日本細菌学雑誌

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接合伝達や自然形質転換などを介した遺伝子の水平伝播は，薬剤耐性遺伝子の拡散に大きな役割を担っている。遺伝因子の伝播という現象そのものは古くから知られているが，近年の薬剤耐性菌の急速な増加とそれに伴うゲノム解析情報の蓄積により，遺伝子水平伝播が様々な形でゲノムの可塑性に寄与していることが明らかにされている。筆者は，高度な薬剤耐性が懸念されている代表的なグラム陽性日和見病原菌である腸球菌の接合伝達プラスミドにコードされるアクセサリー因子バクテリオシンの抗菌活性の分子機構を明らかにするとともに，疫学的検討から自己免疫系の多様性を見出した。また，同じく薬剤耐性ならびにワクチンエスケープが懸念される肺炎球菌について，自然形質転換によるゲノムの組換えをシングルセルかつリアルタイムで可視化し定量する技術を確立した。本稿ではこれらの研究成果を中心に遺伝子水平伝播を促進する分子機構とその技術的応用の展望について紹介したい。

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