日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
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78 巻, 3 号
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2023年小林六造記念賞受賞論文
  • 平川 秀忠
    2023 年 78 巻 3 号 p. 167-177
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/25
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    尿路感染症(UTI)は,私たちにとって身近な感染症の一つであり,その中でも尿路病原性大腸菌(UPEC)が最も主要な起因菌である。UPECは,腸内細菌叢の一部として腸管内に常在している。腸管内においては,本菌は無害であるが,尿路に入った際には強い病原性を示す。UPECが尿路を介して膀胱に感染することで膀胱炎を発症させるが,さらに尿路を上行し,腎臓へと到達した際には,より重篤な症状である腎盂腎炎を発症させる。膀胱上皮細胞への付着性因子や細胞傷害性因子をはじめとする様々な病原性因子が同定され,それらの機能が解析されてきた一方で,「腸管内で無害なUPECが如何にして尿路において病原性が誘導されるのか?」,「膀胱に感染したUPECが如何にして尿路を上行し,腎臓へと感染するのか?」といった本菌の病原性について本質的な課題が残されている。一方で,UPECは宿主細胞内に侵入し,バイオフィルム様のマイクロコロニーを形成することで,様々な抗菌薬に対して耐性を示す。我々は,UPECの病原性発現と腎臓への感染を成立させるための責任因子および,マイクロコロニー形成に関与する因子の同定とそれらの機能を解明することで,本課題の解決に取り組んでいる。本稿では,我々の研究を中心に,膀胱から腎臓感染へと至るUPECの病原性発現とUTI難治化に寄与するマイクロコロニー形成のメカニズムを概説する。

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