理学療法学
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36 巻, 5 号
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研究論文
  • 三谷 健, 太田 恭平, 小松 泰喜
    原稿種別: 本文
    2009 年 36 巻 5 号 p. 261-266
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】身体機能,認知症の行動心理症候(以下BPSD:Behavioral and psychological Symptoms of Dementia)に注目し,入所者の転倒の特徴を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は介護老人保健施設2施設の入所者で,日常生活での移動手段が歩行であり,MMSE23点以下の入所者45名である。過去6ヶ月間の転倒歴,10m歩行速度,10m歩行歩数,Timed up and go test,Mini-mental State Examination,BPSDについて調査し,転倒群,非転倒群の比較検討を行った。【結果】転倒者18名,非転倒者27名であり,群間比較の結果,転倒群において10m歩行速度の低下,攻撃性の出現頻度が高い結果であった。【結論】入所者の転倒の特徴として,歩行速度の低下,BPSDの攻撃性の出現といった具体的な行動が問題となることが示唆された。身体機能,BPSD両側面からのアプローチを検討することが,今後の転倒予防につながる可能性がある。
  • 野嶌 一平, 奥野 史也, 前川 匡, 安藤 啓司, 平田 総一郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 36 巻 5 号 p. 267-274
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,挙上対象物の重量に関する先行情報が脊柱起立筋活動と腰部運動へ与える影響を検討することである。【方法】健常若年成人男性19名を対象とし,挙上対象物の重量に関する情報が全くない条件(unknown条件:U条件)と,重量を認識できている条件(known条件:K条件)を比較,検討した。腰部運動は,デジタルビデオカメラを用いて,挙上運動時の体幹運動,骨盤運動,腰椎運動を計測し,同時に腰部脊柱起立筋の筋活動を解析した。【結果】K条件では,挙上運動早期に骨盤運動が,後期に腰椎運動がそれぞれ優位となる腰椎骨盤運動リズムが見られたが,U条件でのそれは小さかった。筋活動に関しては,K条件では,ほぼ中期で最も高い筋活動を示したが,U条件では早期に最も高い筋活動を示した。U条件における早期の深い体幹屈曲位での筋活動ピークは,脊柱起立筋による圧迫力に加え,重力による屈曲モーメントが負荷されており,腰椎への負荷がK条件より大きくなっていることが推測された。【結論】今回の結果より,挙上重量に関する先行情報は,腰椎骨盤運動リズムを維持し,脊柱起立筋の筋活動ピークを遅延させることにより,腰部への負担を減じていることが示唆された。逆に,先行情報がない場合は腰部への負荷が大きくなり,腰痛発生のリスクが大きくなる機序が示された。
  • ―ラットによる実験的研究―
    前岡 美帆, 小野 武也, 梶原 博毅, 沖 貞明, 大塚 彰, 金井 秀作, 武本 秀徳, 島谷 康司, 田坂 厚志
    原稿種別: 本文
    2009 年 36 巻 5 号 p. 275-280
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】ターニケットによる駆血が廃用性筋萎縮に与える影響について検討すること。【対象】8週齢Wistar系雌性ラット40匹。【方法】実験期間の違いにより,10匹ずつ4日間グループ,7日間グループ,14日間グループ,21日間グループに分けた。そして,各グループを対照群ラット(n = 5)と実験ラット(n = 5)に分け,実験ラットの右下肢は実験初日に90分間の駆血を行い,足関節を最大底屈位に固定し(駆血後固定群),一方,左下肢は駆血を行わず足関節を最大底屈位に固定した(固定群)。筋萎縮評価にはヒラメ筋線維横断面積を用いた。【結果】ヒラメ筋線維横断面積は駆血後固定群が,全てのグループで固定群よりも有意に低値を示した。【考察】ターニケットによる駆血は廃用性筋萎縮に促進的な影響を及ぼしていたものと考えられた。
短報
  • 山田 実, 樋口 貴広, 森岡 周, 河内 崇
    原稿種別: 本文
    2009 年 36 巻 5 号 p. 281-286
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】メンタルローテーションは運動イメージを想起させるための簡便な手段である。本研究では,肩関節周囲炎患者を対象に,回転してある手の写真を用いたメンタルローテーションを実施し,患側肢の運動イメージの想起能力は低下しているのか,またその能力は理学療法介入によって改善するのか検討した。【方法】対象は,肩関節周囲炎患者60名と年齢を揃えた健常者60名であった。メンタルローテーション反応時間の測定にはパーソナルコンピューターを用いた。ディスプレイには,右手,左手が0°,90°,-90°,180°回転してある写真がランダムに表示され,ボタンを押すことで,写真が表示されてから回答するまでの反応時間,回答側が記録された。なお,患者群では全例ともに週に2〜3回の外来理学療法(関節可動域訓練,ストレッチ,動作指導など)を実施した。【結果】理学療法開始前のメンタルローテーション反応時間では患側の方が健側よりも有意に時間的延長を認めていたが,肩機能が改善した理学療法終了時では患側と健側のメンタルローテーション反応時間の差は消失した。【結論】これらのことから,運動イメージ想起能力は,末梢の運動器の影響を受けて変化することが示唆された。
実践報告
  • 吉本 好延, 野村 卓生, 明崎 禎輝, 佐藤 厚
    原稿種別: 本文
    2009 年 36 巻 5 号 p. 287-294
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,運動療法が精神疾患患者の身体機能および能力に与える効果を検討することであった。また,我々は,行動科学的アプローチが運動療法の教室への参加に与える影響についても検討した。【方法】対象は,精神科病院入院患者21名(閉鎖病棟群9名,開放病棟群12名)であった。精神疾患患者には,12週間(週3回)の介入期間にわたって,運動療法(体幹と下肢のストレッチ,筋力増強運動,バランス運動,歩行運動)と行動科学的アプローチ(運動療法の教室参加後の賞賛,運動療法後の食品の提供,参加状況チェックポスターの掲示)を提供した。【結果】開放病棟群の患者は,下肢前方リーチと最大一歩幅が,介入前から12週間の介入後に有意に向上した。閉鎖病棟群の患者は,運動療法の教室への参加率が,作業療法より高い傾向にあった。運動療法の教室参加後の賞賛は,運動療法の教室への参加に効果的なアプローチとして精神疾患患者から高い評価を得た。【結論】精神疾患患者の運動療法の教室への参加を促進するためには,行動科学的アプローチの強化刺激などを工夫すべきである。
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