マイコプラズマは細胞壁を欠いているために, グラム陰性細菌の重要な病原因子の1一つであるリポポリサッカライド (LPS) を有していない。LPSは単球・マクロファージを活性化し, 種々の炎症性サイトカインを誘導する物質として詳細に研究されている。1980年に, LPSを有しないマイコプラズマが哺乳類細胞にサイトカインを誘導することが明らかにされた。その後, マイコプラズマのサイトカイン誘導活性に関する多くの報告がなされたが, その活性物質の実体は長い間不明であった。1997年になり, サイトカイン誘導物質の一つが
Mycoplasma fermentans から精製され, その構造がはじめて明らかにされた。それはリポタンパク質のN末端領域を構成しているリポペプチドであった。微生物由来のリポタンパク質が哺乳類細胞にサイトカインを誘導することは大腸菌ではすでに明らかにされていた。
そこで, 本稿では, マイコプラズマのサイトカイン誘導活性に関する研究を紹介し, リポペプチドの構造とサイトカイン誘導活性との関係を大腸菌での研究をもとに解説した。
抄録全体を表示