(背景と目的) 腎癌の臨床上の諸因子のうち, 予後因子となり得るものは何かを検討する事を目的とした.
(対象と方法) 1965年1月より1994年12月までの30年間に横浜市大およびその関連病院で経験し, 病理学的に, 腎癌と診断された症例は1301例である. 今回, これらの症例中, 1990年12月までの症例, 即ち現時点で5年以上経過観察できた, 現在生存中の症例と腎癌死症例 (病因特異的生存率算定症例) 679例を対象とした.
(結果) 1. 病因特異的679例の5年, 10年, 15年, 20年生存率は, それぞれ, 48.7%, 41.1%, 32.3%, 26.5%であり, 術後5年以降も長期に死亡する傾向が認められた. 2. 40歳未満の症例 (n=29) では術後2年までは急速に生存率が低下するが, 2年以降の死亡例はなく, 結果として予後良好であった. 3. 性別では女性, 発見契機では偶発癌, 腫瘍径では4cm以下の小腎癌, growing type では slow growing 症例, stage では low stage 症例が予後良好であった. 4. 1965年より1981年までの239例, および1982年から1990年までの440例の5年生存率はそれぞれ, 33.8%, 56.5%であり, 予後の改善が認められたが, この原因は偶発癌の増加によるものと考えられた. 5. 偶発癌は症状癌に比較して, slow growing 症例は, 4cm以下の小腎癌が多く, この事が偶発癌の予後が良好である原因と考えられた. 6. Cox 比例ハザードモデルを用いた多変量解析の結果からは, stage が最も重要な予後規定因子であり, 次いで growing type, 発見契機の順であった.
(結論) 腎癌の臨床的諸因子のうち, 性, 年齢, 発見契機, 腫瘍径, growing type, stage は重要な予後因子であった.
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