理学療法学
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24 巻, 1 号
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報告
  • 佐藤 秀紀, 中嶋 和夫
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本調査研究は,在宅高齢者の日常生活関連動作の内的構造を明らかにし,あわせて日常生活関連動作を構成する因子に関連する要因を検討した。調査対象は65歳以上の在宅高齢者441名とした。調査項目は,暦年齢,性,教育歴,家族構成,社会的統合,自覚的健康感及び25項目の日常生活関連動作とした。在宅高齢者の日常生活関連動作に関する内的構造は探索的な因子分析で検討した。日常生活関連動作を構成する下位尺度得点(因子得点)と属性との関連性は一元配置分散分析及びt-検定によって検討した。その結果,日常生活関連動作においては,「戸外移動の因子」「社会的活動の因子」「交通機関利用の因子」「健康管理の因子」の4因子の存在が認められた。また,「戸外移動の因子」は自覚的健康感と,「社会的活動の因子」は自覚的健康感,性別,地域集団への参加頻度と,「交通機関利用の因子」は配偶者の有無と関連していた。この結果から,高齢者の保健医療福祉サービスの展開にとって,性別,配偶者の有無,自覚的健康感,地域集団への参加頻度を重視すべきことが示唆された。
  • 大橋 ゆかり, 長田 久雄
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では結果の知識(Knowledge of Results,以下,KR)付与のタイミングが訓練中のパフォーマンスに及ぼす影響を検討するために3つの実験を行った。運動課題は全実験共通で握力計を最大握力の40%の力で握ることとした。実験1では課題遂行終了からKR付与までの間隔(以下,KR遅延)を0秒に保ち,KR付与から次の課題遂行開始までの間隔(以下,KR後遅延)を変化させた。実験2では試行間間隔を8秒に保ち,KR遅延とKR後遅延の組み合わせを変化させた。実験3ではKR遅延を7秒に保ち,KR後遅延を変化させた。これらの実験の結果,次の2点が明らかになった。①KR後遅延を短縮させるとパフォーマンスの低下が生じる。②7秒程度のKR遅延の延長は単独ではパフォーマンスに影響しない。しかし,KR遅延の延長とKR後遅延の短縮が同時に存在する場合には①以上のパフォーマンスの低下が生じる。
  • 鈴木 俊明, 八瀬 善郎, 藤原 哲司, 大工谷 新一, 廣瀬 浩昭
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    F波出現を認めなかった慢性期脳血管障害片麻痺患者10例(男性4例,女性6例),平均年齢49.3歳を対象として,神経学的特徴および随意運動機能の回復にともなうH波,F波出現様式の変化(F波出現の有無)について検討した。本症例の神経学的特徴は,全例で筋緊張,腱反射は中等度以上の亢進,多くの症例で,上肢および手指ブルンストローム・ステージⅡ,Ⅲを示した。理学療法による運動回復を認めた3症例のうち2症例で筋緊張,腱反射の低下にともないH波振幅の低下および1症例でF波の出現を認めた。H波が高振幅で出現するためにF波が出現しない症例は,脊髄神経機能の相対的な興奮性が増加している状態であることが示唆された。
  • 沖田 実, 吉村 俊朗, 田原 弘幸, 加藤 克知, 中野 裕之, 井口 茂, 中野 治郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,関節固定によるラットヒラメ筋の筋内膜コラーゲン線維網の構築への影響を検索し,短縮筋の弾性低下の要因を検討した。実験動物はウイスター系雄ラット5匹で,右足部を4週間ギプス固定し,ヒラメ筋の筋肉膜コラーゲン線維網を走査電子顕微鏡で検鏡した。また,筋縦断面を光学および透過電子顕微鏡で検鏡した。固定側の筋内膜コラーゲン細線維は有意に肥大し,その構築は筋線維長軸に対して横走していた。さらに,固定側の筋節長は有意に短縮していた。このことから,短縮筋の弾性低下には筋内膜コラーゲン細線維の分子間架橋結合に加えて,その構築的変化が影響していることが示唆された。
  • 養老 栄樹, 佐藤 福志, 市原 伸恒, 山口 明, 高木 昭輝, 菊池 建機
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    筋ジストロフィー鶏は,ヒトの進行性筋ジストロフィーの動物モデルとして用いられている。筋ジストロフィー鶏は発症に伴い,仰向けにされると,反射的に起き上がる能力が低下していく。この機能低下は浅胸筋や翼筋群の変性と関連があることが考えられているが,詳しいことは明らかではない。本研究は筋ジストロフィー鶏の臨床的な機能低下を検討するために,筋ジストロフィー鶏に対して運動を負荷し,その影響を浅胸筋の形態変化と翼の肘関節伸展角度の低下に着目して行った。筋ジストロフィー鶏に対しての運動負荷は,孵化後から5週間,1日1回,仰向けの姿勢より,反射的に起き上がる動作を連続的に行い,起きあがれなくなるまでくりかえした。その結果,毎日運動を負荷した群は,運動をしなかった群より起き上がり回数(疲労度試験)・他動的肘関節伸展角度において有意に高い値を示した。また,浅胸筋の組織学的検討では,3週間運動を負荷した群は,結合織の増生は軽度で,空胞形成,壊死線維等の出現頻度も低かった。また,3週間運動させ,その後2週間運動を停止した群は,運動停止以降において急激に悪化し,結合織の増生や空胞形成線維,壊死線維の出現頻度が著明となった。これらの結果より,筋ジストロフィー鶏に対する運動負荷は,浅胸筋の組織病変を著しく軽減し,肘関節可動域を維持させることが明らかとなった。
短報
  • ―エコ・マップによる評価―
    武田 秀和, 渡辺 敏, 銭谷 嘉純, 小松 みゆき, 大森 豊, 鶴田 光子
    原稿種別: 本文
    1997 年 24 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    理学療法室において理学療法士と患者,患者同士や患者の家族などの人間関係は,患者の訓練・指導上大切な要素である。これを知ることは,患者の訓練・指導のみならず障害受容などの援助にも役立つものと考えられる。人間関係を調査する道具の一つにエコ・マップがある。これは,当事者をめぐる人間関係や社会関係などを視覚的に把握するために考案されたものである。そこで理学療法室における患者をとりまく人間関係について,エコ・マップを援用し症例検討したので紹介する。対象症例は脊髄腫瘍患者2例である。エコ・マップの作成は,症例の自己表記とした。結果,理学療法室における患者相互の関わりの状況および,その度合いが視覚的に把握できた。理学療法室における対象者とその環境の関わり合いを簡単に評価し,患者訓練に生かす道具としてエコ・マップは有用である。
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