Staphylococcusと
Micrococcusとの鑑別にはブドウ糖発酵試験が重要な性状とされている。この試験法にはICSB標準法およびEvansとKloosの方法などがあるが,その簡便性,迅速性,正確性については必ずしもじゆうぶんとはいえない。
本研究は,従来の前記2方法をさらに改良し,つぎの組成のGlucose Fermentation Test Medium (GF培地)を設定した。トリプトン(Difco) 17.0g,ソイトン(Difco) 3.0g,ブドウ糖10.0g,塩化ナトリウム2.5g,チオグリコール酸ナトリウム0.5g, L-シスチン0.25g,亜硫酸ナトリウム0.1g,カンテン(Difco) 3.0g, BCP 0.04g,精製水1,000m
l, pH 7.0。これら試薬類を100C加熱溶解,中試験管(18mm×180mm)に20m
lずつ分注し,115C 15分間高圧滅菌後,急冷し,半流動高層培地とした。使用時に10分間煮沸し,溶解している酸素を除き,45C前後に保ち,被検菌のトリプトソイブロス培養菌を1白金耳,あるいは分離平板上の集落から直接白金耳または白金線を用い釣菌し,培地へ均一になるように混釈接種した。
静かに培地を振盪攪拌後,室温で凝固させ,37Cで培養した。48∼72時間後,培地全層に菌の旺盛な発育がみられ,ブドウ糖分解によるpHの変動が認められたものをブドウ糖発酵陽性とし,培地上層にのみ菌の発育と,pHの変動が認められたものを発酵陰性とした。ICSB標準法に比して流動パラフィンを使用せず,器具類のあと始末が容易になつたこととともに,混釈培養法により,最終判定までの日時が大幅に短縮され,すぐれた有用性が認められた。菌接種時の激しい培地の振盪攪拌によつても嫌気度が保たれ,発育帯の位置が固定・保持され,嫌気的発育菌か好気的発育菌であるかが明瞭に観察,判定された。多くの菌株について試験した結果,簡便性,迅速性についてはICSB標準法にまさるとともに,正確性についてはICSB標準法と完全に一致する成績をえ,このGF培地の有用性を確認した。
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