理学療法学
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27 巻, 6 号
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1998年度助成研究論文
  • 辻下 守弘, 鶴見 隆正, 清水 ミッシェル・アイズマン, 奈良 勲
    原稿種別: 本文
    2000 年 27 巻 6 号 p. 183-191
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,座位到達動作において到達させる対象物の性質や被験者との位置関係が姿勢調節に及ぼす影響を検討することである。対象は健常若年者(以下,健常者)12名と脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者)10名であった。被験者には,椅子座位で位置や高さが自由に調節可能なテーブル上に置かれたコップへ手を伸ばし,持ち上げるという到達動作課題を行わせた。到達動作課題は,重量,軽量という性質の異なった二種類の対象物と正中位,内転位,外転位という三つの配置条件を組み合わせ,合計6種類の課題を設定した。健常者では,配置条件の違いで到達時間,垂直床反力,そして筋電活動量に有意な影響を認め,片麻痺患者では垂直床反力と健側三角筋以外の筋電活動量に有意な影響を認めた。しかし,性質の違いについては,両者ともに有意な影響を認めなかった。健常者と片麻痺患者との比較では,すべての課題において到達時間,大腿直筋および大腿二頭筋の筋電活動量に有意差を認めた。片麻痺患者では,到達動作において健常者とは異なる姿勢調節が行われていることが明らかとなった。
1998年度指定研究論文
  • ―早期に独歩を獲得するためには―
    千葉 一雄, 平木 治朗, 橋口 伸, 安井 平吉, 矢田 定明, 井上 裕美子
    原稿種別: 本文
    2000 年 27 巻 6 号 p. 192-198
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    高齢者の大腿骨頸部骨折は合併症が多く,骨折後の歩行能力に影響をおよぼす。我々は姿勢反射を取り入れた全身的治療を行い,早期に歩行自立を達成している。本稿の目的は歩行自立について筋力とバランスとの関連から治療効果を検討した。痴呆,膝の疼痛,長期臥床,下肢不全麻痺,RAなどの合併症を伴った高齢者の頸部骨折患者が訓練開始から2〜4週で独歩を獲得できた。その評価を下肢筋力と重心移動距離,歩行速度で検討した。股関節伸展筋力は最大で歩行速度と関連が高く立位の重心移動値と歩行速度の関係があった。下肢筋力の強さだけでなく,姿勢反射での筋の反応性が重要であると思われる。
報告
  • 望月 久, 峯島 孝雄
    原稿種別: 本文
    2000 年 27 巻 6 号 p. 199-203
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では重心動揺系を用いた立位姿勢の安定度評価指標を考案し,その再現性と妥当性について検討することを目的とした。対象は健常者19名と,高齢および種々の疾患によりバランス能力低下を示す者21名の計40名とした。姿勢安定度評価指標は立位姿勢保持の安定性に関する確率的な考察から,log [(安定域面積 + 重心動揺面積)/重心動揺面積] で定義した。測定足位は足底内側を10cm離した開脚立位とし,支持基底面の中央付近の最も安定した位置,及び前方,後方,右方,左方へ重心移動した位置で10秒間の足圧中心を測定した。重心動揺面積は各測定位置における矩形動揺面積の平均値とした。安定域面積は前方,後方,右方,左方の動揺中心の前後径と左右径を乗じた矩形面積とした。信頼性は同一被験者に日時を変えて姿勢安定度評価指標の測定を2回行い,再現性を級内相関係数を用いて評価した。妥当性はBergによるバランス評価法との対応をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。その結果,級内相関係数0.999,スピアマンの順位相関係数rs = 0.855の強い相関が得られ,今回考案した評価指標の信頼性および妥当性が確認できた。
  • 吉原 裕美子, 福屋 靖子
    原稿種別: 本文
    2000 年 27 巻 6 号 p. 204-210
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は在宅要介護高齢者への生活動作・姿勢を用いた運動負荷に関する基礎的研究である。目的は以下の3点について知見を得ることであった,1)在宅要介護高齢者の24時間心拍数の特徴,2)坐位時間割合と平均増加率(睡眠時に対する覚醒時平均心拍数の増加率)との関係,3)生活活動様式と24時間心拍数との関係。対象は脳血管障害による在宅要介護高齢者(CVA)21名と健常高齢者10名であった。ホルター心電図による心拍数測定及び生活行動調査,生活活動様式調査を同時に24時間実施した。その結果,1)CVAは睡眠時心拍数が高く平均増加率と最大増加率(睡眠時に対する一日の最大心拍数の増加率)が低い,2)坐位時間割合と平均増加率は正の直線関係がある,3)生活活動様式の拡大に伴って平均増加率が高くなること,が判明した。これらの結果から,24時間心拍数を用いた評価では睡眠時心拍数は心機能を推察する手がかりとなり運動処方の際には睡眠時心拍数に留意する必要があること,平均増加率は一日の身体活動量の指標となることが示唆された。また坐位時間延長及び生活活動様式の拡大は心拍数から見た身体活動量の増加に有効であることが実証された。
  • 白井 誠, 新保 松雄, 曾根 政富, 田邉 豊, 宮崎 東洋
    原稿種別: 本文
    2000 年 27 巻 6 号 p. 211-214
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    我々は反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)患者に対して麻酔科による疼痛緩和療法と運動療法を併用した治療を実施し良好な結果を得た一症例を報告した。今回は,同様に治療したRSD患者11例について,運動療法実施前後の運動機能障害および臨床症状の変化を評価し,RSD患者の運動療法について検討した。評価は機能的動作障害,関節可動域制限,疼痛,アロディニア,腫脹,血管運動障害,異栄養症状の7項目とし,Gibbonsらのスコアーを参考に得点化した。
    運動療法実施後,機能的動作障害,関節可動域制限および臨床症状は全般的に改善したが,アロディニアと異栄養症状は有意な改善を認めなかった。これらの結果から,RSD患者に対する疼痛緩和療法と運動療法の併用実施は良好な結果が得られるが,長期経過の患者,重度のアロディニア,異栄養症状が今後の課題と考えられた。
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