理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
47 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
研究論文(原著)
  • 佐藤 和之, 万行 里佳, 河合 恒, 大渕 修一
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 299-305
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/11
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢骨折受傷者の退院後の転倒恐怖感に関連する要因を明確にすることである。【方法】65 歳以上の骨折受傷者39 名を対象とし,退院後の転倒恐怖感と転倒回数,運動機能,住環境リスク等の関係を検討した。統計解析は相関分析,重回帰分析を行い有意水準は5% とした。【結果】転倒回数[r = –0.458],入院時BBS[r = 0.663],入院時TUG[r = –0.602],入院時10 m 歩行テスト[r = –0.581],入院時FIM[r = 0.54],老研式活動能力指標[r = 0.453],住環境リスク[r = –0.483]に転倒恐怖感と有意な相関(p < 0.01)を認めた。重回帰分析では転倒恐怖感の関連要因として入院時BBS,住環境リスク,転倒回数が選択された。【結論】高齢骨折受傷者の転倒恐怖感の軽減のためにバランス能力等の内的要因に加え,外的要因である住環境リスクの検討および対策が必要であることが示唆された。

  • 高橋 由依, 隈元 庸夫, 世古 俊明, 三浦 紗世, 工藤 夢子, 松田 由衣, 永井 孝尚, 橘田 岳也, 大内 みふか, 篠原 信雄
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 306-315
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,腹圧上昇肢位が骨盤底筋と体幹・下肢筋群の共同収縮に及ぼす影響を検討することである。【方法】若年未経産婦15 名(平均年齢25.5 ± 2.5 歳)を対象とし,肢位要因(背臥位,立位,中腰位,中腰位で重量物を挙上した肢位(重錘挙上位))と課題要因(安静時,骨盤底筋収縮時)の2 要因での腟圧値と筋活動量(腹直筋,外・内腹斜筋,多裂筋,大殿筋,股内転筋)の比較と,各肢位間で骨盤底筋収縮時における被験筋筋活動増加率について比較検討した。【結果】課題要因では骨盤底筋収縮時に腟圧値と各筋活動量が有意に高値を示し,肢位要因では中腰位と重錘挙上位で腟圧値と各筋活動量が有意に高値を示した。筋活動増加率は内腹斜筋が背臥位,立位,中腰位で他筋よりも有意に高値を示した。【結論】内腹斜筋は他筋と比較して,中腰位,背臥位,立位において骨盤底筋との共同収縮筋としての活動が増加することが示唆された。

  • 藤田 吾郎, 大髙 愛子, 浦島 崇, 中村 高良, 中山 恭秀, 小林 一成, 安保 雅博
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 316-323
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】先天性心疾患術後遠隔期の学童期から青年期の患者と健常者の健康関連QOL(以下,HRQOL)を比較し,HRQOL と運動耐容能や身体活動状況との関係を検討する。【方法】対象は先天性心疾患患者22 例と健常者22 例。HRQOL,運動耐容能,身体活動水準,運動習慣を評価し,両群のHRQOL の比較と,各指標との関連を分析した。【結果】HRQOL 尺度のうち,先天性心疾患群の身体的幸福感(以下,PW)が有意に低かった(p <0.05)。先天性心疾患群において,PW と嫌気性代謝閾値の間に相関を認めたが(rs = 0.472,p <0.05),最高酸素摂取量にはなかった。また身体活動水準とPW の間には相関があり(rs = 0.504,p <0.05),運動習慣のある先天性心疾患患者は習慣がない患者に比べてPW が高かった(p < 0.05)。【結論】先天性心疾患患者のHRQOL は嫌気性代謝閾値レベルの運動耐容能や身体活動状況と関連がある。

  • 櫻井 伸哉, 田辺 博宣, 荒本 久美子, 小原 徹哉
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 324-330
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,重心動揺計を用い成人脊柱変形(以下,ASD)患者における立位バランスについて調査し,さらにASD の中で体幹前傾化が重心動揺に与える影響を明らかにすることである。【方法】ASD 女性患者46 例と年齢を一致させた健常女性21 例を対象とし,重心動揺について比較した。さらに,ASD 患者をSVA(Sagittal vertical axis)>100 mm とSVA <100 mm の2 群に分類し,立位バランスについて2 群比較を行った。重心動揺は60 秒間の開眼直立姿勢にて測定した。【結果】ASD 群は健常成人と比較し重心動揺は有意に大きかった。またASD の中で,SVA >100 mm はSVA <100 mm に比し,立位バランスが有意に悪化した。【結論】本研究の結果はASD 患者における立位バランスの障害を示した。また,ASD の中でもSVA >100 mm 以上は立位バランスが悪化する傾向であった。

  • 十文字 雄一, 対馬 栄輝, 小林 秀男, 津田 謙矢
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 331-336
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/28
    ジャーナル フリー

    【目的】投球によって肩の疼痛(以下,肩痛)を有する野球選手は肩関節可動域や肩関節外旋筋力が低下しているが,これらは野球選手における一般的な特徴としても知られており,肩痛の発生に対しての因果関係は明らかになっていない。本研究の目的は,これらの因子が肩痛の発生に影響するかを前向き研究により検討することである。【方法】高校野球部員を対象とし,オフシーズンに肩関節機能評価とポジション等の聴取を行い,シーズンインから2 ヵ月間を観察期間とした。その後,肩痛発生の有無に対して各評価項目が影響するかを解析した。【結果】肩痛を発症した者は84 名中24 名で,多重ロジスティック回帰分析の結果,肩回旋筋力比,ポジションが有意な変数として抽出された。【結論】肩痛発生に肩回旋筋力比の低下が有意に影響した。投球障害の予防には,ストレッチの他,回旋筋力のバランスにも考慮する必要があると考える。

  • 竹中 裕人, 杉浦 英志, 西浜 かすり, 鈴木 惇也, 伊藤 敦貴, 花村 俊太朗, 神谷 光広
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 337-346
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/30
    ジャーナル フリー

    【目的】腰部脊柱管狭窄症術後の患者立脚型アウトカムと運動機能の術後経過を明らかにすること。【方法】LSS 術後1,3,6 ヵ月で評価できた78 症例を対象とした(最大12 ヵ月追跡)。固定術37 例(68.4 ± 10.5 歳)と除圧術41 例(68.9 ± 7.8 歳)であった。JOABPEQ,腰痛・下肢痛・下肢しびれのVAS,6 分間歩行テストと体幹屈曲・伸展筋力を評価した。【結果】固定術,除圧術ともJOABPEQ の4 つの項目,腰痛,下肢痛,下肢しびれのVAS と6 分間歩行距離は,術後1 ヵ月から改善した。一方,JOABPEQ の腰椎機能障害は術後6 ヵ月から改善した。また,体幹筋力は,除圧術が術後3 ヵ月から改善した。【結論】本研究で明らかになったJOABPEQ と運動機能の経過は,手術の説明や術後経過の目標値として役立つと考えられる。

  • ─多施設間共同研究─
    長谷川 光輝, 藤野 雄次, 松田 雅弘, 深田 和浩, 三木 啓嗣, 小林 陽平, 佐藤 博文
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年47 巻4 号 p. 347-353
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/09
    ジャーナル フリー

    【目的】多施設症例対象研究により急性期脳卒中例の転帰に関連する因子を調査することとした。【方法】対象は急性期脳卒中患者447 例とし,自宅退院群193 例と回復期転院群254 例に分類した。評価項目は病前生活情報を含む基本属性のほか,神経学的重症度や基本動作能力,日常生活動作能力とし,転帰先を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】転帰に関連する因子として初回介入時NIH stroke scale,初回離床時Scale for contraversive pushing,初回離床時 Functional ambulation category,脳卒中の種別(脳梗塞・脳出血)が抽出され,判別的中率は81.6% であった。【結論】急性期脳卒中例の転帰を発症後早期の機能評価から判別しうる可能性が示唆された。

システマティックレビュー
  • 細井 匠, 小枩 武陛, 石橋 雄介
    原稿種別: システマティックレビュー
    2020 年47 巻4 号 p. 354-362
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】我が国の統合失調症患者に対する運動介入の効果に関して,身体機能の向上,精神症状の改善,ADL の向上,これら3 点についてこれまでの知見を検証すること。【方法】4 種類の電子データベースを用いて,2017 年までの全年代を対象に複数の検索式で検索した。検索結果を統合し,2 回のスクリーニングを実施して採択文献を決定した。【結果】38 編が対象となり,身体機能の向上について記述した30 編,精神症状の改善について記述した24 編,ADL の改善について記述した9 編の内容を検討した。【結論】対応の工夫や精神科治療と併用する必要はあるが,運動介入は統合失調症患者の身体機能の向上,精神症状の改善,ADL の向上に寄与し得ることが示唆された。

調査報告
  • 合田 秀人, 岩井 浩一, 谷内 勇太
    原稿種別: 調査報告
    2020 年47 巻4 号 p. 363-368
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    [早期公開] 公開日: 2020/05/29
    ジャーナル フリー

    【目的】地域理学療法における評価指標の使用状況および臨床で必要とされる評価指標の条件(以下,必要条件)を明らかにする。【方法】対象は茨城県の介護保険制度に基づく理学療法実践者とし,郵送法により質問紙調査を行った。【結果】使用状況としては,Range of Motion が94.2%,Manual Muscle Testing が93.2%,片脚立位が73.8%と,これらの評価指標は使用頻度が高かった。必要条件としては,「短時間で実施できる評価指標」が選択された割合は91.6%と非常に高かった。評価対象領域としては,身体構造や心身機能よりも,活動,参加およびQOL に関連する評価指標が必要とされていた。【結論】介護保険制度に基づく理学療法実践者の評価指標使用状況および必要条件が明らかになり,これらは,年齢,性別,地域理学療法領域での勤務年数によって影響される可能性が示唆された。

理学療法トピックス
シリーズ「脳卒中重度片麻痺者の歩行再建を図る理学療法技術の進歩」
講 座
シリーズ「理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標」
feedback
Top