レジオネラ感染症は,血清抗体価の有意な上昇を根拠に診断される症例に比して,培養により
Legionella属菌が検出・同定されて診断された症例は少なく,これまでこの菌による不顕性感染やヒトでの保菌状態についての報告はない。
Legionella属菌が,多数の冷却塔水などの環境水中に広く生息していることから,その不顕性感染の可能性を想定し,呼吸器疾患患者の下気道へのこの菌の定着状態を知る目的で,患者喀出痰からの
Legionella属菌を検出するとともに,他の細菌との量的関係を知るため1984年9月から1989年8月までの5年間にわたり当院での入院および外来患者計5,502人の喀出痰22,036検体を対象として定量培養を行つた。
高齢男女各2例の呼吸器疾患患者の喀出痰から
Legionella pneumophilaを検出した。喀出痰1m
l当たりの菌量は,73歳女性ではserogroup 6が10
3 CFU, 75歳男性と61歳女性ではserogroup 5が前者は10
4 CFU,後者は10
5 CFU,および77歳男性では群別不能株が10
4 CFUであつた。4症例の基礎疾患は,それぞれ間質性肺炎,肺気腫,気管支喘息,嚢胞性肺気腫であつたが,血清抗体価の低値を含めてレジオネラ感染症と診断するに足る症状を呈さなかつたため
L. pneumophilaの不顕性感染と判断した。対象とした5,502人中の
L. pneumophila陽性率は0.073%であつた。感染源は判明しなかつた。
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