日本細菌学雑誌
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77 巻, 2 号
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2022年黒屋奨学賞受賞論文
  • 阿部 隆一郎
    2022 年 77 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/26
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    近年,多剤耐性菌の急速な拡散に伴い,広域抗菌薬の代表格の一つであるカルバペネムに対する耐性も広く臨床現場から報告されている。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は主にカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生することでカルバペネム耐性を獲得する。カルバペネマーゼ遺伝子は主にプラスミド上に搭載されており,菌種を超えて拡散するとされていたが,実際にどのように地域に拡散していくかについては,ごく小規模の試みしかない状況であった。本研究は北大阪地域の43医療施設にて分離された230株のCREについて,全ゲノム解析およびサザンブロッティング法を組み合わせ,薬剤耐性遺伝子の主な運び手であるプラスミドに焦点を絞った解析を行うことにより,北大阪地域におけるCREの拡散は単一プラスミドpKPI-6の拡散によることを明らかにしたものである。同時にヘテロ耐性や薬剤耐性スペクトラムの拡大,カルバペネム耐性の増強など多様な表現型を持つ株が派生しており,その生成メカニズムを明らかにしてきた。本稿では筆者の研究成果を中心に,CREの地域拡散メカニズムについて紹介する。

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