臨床において
Bacteroides fragilisが
Escherichia coliとの混合感染を起こしやすい理由を基礎的に解析する目的でin vitro, in vivo実験を行い,次の様な結果を得た。
in vitroでの培養成績により
B. fragilis GM7004株は,普通ブイヨンに10
2CFU/m
l接種で37C, 24時間培養しても増殖しない。しかし
E. coli No.94株10
2CFU/m
lとの混合培養では,
E. coli 94株の増殖により培地中の溶存酸素が消費され,続いて酸化還元電位が低下した結果,
B. fragilis GM7004株は培養24時間後10
8CFU/m
l以上に増殖した。
P. aeruginosa E7株との混合培養では溶存酸素の消費はみられるが,酸化還元電位は低下せず,
B. fragilis GM7004株は増殖しなかつた。
in vivo実験では
E. coli No.94株をマウス腹腔内感染させると,
E. coliの増殖により感染部位(腹腔および血清中)の酸化還元電位がin vitro同様低下した。また
B. fragilis GM7004株との混合感染でも
E. coli単独感染同様感染部位の酸化還元電位が低下した。
B. fragilis GM7004株とSOD活性の高い,
E. coli No.94株または
P. aeruginosa E7株の混合感染では,単独感染に比べ少量菌の感染で著明に死亡率が増加した。
しかし
B. fragilis GM7004株とSOD活性の低い
E. coli JC-2株または
P. aeruginosa IFO3445株の混合感染では,菌力の増強は認められなかつた。
以上の実験より
B. fragilisと他菌種との混合感染では,感染部位の酸化還元電位の低下による
B. fragilisの増殖促進の程度と感染菌のSOD活性の強弱が感染成立と進展に影響を与える主要因であると考えられた。
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