理学療法学
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16 巻, 2 号
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原著
  • 沼田 憲治, 川名 隆二, 萩原 昇
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 71-75
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    半球損傷患者の損傷側の違いによる体幹バランス能力の差異について,視覚的垂直判断との関係から調べた。対象は脳卒中患者のなかから右半球損傷患者10名,左半球損傷患者10名,対照群として健常者7名を対象とした。方法は前額面上での視覚的垂直判断の偏位と,傾斜刺激に対する体幹バランスの左右への偏位を調べ両者の関係について検討した。その結果右半球損傷群は視覚的垂直判断,体幹バランスともに左半球損傷群,対象群に比べ有意に大きかった。さらに右半球損傷群は視覚的垂直判断と体幹バランスの偏位の間に相関が認められた(r = 0.71,p < 0.05)。それに対し左半球損傷群では相関が認められなかった。以上の結果から右半球損傷患者の体幹バランスは不安定であること,さらに視覚的垂直軸の偏位が姿勢保持に影響を与えることなどが示唆された。
報告
  • 古澤 正道, 大根 みゆき, 小室 美智子, 松本 玲子, 西村 卓, 山川 真千子, 椎名 英貴, 佐藤 典子, 広田 寿美子
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 77-83
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中等の中枢神経疾患による口腔周辺機能障害は全身からの異常な姿勢緊張とパターンの悪影響を受けやすい。治療では初めに全身からの影響を抑制する。口腔周辺への治療では障害の強い部位のみでなく,前後の協調した活動を促す。この概念でPTとSTが共同して24名の患者を治療した。評価を9項目にわたって行い,治療終了時の変化はX2検定ですべて有意な差をみた。流涎(P < 0.05)・食物の取りこぼし(P < 0.05)・咀嚼運動(P < 0.01)・咽頭相への嚥下(P < 0.01)・咽せ(P < 0.01)・鼻をかむ(P < 0.01)・うがい(P < 0.01)・痰の喀出(P < 0.01)・会話の明瞭度(P < 0.05)であった。発症から1年以上経過してから治療を開始した10名を含めて全員に一定の改善をみた。
  • ―ホースバックライディングマシーンを利用して―
    後藤 充孝, 木村 哲彦
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 85-89
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    ホースバックライディングマシーンを使用して床面動揺に対する失調症患者の姿勢保持能力の傾向を検索した。対象は失調症患者10名,健常者5名である。結果は以下の通りである。
    1) 失調症患者は回旋,上下,水平,傾斜の要素順に姿勢保持の低下が見られ,特に前後傾斜時に最も低下が大きかった。
    2) 失調症患者の立位,膝立ち位,椅坐位などの姿勢変化時での姿勢保持は,極く一部を除き,上記と同様の回旋,上下,水平,傾斜順に姿勢保持の低下が見られた。
    3) 小脳性失調症においても動的な状態では,視覚的代償が存在し,安定性に大きく関与している。
  • ―歩行障害の一症例を通して―
    若有 治美, 才藤 栄一, 保坂 隆, 神内 拡行, 田中 博, 寺川 ゆかり
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 91-94
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    心因性歩行障害の一症例を通して,心因性運動障害に対するリハビリテーションアプローチと理学療法士の役割,その訓練法について検討した。
    心因性運動障害の患者は,種々の心理的問題を有す為,治療場面において問題患者として位置付けられることが多い。そこで我々は,精神科医のコンサルテーションに基づいた,リハビリチーム全体の治療方針の統一により,問題の理解を試みた。
    症例の示す様々な「背理現象」に対しては,バイオフィードバック療法・行動療法的アプローチ等を用いた。又,家庭復帰に際しては二次的疾病利得を考慮し,現実検討を進め,患者は生活の自立に至った。
短報
  • 木山 喬博, 岩月 宏泰, 井神 玲子, 河上 啓介, 猪田 邦雄, 坂口 勇人, 苗村 美樹, 青木 賢次, 遠山 佳代
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 95-98
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    角度の目測の正確さと,目測の練習効果の有無を知ることを目的とした。上肢をトレースした厚紙を固定した角度計を5度単位で任意の角度を設定し,30名の学生に教壇上から提示して,目測値を記録させた。
    提示角度との誤差が±10度以内の目測値で比較すると,目測の練習をさせないで,6種類の角度を1回/日×1日/週×5週の頻度で計測した5回は87.2%で,続いて3〜4回/日×1日/週×3週の頻度で計測した10回は94.9%で,続いて15度から180度迄15度間隔で各1回,目測練習をさせてから,2回/日×5日/週×2週の頻度で計測した20回は95.4%であった。最後の計測日から34日目に目測させた場合は,98%であった。目測はかなり正確であったことと練習効果も有ることが窺えた。
  • 丸山 仁司, 伊東 元, 橋詰 謙, 長崎 浩, 浜田 志朗, 齋藤 宏, 谷 浩明, 中村 隆一
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 99-100
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    運動障害児(脳性麻痺)を対象にして,3段階の運動負荷の場合でも健常人と同様に,酸素摂取量と心拍数の関係が直線関係を示すか否か,またその直線から求めた指標と5分間走との間に直線関係が成り立つか否かを検討した。被験者は脳性麻痺児5名であった。運動課題として自転車エルゴメータ駆動(3段階負荷)を用い,その時の酸素摂取量と心拍数を測定した。酸素摂取量と心拍数の関係は4名が有意な相関を示した。有意な相関を示した被験者でその回帰直線の傾きと5分間走の間には有意な相関を示した。
    脳性麻痺児を対象とした運動負荷テストにおいて,3段階負荷であっても,酸素摂取量と心拍数の直線関係が成り立てば,酸素摂取量と心拍数の回帰直線の傾きはパーフォーマンスを表わす指標として用いることが可能である。
昭和63年度学術助成研究論文
  • 下野 俊哉, 服部 紀子, 山本 隆博, 古川 良三
    原稿種別: 本文
    1989 年16 巻2 号 p. 101-108
    発行日: 1989/03/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    末梢性顔面神経麻痺患者に対し,1)日常での愁訴について調査,2)病的共同運動の分析,3)EMG-biofeedback訓練による病的共同運動の改善を目的に本研究を行なった。
    末梢性顔面神経麻痺患者84例に対する愁訴の調査では,顔面筋筋力低下と同様にさまざまな訴えがあった。特にその訴えは急性期や回復の不良な症例に多く見られた。また,病的共同運動は最も出現頻度の高い後遣症であり,特に口を運動することにより誘発される閉眼は多くの患者で問題になることが多かった。
    これら病的共同運動を持つ9例に対し行なったEMG-biofeedback therapyでは,訓練後積分筋電図の減少と眼裂の狭小化の減少が認められ,このtherapyが病的共同運動の改善に効果があると思われた。
    末梢性顔面神経麻痺に対する理学療法は顔面筋筋力の回復のみに着目するのではなく,病的共同運動など多様な臨床像を含めたアプローチが必要である。
第23回全国研修会評価シンポジウム
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