日本細菌学雑誌
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58 巻, 2 号
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  • 山本 新吾
    2003 年 58 巻 2 号 p. 431-439
    発行日: 2003/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    大腸菌は単純性尿路感染症のなかでもっとも頻繁に同定される病原菌である。本研究は尿路病原性大腸菌における病原因子を研究することで, 尿路感染症の発症のメカニズムを解明し, 尿路感染症を起因とする敗血症や反復性尿路感染症の治療へ手がかりを見い出すこと, またこれら尿路感染症の診断に有用なツールの開発を目標とし, 以下の事項を報告した。
    1) P線毛, S線毛, Afa I, エアロバクチン, ヘモリジン, CNF1の各病原因子は健常人由来大腸菌と比較して有意に各疾患由来の尿路病原性大腸菌に高頻度に認めた。2) これらの病原因子を一度に調べる Multiplex PCRの開発により, 大量の尿路病原性大腸菌株の病原因子の保有の有無が高精度かつ簡便に調べることができるようになった。3)「直腸-会陰-尿道仮説」を証明し, 多くの病原因子を保有した尿路病原性大腸菌株が直腸に優位に存在することが尿路感染症の危険因子のひとつであることを示した。4) 新しい尿路病原因子 uropathogenic specific protein (USP) を発見し, USPが尿路感染症の成立に強く関与していることを示唆した。また, USPおよびその下流でモザイクを構成するOrfU1-3遺伝子を含む pathogenic island に5つの variants が存在することを明らかにした。
  • 島本 整
    2003 年 58 巻 2 号 p. 441-450
    発行日: 2003/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    細菌の逆転写酵素は, 大腸菌などのグラム陰性細菌に広く分布しており, multicopy singlestranded DNA (msDNA) と呼ばれる特殊なRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。大腸菌由来の逆転写酵素を精製し, in vitro でmsDNA合成を調べたところ, 細菌逆転写酵素は2',5'-ホスホジエステル結合を形成する活性を持つ特殊な酵素であることが明らかになった。また, ビブリオ属細菌を中心に病原細菌における逆転写酵素の有無を探索したところ, コレラ菌や腸炎ビブリオなどで逆転写酵素遺伝子 (ret) とmsDNAが発見された。新たに発見された病原細菌由来のmsDNAの構造解析を行ったところ, 従来のmsDNAにはない特徴的な構造をもっており, msDNAおよび逆転写酵素の機能と病原細菌特有の機能との関連性が示唆された。特に Vibrio cholerae では, いわゆるコレラ菌であるV. cholerae O1/O139株とnon-O1/non-O139株との間で逆転写酵素の有無と病原性との関連性が認められた。
  • 山上 和夫, 吉澤 信行
    2003 年 58 巻 2 号 p. 451-465
    発行日: 2003/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    急性溶連菌感染後糸球体腎炎 (acute poststreptococcal glomerulonephritis; APSGN) はA群溶連菌 (group A streptococci; GAS) 感染後, 一定の潜伏期間を経て発症する急性の糸球体腎炎である。しかし, GAS抗原によるAPSGN発症の機構は未だ明らかにされていない点も多く残されている。筆者らは, GAS感染およびAPSGN発症にはGAS由来の特殊抗原蛋白質の生理活性とそれに起因する宿主の homeostatic pathway への影響が発症の引き金となることを提示して来た。すなわちGASの産生する plasmin binding proteins が宿主の plasmin (ogen) と複合体を形成し, この plasmin 活性が宿主の procollagenase や matrix metalloproteinase precursor を活性化する。発症は, これらの酵素活性による組織障害およびそれに続く抗原に対する宿主の免疫応答によるものと考える。本稿では筆者らがGASの cytoplasm から同定した nephritis-associated plasmin receptor およびその関連する抗原によるGAS感染とAPSGN発症への関与について概説する。
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