きな影響を与える。本研究では,グルテン構成タンパク質組成が摂食時のパンの食塊物性に与える影響について検討した。製パンに広く用いられる小麦粉から抽出されたグルテンを標準グルテン(SG)とし,SGの一部または全てを小麦タンパク質から調製された有機酸可溶性グルテン(ASG)で置換したものと小麦澱粉を混合し,タンパク質組成の異なる5種類の再構成小麦粉を調製した。ASG置換率が高い粉で製パンすると,パンのかたさ応力に変化は認められなかったが,凝集性は低下した。ASGの増加に伴い,模擬食塊のかたさ応力と付着性は低下し,パン粉末分散液の降伏応力は減少した。官能評価では,ASG 100%置換のパンはコントロールパン(SG 100%)よりもやわらかく,まとまりやすい食塊を形成すると評価された。これらの結果より,小麦粉のタンパク質組成は,パンの食塊物性に影響を与えることが判明した。
  • 淺井 智子, 角田 美紀子, 鈴木 麻希, 上野 真理, 杉山 寿美
    2014 年 47 巻 6 号 p. 312-319
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    乳化特性を有する卵は油脂を配合しやすく,その加熱ゲルは特有のテクスチャーとなることが知られている。しかし,実際の調理過程における卵液への油脂配合の影響を検討した報告はみあたらない。本研究では,乳脂肪クリームあるいは菜種油を加えた卵液の加熱過程でのレオロジー特性,加熱ゲルの構造とテクスチャー特性について検討した。動的粘弾性測定の結果,10℃の線形領域は,乳脂肪クリーム配合で広く,菜種油配合で狭くなり,80℃の線形領域は乳脂肪クリーム配合で狭く,菜種油配合で広くなった。また,乳脂肪クリームあるいは菜種油を配合した卵液をオムレツ状に加熱したゲルは,走査電子顕微鏡観察の結果から小さな空隙を多く有する多孔質な構造であることが示された。さらに,テクスチャー測定,官能評価から乳脂肪クリームを配合したものは,脆弱なゲルであることが確認された。これらの結果から,乳脂肪クリームあるいは菜種油の卵液への配合は,卵液の加熱過程でのレオロジー特性および加熱ゲルの構造を変化させ,脆弱あるいはしなる様な硬さ(軟らかさ)のテクスチャーを生じさせることが示された。
ノート
  • 内山 裕美子, 築舘 香澄, 加藤 みゆき, 山口 優一, 陳 栄剛, 大森 正司
    2014 年 47 巻 6 号 p. 320-325
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    緑茶を浸出する際の水の種類を変えることにより,緑茶浸出液の呈味の比較を行った。その結果,一般に硬水は緑茶の浸出には不適切であるとされていたが,硬度の高いevian水を用いて緑茶を浸出したところ,味覚センサーによるうま味強度が最も強いことが示された。evian水で浸出した緑茶と,次位のクリスタルガイザー水で浸出した緑茶について,三点比較法で官能評価を行ったところ,evian水で浸出した緑茶が有意に好まれる,との評価であった。
    また,CaCl2を用いて硬度を調節した場合には,うま味強度に対する正の効果は認められなかったが,CaCO3と組み合わせて用いることにより,CaCO3の濃度依存的にうま味強度が強まった。人工硬水を用いて緑茶を浸出し,味覚センサーと官能評価において測定したところ,evian水と同程度のうま味強度を持つ緑茶を浸出することが可能であった。
  • 福永 淑子, 瀬尾 弘子, 前田 文子
    2014 年 47 巻 6 号 p. 326-332
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    ガスとIHという異なる熱源のコンロで調理する際の心理状態を明らかにすることを目的として本研究を行った。20から60歳代の54名の被験者が,両コンロを用いて「炒める(野菜炒め),焼く(焼き魚),蒸す(茶わん蒸し),揚げる(竜田揚げ)」の4種類の調理を行い,その際の火加減の容易さ,撹拌のしやすさ,調理の終点の判断,達成感,安心感などを-2~+2の5段階で評価した。ガスコンロの方が有意に優れていると評価したのは焼き魚,野菜炒めおよび竜田揚げであった。この場合,調理の達成感は火を見ながら思い通りに火加減することによって得られると感じている人が多かった。IHが優れていると評価したのは茶碗蒸しで,これは温度を一定に保つ事が容易なためであると考えられた。家庭でガスコンロを使っている人は,火に対する恐れがなく,他方,IHを使用している人は火を怖いと感じる傾向が示唆された。調理したものの官能評価については,有意(p<0.05)に優れていたものはガスコンロの焼き魚(外観と総合評価),野菜炒め(香り),および竜田揚げ(香り)であった。
  • 早川 文代, 風見 由香利, 神保 聡子, 浦田 貴之
    2014 年 47 巻 6 号 p. 333-340
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    官能評価によって,大豆油,なたね油,とうもろこし油,パームオレインとの比較で,未加熱こめ油の風味のプロファイリングを得た。8人の訓練パネルが,大豆油を最大値のリファレンスとして,残り4種の試料油のTI評価を行った。得られたTI曲線とTIパラメータから,食べている間の風味の時間変化の特徴が示された。こめ油の風味強度は中程度であったが,強度の低下が早く,長く残らないという特徴を示した。さらに,9人の訓練パネルが,35候補用語から各試料油に該当する風味用語を選択するという方法で風味の質について評価した。データをコレスポンデンス分析に適用し,試料油の風味マップが得られた。ここからこめ油の風味の特徴は,甘い香りとまろやかさであることが示された。
講座
教材研究
クッキングルーム
トピックス&オピニオン
feedback
Top