ブドウ球菌食中毒はエンテロトキシンをヒトが摂取することによつて起こる急性胃腸炎である。それゆえ,ブドウ球菌食中毒の診断にはエンテロトキシンの証明が必要である。しかし,エンテロトキシンの検査には抗毒素血清が必要で,この抗毒素血清は各型のエンテロトキシンを精製し,ウサギなどの動物に注射して作成しなければならない。
現在,ブドウ球菌エンテロトキシンは,免疫学的に異なるA, B, C, D, Eの5型が報告されている。エンテロトキシンの精製方法は繁雑で,各型ごとに異なつた精製方法が報告されている。また抗毒素血清の作製にはウサギ1羽に数mg∼数10mgの抗原を注射する方法が用いられてきた。
われわれは,エンテロトキシンAおよびCをCM-Sephadex C-25, DEAE-Sephadex A-25クロマトグラフィー,およびSephadex G-75ゲル〓過の同一で簡単な方法によつて精製した。
抗毒素血清は,エンテロトキシン10μgをFreund's complete adjuvantとともにウサギの背部皮下に接種し,7∼9週目に同量のエンテロトキシンで,adjuvantを加えないでブースターを行い,11∼13週で作製した。この特異抗毒素血清の力価はミクロスライドゲル内沈降反応で16∼128倍で,エンテロトキシンの検査に十分に使用できるものであつた。
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