筋ジストロフィー鶏は,ヒトの進行性筋ジストロフィーの動物モデルとして用いられている。筋ジストロフィー鶏は発症に伴い,仰向けにされると,反射的に起き上がる能力が低下していく。この機能低下は浅胸筋や翼筋群の変性と関連があることが考えられているが,詳しいことは明らかではない。本研究は筋ジストロフィー鶏の臨床的な機能低下を検討するために,筋ジストロフィー鶏に対して運動を負荷し,その影響を浅胸筋の形態変化と翼の肘関節伸展角度の低下に着目して行った。筋ジストロフィー鶏に対しての運動負荷は,孵化後から5週間,1日1回,仰向けの姿勢より,反射的に起き上がる動作を連続的に行い,起きあがれなくなるまでくりかえした。その結果,毎日運動を負荷した群は,運動をしなかった群より起き上がり回数(疲労度試験)・他動的肘関節伸展角度において有意に高い値を示した。また,浅胸筋の組織学的検討では,3週間運動を負荷した群は,結合織の増生は軽度で,空胞形成,壊死線維等の出現頻度も低かった。また,3週間運動させ,その後2週間運動を停止した群は,運動停止以降において急激に悪化し,結合織の増生や空胞形成線維,壊死線維の出現頻度が著明となった。これらの結果より,筋ジストロフィー鶏に対する運動負荷は,浅胸筋の組織病変を著しく軽減し,肘関節可動域を維持させることが明らかとなった。
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