臭化銀粒子をチオ硫酸ナトリウムにより硫黄増感した際, 生成した硫化銀がもたらす長波長感度の温度依存性を研究した。
長波長感度の活性化エネルギーは, 硫黄増感の程度を増すにつれて大きくなり一定値になった。硫黄増感が浅い領域においては空気中で測定された活性化エネルギーは真空中での値に比べて大きかったが, 硫黄増感剤の添加量を増すに従って空気中と真空中の活性化エネルギーは漸近し一致した。これは浅い硫黄増感では酸素により長波長感度が低下するが, 硫黄増感を増すに従ってその感度の低下が消滅することに対応していた。長波長感度は光電子が光励起された硫黄増感中心から臭化銀粒子の伝導帯に注入されることで得られ, その活性化エネルギーは電子注入に必要な熱的エネルギーを与えたと考える。上記解析に基づき, 硫黄増感中心のトラップの深さは約0.28eVと見積もられた。
臭化銀乳剤粒子へTAIを添加することにより, 長波長感度の活性化エネルギーは小さくなった。これはTAIが臭化銀粒子中の格子間銀イオンの濃度を下げて, 硫黄増感中心の状態を変えた結果と考える。
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