日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
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77 巻, 3 号
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2022年黒屋奨学賞受賞論文
  • 氣駕 恒太朗
    2022 年 77 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    セントラルドグマ(DNAからRNAが転写されて,タンパク質ができる)という分子生物学の中心的な概念において,「RNAはDNAからタンパク質を合成するための遺伝情報の仲介役にすぎない」と考えられていた。しかし,RNAはタンパク質に劣らず複雑な構造をとり,さまざまな生体分子を認識し,酵素としても働くことがわかってきた。2000年以降は,RNA干渉の発見もあり,RNAに関する研究は哺乳動物を中心に著しく進んだ。その一方で,細菌感染症におけるRNAの役割はほとんど分かっていなかった。著者は,2007年よりRNAと細菌感染について研究を開始し,胃の上皮細胞が保有する小さなRNAであるmiR-210が,ピロリ菌感染による胃の疾患に関与していることを明らかにした。さらにRNA研究で培った技術をベースに研究を進め,細菌感染症の治療にRNAを使用できる可能性を示した。本稿では,細菌学におけるRNAの重要性について紹介したい。

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