日本細菌学雑誌

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多くの細菌は実環境中においてバイオフィルムを形成して生息している。バイオフィルムは細菌の主要な存在形態であるとともに，環境ストレスや抗生物質に対する抵抗性を付与することから，細菌の病原性に関連している。また，バイオフィルム内部では様々な表現型を有する細胞が出現することによって，単細胞生物の細菌であっても機能的に分化し，多細胞的なふるまいを行うことが明らかとなってきた。つまり実環境中の細菌の挙動を制御するためには，細菌を集団として捉え，理解する必要があると考えられる。著者は嫌気性病原細菌であるウェルシュ菌を用いて，環境（温度）に応答したバイオフィルムの形態・機能の変化やバイオフィルム中における表現型不均一性を明らかにした。本稿ではバイオフィルムとその不均一性の研究成果とともに，これまで著者が解析してきた転写後遺伝子発現制御メカニズムや細胞外膜小胞を介した細菌-宿主相互作用についても紹介したい。

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