日本泌尿器科学会雑誌
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89 巻, 7 号
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  • 徳田 倫章, 魚住 二郎, 熊澤 淨一, 山崎 武成, 加野 資典
    1998 年 89 巻 7 号 p. 629-634
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 慢性腎不全患者における腎性骨異栄養症と称される骨病態には, さまざまな因子が複雑にからみあっている. 今回, 簡便に短時間で骨評価できる超音波骨評価装置を用い, 透析患者における踵骨骨塩量測定しこれに影響を与える要因を解析した.
    (対象および方法) 加野病院泌尿器科にて維持透析をおこなっている慢性腎不全患者72を対象とした. 平均年齢62.8歳 (36-81歳), 平均透析期間52.7ヵ月 (2-205ヵ月) であった. アロカ社製超音波骨評価装置 (AOS-100) を用い, 踵骨の骨塩量を音響的骨評価値の値で検討した.
    (結果) 骨塩量に関与する可能性のある因子を選び, 骨塩量との関係を検討した. 骨塩量との有意な負の相関は, 年齢, 女性なら閉経期間, 血清ALP濃度で認められ, 有意な正の相関は, 身長, 体重, 透析期間, 血清P濃度, 血清Ca濃度, 経口P吸着剤の投与量 (CaCO3投与量) で認められた. 多変量解析によると, 体重, CaCO3投与量, 閉経期間, 透析期間が有意に骨塩量と相関していることが示された (重相関係数=0.646).
    (結論) 体重, CaCO3投与量, 閉経期間, 透析期間が, 透析患者における骨塩量に独立して影響を与える有意な要因と考えられた.
  • 林 祐太郎, 丸山 哲史, 小島 祥敬, 線崎 博哉, 浅井 伸章, 畦元 将隆, 最上 美保子, 最上 徹, 郡 健二郎
    1998 年 89 巻 7 号 p. 635-640
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) 尿道下裂の治療として, 現在一時的修復術が主流となりつつある. しかし尿道下裂には様々なタイプが存在するため, 単一の術式で対応することは不可能である. とくに高度の尿道下裂は索切除術を施行した後に新尿道を作成するため, 術前に作成すべき新尿道の長さを決定することは困難である. 最近われわれは高度の尿道下裂に対して, 索切除後の術中診断により, 肉様膜で新尿道への血行を温存する二術式から適切な術式を選択して修復しているので報告する.
    (方法) 外尿道口の遠位を亀頭冠状溝に沿って環状切開を施行し, 索切除を行う. 陰茎の屈曲が修正された状態で, 新尿道の長さを決定するために, 旧尿道口から亀頭先端までの長さを計測する. その長さが3cm程の場合は Transverse Preputial Island Flap 法を, 4cm以上の場合は modified OUPF IV 法を選択する.
    (結果) 1996年4月以降の1年間に, 尿道板を切離して索切除術を施行し一期的修復術を行った尿道下裂患者は14例であった. 手術成績は, TPIF法では8例中7例で, modified OUPF IV 法では6例中5例で一期的な修復に成功した.
    (結論) 索切除術後の術中診断より適切な術式を施行すれば, 高度の尿道下裂に対しても一期的な修復は十分可能と思われた.
  • 山中 幹基, 北村 雅哉, 岸川 英史, 坪庭 直樹, 古賀 実, 西村 憲二, 辻村 晃, 高原 史郎, 松宮 清美, 奥山 明彦
    1998 年 89 巻 7 号 p. 641-646
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 補中益気湯は男性不妊症に対して広く用いられており, その臨床的有用性についての報告は数多く見られるが, その作用機序の解明につながる in vitro の研究は少ない. 我々は同薬が精巣細胞に働き造精機能を促進するのみならず, 直接精子に対する効果があるのではないかと考え, 精液自動分析装置 (CASA) を用いた in vitro の系を開発, 検討した.
    (対象と方法) 健常男子10名の精液から swim up 法により運動精子を調整, 抗精子抗体を含む血清による免疫学的負荷をかけた状態, ならびに正常血清をかけた状態で補中益気湯の添加の有無による精子運動性 (運動率, 運動速度, 直進性) の経時的変化をCASAを用いて比較, 検討した.
    (結果) 抗精子抗体を含む血清を加えると精子運動率は2時間後, 92.8%から67.7%に低下したが, さらに補中益気湯を加えた群ではその低下が92.9%から80.6%と有意に減少した. 運動速度, 直進性については補中益気湯の添加の有無による有意な差はなかった. 正常血清を加えた場合にはこれら3つのパラメーターについて補中益気湯の有無で両群に有意差はなかった.
    (結論) 補中益気湯に精子に対する保護作用があることが示唆された. 今回の検討では免疫学的負荷をかけた正常精子を用いたが, 男性不妊症患者では障害感受性が高まっている事が知られており, 補中益気湯の不妊症に対する作用機序の一部に精子に対する直接的保護作用があることが示唆された.
  • 福田 百邦, 里見 佳昭, 朝倉 智行, 穂坂 正彦, 野口 純男, 岸田 健, 近藤 猪一郎, 井田 時雄, 広川 信, 熊谷 治巳, 塩 ...
    1998 年 89 巻 7 号 p. 647-656
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎癌の臨床上の諸因子のうち, 予後因子となり得るものは何かを検討する事を目的とした.
    (対象と方法) 1965年1月より1994年12月までの30年間に横浜市大およびその関連病院で経験し, 病理学的に, 腎癌と診断された症例は1301例である. 今回, これらの症例中, 1990年12月までの症例, 即ち現時点で5年以上経過観察できた, 現在生存中の症例と腎癌死症例 (病因特異的生存率算定症例) 679例を対象とした.
    (結果) 1. 病因特異的679例の5年, 10年, 15年, 20年生存率は, それぞれ, 48.7%, 41.1%, 32.3%, 26.5%であり, 術後5年以降も長期に死亡する傾向が認められた. 2. 40歳未満の症例 (n=29) では術後2年までは急速に生存率が低下するが, 2年以降の死亡例はなく, 結果として予後良好であった. 3. 性別では女性, 発見契機では偶発癌, 腫瘍径では4cm以下の小腎癌, growing type では slow growing 症例, stage では low stage 症例が予後良好であった. 4. 1965年より1981年までの239例, および1982年から1990年までの440例の5年生存率はそれぞれ, 33.8%, 56.5%であり, 予後の改善が認められたが, この原因は偶発癌の増加によるものと考えられた. 5. 偶発癌は症状癌に比較して, slow growing 症例は, 4cm以下の小腎癌が多く, この事が偶発癌の予後が良好である原因と考えられた. 6. Cox 比例ハザードモデルを用いた多変量解析の結果からは, stage が最も重要な予後規定因子であり, 次いで growing type, 発見契機の順であった.
    (結論) 腎癌の臨床的諸因子のうち, 性, 年齢, 発見契機, 腫瘍径, growing type, stage は重要な予後因子であった.
  • 牧 佳男, 津島 知靖, 那須 保友, 公文 裕巳, 大森 弘之, 棚橋 豊子, 難波 克一, 大橋 輝久, 近藤 捷嘉, 雑賀 隆史, 朝 ...
    1998 年 89 巻 7 号 p. 657-664
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 再燃前立腺癌に対して現在のところ有効な治療法はない. そこで我々は内分泌療法不応性前立腺癌に対してシスプラチナム, イフォスファミド併用療法の有効性と安全性を検討した.
    (方法) 内分泌療法不応性前立腺癌に対してシスプラチンを治療第1日に70mg/m2静脈内投与, イフォスファミドを治療第1日から第5日に1.2g/m2/日を静脈内投与し4週毎に繰返した.
    (結果) 27例の内分泌療法不応性前立腺癌が登録された. 27例中7例 (26%) に部分寛解 (PR), 10例 (37%) に不変 (ST) を認めた. PR 7例の効果持続期間は6から49ヵ月, 中央値16ヵ月, PR+ST 17例の効果持続期間は3から36ヵ月, 中央値10ヵ月であった. 自覚症状の改善が11例 (41%) に認められた. 全症例の生存期間は4から89ヵ月で, 3年生存率36%, 5年生存率24%, 50%生存期間23ヵ月であった. 副作用は殆どが軽度から中等度で, 貧血 (96%), 白血球減少 (89%), 食欲不振 (81%), 脱毛 (67%), 血小板減少 (44%), 血尿 (38%), 腎機能障害 (19%), 肝機能障害 (7%) が認められた. 重篤な副作用が2例に認められ, 1例は急性腎不全, もう1例はエンドトキシンショックであった.
    (結論) シスプラチン, イフォスファミド併用化学療法は, 内分泌療法不応性前立腺癌に対して有効であり, 考慮してよい治療法と考えられた.
  • 本城 久司, 北小路 博司, 川喜田 健司, 斎藤 雅人, 浮村 理, 小島 宗門, 渡辺 泱, 荒巻 駿三
    1998 年 89 巻 7 号 p. 665-669
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなった尿失禁に対する鍼治療の有用性について検討した.
    (対象と方法) 尿失禁を有する慢性期脊髄損傷患者の男性8名に鍼治療を施行した. 年齢は20~33歳 (平均27歳) であった. 損傷レベルは頚髄損傷4例・胸髄損傷4例であった. 全例ともウロダイナミクス検査により無抑制収縮が証明され, 排尿筋過反射と診断された. 鍼治療はステンレスディスポーザブル鍼 (直径0.3mm, 長さ60mm) を左右の第3後仙骨孔部 (BL-33) に刺入し, 10分間の手による半回旋刺激とした. 鍼治療は週1回の間隔で4回施行した. 鍼治療の効果について, ウロダイナミクス検査を治療直前, 初回治療直後および4回治療終了1週後に行って評価し, 臨床症状の変化は治療前と4回治療終了1週後で評価した.
    (結果) 鍼治療による副用はみられなかった. 8例のうち尿失禁が消失したものは3例であり, 他の3例に改善がみられた. 平均膀胱容量は治療前42.3±37.9mlであったのが, 治療終了1週後148.1±101.2mlと有意 (p<0. 05) に増大したが, 平均最大膀胱内圧には有意な変化はみられなかった.
    (結論) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなう尿失禁に対して鍼治療は有用であった.
  • 進藤 雅仁, 青木 清一, 池田 栄二
    1998 年 89 巻 7 号 p. 670-673
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    51歳, 男性. 排尿困難を主訴として受診. 直腸診, 画像診断で前立腺癌が疑われ入院となった. 前立腺腫瘍マーカーは正常範囲内であった. TUR-Pを施行し病理組織学的診断は腺様嚢胞癌であった. 膀胱, 直腸への浸潤が考えられたため, 更に骨盤内蔵器全摘除術を施行した. 術後, 抗男性ホルモン療法, 化学療法, 放射線療法を施行した. しかし肝転移, 骨盤内リンパ腺転移などをきたし術後2年7ヵ月目に死亡した.
  • 稲垣 武, 戎野 庄一
    1998 年 89 巻 7 号 p. 674-677
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Cyclophosphamide (以下CPM) を長期間投与された後に異時的に発生した膀胱・腎盂癌の1例を報告する. 症例は, 57歳女性. non-Hodgkin lymphoma の診断で約13年間にわたり総量約290gのCPMを投与されていた.
    排尿時痛および肉眼的血尿を主訴として当科を受診した. 浸潤性膀胱癌と診断し, 膀胱全摘除術が施行された. 組織診断は移行上皮癌, G3<G2, pT4であった. 術後補助療法として Cisplatin 75mgを計3回投与し経過観察中, 術後約6ヵ月の時点で左腰背部痛が出現した. 精査の結果, 左腎盂腫瘍と診断し根治手術が施行された. 組織診断はTCC, G3, pT3であった. CPMにより誘発された尿路上皮癌についての文献的考察をおこなった.
  • 上田 建, 中島 耕一, 野澤 英雄, 西見 大輔, 永尾 光一, 原 啓, 桑原 孝, 黒田 加奈美, 高波 真佐治, 石井 延久, 三浦 ...
    1998 年 89 巻 7 号 p. 678-681
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    29歳女性. 妊娠10週目に足のむくみと腹部膨満感を主訴に来院. 両下肢に浮腫, 中心性肥満を認め血液生化学検査では低K血症を認めた. 婦人科的には異常を認めず, ホルモン検査の結果, 血中 cortisol 値の上昇を認めたため Cusing 症候群が疑われた. 超音波検査の結果左副腎に腫瘍を認め手術目的に当科を紹介され入院した. 1994年9月13日, 吸入麻酔と硬膜外麻酔下で右側臥位にて左副腎摘除術を行った. 術中よりステロイド補充療法開始し, 2ヵ月で血中 cortisol 値正常化し, 妊娠40週に体重2,722gの女児を経膣正常分娩した. Cusing 症候群では妊娠することは稀であり, さらに妊娠中に副腎摘除術を施行し経腟的に満期分娩にいたった報告例は, 検索し得た範囲では本邦で自験例が1例目にあたる. 若干の文献的考察を加えて報告する.
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