馬の流産胎児から検出される各種の細菌が, 流産と如何なる関係にあるかを追究するために, 屠場材料を主とした55例の成牝馬生殖器の細菌叢を検索した。
1) 肉眼的に異常を認めない非妊娠48例では, 増菌法の併用によつて, 子宮角の45.7%, 子宮体の50%, 子宮頚の77%, 膣の98%から菌が検出された。妊娠子宮4例中3例からも増菌法の併用によつて菌が検出されたが, それらの胎児からは検出されなかつた。3例の子宮内膜炎例では全例, 各部位から菌が検出された。非妊正常例中黄体期のものと濾胞期のものとでは両者の間に著しい差を認めることはできなかつた。
2) 非妊正常例の各部位から検出される菌種の数は, 子宮角から膣に向うにつれて次第に多くなる傾向が見られれ, 二つの性周期の間にも差異が見られなかつた。さらにこの傾向は妊娠例においても同様に認められたが, 子宮内膜炎例では3~4の菌種が全部位から検出された。
3) 非妊正常例から検出される菌種は, Escherichia, CitrobacterなどのEnterobacteriaceaeとCorynebacteriumが量も多く, ついでViridans, Diplococcus, MicrococcusおよびAlcaligenes, その他若干の菌種が検出された。これらの菌種はいつれの部位にも, また妊娠例, 子宮内膜炎例のいつれからも検出せられ, 二つの性周期においても同じ傾向であつた。
4) 非妊正常例の各部位から検出される菌数は, 子宮角から膣に向うにっれて次第に多くなり, 妊娠例でも同様であつたが, 非妊正常例よりも妊娠例の菌数は, はるかに少なく, これに反して子宮内膜炎例では全部位から多くの菌数で検出された。
5) 1955~1957年の間に流産胎児から検出された菌種のうち, 非妊正常子宮および妊娠子宮から検出されなかったのはSalmonellaとHafniaのみで, その他ほとんどすべての菌種が両者から検出された。
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