音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
55 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 白川 陽子
    2014 年 55 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,喉頭摘出者368名を対象に,手術後経過年数と心理的状態の関連について検討することを目的とした.
    相関分析の結果,自己肯定意識との相関は見られなかったが,否定的感情は手術後経過年数と負の相関が見出され,手術後1年目が高いことが示された.また分散分析と多重比較の結果,手術後3年目までの間に否定的感情に共通した変動が見られ,その一部は5年目に最も高くなることが明らかとなった.
    本結果から,喉頭摘出者への心理的支援は手術後1年目と5年目が特に重要であること,そして,それぞれの時期とその感情の特徴に合わせて心理的支援を行う必要性が考察された.
  • ─文字長と語彙性効果を指標にして─
    三盃 亜美, Max Coltheart, 宇野 彰, 春原 則子
    2014 年 55 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    筆者らの先行研究で,仮名実在語を音読する際に発達性読み書き障害児は,語彙処理の効率性が低いために非語彙処理を行っている,そして,その非語彙処理自体も遅いということが示された.本研究では,これらの非効率的な語彙処理と遅い非語彙処理という2つの問題が発達性読み書き障害成人例にも共通して示される問題なのかどうかを検討することを目的とした.発達性読み書き障害成人7名と健常者48名に,先行研究同様に文字長と語彙性の効果を調べる音読実験を行った.発達性読み書き障害群は,語彙性に関係なく,健常群よりも有意に音読潜時が長く,大きな文字長効果を示した.先行研究を再現する結果であった.本研究の発達性読み書き障害成人例は,仮名文字列の音読における語彙処理と非語彙処理双方に,先行研究の発達性読み書き障害児童と同様の問題を抱えていることが示唆された.
  • 大原 重洋, 廣田 栄子
    2014 年 55 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,音声言語コミュニケーションを用いる,平均聴力レベル75.7 dB(46.2~110 dB,1 SD 22.7)の聴覚障害幼児・児童12名(生活年齢4~7歳)の心の理論(Theory of Mind:ToM)の2領域課題の発達経緯を生活年齢4~5歳の聴力正常児12名と比較して検討した.結果,ToMの2領域課題のうち,他者の行為意図理解の発達は,おおむね4~5歳の聴児の発達に相当していた.一方,聴覚障害児は,他者の信念理解に著しく遅滞する傾向にあり,他者の視点に立ち他者の表象を思い浮かべるメタ表象能力に困難を示した.聴覚障害児がメタ表象能力を獲得するには,聴児に比して高水準の言語発達段階を要した.メタ表象能力の形成には,平均聴力レベルの他,言語発達年齢,統語的に適切な構文産出が関与しており,補聴閾値や,MLUm発達等の要因との関連性は低かった.本研究のメタ表象能力の発達と,関連する要因のデータは,基礎資料として有用と考えられた.
症例
  • 宮崎 拓也, 丸山 萩乃, 土師 知行
    2014 年 55 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    vocal cord dysfunction(以下VCD)は吸気時に声帯が内転する奇異性声帯運動により,喉頭で吸気性喘鳴をきたす病態を指す.診断には喉頭ファイバーでの診察が重要であるが,本邦での耳鼻咽喉科からのVCDに関する報告は少ない.今回VCDと診断した症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は24歳女性,看護師.咳嗽を主訴に2週間前に当院呼吸器内科を受診した.鎮咳薬を投与されたが症状は軽快せず,気管支喘息が疑われ気管支拡張薬の処方を受けたが改善を認めなかった.その後勤務中に突然,喘鳴を伴う呼吸困難感が出現したため当院救急外来を受診した.血液検査,頸胸部CTでは異常所見なく,翌日精査目的に当科紹介受診となった.喉頭ファイバーにて安静吸気時に声帯の奇異運動を認めVCDと診断した.視覚的フィードバックを用いた病態説明,および喉頭リラクゼーションによる治療を行った.1ヵ月後には声帯奇異運動,気道症状ともに消失した.VCDの非認識により気管支喘息と誤診し,誤った治療を行うケースがある.不必要な検査や治療を避けるためには,本疾患を念頭においた診察を行うことが重要である.
  • ―歌唱者の痙攣性発声障害―
    小林 武夫, 熊田 政信, 石毛 美代子, 大森 蕗恵, 望月 絢子
    2014 年 55 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    歌唱を職業とする者に,歌唱時においてのみ見られる痙攣性発声障害を「歌手の喉頭ジストニア(singer’s laryngeal dystonia)」と名づけた.痙攣性発声障害の一亜形である.通常の会話は問題がない.本症の発症前に過剰な発声訓練を行っていない.4例は第1例(女性31歳)ソプラノ,ポピュラー,第2例(女性28歳)ロック,第3例(男性40歳)バリトン,第4例(男性46歳)バリトンで,第4例のみが外転型痙攣性発声障害で,他の3例は内転型である.内転型は歌唱時に声がつまり,高音の発声障害,声域の短縮,ビブラートの生成が困難となる.外転型では,無声子音に続く母音発声が無声化する.治療は,内転型はボツリヌストキシンの少量頻回の声帯内注射が有効である.外転型では,後筋にボツリヌストキシンを注射する.
feedback
Top