R因子の中には,宿主に対しアテブリン感受性を賦与するものと,賦与しないものがあることが明らかとなつた。
atsマーカーと他の重要な遺伝マーカー
fi, spp, R因子の由来菌種,incompatibility testの結果との関係についてまとめると次のようになる。
1.
fi+, spp-型R因子:13株中11株は
ats+で,2株は
ats-であつた。ただし,
ats-になつた2株のR因子はincompatibility testでも他の
fi+, spp- R因子と異なつているという報告がある。
2.
fi-, spp+型R因子:5株すべて
ats-であつた。
3.
fi-, spp-型R因子:10株中8株は
ats+,残る2株は
ats-であつた。
ats+の8株はすべてサルモネラ由来で,
ats-の2株は赤痢菌および変形菌由来であつた。
この結果から,
fi, spp, incompatibility関係とともにアテブリン感受性もR因子の多様なタイプの基本的な規定マーカーであることがわかつた。
ats+ R因子と
ats- R因子の重複感染株はアテブリン感受性であつた。したがつて
ats+は
ats-に対し,優性(あるいは上位性)である。
江川,広田の方法で得られたR
100のderepressed mutant R因子は,R
100とアテブリン感受性賦与に関して著明な差はなかつた。
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