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楠山 明, 山本 真司, 島田 淳一, 松木田 沙優
2024 年44 巻4 号 p.
601-604
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は74歳の男性。当院で9年前に早期胃癌に対し胃全摘,結腸後経路でRoux-en-Y法再建術が施行された。今回,腹痛・腹部膨満感・発熱が出現して救急来院,精査で輸入脚閉塞症の診断で緊急手術を施行した。術中所見では輸入脚の内ヘルニアに伴う閉塞であり,腸閉塞解除を施行した。術後第6病日から39℃の発熱と腹部膨満,腹痛が出現し,腹部CT検査で後腹膜に気腫を伴う膿瘍を認めたため,腹膜炎の診断で緊急再開腹術を施行した。術中所見では十二指腸水平脚に長軸方向4cmの腸管壊死を伴った穿孔部を認めたため,壊死部のデブリードマンを行い同部にTチューブを挿入してドレナージとした。術後経過は良好で,術後38日目に軽快退院した。治療に難渋したまれな輸入脚閉塞症による遅発性十二指腸穿孔の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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緑川 隆太, 室屋 大輔, 橋本 和晃, 新井 相一郎, 赤司 昌謙, 森光 洋介, 藤田 文彦, 久下 亨
2024 年44 巻4 号 p.
605-609
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
炎症性筋線維芽細胞腫瘍は筋線維芽細胞の増殖と炎症性細胞浸潤を特徴とする中間悪性腫瘍であり肝原発はまれである。症例は80歳台の男性。発熱と肝機能障害を認め,精査で肝内腫瘤を指摘された。肝生検で炎症性筋線維芽細胞腫の診断となり待機的手術を予定したが,43日後に黄疸をきたし,画像検査では腫瘍の増大を認めた。全身性炎症反応症候群を呈していたため集中治療室で管理したが,急性肝障害と呼吸不全の進行によって死亡の転機をたどった。今回われわれは急激な転機をたどった肝炎症性筋線維芽細胞腫瘍の極めてまれな1例を経験したため報告する。
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小林 弘明, 竹原 雄介, 岡田 昌樹, 杉原 黎, 駒井 聡太, 柴田 耕暉, 舘野 桂, 松土 昇平, 中川 美星子, 垣迫 健介, 髙 ...
2024 年44 巻4 号 p.
611-614
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は50歳台,女性。近医で下部消化管内視鏡検査を施行された際にスライディングチューブが腸管内に滑入したため当院に搬送された。CT検査では,S状結腸内にスライディングチューブが確認され,広範な後腹膜気腫を認めた。S状結腸まで滑入したスライディングチューブによる直腸穿通の診断で,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察したところ,腹腔内に汚染や腸管損傷は認めなかった。内視鏡的にスライディングチューブ内に下部消化管拡張用バルーンカテーテルを挿入し,バルーンを膨張させるとスライディングチューブ内にバルーンが固定され,経肛門的に摘出できた。腹腔内観察では腸管損傷は認めず,摘出後に内視鏡で腸管内を観察すると,上部直腸に深い裂傷を認め穿通部と考えられたため,クリップで縫縮を行った。腹腔鏡を併用し,内視鏡的にスライディングチューブを安全に摘出することができた。
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奥村 隆志, 藤元 静太郎, 前原 直樹
2024 年44 巻4 号 p.
615-619
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は53歳,男性。検診の上部消化管造影検査を受けた翌日に下腹部痛が出現し,当院を受診した。来院時,左下腹部に圧痛を認め,血液検査ではWBC 15,460/mm3,CRP 1.87mg/dLと炎症反応の上昇を認めた。腹部CT検査ではS状結腸周囲に腸管外ガス像を認め,S状結腸穿孔が疑われた。また,骨盤内にバリウムの停滞を認めた。S状結腸穿孔と診断し,緊急手術を施行した。術中所見では,SD junction付近のS状結腸に穿孔部を認めた。また,直腸内に鶏卵大の硬い糞石を触知した。穿孔部を含めたS状結腸の部分切除・吻合と,糞石の摘出を行い,回腸人工肛門造設を行って手術を終了した。術後経過は良好で,3週間後に退院し,約2ヵ月後に人工肛門閉鎖術を施行した。本邦での上部消化管造影検査後の大腸穿孔は100万件に3例程度で発症頻度は少ないが,重篤な合併症であり注意を要する。本症例の経過,術中所見に文献的考察を加えて報告する。
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海江田 和泉, 岡﨑 雅也, 山田 嵩宜, 小田 竜也
2024 年44 巻4 号 p.
621-624
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例1は45歳の女性で,腹痛と嘔吐で救急搬送され,CTで内ヘルニアと診断した。緊急審査腹腔鏡で大網裂孔ヘルニアを認め,腹腔鏡下にヘルニア門を開放し腸管切除せずに終了した。術後4日目に退院した。症例2は41歳の女性で,腹痛と下痢で救急搬送された。初診時は腸炎と診断されたが,翌日のCTで内ヘルニアと診断し,緊急開腹手術で大網裂孔ヘルニアを認め,ヘルニア門を開放し腸管切除せずに終了した。術後9日目に退院した。大網裂孔ヘルニアは,手術時期を逸すると腸管壊死をきたし腸切除を要することがある。腸管壊死の有無には,発症からの日数,嵌入腸管の長さが関与していると考えられる。腸管壊死がなく腸管拡張が軽度の段階であれば,腹腔鏡下のヘルニア解除も可能であり術後早期回復が期待できる。大網裂孔ヘルニアは術前診断が困難な場合が多く,内ヘルニアや絞扼性イレウスと診断した時点で審査腹腔鏡手術も含めた緊急手術を検討すべきである。
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真田 祥太朗, 田上 鑛一郎
2024 年44 巻4 号 p.
625-629
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は69歳,女性。2日前から腹痛を自覚し徐々に増悪傾向となり救急搬送された。腹部CT検査で腹水と腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎の診断で当科紹介となり同日緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内に膿汁を多量に認めたが消化管には穿孔を認めなかった。子宮底部に約20mmの穿孔を認め,子宮留膿腫の穿孔と診断し子宮摘出術を施行した。術後不正性器出血の訴えがあり,退院後婦人科での診察で子宮頸癌の診断であった。子宮留膿腫穿孔は比較的まれであるが,急性汎発性腹膜炎の原因として考慮すべき疾患の1つである。また子宮留膿腫の原因の1つとして子宮頸癌などの婦人科悪性腫瘍が原因となる可能性があり,婦人科疾患の有無検索は必須である。
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岡本 行平, 永井 元樹, 西村 隆則, 須賀 悠介
2024 年44 巻4 号 p.
631-634
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は23歳,女性。2020年7月に腹痛を自覚し救急外来に受診,腹部CTで骨盤内に直径10cm大の多囊胞性病変を認めた。腫瘍が左胃大網動脈から栄養されていることから大網腫瘍と診断した。腹痛は腫瘍の捻転によるためと考えたが絞扼や壊死は否定的であったため待機的に腹腔鏡下切除を施行した。手術は臍下1ヵ所と右側腹部2ヵ所の3ポートで施行した。腫瘍は大網内に位置し,栄養血管を含む大網は時計回りに720°以上回転し捻転していた。腫瘍を切除し標本回収用ビニールバッグに入れて下腹部の横切開創から回収した。病理診断は大網リンパ管腫であった。リンパ管腫は小児に発症することが多い疾患であるが,成人発症の大網リンパ管腫はまれな疾患であり,腹腔鏡下で切除を行った例は少ない。今回,大網リンパ管腫について文献的考察を加えて報告する。
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倉橋 岳宏, 大澤 高陽, 深見 保之, 鈴木 健太, 安藤 公隆, 齊藤 卓也, 小松 俊一郎, 佐野 力
2024 年44 巻4 号 p.
635-638
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は76歳,男性。黒色吐物と心窩部不快感を主訴に救急搬送された。腹部造影CTで膵頭部背側~十二指腸水平脚背側にかけて広範囲な後腹膜膿瘍を認めた。画像所見から傍十二指腸憩室穿通による膿瘍形成と判断した。全身状態は落ち着いていたため集中治療室管理下で保存的治療を開始した。入院後3日目に発熱と腹痛を認め,炎症反応の増悪がみられた。CT所見でも膿瘍腔の増大を認めたため,保存的治療の継続は困難と判断し,入院4日目に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行った。術後膵液漏(biochemical leakage)を併発したが軽快し入院後第19日目に退院した。傍十二指腸憩室の自然穿通はまれであり,最終的に膵頭十二指腸切除術が必要になった1例を報告する。
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新保 雅大, 田中 保平, 本村 太一, 倉井 毅, 由井 憲晶, 石橋 尚弥, 山根 賢二郎, 杉田 真穂, 藤屋 将眞, 鷹栖 相崇, ...
2024 年44 巻4 号 p.
639-642
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は79歳,男性。自転車走行中,ダンプカーに衝突されて受傷した。精査の結果,両側多発肋骨骨折,両側外傷性血気胸,両側肺挫傷,外傷性くも膜下出血,肝損傷,右腎損傷,多発胸腰椎骨折の診断となったが,いずれも保存的加療で改善した。また左横隔膜にBochdalek孔ヘルニアも指摘されたが,先天性か外傷による後天性かの判別は困難であった。Bochdalek孔ヘルニアは手術も考慮したが,過去症例および本人との協議により,内容物が後腹膜脂肪のみのため,症状増悪に注意しつつ経過観察とした。その後1年を経過しても絞扼を疑う症状の出現は認めていない。Bochdalek孔ヘルニアは新生児に多い疾患であるが,成人発症例も報告されている。報告された成人症例の多くは手術されており,保存的に長期間経過観察し得た症例は非常に少ない。受傷機転,症状,内容物を考慮したうえで保存加療とすることも選択肢になり得ると考えられた。
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宮内 隆行, 石川 正志, 川井 康裕
2024 年44 巻4 号 p.
643-647
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
絞扼性腸閉塞の術中血流評価で,近年近赤外線カメラを用いたICG蛍光造影(ICG fluorescence angiography:以下,ICG-FA)施行例が報告されている。新生児低酸素脳症がありその後遺症を併存する42歳,女性。受診2日前に腹痛を訴え嘔吐も出現し当院を受診した。造影CT検査で広範囲腸管血流低下を伴う絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を施行した。空腸起始部・腸間膜根部の癒着から生じた広範囲小腸の捻転が原因であった。癒着剝離し絞扼解除後の肉眼的評価で,広範囲暗赤色小腸(空腸から回腸,220cm)と連続した暗褐色小腸(回腸70cm)を認め,合計300cmの広範囲腸管虚血と判断した。ICG-FA評価は,肉眼的に暗赤色であった広範囲小腸は良好な蛍光像(W,口側 100cm)とモザイク状の不規則な蛍光像(G,肛門側 150cm)の,相異なる蛍光像評価となった。肛門側暗褐色回腸50cmは腸管蛍光像を欠くBと評価した。G評価小腸の全切除は広範囲腸管切除となるためG評価小腸のうちvasa rectaの蛍光・拍動が不良と判定した領域のみ切除した。温存したG評価小腸は47時間後の二期的手術で血流改善(W)を確認し,一部追加切除後に腸管吻合を施行した。ICG-FAによりG評価の虚血腸管は温存可能な場合があり,広範囲腸管切除が危惧される症例では有用な可能性がある。
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田中 宏幸, 島田 雅也, 勝尾 彬, 荒木 崇博, 山田 翔, 齋藤 健一郎, 高嶋 吉浩, 宗本 義則
2024 年44 巻4 号 p.
649-652
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
症例は心臓弁膜症術後で抗凝固薬を内服中の80歳,男性。腹痛,食思不振,嘔気を主訴に来院した。精査のCT検査で脾出血を伴う胃短軸捻転症を認めた。内視鏡的に捻転を解除し,脾出血に関してはCT検査で明らかな血管外漏出像はなく,保存加療の方針とした。その後胃軸捻転の再燃はなく,また出血のコントロールも可能であり第14病日に軽快退院となった。整復後も瀑状胃が残存しており,今回の胃軸捻転の誘因となったと考慮された。胃軸捻転症に腹腔内出血を伴うことはまれであり,内視鏡的整復での保存加療症例は本邦では1例目であった。本症例のような高リスク症例においても内視鏡的整復は最小限の侵襲で加療が可能であり,優先される治療法と考えられた。
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前川 夏穂, 上野 陽介, 中村 幸暉, 平野 琢土, 保武 雄真, 多賀 聡, 矢野 公一
2024 年44 巻4 号 p.
653-656
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
90歳,女性。20年前に直腸癌に対してMiles手術を施行され後腹膜経路で単孔式結腸ストーマが左下腹部に造設されている。持続する嘔吐で当院を受診し,傍ストーマヘルニア嵌頓が原因の腸閉塞と診断された。胃管を留置し減圧を行い自然還納したが,7日目に再発し,手術加療とした。超高齢かつ低心機能のため術中の循環動態を考慮し,開腹手術を選択した。手術はヘルニア門を閉鎖したのちコンポジットメッシュを用いてヘルニア修復を行った。傍ストーマヘルニアではヘルニア門の単純閉鎖よりもメッシュを使用した修復のほうが再発率は低いといわれるが,本邦では単純閉鎖の報告が多い。超高齢者で重症心不全を有していたがSugarbaker法を行い,術後4ヵ月間は無再発であった症例を経験した。本法は傍ストーマヘルニア嵌頓に対する有用かつ低侵襲な治療の選択肢の1つになり得ると考える。
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栗正 誠也, 西村 哲郎, 溝端 康光
2024 年44 巻4 号 p.
657-661
発行日: 2024/05/31
公開日: 2024/11/30
ジャーナル
フリー
患者は57歳の男性。バイク事故で受傷し当院に救急搬送された。呼吸数24/分,SpO2 93%(O2 10L/分)と呼吸状態が悪く,右胸部にフレイルチェストを認めた。右胸腔ドレナージを施行した後にCT検査を行ったところ,右第2~7肋骨骨折,外傷性血気胸を認めた。気管挿管を行い,陽圧換気を開始した。入院翌日に肋骨プレート固定による胸郭形成と肺縫縮術を行った。手術後にCTを再検したところ,腹腔内遊離ガスを多量に認めた。消化管穿孔を示唆する他の所見はなかったが,腹部は緊満し膀胱内圧が19mmHgと高値であり腹腔内の緊急脱気を行った。その後は定期的な膀胱内圧測定を含む全身管理を行ったが外科的介入を要さず,術後4日目に抜管し術後31日目にリハビリ目的に転院した。外傷性の特発性気腹症が腹腔内圧上昇をきたした報告は過去になかったが,腹部コンパートメント症候群を回避するために早期の認知介入が必要である。
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