日本腹部救急医学会雑誌
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23 巻, 7 号
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  • 特にメトロニダゾール経口投与の併用について
    三松 謙司, 大井田 尚継, 久保井 洋一, 川崎 篤史, 福澤 正洋
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1001-1008
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    細菌性肝膿瘍18例に対し治療法とその効果について検討した. 18例全例に全身的抗生剤投与と経皮経肝的膿瘍ドレナージ (第1段階), 肝動脈抗生剤注入療法もしくはメトロニダゾール経口投与 (第2段階), 肝動脈抗生剤注入療法とメトロニダゾール経口投与 (第3段階) を段階的に施行し, その有効性を検討した. 膿瘍数と形態では多房性, 多発性の症例が, 膿瘍の原因菌では複数感染例が第2, 3段階治療まで要するものが多かった. メトロニダゾール使用例は8例中6例が有効であった. 細菌性肝膿瘍に対する外科的治療としては, 抗生剤の全身投与と膿瘍ドレナージが最も重要な初期治療であるが, 単発多房性や多発例や複数菌感染では効果を認めない場合があり, 膿瘍の原因菌として嫌気性菌を有する際には, bacterial translocationを考慮したメトロニダゾール経口投与が細菌性肝膿瘍に対して有用であった.
  • 津村 裕昭, 市川 徹
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1009-1015
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【目的】最近では急性胆嚢炎の外科治療として腹腔鏡下胆嚢摘出術が選択されることが多いが, 治療の低侵襲性の指標となる術後在院期間が延長する要因について検討した. 【方法】4年9ヵ月に経験した胆石・総胆管結石312例のうち141例 (45.1%) が急性胆嚢炎と診断され, 救急入院に引き続いて手術が施行された. これらの急性胆嚢炎を短期在院群 (術後在院7日未満) と長期在院群 (術後在院7日以上) に分類して術後長期在院となる危険因子を検討した. 【結果】単変量解析では年齢, 上腹部手術既往, 体温, CRP値, 総胆管結石の存在, 入院から手術までの期間, 手術時間, 開腹選択, 術後合併症が, 多変量解析では上腹部手術既往, 体温, 年齢が有意な危険因子であった. 【結論】術後長期在院の危険因子は治療前のインフォームド・コンセントやクリニカルパスにおける治療スケジュール提示に有用である.
  • 住田 亙, 久保田 仁, 鈴木 秀昭, 神谷 諭, 浅羽 雄太郎, 佐藤 太一
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1017-1021
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 急性虫垂炎に対する治療として腹腔鏡下虫垂切除術が行われている. 今回, 過去3年間に当院で行われた虫垂炎手術を腹腔鏡群と開腹群に分け, 性別, 年齢, 術後食事開始時期, 鎮痛剤の使用回数, 手術時間, 合併症の有無, 総コスト, 在院日数を比較検討した. 結果として, 腹腔鏡群において, 手術時間は長く, 合併症は少なく, コストは高く, 在院日数は短かった. また, 進行度により軽症群, 重症群に分け同様の比較検討をした. 重症群では, 開腹群に比較して合併症が少なく在院日数が少なくなるという, 腹腔鏡群の利点が強調された. また, 軽症群では開腹群と比べて腹腔鏡群の合併症が増えることはなかった. 以上の結果より, 腹腔鏡下虫垂切除術は虫垂炎手術の第一選択となりうると考えられた.
  • 北 順二, 窪田 敬一
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1027-1032
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎は, 放置すると重篤な病態へ移行し救命が困難となる. 原則的に緊急手術を行うが, その原因疾患によってドレナージ方法が異なり, 外科医は適正なドレーンの留置に努めなければならない. 各疾患別のドレナージ方法と, 術後のドレーン管理について総説した. また, 最近のDamage control study, Abdominalcompartment syndromeの話題について文献的考察を加えて概説した.
  • 膵頭士二指腸切除後の膵腸吻合を中心に
    古田 一徳, 高橋 毅, 吉田 宗紀, 島田 謙, 板橋 浩一, 星野 弘樹, 鹿取 正道
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1033-1037
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    膵頭士二指腸切除術 (以下, PD), 幽門輪温存膵頭士二指腸切除術 (以下, PPPD) では膵切除後に再建として膵腸吻合を行っている. 今回, 膵腸吻合術の合併症と対策であるドレナージについて報告する. 自験例のPD, PPPD症例は258例である. 膵空腸吻合法では, 1989年までは膵断端縫合と膵空腸二層縫合を63例, 1990年からは膵空腸密着吻合を開始し195例を施行した. 膵腸吻合の合併症はこれまでの258例中11例 (4.26%) であるが, 1990年以降施行してきた膵空腸密着吻合の導入後では195例中3例 (1.54%) であった. この3例はいずれもドレナージを長期におくことで保存的に治癒した. 膵腸吻合の腹腔ドレナージの要点は, もっとも吻合部に近い腹壁から挿入する, 留置の位置としては吻合部に直接触れない前面に留置することで, 癒合をさまたげないようにする. ドレーンの種類は柔らかい素材を使用し, 不必要に長期間の留置はしないことである.
  • 安田 武史, 水沼 仁孝, 清水 敦夫, 舘野 展之, 加藤 弘毅, 北岡 芳久, 小野田 昇
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1039-1045
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    1999年よりの3年6ヵ月に当科で施行された腹腔内膿瘍経皮的ドレナージは161手技/115症例 (術後膿瘍93手技/66例, 特発性膿瘍41手技/34例, 仮性膵嚢胞27手技/15例) であった. これら115症例の転帰は, 軽快95症例 (83%), 死亡17症例 (15%), 手術3症例 (2%) で, 死亡した17症例の疾患別内訳は術後膿瘍66症例中9例 (13%), 特発性膿瘍34症例中6例 (18%), 仮性膵嚢胞15症例中2例 (13%) であった. 死亡原因は, 多臓器不全12症例で残りの5例が癌死 (術後膿瘍3例・特発性膿瘍2例) であった. 術後膿瘍で死亡した9例中3例は膵頭十二指腸切除後, 4例は腸管切除後であった. また, 経皮的ドレナージに伴う直接の重大な合併症や死亡例は認められなかった. 全症例に造影腹部CT (遅延相) を施行して, 適切な穿刺ルートおよび穿刺誘導モダリティを決定した. 内訳は超音波ガイド下穿刺: 132手技 (82%), CTガイド下穿刺: 21手技 (13%), X線透視下穿刺: 8手技 (5%) であった. 超音波ガイド下穿刺は腹部領域全体に行われ, CTガイド下穿刺はダグラス窩と後腹膜腔に対して行われた. X線透視下穿刺は手術や経皮的ドレナージ後のドレーン痩孔を利用したものがほとんどであった. また, これらの手技は必要に応じて同一患者に併用された.
  • USガイド下ドレナージ術について
    松尾 英生, 川原 隆一, 西村 一宣, 木下 壽文, 青柳 成明, 白水 和雄
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1047-1052
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当科にて過去20年間に経験した肝膿瘍ドレナージ症例29例 (肝断端膿瘍3例, 再ドレナージ3例を含む) について検討した. 平均年齢59.9歳. 男女比16: 10と男性に多かった. 入院期間は平均74.8日, ドレーン留置期間は平均38.6日であった. 主訴はほとんどの症例に熱発を認めた. 疾患は肝細胞癌が9例と一番多かった. 術前症例は7例, 術後症例は22例であり, 肝切除術およびmicro-wave coagulonecrotic therapy (MCT) が10例と一番多かった. 起炎菌はStaphylococcus epidermidiusが8例に認められた. 胆管との交通を8例に認めた他, 十二指腸, 大腸, 気管支との交通を1例ずつ認めた. 肝膿瘍は診断がついたならば速やかにドレナージするべきであり抗菌薬の投与やドレナージチューブからの洗浄で軽快しうると考えられた.
  • 大谷 泰雄, 飛田 浩輔, 堂脇 昌一, 矢澤 直樹, 石過 孝文, 柏木 宏之, 石井 正紀, 杉尾 芳紀, 今泉 俊秀, 幕内 博康
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1053-1059
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸を呈する病態には, 比較的軽症のものから急性閉塞性化膿性胆管炎などの重症なものまである. 重症の胆管炎の死亡率は極めて高く, 状況に応じて適切な緊急胆道ドレナージなどの治療方法を選択することが必要である. 一般的に閉塞性黄疸の減黄処置としては, 経皮経肝的アプローチとしてPTBD, 経乳頭的アプローチとしてENBDがあり, 病態に応じて選択されている. われわれは, 従来より閉塞性黄疸に対して, 第一選択としてPTBDを施行してきたが, 内視鏡的手技が安定した1988年5月より総胆管結石嵌頓による閉塞性黄疸の症例に対してESTを施行せずに5Fr-ENBDを用いた胆道ドレナージを開始した. 総胆管結石嵌頓による閉塞性黄疸に対する5Fr-ENBDによる減黄効果は, PTBDとほぼ同等で重篤な合併症もなく安全な方法である. しかしながら, ENBD挿入困難症例もあり, 症例に応じたドレナージ方法を適宜選択することが重要である.
  • 長谷川 俊二, 原口 義座
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1061-1068
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症壊死性膵炎は, 現在でも予後不良な疾患であるが, 近年, 病態が徐々に解明され対応した治療法が進歩し治療成績も改善してきた. 感染のない膵壊死には, 保存的非手術治療が原則である. 一方, 感染性膵壊死ではネクロセクトミーと遺残壊死巣に対しての追加切除, ドレナージなどの術後処置を合わせた治療計画が標準治療とされる. 本稿では, 壊死性膵炎の病態, 手術適応, 手術時期につき述べ, 主な術後ドレナージ法を紹介しその比較を行い, 問題点, 施行上の注意点につき簡単に言及した. しかし, 死亡率のみならず, 合併症発生率, 合併症の対処法などに関してさまざまな議論がみられ, どのアプローチが優れているかの評価は定まっていない. 感染性膵壊死と膵膿瘍の病態の区別, 重症度の評価, 手術時期などが論文によりまちまちで一定していないことが要因と考えられる. 最良の治療法を検討するには, 今後, 大規模なプロスペクティブな研究が必要であろう.
  • 辻本 広紀, 小野 聡, 間嶋 崇, 菅澤 英一, 平木 修一, 浅川 英輝, 木村 暁史, 望月 英隆
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1069-1073
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 腹部鈍痛を主訴に来院. 既往歴はアルコール性肝硬変. 大腸内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め, 生検にて高分化腺癌の診断を得て, 高位前方切除術施行. 術後第7病日より経口摂取開始, 第9病日より悪寒, 熱発出現. 血液培養検査にてEnterobacter aerogenesが検出された. 画像, 腹部所見より縫合不全は否定的であ, bacterial translocation (BT) を疑い治療的selective digestive decontamination (SDD) を開始し, 解熱, 軽快退院した. 手術より1ヵ月後腹痛が出現し腸閉塞の診断にて当科入院. 翌日より悪寒40度台の熱発. 腸液, 血液からEnterobacter cloacaeが検出され, SDDを開始したところ, 臨床症状は軽快した. いずれも明確な感染源を認めない腸内細菌による菌血症であり, 原因として肝硬変に伴うBTが強く疑われた.
  • 夏目 誠治, 寺崎 正起, 後藤 康友, 久留宮 康浩, 新宮 優二
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1075-1078
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は91歳の女性. 腹部膨満と腹痛を主訴に受診した. 腹部は膨満し板状硬の状態であった. 血液生化学検査ではミオグロビン値が2, 303ng/mlと高値を示し, 血液ガス分析にてBEが-17.1mmol/lと著明な代謝生アシドーシスとなっていた. 腹部超音波検査では胃が著しく拡張していた. 以上の所見から腸管壊死による腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した. 腹腔内には淡血性の腹水が貯留し, 胃穹隆部から体上部前壁を中心に胃壁が壊死に陥り非薄化していた. 広範囲に及ぶ胃壊死と診断し胃全摘術を施行した. 切除標本の肉眼所見では, 胃は穹隆部から体上部大蛮の前壁が壊死に陥り非薄化していた. 病理組織学的所見では, 胃壁に炎症性細胞浸潤を伴う全層性の壊死と静脈のうっ血が認められた. 本症例では, 急性胃拡張に伴う胃内圧のヒ昇により静脈系がうっ血をきたし, 壊死に陥ったと考えられた.
  • 吉田 徹, 下沖 収, 馬場 祐康, 阿部 正
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1079-1082
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    骨盤腹膜炎により直腸, 尿管狭窄をきたした症例を経験したので報告する. 症例は40歳女性で1994年に子宮内避妊リング (IUD) 挿入の既往がある. 右下腹部痛を主訴に当院救命救急センターを受診した. 腹部CTにて右水腎症を認め, 右卵巣周囲の炎症が高度であった. 下部消化管透視で直腸の狭窄も認め, 内視鏡で肛門縁より25cmの部位に狭窄を確認, 内視鏡のそれ以遠の挿入は不可能であった. 以上より骨盤腹膜炎による尿管, 直腸狭窄の術前診断で手術を施行した. 手術所見は右卵巣管が一塊となり直腸, 尿管, 虫垂を巻き込んでいた. 右付属器摘出術, 虫垂切除, 癒着剥離により炎症性に巻き込まれた直腸, 尿管を解放した. 摘出したIUDからは放線菌が検出された. 骨盤腹膜炎により尿管, 直腸狭窄に至った症例はまれである. 原因不明の直腸狭窄や尿管狭窄の症例でIUD挿入の既往がある場合には, 本症例のごとき疾患も鑑別診断にいれて検討すべきと考え報告した.
  • 石丸 啓, 中村 利夫, 宇野 彰晋, 深沢 貴子, 柏原 秀史, 丸山 敬二, 今野 弘之, 中村 達
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1083-1086
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性. 開腹手術の既往なし. 主訴は腹痛で, CT検査で内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し手術を施行した. 術中所見ではTreitz靱帯より約70cm肛門側の小腸が大網裂孔に入り込んでおり, 血流障害を認めた約1mの腸管を切除した. 開腹歴のないイレウスの原因として大網裂孔ヘルニアなどの内ヘルニアを念頭におく必要がある.
  • 土岐 朋子, 高橋 誠, 武藤 高明, 小林 國力, 豊沢 忠, 大塚 恭寛, 小笠原 猛, 守屋 智之
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1087-1090
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    人力による腹部鈍的外傷で空腸離断をきたした症例を経験した. 症例は69歳・男性で, 仰臥位の状態で腹部を4回踵で蹴られ, 腹痛を主訴に来院した. 来院時は酒酔い状態で腹部全体に疼痛を訴えていたが, 腹膜刺激症状はなく, 血液生化学検査, 単純X線検査, CT検査でも異常所見は認めなかった. 受傷8時間後に腹膜刺激症状が出現し, 諸検査の結果, 穿孔性腹膜炎の診断で受傷11時間後に緊急開腹手術を施行した. Treitz靱帯から45cmの部位で空腸が離断しており, 他に損傷部位は認めず, 空腸離断部断端切除後, 端端吻合, 吻合部口側でのtube jejunostomy, 腹腔内洗浄ドレナージを施行した. 術後創感染, 腹壁創開を併発し再縫合を要した以外は経過良好で第40病日に退院した. 外傷性小腸損傷は, 腹壁自体の打撲による疼痛のために, 初期の腹膜刺激症状が判断しがたく, 他の要素からも早期診断が困難な例が多いが, 本症例では経時的な観察と検査により早期の治療が可能であった. また, 本症例は人力による受傷, そして単独の空腸離断という点で比較的まれな症例と思われた.
  • 西 隆之, 向山 小百合, 向井 正哉, 中崎 久雄, 田島 知郎, 幕内 博康
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1091-1094
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性. 主訴は嘔吐. 開腹手術の既往はない. 突然の嘔吐・腹痛・下痢が出現し近医受診後, 当院に転送された. 来院時自覚症状は消失しており, 触診上腹部は平坦軟で腸蠕動音聴取可能であった. 血液検査所見でも異常値を認めず, 精査加療目的にて入院した. 翌日, 腹部膨隆を認め, CTでは腸管の拡張と腹水の貯留を認めた. カラードップラー腹部超音波検査にて拡張した小腸壁の血流障害を認めたため, 絞扼性イレウスと診断し, 緊急手術を施行した. S状結腸間膜と小腸間膜の間の索状物に回腸が入り込んで絞扼され壊死を起こしており, 回盲部および小腸部分切除を施行した. 術後経過は良好で, 術後12日目に軽快退院したが, 来院時にカラードップラー超音波検査を施行していれば, 早期に絞扼性イレウスの診断が確定し, 腸管切除を回避し得た可能性があり, 反省すべき症例であった.
  • 石引 佳郎, 片見 厚夫, 國井 康弘, 櫻田 睦, 小島 豊, 木原 晃, 柳沼 行宏, 橋口 忠典
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1095-1097
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 女性. 腹痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した. 腹部単純X線, CT検査で管腔内に内容物が充満し, 拡張する小腸を認めた. 帝王切開の既往があるため, 術後癒着による絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した. 回腹末端から口側約30cmの部位で腫瘤を認め, これより口側の腸管は拡張していた. 同部位に小切開を加えたところ, 約3×6cm大の俵状に一塊となった牛薄と人参を認めた. これによる食餌性イレウスと診断し, 異物を摘出しイレウスを解除した. 異物は前日に丸呑みしたきんぴらごぼうであった. 症例は全歯牙が融解, 欠損しており, 咀嚼が困難であった.
  • 中尾 健太郎, 村上 雅彦, 五藤 哲, 山崎 智己, 嘉悦 勉, 角田 明良, 草野 満夫
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1099-1102
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は39歳, 男性. 腹痛, 下痢を主訴に来院した. 来院時, 腹部単純X線検査にて腹腔内脾曲付近にスプレー缶の陰影を認めた. 注腸検査にて下行結腸内にスプレー缶の陰影を認め, 観血的手術を行うこととした. 手術は腹腔鏡を併用しつつ異物を肛門側に用手的に駆出したが途中S状結腸に損傷が起こり, 損傷部位より異物を摘出した. その損傷部位を含むS状結腸を人工肛門として留置し, 術後10病日で退院した. 腹腔鏡補助下異物摘出術は経肛門的逆行性異物の除去において有用であり, 文献的考察も含め報告する.
  • TAEで胆道出血の止血に成功した1例
    辻 秀樹, 榊原 堅式, 三井 章, 西脇 忠
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1103-1108
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれはpercutaneous taranshepatic cholangio-drainage (PTCD) 後に発症しtranscatheter arterial embolization (TAE) にて治癒せしめた肝動脈仮性動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する. 症例は64歳女性で, 腹痛, 発熱を主訴に入院した. 胆石による胆嚢炎の診断のもと, percutaneous transhepatic gallbladder drainage (PTGBD) を行い炎症は沈静化した. 三管合流部末梢総胆管に嵌頓する結石をみたためPTCDを施行したところチューブからの出血を認めた. 保存的に止血されたものの胆嚢摘出術, 総胆管結石切石術後, 三度にわたり大量の胆道出血を繰り返したため, 術後約3ヵ月後2回の肝動脈造影を行った. 初回造影で左外側区域枝に仮性動脈瘤を認めたが2回目の造影では消失していた. しかし5個の金属コイノレによる予防的塞栓術を施行したところ再出血はみられず無事軽快した.
  • 外浦 功, 川村 功, 山崎 一馬, 児玉 多曜, 森川 丘道, 飛田 浩司
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1109-1112
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性. 交通事故で, シートベルトにて腹部を強打した. 受傷後25日目に嘔吐, 腹満の症状が出現し, 当院消化器科入院となったが.保存的治療で軽快退院した. その後受傷後48日目に再びイレウス症状が出現し, 再入院となった. 小腸造影および下部消化管内視鏡でバウヒン弁から約20cm口側に回腸のピンホール様の狭窄像があり, 外傷性の遅発性小腸狭窄の診断で開腹手術を行った. 開腹所見では狭窄腸管部の腸間膜は瘢痕・硬結化していた. その硬結部を含むかたちで狭窄部小腸を切除した. 術後経過は良好で術後14日目に軽快退院となった. 病理組織学的所見では狭窄部に潰瘍 (UL-II相当) が認められ, 潰瘍部位に線維化が目立ち, 周囲の粘膜下層には浮腫と充血, 軽度の炎症性細胞浸潤が認められた. 術前診断どおり外傷性の遅発性小腸狭窄症と考えられた.
  • 新垣 美郁代, 鈴木 隆文, 菊池 友允, 重松 恭祐, 福島 正嗣, 広瀬 太郎
    2003 年 23 巻 7 号 p. 1113-1117
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳女性. 16歳頃より拒食過食, 自己誘発嘔吐歴があるも神経科を受診せず放置していた. 2001年8月30日, 夕方に過食後嘔吐困難となり, 持続的な腹部膨満感と腹痛のため翌日夜当院救急外来を受診した. 腹部所見は圧痛のみで反跳痛, 筋性防御は認めなかった. 血液生化学検査では白血球, CRPの軽度上昇以外特記すべき所見はなく, 腹部CTにおいて著明な胃内容物の貯留, 少量の胸腹水を認めたが明らかなfreeairは認めなかった. 補液, 胃管チューブによるドレナージなどの保存的治療を開始した. しかし, その後のCRPの著明な上昇と, ダグラス窩穿刺による膿性腹水の検出により腹膜炎と診断し入院4日目に緊急開腹術を行った. 胃壁は前後壁ともに胃体上部から前庭部にかけ菲薄化, 壊死を起こしており, 被覆穿孔の状態であった. 胃全摘術, 腹腔洗浄ドレナージ術を施行した. 外科的術後経過は極めて順調であり, 大学病院の精神科へ転院となった.
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