【目的】腰椎固定術後患者の術前体幹筋量が患者報告アウトカム(Patient Reported Outcome:以下,PRO)の予測要因になるかを検討した。【方法】腰椎変性疾患に対して腰椎固定術を施行した86名を対象とした(平均年齢70.8歳)。術前の体幹筋量,骨格筋量指数(Skeletal Muscle Mass Index:以下,SMI)は,生体インピーダンス分析より算出した。統計解析は,術後のPROを予測する要因を検討するため重回帰分析を行った。従属変数は術後6か月のOswestry Disability Index(以下,術後ODI),腰痛Visual Analogue Scale(以下,術後VAS)とした。独立変数は,従属変数との単回帰分析において有意水準を満たした変数とした。【結果】重回帰分析の結果,術後ODIの要因として,体幹筋量,固定椎間数が抽出された。術後VASの要因として,Body Mass Index(BMI),体幹筋量,固定椎間数が抽出された。【結論】術後ODIや術後VASには,サルコペニアの指標であるSMIではなく体幹筋量が予測要因になる。
【目的】人工呼吸管理中の新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)患者における体位変換時の酸素化能の変化と生存転帰との関連性を検討した。【方法】分析は人工呼吸中のCOVID-19患者で腹臥位をせず抜管に至った9例(側臥位群),腹臥位を実施し抜管に至った11例(腹臥位生存群),腹臥位を実施し死亡転帰に至った20例(腹臥位死亡群)を後方視的に実施した。主な分析項目は人工呼吸開始直後,初回の体位変換前,後および初回体位変換継続中の最高値の各期の肺酸素化能(PaO2/FIO2:以下,P/F値)とし生存転帰との関連を多変量解析にて分析した。【結果】初回体位変換後のP/F値(mmHg)は側臥位群(214.7±62.1),腹臥位生存群(171.1±57.7),腹臥位死亡群(139.6±36.7)であり腹臥位死亡群が側臥位群に比べ有意に低値であった。生存転帰の予測因子に体位変換後のP/F値が示され判別的中率は66.7%であった。【結論】初回体位変換後のP/F値は腹臥位死亡群が側臥位群に比べ有意に低値であり,生存転帰の予測因子となることが示された。
【目的】進行性核上性麻痺患者の病棟内歩行の自立度と歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能との関連性を検討し,抽出された項目のカットオフ値を算出することを目的とした。【方法】進行性核上性麻痺患者86名を対象とした。歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能が病棟内歩行自立と関連するかを多重ロジスティック回帰分析で検討し,抽出された項目をreceiver operating characteristic curve(ROC)にてカットオフ値を算出した。【結果】歩行自立に対してバランス機能評価である,姿勢安定性テストとBerg Balance Scale(以下,BBS)が関連し(p<0.01),カットオフ値は姿勢安定性テストで2点,BBSで45点であった。【結論】進行性核上性麻痺患者における病棟内歩行自立可否には姿勢安定性テストやBBSの包括的なバランス機能が関連することが示唆された。
【目的】本研究の目的は,慢性閉塞性肺疾患急性増悪(acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease:以下,AECOPD)患者における運動療法およびセルフマネジメント教育の身体活動性(physical activity:以下,PA)改善に対する有効性を検討することである。【方法】本研究はシステマティックレビューおよびメタアナリシスであり,2022年3月に5つのデータベースを検索し,AECOPD患者に対し運動療法およびセルフマネジメント教育またはどちらかの介入が単独で行われたランダム化比較試験(randomized controlled trials:以下,RCT)を収集した。コクランが推奨する方法でバイアスリスクやデータの統合,エビデンスの確実性の評価を実施した。【結果】13件のRCTが特定され,メタアナリスの結果,運動療法のみ歩数の有意な改善を認めた。各介入の歩数に対するエビデンスの確実性は「非常に低い」であった。【結論】AECOPD患者を対象とした運動療法はPAの改善をもたらす。セルフマネジメント教育を併用した介入については今後の解明が必要である。
【目的】体外式補助人工心臓(ventricular assist device:以下,VAD)装着下の乳児に対する理学療法の安全性の報告はない。VAD装着下の乳児に理学療法を行い,多職種で離床を促したことで安全に発達を促進できたため報告する。【症例と方法】5カ月の女児。日齢6日に拡張型心筋症と診断された。生後4カ月に定頚を獲得した。生後4カ月15日で心不全が増悪し,生後5カ月でEXCOR®装着術を施行した。術後15日から理学療法を開始し,多職種で離床方法を検討しながら抱っこ,椅子座位,端座位とすすめた。【結果】理学療法介入中や病棟での離床中に有害事象なく実施可能であった。心臓移植前(生後11カ月)での日本版デンバー式発達スクリーニング検査は個人–社会11カ月,微細運動11カ月,言語9カ月,粗大運動4カ月だが端座位は骨盤軽介助で可能となった。【結論】循環動態やVADのカニューレ及びラインの管理を行いながら理学療法を行うことで発達を促すことが可能であった。