(背景) 腎盂尿管癌症例の所属リンパ節転移の頻度, リンパ節転移症例の臨床成績および病理組織学的所見につき, 検討を加えることを目的にした.
(対象・方法) 1961年から1995年の間に, 当院で治療した163例の腎盂尿管癌症例のうちリンパ節郭清術を施行した89例を対象として, 所属リンパ節転移の頻度, 臨床成績および病理組織学的所見を検討した. 生存率は Kaplan-Meier 法を用い, 有意差は log-rank 検定を用いた.
(結果) リンパ節郭清術施行例を施行した, 89例中pN0が61例 (68.5%), pN1が5例 (5.6%), pN2が15例 (16.9%), pN3が8例 (9.0%) であった. またリンパ節郭清術非施行例74例中で, 開腹手術不能の4例が画像よりリンパ節転移陽性と診断され, 全症例163例では, 最低32例 (19.6%) がリンパ節転移陽性と考えられた.
治療成績を5年生存率で見るとpN0, pN (+), pN1, pN2およびpN3は, それぞれ78.8%, 12.5%, 20.0%, 20.0%および0%であった.
リンパ節転移を認めた28例の中では, 遠隔転移例は全例1・2年以内に死亡し, 遠隔転移の認めない症例での3年・5年生存率は31.4%, 17.5%と遠隔転移例に比べ, 有意に高い生存率であった (p<0.01). さらに遠隔転移のないリンパ節転移陽性例を深達度別にみると, 3年生存率でpT1は100%, pT2は66.7%, pT3は33.3%, pT4は0%であった.
(結論) 所属リンパ節転移を伴う腎盂尿管癌症例では, 異型度の低い, pT3以下の深達度で, 遠隔転移がないpN1・pN2症例では, 長期生存を得られる可能性を有するが, 多くの症例では従来の手術療法・化学療法・放射線療法では, 充分な治療効果は得られなかった.
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